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新垣知輝(2024)数式を日本語として表現し質的な理解を高めるe ラーニング教材の開発
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
近年,大学のユニバーサル化とともに入学者の基礎学力の低下が叫ばれており,各大学
においてリメディアル教育の取り組みが盛んに行われている.薬学部においてもリメディ
アル教育として数学や化学などを提供しているが,高校 3 年間の内容を数ヶ月で終える必
要があるため,自主的な練習の場として e-ラーニング教材が提供されることも多い.し
かしながら,e-ラーニングでは自律性を有さない学習者に対して低い履修率となることが
課題であり,継続して学習してもらうためには動機づけを高めることが必須となる。
そこで本研究では,学習意欲の低い学習者に対しては自己決定理論の観点より外的調整
から行うのが有効と考え,ゲーム的な要素を学習に取り入れることで,学習者の学習意欲
を向上させるような教材開発を行った。
教材の対象者は大学 1 年生とし、対象分野は、聞き取りの結果、苦手意識が強い指数及
び対数分野とした。当該分野に対し課題分析図を作成し、これに基づき 200 題以上の演習
問題を作成した。これらの問題をゲーミフィケーション要素である想起練習が行えるよう
に配置し、課題分析図に合わせて問題のセットを作成した。この教材に対し、ゲーミフィ
ケーション要素の完了実績の可視化及び達成度の可視化を加え、内発的動機づけの醸成を
行えるよう設計した。
本教材について、専門家(SME)による形成的評価を受け、内容に誤りがないことを確
認したのち、大学 1 年生 5 名に対し形成的評価を行った。その結果、学習を完遂した学生
について、事前テストと事後テストを比較すると 22 点満点中、指数の平均点 12 点から
203.点、対数の平均点が 11 点から 22 点満点となり、教材の完遂によって学習効果があ
がっていることが確認できた。また、学習の履歴を解析したところ、1 回の学習でいくつ
もの問題集を連続して解いているものが複数おり、ゲーミフィケーションの効果によって、
1 回学習を始めるとついやり続けたくなることが示唆された。
その一方で、学習を完遂できていないものも 2 名おり、止まってしまったところについ
ては改善の余地がある。内発的動機づけを大きく高めるところまで十分に至っておらず、
自律性、有能性から内発的動機づけを高めるための方略に更なる改善が必要である。
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濱崎あゆみ(2024)ブレンド型学習を用いた PBL 型授業の設計-日中間ビジネスをテーマとした協同学習-
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
近年、グローバル化が進展する中で、異なる文化背景や価値観、国籍を持つ者同士
による共同作業の中でよりよい成果を生み出すことができるグローバル人材育成に向
けた取り組みが重要となる。
しかしながら、異なる文化背景を持つもの同士がグループ構成されたとしても、双方
にとって「見せかけの学習グループ」になってしまい、「異文化理解」を実現することが
難しく、チームで協力し、課題達成に向けチーム全員で働きかける中で仲間意識の醸
成や達成感を味わいづらいという課題がある。
そこで、本研究では、日中間ビジネスをテーマとした協同学習を題材にした産学連
携による PBL 型授業の設計・開発を行う。学習者同士が、オフラインの対面授業とオ
ンラインの Moodle の中で、異なる文化背景を持つ者同士がディスカッションを通し
て、学び合えるコミュニケーションの場の中で課題解決をする、e ラーニングと対面授
業を組み合わせたブレンド型学習を用いた PBL 型授業の設計・開発を行い、学修効
果の有用性を検証した。
その結果、学習目標の到達度を測定するために、事前テスト・事後テストによる平均
点を比較したところ、事前テストより事後テストの得点の方が有意に高く、学生たちが
本授業を通して達成感を味わえたという結果を得ることができた。また、協同作業にお
ける認識について「共同作業認識尺度」を用いて定量的測定を行ったところ、「個人志
向」因子と「互恵懸念」因子が授業の実施前と実施後で比較したところ、数値が低下
し、「協同効用」因子に上昇がみられた。
今回の研究では、異なる文化背景を持つ者同士で協同学習を上手く進めるための
工夫をしながらディスカッションを進めていくことが、有益であり、協同学習においてみ
んな違う価値観のなかで課題解決をしていくための経験から得る深い学び学びを強く
望んでいることが明らかになった。
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猪田京子(2024)新規事業組織における製品課題改善のための組織学習開発
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨
企業はコロナや戦争などさまざまな外部のリスクに対処し、経営を安定させるために新しい分野
に進出している。筆者の所属する企業では、社員の知見を活かし研修の提供を行う教育事業を立
ち上げた。その中の製品の1つとして、客室乗務員の知見を活用し、顧客の接遇対応評価を行い、
分析を行うサービスを提供している。しかしながら、業務効率化や商品競争力に課題が生じたため、
WBS(Work Breakdown Structure)作成による作業明確化およびサービス担当者に対する半構造イ
ンタビューによる業務の現状分析、半構造インタビューを行った。その結果、担当者個人の経験や
知見にのみに依存した業務遂行体制になっているうえ、個人・組織ともに学習機会がなく、業務の
標準化、サービスの強化や拡充、といった、学習上の課題が明らかになった。本研究はこの製品
課題を改善するために本製品実施担当者向けに、組織学習を開発すること目的としている。
先行研究調査から、企業が持続可能な成長を達成するために、既存の事業モデルを守りつつも
柔軟性を持って新しいアイデイアを創出し対応する両利きの経営論を用いている企業が複数見受
けられた。そこで組織学習の開発方針として「両利きの経営論」を援用し、知の深化(現事業強化
のための知識の共有、業務の標準化活動)をシングルループ学習で行い、知の探索(新規提供メ
ニューの拡充、新規顧客開拓のための新たなアイデイアを創出する活動)をダブルループ学習で
平行して実施することとした。
学習環境として WEB 上に学習プラットフォームを構築し、学習者および活動リーダーである筆
者との双方向性を確保した同期、非同期を組み合わせた学習環境を実現し、筆者と 6 名の学習者
で 3 か月間、週 1 回 1 時間の学習を実施しした。
シングルループ学習型の組織学習の成果物は、業務のシステム化と効率化を実現する業務支
援ツール(業務マニュアル、報告書テンプレート)である。また、ダブルループ学習型の組織学習の
成果物は、顧客の接遇対応評価においてこれまでのサービスメニューになかった非対面及び異業
種対応の評価項目の創出とそれを活用した新たな事業製品計画案であり、筆者が所属する組織
において新たな価値創造となった。
今回この組織学習を開発したことで、解決すべき製品の課題に貢献する成果物が創出された。
成果物の効果として、業務支援ツールによって担当個人の知見やスキルに依存している事業が標
準化・効率化し、また、新たな製品サービスの提案により事業の売上や利益向上に資することが期
待される。
今後は、開発した戦略的組織学習を社内で紹介し、組織の課題解決や新しい価値の創造に寄与
していきたい。
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駒崎知永理(2024)インストラクショナルデザインの自動化を志向した図書館情報リテラシー教材作成ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
現在,多くの大学図書館では,学生等を対象に,情報の探索,入手,管理方法などを
教える情報リテラシー教育を実施している。しかし,文献調査を行った結果,大学図書館
が行う情報リテラシー教育には,次の 5 点の課題があることが分かった。
1. 情報リテラシー教育を行う図書館員に,教授設計に関する全般的な知識やスキルが
不足している
2. 情報リテラシー教育の内容が,スキルの獲得ではなく知識の伝達にとどまっている
3. 情報リテラシー教育の評価が十分に行われていない
4. 情報リテラシー教育を大学図書館が同期型で行うには限界がある
5. 情報リテラシー教育が,大学の中で組織的,体系的に行われていない
そこで,本研究では,インストラクショナルデザイン(以下,ID)を知らない図書館
員であっても,ID について学び,情報リテラシー教育のための独学用教材を作成できる
ようになるための AID(Automating / Automated Instructional Design)ツールの開発を
行った。本ツールのユーザーは,全国の大学図書館員を想定している。そのため,全国的
に活用されるような汎用的 Web ツールになるよう設計を行い,ID の専門家が側にいなく
ても,図書館員のみで教材開発(特に,分析・設計・評価)を行うことができる仕組みを
整えた。
本ツールは,「チェックリスト」,「ワークシート」,「クイズ」,「解説」の 4 つのコンテ
ンツから構成されている。「チェックリスト」とは,教材を ID の観点から評価するため
のものである。既存のチェックリストを参考に項目の加除を行い,再分類を行うことで図
書館員向けの新しいチェックリストを作成した。「ワークシート」とは,新規の教材を設
計したり,既存の教材の設計を見直したりするものである。「クイズ」とは,「チェックリ
スト」や「ワークシート」を正しく使うためのトレーニングツールという位置づけであ
る。トレーニングツールを配置することにより,ID の専門家が不在の状況においても,
図書館員のみである程度のレベルまで教材の分析・設計・評価を行うことができる仕組み
になっている。最後に,「解説」とは,それ以外のコンテンツの利用をサポートするため
のものである。
ツールのプロトタイプ完成後,ID の専門家 2 名によるエキスパートレビュー及び図書
館員 2 名による形成的評価を実施し,ツールの有用性等の検証を行った。今後は,評価
の結果をもとに,さらにツールを使いやすくするための改善を行うことが課題である。
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久保田文子(2024)行動中心アプローチに基づいた日本語授業を実践するための ID の第一原理を活用した設計―日本語教育機関の事例から―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
現在、日本語教育機関で行われている日本語教育は、言語構造の定着に注目した教師主導
の授業が中心となっている場合が多い。「行動中心アプローチ」に基づく言語教育は、学習
者がそれぞれの社会で求められる課題を遂行できるようになることを目指しており、日本
語教育機関の学生にとっても意義深いものである。
本研究は、「行動中心アプローチ」と「ID の第一原理」の相関に着目したデザイン研究で
ある。日本語教育機関の学生が学びを実際の場面に転移させるための行動中心アプローチ
に基づく授業を、ID の第一原理を活用して設計する手順や設計のポイントを明らかにする
ことを目的として行った。
まず、第 1 期対象授業(2023 年 4 月~6 月実施)として筆者が行った授業を行動中心ア
プローチの原理で分析したうえで ID の第一原理を活用して授業設計を改善した。その改善
で得られた授業設計の手順を用いて、第 2 期対象授業(2023 年 10 月~12 月実施)を設計
した。第 2 期対象授業では3つのタスクを設定し、それぞれに分析と改善を繰り返しなが
ら実施した。その結果、学生への授業実施後のアンケートとインタビューから、授業設計上
の工夫と学習の転移の相関が示唆された。
最後に、「日本語教育機関の学生が、教室で学んだことを実際の場面に転移させ、社会で
求められる課題を遂行できるようになる」という文脈の範囲で、「行動中心アプローチに基
づく授業を、ID の第一原理を活用して設計する際の手順とポイント」をまとめ、本研究の
成果とした。今後はさらにデザイン研究の手法で研究を続け、行動中心アプローチに基づく
授業のデザイン原則を提案したいと考えている。
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松本幸子(2024)国際人道・開発支援従事者に向けた性暴力サバイバー対応の分岐シナリオ型 e ラーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
近年、国際人道・開発支援現場での支援者による受益者に対する性的搾取・虐待の不正
行為を根絶する取り組みは、性的搾取・虐待(SEA)および性的ハラスメント(SH)から
の保護(PSEAH:Protection from Sexual Exploitation, Abuse and Sexual Harassment)と
よばれる。PSEAH の普及は、専門人材の育成だけではなく、PSEAH が組織の行動規範に
含められ、全ての支援関係者が性的不正行為を正しく理解すること、不正行為の発生時に
備えた対応ができることを目指す。支援者全般に対する教育は、国連と国際 NGO のコン
ソーシアムである機関間常設委員会(IASC)が開発した研修モジュールを用いて世界中で
実施されている。日本の関係者に向けた研修は 2022 年から開始した。同研修は、性的不
正行為の問題を理解し、PSEAH に取り組みを促すことを目的とし、知識向上や態度の変
化に一定の効果がある。一方で職場(支援現場)での行動を変えるような学びが得られな
いことが示唆された。
本研究では、PSEAH の理念や原則は理解しているけれど、実際に現場でどのような行
動をとるべきか具体的なイメージができないという日本の支援関係者が抱える問題に応え
る。具体的には、性暴力専門家や PSEAH 担当者ではない支援関係者が、性的不正行為の
サバイバーに被害を打ち明けられた際の対応スキルと通報義務を遵守するスキルを習得す
るための日本の学習者に向けたシナリオ型 e ラーニング(SBeL)の教材開発を行った。本
研究では、始めに先行研究・事例を調査し、教材設計・開発方法の概念的フレームワーク
を設定した。次に、概念的フレームワークを用いて本研究課題に関するシナリオ型 e ラー
ニング教材のプロトタイプを作成した。プロトタイプの形成的評価は、1)分野専門家(性
暴力と PSEAH 領域、及びインストラクショナル・デザイン領域)によるレビュー、2)学
習者との 1 対 1 評価、3)小集団による実地試用の 3 段階で行い、評価結果を分析した。
その結果、事前・事後テストやアンケートから、学習成果が確認でき、学習トピックは深
刻でセンシティブな内容であるものの、魅力的な学習機会の提供や有用性において概ね高
い評価が得られた。今後の展望は、状況・文脈を変えた異なるシナリオを開発すること、
効率的な学びを促進するために対人スキル習得の対面研修の事前練習として本教材を活用
すること、執務参考資料となる GBV ポケットガイドを日本語翻訳することが望まれる。
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中垣達(2024)市中病院において一次救命処置の知識・技術を習得することができる学習環境の設計と評価.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
心肺停止の患者に対して心肺蘇生法を実施し自動体外式除細動器(AED)を使用すること
で自発的な血液循環の回復を目指す処置は一次救命処置(BLS)と呼ばれ、患者の生存に直
結する介入である。病院内では看護師はその数が多く患者の近くにいる確率が高いことか
ら BLS における看護師の役割は大きい。しかし本研究の対象である X 病院は市中病院であ
り大学病院に比べてシミュレータなどの教育資源は十分ではなく、また各部署における教
育は経験的に行われており、さらに医療現場は多忙であるため集合研修による BLS の教育
には限界がある。そこで市中病院において教育担当者が直接指導することなく、各部署の看
護師が自身で学習することができる環境を設計し、必要な学習のみを効率良く行えるよう
にすることで看護師の知識・技術の不足を補う仕組みを構築することを目的に研究を行っ
た。
BLS の学習環境設計に関する先行研究を調査したところ、必ずしも必要な学習成果が含ま
れていない、あるいは評価がされていないという傾向が見られた。また BLS の自己学習に
関する先行研究を調査したところ、学習者のレベルのばらつきへの対応や集合研修を前提
としているなどの課題が残されていることが明らかになった。さらに運動技能の自己学習
に関する先行研究を調査したところインストラクターがいないため修正的フィードバック
を通した適切な手技の習得、モチベーション維持といった課題が残されていることが明ら
かになった。
BLS の学習環境を設計するに当たっては適切な BLS の実践に必要な学習成果について課
題分析図を作成し整理した。次に TOTE モデルの考え方に沿って学習フローチャートを作
成し、学習が必要かどうかテストを行って判定し3つの学習項目のうち適切にできていな
かった学習項目のみ学習させることで効率化を図った。さらに学習成果ごとに学習支援を
設計した。
BLS の学習環境を開発するに当たっては言語情報および知的技能は e ラーニングで学習
し、運動技能は e ラーニングで各手順の動画を視聴し誤りがあればそれを特定できるよう
に訓練してからフィードバック機能があるマネキンを用いた自己学習ステーションで学習
する仕組みとした。自己学習に当たっては ARCS モデルに基づいた動機付けシートにより
モチベーション向上を図った。専門家レビューでは妥当性であるとの評価を受け、形成的評
価で設計した BLS の学習環境が機能することを確認した。
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落合道夫(2024)学習者の概念理解と能動性を高めることを目的とした JiTT による高校物理授業の実践~その方法と効果~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
詳細はありません。
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大西 克樹(2024)カレッジ・レディネスを高める入学準備としての e ラーニングプログラムの設計と実践-高校から大学へのトランジション支援-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要 旨
高校から大学への移行は,学びの環境だけでなく,より一層の自立性が求められるなど大
きな変化を伴う難しい時期である.4 年間の大学生活の中心が学びであることから,ほとん
どの大学では,入学前の生徒を対象に入学前教育を実施している.しかしながら,学力維持
や底上げを目指すリメディアル型の取り組みが主で,多くが総合型選抜(旧 AO 入試)を対
象としたものとなっている.ほぼ全ての学生が初めて大学生になる中で,入試の形態や学力
に関係なく,リメディアルではない大学生になるためのトランジション支援は見られない.
本研究では,米国で研究されたカレッジ・レディネスに着目し,大学入学予定者が大学生
になるための入学準備を支援し,スムーズにトランジションできるようにすることを目的
とした e ラーニングプログラムを設計し,実践した。まずは,プログラムの可能性を探るた
め,暫定的なプログラムを試行実施した.その結果を踏まえ,学習スキルとテクニックに関
する⾃⼰評価ルーブリックを作成するなどカレッジ・レディネスの要素を強化したプログ
ラムとして改善設計し,専門家らによるレビューを得た.
本研究により,リメディアルではない大学生になるためのトランジション支援はニーズ
があり,カレッジ・レディネスの要素が大学入学予定者の入学準備として一定の効果がある
ことは明らかとなった.ただ,実践環境が英語課程の学部であったため,他の学部や大学に
おいて汎用的に実践できるものではなく,別環境での実践やより委細な受講者分析を行う
など,今後の研究に可能性を残す結果となった.
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佐藤尋美(2024)看護教育場面における GBS 理論に基づいたシナリオ型教材作成支援のためのワークシートの開発 .熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨(日本語)
看護師の業務遂行場面は、その場での判断・選択・行動の連続である。看護師は、その
連続の中で患者の命を危機から守るために最善を尽くし、その責務を全うするために自己
の能力を研鑽し続ける努力を求められる。
新人看護職員の臨床判断能力を高める必要性に関して、厚生労働省(2014)は、新人看
護職員の看護実践能力の低下が臨床現場で必要とされる臨床判断能力との間で乖離を生じ、
離職の一因となっていることを指摘し、その必要性について言及した。また、厚生労働省
(2011)は、新人看護職員に対する教育方法としてシミュレーションを用いた模擬体験で
状況設定に応じたトレーニングや侵襲的技術を学習することを推奨した。このような社会
の動きを受け、看護教育場面においてはシミュレーションによる教育が行われるようにな
ったものの、シミュレーションは、より多くの意思決定と選択の結果によって複数の学習
経路が設定されるため、設計が複雑になり、時間も費用も必要になるという側面がある。
一方で、シナリオによる学習はシミュレーションのように複雑な学習はできないが、学習
設計を可能にするストーリーを展開できる。意思決定場面を提供するシナリオ型教材を提
供するための設計理論であるゴールベースシナリオ(Goal-Based Scenario,以下,GBS)理
論を用いた問題解決型の学習による思考を訓練する教育は、看護師の臨床判断能力の育成
に有効である。そのために GBS 理論に基づいたシナリオ型教材を用いた研修による学習機
会につながる支援を行いたいと考え、多くの看護師から事例を提供してもらえるようなシ
ステムの構築と、事例を効率良く教材として活用できる形で提供してもらう方法として、
シナリオ型教材作成を支援する書きやすいワークシートの開発に臨んだ。
ワークシートの開発では、筆者が看護領域の内容領域専門家(SME)兼 ID 専門家として、
1 つの簡単な事例についてシナリオを作成し、作成したシナリオをもとにワークシート(案)
とシナリオ型教材を作成しながら、シナリオに必要な事項の過不足を点検して、シナリオ
の改善とワークシート(案)の改善を繰り返した。作成したシナリオ、ワークシートにつ
いて、GBS の7つの構成要素を含んでいるか確認してさらに改善を行い、エキスパートレ
ビューと専門家レビューによる形成的評価を経て、ワークシートおよびシナリオ、シナリ
オ型教材を改善した。さらに、別の事例を対象にワークシートを使用し、内容領域専門家
(SME)と協力して GBS に基づいたシナリオを作成できるか確認し、開発したワークシート
の有用性について考察した。
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杉達郎(2024)訪問看護師がケアマネージャーと連携して業務を遂⾏するためのGBS 理論を⽤いたシナリオ型 e ラーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨
超⾼齢社会の⽇本において, 地域包括ケアシステムの構築が推進されており, 療養者が
さまざまな社会資源サービスを活⽤しながら住み慣れた地域で暮らせるよう, 訪問看護師
の需要は⾼まっている. そのような背景から, 看護基礎教育において, 「他職種連携」や「社
会資源の活⽤」の学習機会は拡充されているものの, 訪問看護分野へ就業間もない看護師に
おいて, それらの知識不⾜が報告されており, 業務遂⾏における課題となっている.
そのような課題において, 従来のテキストや講義ではなく, 学習者の⽂脈を活⽤するこ
とで, より実践的な学習となることが報告されている (Bransford, J. D 1990). 根本 (2005)
は, その⼿法を3つに整理しており, 本研究ではシナリオを採⽤した. シナリオは学習者に
ある⼀定の役割を与え, 学習者の既知の情報や⽤意された情報から必要な部分を抽出し活
⽤させ, ⼀つの判断をさせる学習⼿法である. 訪問看護経験の浅い看護師であっても, シナ
リオを通じて学習することで, 業務へ効果的に活⽤できる実践的なスキルを習得できると
考えた. シナリオを学習に⽤いる上で, 効果的に活⽤するための下⽀えとなるのが, インス
トラクショナル・デザイン (以下 ID) のひとつである Goal Based Scinario 理論 (以下 GBS
理論) である (Roger C. Schank 1993). そこで, GBS 理論を⽤いたシナリオ型教材を開発す
ることとした.
本研究では, 訪問看護師に必要な「社会資源の活⽤」や「他職種連携」を実践するために,
シナリオを活⽤したオンライン/⾮同期型学習に加え, 対⾯/同期型のリフレクションを取
り⼊れた新しい学習設計を提案している. このアプローチにより, 実際の現場で必要とさ
れる思考プロセスを学習し, 学習者の判断⼒向上を図る. 既存の GBS 理論に基づく教材開
発には多くの事例があるが, 本研究の独⾃性は, リアルタイムのリフレクションを統合し
たことにある.
シナリオのプロトタイプを作成し, Subject Matter Expert (SME) ・ケアマネージャーに
インタビューを実施した. 課題設定に相違がないことを確認し, シナリオ型教材のプロト
タイプの開発に着⼿した. 実際の業務における展開や⾒え⽅でリアリティを⾼め, 学習者
の選択に応じたシナリオが展開できるよう, Google Forms に実装した. また, 教材は
Google Sites にまとめることで, 学習のユーザビリティを⾼めた.
開発したシナリオ型教材を含む学習設計に関して, SME・IDer からエキスパートレビュ
ーを受けた. SME より, シナリオは現実感があると評価を受けたものの, ⼀部シナリオに不
⾃然さがあると指摘を受け修正した. IDer からは学習⽬標の明確性と評価⽅法について指
摘を受け修正した.
今後, 開発した研修を学習対象者へ1対1評価を実施し, 形成的評価をする予定である.
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谷内祐樹(2024)OPTIMAL モデルを用いた学習指導案検討を支援する教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要旨
本研究では,中学校教師の学習指導案検討を支援する「学習指導案検討シート」を開発
した。開発にあたって,ブレンド型学習を設計するための ID モデルである OPTIMAL モ
デルを参照したことに本研究の独自性がある。
第 1 章では,現在,教師による「協働的な学び」と「個別最適な学び」との往還が求め
られていることを示した。しかし,中学校では,小学校と比べて実践的な研修が行われて
いない状況を指摘した。そこで,OPTIMAL モデルを参照した教材を開発し,中学校教師
の「個別最適な学び」を改善するという本研究の位置付けを明確にした。
第 2 章では,中学校教師の「個別最適な学び」を改善するために,インターネットの活
用が有効であることを示した。また,「協働的な学び」との往還を図るため,OPTIMAL モ
デルを参照した教材開発の有効性を見いだした。一方,同モデルには先行研究が少ないた
め,この効果や課題を指摘する上でも意義があることを示した。
第 3 章では,教材の学習目標を設定するため,中学校で行われる学習指導案検討の発話
状況を調査した。このような「協働的な学び」の機会では,他者が作成したプランの問題
点を指摘し,代案を述べることが有効である。しかし,発話状況を分析した結果,「非同意」
や「提起」に関する発話が少ないことが分かった。
第 4 章から第 6 章は,中学校教師の学習指導案検討を支援する教材の開発プロセスを示
した。開発にあたっては,ブレンド型教材を開発するために考案された「ブレンド型用教
材企画書」と「OPTIMAL モデルチェックリスト」を援用した。これによってブレンド型
学習の課題が明らかになり,改善が進むことを示した。
これまでの議論をまとめると,教師による「協働的な学び」と「個別最適な学び」の往
還を図るための方策として,OPTIMAL モデル等の知見を生かしたブレンド型学習の有効
性が指摘できる。ただし,教師の「個別最適な学び」を実現するためとはいえ,教師を孤
立させてはならない。インターネットを活用する個別の学習であっても,教材に「他者参
照」等の機能を備えることで,学習者は個別のニーズに沿った学習をしながらも,協働的
に学習することが可能となる。本研究を通して,教師による「協働的な学び」と「個別最
適な学び」との往還のための一つの方策を見いだすことができた。
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德永恵理子(2024)遠隔学習における動機づけ強化のための対話型 Moodle メッセージプラグイン開発-ChatGPT による Relevance/Confidence を喚起するメッセージの自動作成-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
要 旨
本研究では,遠隔学習において,ARCS 動機づけモデルと ChatGPT を活用して学習者
の学習意欲と学習継続可能性を向上させる支援を行うための新たなアプローチを提案す
る.
本研究は,成果物として Moodle メッセージプラグインを開発し,学習者からのヘルプ
シーキングに相当するメッセージ受信時の機会をとらえ,支援メッセージ草案を
ChatGPT の API を活用して自動生成し,学習者の Relevance(関連性)と Confidence
(自信)を喚起することを目指している.
本研究では,学習者の学習継続に効果的な,対話による学習支援を行うための,Moodle
を中心とした取り扱いやすく汎用性のあるシステム構成を構築し,ChatGPT を用いた学
習支援の効率化に寄与する.
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馬場政尚(2024)家庭での防災対策をナッジにより促す高校生向け防災教育プログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
防災教育のねらいの 1 つとして「日常的な備え」が掲げられており、日常生活の場である
家庭における防災対策の促進が防災教育上の一課題である。高校生が家庭における防災対策
を進めるためには、家族の協力が必要となる。そのため、学校で実施する防災教育によって
高校生が防災知識を獲得し、防災意識が高まったとしても、防災対策の実践の場である家庭
において、思春期特有の親子関係や本人、家族の多忙といった外部要因によって、防災対策
行動に結びつかない可能性がある。
このように、高校生を対象とした学校における防災教育を通じて「日常的な備え」を実現
することには困難が伴うが、家庭における生徒の防災対策行動の変容について蓄積は十分な
されておらず、学校現場での取り組みは停滞している。
そこで、本研究では、「日常的な備え」の実現を目指し、高校生を対象として家庭におけ
る防災対策行動(家具家電の固定対策)を促進する防災教育プログラムを開発した。とりわ
け、外部要因の存在に着目し、家庭における防災対策行動を促進するために、行動経済学に
おけるナッジを援用した防災教育プログラムを開発した。
防災教育プログラムは、教科教育を通じた防災行動意図、家庭防災への態度の向上を目的
とした学習活動(Phase1)、ナッジ介入を伴う家庭における実践活動(Phase2)、実践活動の
振り返り(Phase3)の 3 つのフェーズで構成される。Phase1の授業開発はガニェの 9 教授
事象を用いて行い、Phase2で用いるナッジの開発には OECD BASIC ツールキットを用い
た。
開発した教材は、防災教育の専門家、ID の専門家による形成的評価、高校 1 年生 7 名を
対象に小集団評価を行い、所要の修正を行った。
修正した教材を基に、高校 2 年生 269 名を対象に防災教育プログラムを実施し、形成的
評価を行った。
評価の結果、Phase1では生徒のリスク認知、防災行動意図、家庭防災への態度が有意に
高まった。Phase2では、家庭において家具家電の防災対策が促進されたことが確認され、
ナッジを組み込んだ防災教育プログラムが、家庭における防災行動を促進することが示唆された。
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堀田雄大(2024)教員の研修動画の視聴と他者コメント及びナッジ理論を活用した研修プログラムの開発と評価.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
子供たちの多様化と社会の変化に伴い,教師の新しい学びや教職員集団の改革が求められて
いる.子供一人一人の教育ニーズに応えられる教師の力量と,多様化する現状に対応できる教
員集団が求められ,変化を前向きに受け止め,学び続けることが重要となる.今後は,教師の
研修履歴の記録作成とその履歴を活用した資質向上のための指導・助言の仕組みが導入され,
教員が主体的に学ぶことが求められる.学校現場の多忙さが課題となる中,集合型の対面研修
だけでなく,教員が自分のペースで,時間を見つけて自主的に研修を進めることのできる研修
として,オンラインによる受講環境を活用した研修プログラムが注目されており,今後は教職
員用のデジタルコンテンツを活用したオンライン研修の開発が期待される.オンライン研修の
問題点として,自律的な学習の困難さや先延ばしが指摘されている.そのため,時間と場所の
制約がないオンライン環境における自己管理の重要性が強調されており,特に,相互評価の導
入が学習動機の向上に期待できるとされる.しかしながら,これらの知見の多くは学生を対象
としており,教員向けオンライン研修に関する知見はまだ不十分である.教員と学生では学習
内容や環境が大きく異なり,特に教員の場合は勤務と研修の両立が課題となる.教員の働き方
に合わせた研修プログラムの開発が必要である.
そこで,本研究では,教員が自主的に学習を進めるためのオンライン研修の要件を検討し
た.具体的には,動画視聴と振り返り,他者コメントを組み合わせた非同期のオンライン研修
プログラムを開発し,その効果を検討した.このプロセスを通じて,教師が自主的に研修を進
めるために必要な研修プログラムの要件について示唆を得ようと考えた.研修プログラムの開
発では,教員の個々のニーズや勤務環境を考慮し,自律的な学習を促進する要素を組み込むこ
とが重要である.また,相互評価や他者との交流を取り入れることで,学習者間の協働と内省
を促すことも研究の焦点となっている.開発した教育研修プログラムを実施・評価した結果,
教師の学習方法と振り返りのスタイルについての知見を得た.振り返りの内容には,視聴内容
の要約,個人的な感想,動機,省察,提案が含まれ,これらが教師の学習ニーズや自己課題の
発見,教育方法の改善につながることが分かった.ナッジを用いたコメント投稿意欲の向上や
新たな視点の獲得も評価されたが,全員に効果的であるわけではなく,焦燥感を引き起こす可
能性もあることが示された.さらに,学習者の学習戦略の採用状況を調査し,高群と低群の学
習者間で差異があり,自身の学習スタイルや戦略に気づく過程が明らかになった.
この研究により,オンラインを活用し,教員が自主的な研修を進めていくための研修づくり
に関して次の示唆を得た.振り返りへの働き掛け,ナッジの活用,フィードバックのシステム
構築,多様な学習方略への対応,定期的なメンタリングの導入が挙げられる.これらの示唆
は,教師が学習過程を自覚し,効果的に学び続けるための支援体制の構築につながると考えられる.
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鵜澤威夫(2024)バングラデシュの初級日本語学習者と日本の高校生との COIL 型教育プログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
本研究においては、現在筆者が従事している「外国人 ICT 技術者人材育成プログラム(BJET)」内で取り組んでいる COIL 型教育プログラムである B-JET CAFE を、インストラクショナル
デザイン専門家、日本語教師、高校教師の本研究に関わる 3 分野の専門家によるエキスパートレビ
ューを受け、その結果を分析し、初級日本語学習者であるバングラデシュ人と、ICT 初心者かつ異
文化交流の機会の少ない日本人中等教育学生であっても、双方の学習目標を達成することができ、
導入へのストレスの少ない方法での、COIL 型教育プログラムを開発することを研究目的としてい
る。
本研究の研究対象としている、初級日本語学習者の多くは、教室外で日本語と接触のない学習環
境に置かれていることに課題がある。また、日本の高等学校における国際理解教育の現状として
は、1対生徒の講演型の教育が多く、 海外の人との少人数の双方向型のコミュニケーション教育
を展開できている教育機関は少ない。
以上に挙げたように、海外在住日本語学習者と日本の中等教育の生徒にはそれぞれの課題がある
中で、筆者は現在、B-JET CAFE に取り組んでいる。
これまでの B-JET CAFE の実践結果としては、学習者からのアンケート結果から、双方に満足度
が高く、一定の成果があることが明らかになった。また、具体的に獲得できる知識やスキルとして
は、全体に共通して異文化理解が高く、日本側は ICT スキル、バングラデシュ側は日本語能力向上
が顕著に見られた。
さらに、エキスパートレビューでは、インストラクショナルデザイン専門家からは、プログラム
修了後の目標設定を学習者が行うことで更に自己調整学習が促進されるとの意見が挙がった。日本
語教師からは、B-JET の研修生が既習事項である日本語を日本人との対話の中で実践的にアウトプ
ットできる仕組みになっている点が評価された。高校教師からは、学校内のリソースだけでは本プ
ログラムのような協働型の国際理解教育や探求学習の実践は困難であるため、本プログラムへの広
がりを期待された。また、ワークシートがあることで英語に苦手意識を持った生徒であっても参加
しやすくなるという意見が挙がった。
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朝田晴子(2024)高等学校家庭科におけるシナリオ型eラーニング教材の開発−−「自立」するための課題解決力の育成を目指して−−.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2023年度提出修士論文
高等学校家庭科では、「生活の営みに係る見方・考え方を働かせ、実践的・体験的な学
習活動を通して、様々な人々と協働し、よりよい社会の構築に向けて、男女が協力して主
体的に家庭や地域の生活を創造する資質・能力」を育成することが目指されており、この
資質・能力の1つとして「習得した知識や技能を活用して課題を解決する力」が挙げられ
ている。また、「令和の日本型教育」の姿として、個に応じた指導や自己調整学習などの
個別最適な学びと、他者と関わり合い、様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶ協働的な
学びの重要性が示されている。
一方で、高等学校の共通教科「家庭」の授業では、家庭科教員の7〜8割が全体の指導
時間が足りないと感じているため、リアルな体験の機会が一部に限定されていたり、問題
解決的な学習の導入割合が低く課題解決力を育成するための学習活動が実施できていなか
ったりするのが現状である。この現状の問題を解決するためには、より現実的な体験がで
き、他者と協働しながら、課題解決力を育むことのできる授業を実践する必要がある。
そこで、限られた授業時間の中で、個別最適な学びと協働的な学びを実現し、課題解決
力を向上させるために、ゴールベースシナリオ理論に基づくシナリオ型教材に着目した。
本研究の目的は、高等学校家庭科において、シナリオ型 e ラーニング教材を開発し、授業
に導入することで、より現実的な体験ができ、他者と協働しながら、課題解決力を身に付
ける授業が実現できるかを明らかにすることである。特に、高校生の課題の1つである
「自立」をテーマとし、家庭科の知識や技能を学びながら、自立するために必要なことを
思考・判断・表現できる教材の開発を目指した。
本研究では、経済生活領域におけるプロトタイプのシナリオ型 e ラーニング教材を試作
し、開発方法のモデルを作成した上で、住生活領域におけるシナリオ型 e ラーニング教材
を開発した。形成的評価を実施して、改良を加えた教材を使って授業を行った。シナリオ
型 e ラーニング教材の効果を確かめるために、シナリオ型 e ラーニング教材を用いた家庭
基礎2クラスと、シナリオなしの e ラーニング教材を用いた家庭総合2クラスの成果物の
評価を比較し、2回実施したアンケートの結果を分析した。
本研究の成果は、シナリオ型 e ラーニング教材を導入することで、現実的な文脈のシナ
リオのある教材に、個人のペースで取り組ませることができ、他者と協働する課題も設定
することができたことである。また、成果物の評価から、事前に設定した学習目標に到達できた生徒がほとんどであったことが分かり、シナリオ型 e ラーニング教材への取り組み
を通して、課題を解決する力を向上させることができた。さらに、観点別評価にも対応で
きる教材であることが分かったことも成果である。
しかし、アンケート結果の分析から、今回実施したシナリオ型 e ラーニング教材と、シ
ナリオなしの e ラーニング教材は、ともに一人暮らしへの自信やイメージの向上にはつな
がらなかったことが分かった。一人暮らしは、自立のうち、生活的自立や経済的自立に関
係する。高校生が自分の生活と重ね合わせ、自立をイメージできるようなシナリオ型 e ラ
ーニング教材に改良していくことが今後の課題である。
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森本秀樹(2023)災害初期対応アクション・カード活用のための GBS 理論に基づくトレーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
災害発生時に災害拠点病院の夜間管理看護師と救命救急センター看護師は、病院災害対策本部が設置されるまでの間、病院対応方針を含めた初期対応を遂行する必要がある。非日 常業務への対応力向上を目的に災害訓練は効果的であるが、全ての看護師が均一に経験は できない。その災害訓練では行動指針として既存事業継続計画(BCP)やアクション・カー ドを活用することが望ましいが、その活用と検証を含めた訓練が実施できていない。そのた め、自らその存在を確認する機会もない。さらに、アクション・カードが災害種別や対応時 期別ではなかったため、本研究では設定は地震災害とし、病院災害対策本部が設置されるま での初期対応の行動と判断を促すアクション・カードを開発した。全ての看護師が開発した アクション・カードを活用する機会を持つために、シナリオを通した失敗から学びを得る GBS 理論に基づくシナリオ型トレーング教材を開発することが望ましいと考えられた。
本研究では、夜間管理看護師、救命救急センター看護師が、地震災害発生から病院災害対 策本部が設置されるまでの初期対応に、アクション・カードが効果的に活用できるシナリオ 型トレーニング教材を開発し、学習到達度から活用熟達度と学習効果の検証を目的とした。
アクション・カードは、災害初期対応の手順分析図を基に作成した。教材は ID 第一原理 を援用し、パッケージした。評価は教材学習修了後にアンケート調査を行い単純集計した。 結果はアクション・カードの所在が知り、活用しながらの教材学習が達成できた。興味、 やりがい、満足感は全て高評価であった。アクション・カードを活用し判断と支援を行うこ とは中評価であった。これは教材学習から危機感を感じ、自信の低下が影響していた。一方で、学習への動機づけや災害初期対応のレディネス形成に寄与できたと示唆された。
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山本菜穂子(2023)個別化教授システムモデルに基づく授業を運用するための プロクターのスキル養成 − 専門学校における情報リテラシー科目の実践 −.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
専門学校では、現場で即戦力になる人材を育てることを目的とした職業教育が行われている。 専門学校では実習を中心とした対面授業が重視されており、コロナ禍の遠隔教育で得た知見を 活かしつつも対面授業の改善の必要性が増している。
本研究は、専門学校における実習系情報リテラシー科目の対面授業が実践の場である。情報 リテラシー科目では、個人のそれまでの経験などにより学習前のレベルが様々で、一斉授業内で 個別対応する時間を十分に確保できず、一斉授業で完全習得を保証することは難しかった。
一斉授業を使い完全習得学習を指向したモデルに、個別化教授システム(PSI)モデルがある。 PSI はプロクターと呼ばれる指導役からの支援を通して、学習者が自己ペースで学習内容を完全 に習得することを目指したモデルである。本研究では現状の授業に PSI モデルを援用した改善を 行い、PSI モデルに基づく授業を運用するためのプロクターのスキルを養成することを目的とする。
本論文の構成は次の通りである。
第 1 章は、研究の背景と実践現場での課題をまとめ、PSI 授業実践に関する先行研究を調査 し、本研究の目的を示した。
第 2 章では、PSI モデルに基づく授業に必要な要素の設計を行った。本研究で設計する PSI モ デルに基づく授業を担当する講師は、自社のラーニング マネージャー(以下 LM)である。既存の LM に、「学習者への支援」に必要なプロクターの役割を期待したが、LM との面談を通して十分な プロクターの役割を果たしていないことがわかった。今までの社内研修では、学習者に対する振 る舞いについてはほとんど扱ってこなかった。そのため、学習者を支援するプロクターのスキル養 成をゴールとする新たな研修を開発することにした。
第 3 章では、プロクターのスキル養成のための研修開発を行った。プロクターの役割に対応す るようプロクターに必要なスキルを定め、業務上設定できる時間の範囲で研修可能なスキルを選 んで研修を実施することにした。
第 4 章では、PSI モデルに基づく授業実践の結果をまとめた。3校4クラスで実践した結果を分 析し、一定の学習効果を確認できた。次に RQ を検証するため、PSI 授業を担当した LM7 名にイ ンタビューした結果を分析した。その結果、LM は本研究で開発した研修で、プロクターの役割が PSI 授業の特徴とどう関連するかを理解し、研修で養成したスキル「授業中に質問しやすい雰囲 気を作ることができる」と「授業結果や気づきをチームに報告し共有できる」を実行し、授業でプロ クターの役割を果たせたことが確認できた。
第 5 章では、本研究で得られた成果や今後の課題をまとめ、本論文の結論とした。
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濵田佳奈子(2023)企業選択支援のためのワークシート開発と 個別カウンセリングを通した自己効力感の強化 ―大学生の就職活動支援講座に着目して―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
就職活動生にとって,自分自身で受験企業を選択することは,自律的なキャリア形成を 行う上でも,就職後のミスマッチや早期離職を防止する上でも重要である.しかし,筆者 が担当している正課外の就職活動支援講座に参加する大学生の多くが,志望企業を決める ことができず,「就活がうまくいくかわからない」,「内定をもらえるのだろうか」といっ た不安をもち,就職活動への意欲低下が低下している.
これまで大学 3 年生向けの就職活動支援講座では,志望企業が決まっている前提で,応募 書類の書き方や面接対策といった就職活動の実践的な対策を指導する内容を行っており, 受験企業の選択に悩む学生への支援や課題解決のための教育的介入ができていなかった. また,進路選択において自己効力感の重要性がさまざまな先行研究で示唆されている中で, 「やってみよう」「うまくいくだろう」といった自己効力感を持たせ,自ら進んで企業選択 を行えるようなアプローチを行っていなかった.
そこで,企業選択ができないという問題解決のために,特性因子理論に基づいた授業プロ セスを構成した.特性因子理論とは,その人を構成する特性(スキル,能力,性格,価値観 等)と,その職業の条件(仕事内容や仕事に必要な要件)を上手くマッチングさせることが 重要であるというキャリア理論の一つである.
学習活動では,職業選択研究の一つである特性因子理論の自己理解・職業理解・両者の マッチングという 3 要素を実践し,それらを 3 回(3 社分)練習することで,自己理解や 職業理解をふまえた受験企業を挙げ,自己と企業のマッチングを言語化できることを目指 した.また,講座終了後や就職活動開始後も一人でマッチングを行えるようにするため に,特性因子理論の 3 要素の項目と,それぞれの関係性を整理,明確にするためのワーク シートを開発し,学習活動に用いた.さらに,職業選択をしたことのない学生が,自己と 職業や企業のマッチングに対して合理的な推論を行い,自信を持って企業選択できるよう に,自己効力感を高めるアプローチとして,全 12 回の講座の中盤に,個別カウンセリン グを設定した.
本研究では,筆者が担当する大学 3 年生対象の就職活動支援講座において,これら設 計・開発した講座を実践した結果から,講座やワークシート,講座中盤での個別カウンセ リングによる企業選択支援への有効性を示すことができた.また,講座中盤の個別カウン セリングが自己効力感向上を促し,自信を持って企業選択ができるようになることが示唆 されたことから,企業選択への支援,指導方法の一つの方向性も示すことができた.
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外山隆一(2023)企業内実践コミュニティの「初期設計支援ツール」プロトタイプの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
急激な環境変化にタイムリーに適応するため、企業において実践コミュニティ (Community of practice, CoP)を活用した学習が着目されている。
権藤、合田(2013)は、実践コミュニティの企画テンプレートを開発したが、コミュニ ティの設計を支援するものの、実際の運用に必要な部分まではカバーされておらず、その細 部設計は、コミュニティを運用する個人の能力に委ねられていた。
そこで本研究では、実践コミュニティの細部設計を、個人の能力によらず安定して行うた め、初期設計支援ツール(プロトタイプ)を開発し、その効果を検証することとした。
本研究では、実践コミュニティは、その活動を通じてメンバー共通の学習目標を達成する もと捉え、ID モデルのうち、ガニェの学習成果分類とメーガーの 3 つの質問を応用して、 初期設計支援ツールを開発している。
初期設計支援ツールは、ツール1「学びのゴールと実現方法の明確化」、ツール2「学び の実現方法の精緻化」、ツール3「その他細部の設計」の3つで構成されており、ツール1 ⇒2⇒3と順に使うことで、設計が精緻化される。
これらの初期設計支援ツールの有効性を確認する為に、形成的評価を行った。 形成的評価は計 2 回行い、それぞれの回で協力者 2 名ずつ、計 4 名に対し実施した。 協力者は筆者が所属する企業の人事部または教育部門に所属し、コミュニティの運営経験
のあるメンバーを選択した。(コミュニティ運営経験 2 年=1 名、1 年=2 名、1 か月=1 名)
評価方法は、2種類の仮想コミュニティ案を作成し、それらに対して協力者に初期設計支 援ツールを用いた場合、用いない場合のそれぞれについて、実践コミュニティの初期設計を 行ってもらった。そしてそれらの設計結果と、あらかじめ実践コミュニティのエキスパート により設計した結果とを比較して、その一致率によって有効性の評価を行った。
その結果、形成的評価 1 回目では 2 名中 1 名において、エキスパートとの設計結果との 一致率が向上した。{38.5%⇒84.6%(+46.1%)、55.6%⇒55.6%(0%)}
さらに形成的評価 1 回目の結果を踏まえて修正を施した初期設計支援ツールを用いて、形 成的評価 2 回目を行ったところ、2 名中 2 名において、エキスパートとの設計結果との一致 率が向上した。{0%⇒69.2%(+69.2%)、11.1%⇒88.9%(+77.8%)}
今回形成的評価の 1 回目で効果が確認できなかった協力者 1 名は、コミュニティ事務歴 1 か月ほどの初心者であった。本初期設計支援ツールを活用するメンバーには、事前にツール の使い方の基本的なトレーニングやコミュニティに関する基礎知識を教育すると、より効果 が向上する可能性がある。
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田嶋 晶子(2023)GBS理論に基づく「旅行の文脈で学ぶ日本文化学習コース」の設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
本研究は, スイスの語学学校における学習者を対象に, 現在, 旅行の日本語コースとし て存在するコースを, 旅行の文脈を残しながら日本文化を中心に学ぶコースへと改善, 提 案するものである. 短期集中型の旅行の日本語コースには旅行に特化した教科書がなく, 各教師がそれぞれカリキュラムを設計するため, 学習目標や評価がさまざまである. ゆえ に, 一定の学習効果や魅力あるコースとして提供できていない.
そこで, 本コースをインストラクショナルデザインの知見に沿って設計し, 学習の効 果, 効率, 魅力をあげる改善に取り組んだ. 本研究では教科書がないことへの対応とし て, Moodleを利用してeラーニング教材を設計・開発した. 主教材としたのはGBS理論 (Goal-Based Scenarios Theory)を使用したストーリー型教材である. ストーリー型教 材を用いて学習者に日本旅行を疑似体験させることで, 学習の魅力をあげる. ストーリー のなかで問題提起された文化的事象を先行させて学ぶ形式となっている. また, ストーリ ー型教材を用いることでインパクトを与え, 学習内容が想起されやすくなるようにして学 習効果をあげることを試みた. 本コースは全7回で, 第2回から第6回はeラーニングで の事前学習を基本とし, Moodleで課題をしてから授業に臨むというブレンド型コースにし た. オンライン同期セッションでの授業では, 事前課題で疑問が解消しなかったことにつ いて取り上げて話すことや, 各回で取りあげた場面で使用される日本語について協働で会 話や表現を考える活動を取り入れた. さらに, コースの最後にはGBS理論の使命に沿って 日本旅行で失敗しないためのヒント等が完成し, 実際の旅行に役立てられる成果物になる ように設計した.
コース全体の設計とeラーニング教材作成後, ID専門家2名と日本語教育専門家2名の 協力を得てコース全体や教材が妥当であるか形成的評価を実施した. その後, スイス人学 習者6名にコースや教材の効果を確かめるため小集団評価を実施した.
小集団評価の結果から, 主教材としたストーリー型教材だけでは中程度の学習効果とな り, ストーリー型教材と課題, オンライン授業への参加, 振り返り等を組み合わせた学習 では高度な学習効果をあげられることが示唆された. また, ストーリー型教材による疑似 体験は, 学習の魅力を向上させられることが示唆された.
今後の課題としては, さらなる改善を経て学習者が確実に学習内容を習得し, 自ら興味 をもって取り組めるコースにすることである. 最終的には勤務校で教材を共有することで 勤務校の課題解決に寄与することを目指す.
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小野晃裕(2023)管理職のための 1on1 ミーティングジョブエイドの開発 プランナーとサイドキックの併用で高い研修効果を目指して.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
企業をはじめとした様々な組織内で 1on1 ミーティングと呼ばれる面談が行われるようになってきた。
これは効果的に人材育成することを目的に管理職である上司と部下の間で行われているものである。 関連したテーマの研修サービスを提供する業者も増えており、筆者が現在所属している企業内にお いても数年前より外部業者による研修を提供してきた。しかしながら一定の割合でそのスキルを身に着 けられない層がある。他社においても一定の割合でこれがうまくできず、機能しないという声を複数の研
修提供業者から耳にしていた。 これには以下の2つが原因ではないかと考えられた。
1)研修で取り扱うテーマが課題を解決するための内容と合致していないのではないか 2)研修方法が管理職にとって効果的にスキルを身に着けるアプローチになっていないのではないか
先行研究において 1on1 ミーティングの構造や一部スキルについては報告されている。しかし具体的 な面談プロセスや面談の各ステップで必要なスキルについて特定された報告はない。また面談の質を向 上させるために研究者が直接的に介入し、効果を測定した研究事例も報告がない。
そこで本研究では、1on1 ミーティングの全体像や面談プロセス、各ステップで必要なスキルを明らか にし、その上でこれまでに実施してきた研修内容、研修方法は適切だったのかを検証する。
自組織内の管理職へのアンケート結果から、部下の現状分析を行い、目標を立てさせ、現状と目 標の間にあるギャップを埋める際に使用する質問スキルがうまく使えていないことがわかった。そこで特に 質問をテーマにしたジョブエイドの開発を行った。
ジョブエイドは SME、ID 専門家によるレビューとハイパフォーマーの上司によるレビューを受けて妥当 性、有効性があるとの評価を得た。その後、これまでに研修を受けてきたが社内サーベイのスコア結果 からスキルが身に着いていないと考えられる上司に実際の面談でこれを使用してもらった。
ジョブエイドを使用した 1on1 ミーティングを評価した結果、当初の目的通り、部下の日常業務の 課題に対して気づきを与える質問を投げかける支援に有効であることが明らかになった。
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川上亮子(2023)Can-do チェックリストを使った独習と対面学習の設計と開発 ―コロンビアの日本語教育におけるストラテジー能力の修得を目的としてー.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
日本語で会話ができるよう日本語を長年学習しているが、実際に会話となると会話の目標 を達成せずに諦めてしまう学生が多い。一方、学習期間が短くとも自分の持っている実力以 上の力を発揮し、会話の目標を達成する学生もいる。理由はいくつかあるであろうが、両者 の顕著な違いは、既習の単語や文法等の知識ではなく、それらを活用するストラテジー能力 不足だと考える。ストラテジー能力とは、会話の問題を修復するための単なるテクニックで はなく、コミュニケーションにおける課題を遂行するため、学習者の様々な知的能力資源を 使用し、バランスをとり、技能を活性化し、手順を決めるための手段であり、コミュニケー ション能力の基幹である。また、本稿でのコミュニケーションとは、情報伝達のみではなく、 双方向性のある、非言語コミュニケーションも含んだ感情共有、意思疎通や相互理解のため に行われる営みのことである。これまで、ストラテジー能力については、学習者が日本語の 会話で使用するストラテジー能力の種類とその効果についての研究が主要であった。スト ラテジー能力の学習については、取り上げられているも、ストラテジー能力をコミュニケー ション能力の基幹としている研究の例はない。
そこで本研究では、Can-do チェックリストを活用したストラテジー能力の修得を目的と した独習と対面学習の設計と開発を行った。 コロンビアの日本語学習者を対象として、既存の第一言語のストラテジー能力と日本語使 用時のストラテジー能力を比較。第一言語で既存している技能は、日本語でもできるよう、 両言語で使用できないストラテジー能力については、両方で使用できるよう教材を鈴木 (1988)の 3 段階モデルを使って開発。
いくつか課題はあるものの、多くの学習者が知的能力資源を使用し、バランスをとり、技 能を活性化し、手順を決めるための手段として学習したストラテジー能力を両言語で使用 できると回答。コミュニケーション能力の基幹となるストラテジー能力の学習のためのチ ェックリストの開発を行う。
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ストレスレ梓(2023)継承日本語学習児の自律的漢字学習に繋げる思考シス テムの育成 -プログラミング・デジタルスケッチブックを使用した授業の提案-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
本研究の目的は、日本語を継承語として学ぶ子ども(JHL児)の漢字教授について の提案である。継承語は、幼少時に第一言語だったものが社会生活の広がりによって 優勢でなくなった言語で母語(国語)とも外国語とも異なるが、継承日本語教育の歴 史は浅く、学習者の実態にあった教授法・評価法・教材の開発が急務となっている。 本稿には、JHL児が自らの意欲と目標を自覚した自律的な漢字学習者になるための思 考シス テムの育成を目指し、インス トラクショナル・デザインの手法で設計、実践し た授業成果をまとめた。 序論として、第1章で研究の概要を述べる。第2章では、先行研究の分析と問題提 起を行う。国語教育・日本語教育における漢字教授法や教材研究を収集し、それらを 継承日本語教育に転用することによって起こる問題を検討した。 本論では、第3章で介入授業開始前の設計を、第4章で結果と考察を述べる。第3 章では学習者分析と介入授業前の漢字教授分析から問題点を整理し、問題解決に向け た学習目標の設定および授業設計を検討した。問題点の整理と目標設定には、「漢字 学力の構造」を使用した。「漢字学力の構造」はマルザーノの学習目標の新分類体系 を参考に、冨安によって作成されたものである。本研究では、長期的自律的に漢字を 学んだり使ったりする際に必要な力を、「思考シス テムの処理」の「自律シス テム」 および「メタ認知シス テム」の2つであると仮定し、その育成を目指した。授業デザ インに際し、ガニェの学習成果の5分類とマルザーノを比較分析し「態度」が「自律 シス テム」、「認知的方略」が「メタ認知シス テム」にあたるとして、課題分析を行 なっている。授業実践を経た第4章では、授業前後のアンケート・プレゼンテーショ ン・インタビューそして作品のデータから、学習者の自律シス テムとメタ認知シス テ ムを分析した。 結論として、第5章で2つの学習目標の達成度を述べる。授業前後の変化比較から 得た結論は、進んで日本語・漢字学習の継続を選択する態度は全員が獲得(または維 持)できたが、自分の学習をメタ認知し、現実的な目標設計と到達手段を考える認知 的方略の獲得には個人差が大きいということである。プログラミング・デジタルス ケッチブックアプリSpringin’を使った作品作りの効果としては、保護者介入の減少、 相互コメントによる作品のブラッシュアップ、社会的・文脈的な漢字学習がある。最 後に、残された課題と今後の展望をまとめた。
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馬塲友子(2023)低頻度高リスク疾患・症状の看護実践のジョブエイドおよび GBS(Goal-Based Scenarios)に基づく研修の開発
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
救急外来では患者の状態に合わせた迅速な対応が求められる。そのようななか、二次救急病院において 救急医の数は少なく、看護師も必ずしも救急に長けている看護師ばかりが勤務しているわけではない。 そのため、来院頻度が少ない疾患に関しては以前対応した経験を思い出しながら、あるいは手探りで対 応していることもある。その結果、生命に危険を及ぼす疾患や症状の患者に対して自信がない中で看護 を提供している事態が懸念される。そこで救急看護師に対して来院頻度は低いが生命のリスクは高い疾 患や症状の患者の看護を行う際のパフォーマンスが向上できるような取り組みをしたいと考えた。現状 では、どの病院にも看護手順書や疾患の手順書などは存在しているが、大多数は文字が多いため、一刻を 争う救急現場では活用されないことが多い。そのような状況下でパフォーマンスが向上できるようにジ ョブエイドを作成し活用してもらうことで、看護師の決断を支援し助言し導くことで患者の対応に自信 が持てるように支援したいと考えた。また、来院頻度が低い疾患はジョブエイドの作成だけではそれを 活用するに至ることが難しいと考え、パフォーマンス支援システムを参考に GBS 理論に基づいたシナリ オ研修を開発しセット化することとした。
低頻度高リスク疾患・症状に対して、今回は低体温症の看護実践のジョブエイドを作成した。また、シ ナリオ研修は、実際の看護場面で遭遇するようなストーリーとして真正性を重視して作成した。シナリ オは GBS(Goal-Based Scenarios)理論に基づきゴールに向けて学習者自身が看護実践の行動を選択 しながら進められるような学習スタイルとした。ストーリーに関しては3パターン用意し、重症度に応 じた対応ができるように工夫した。そのようなシナリオ研修の中で、選択肢で判断に迷う時などにジョ ブエイドを活用してもらい使用方法を体感してもらった。学習者全員がジョブエイドは稀な来院でも活 用できると回答した。また、学習者の 80%が「自信がついた」「やや自信がついた」と回答しており失敗 から繰り返し学習しながら知識を深めることができたと考えられた。さらにシナリオに対する取り組み を要した時間に関しては、重症や最重症患者の対応でもジョブエイドを活用しながら軽症患者よりも短 時間で看護実践を選択できておりジョブエイドの活用が有用であったことが示唆された。
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天野裕香(2023)「経験学習に基づいた中堅看護師 ACP ファシリテーター育成研修の開発」
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
Advance Care Planning(以下、ACP とする)は、自分の価値や意思を踏まえ、医療者と患者 家族間で話し合い今後の治療・ケア計画を決めるものである(厚生労働省 2018)。ACP の遂 行にあたりファシリテーターとして介入する中堅看護師には、
研修はいくつか行われているが、ACP におけるマネジメントを行うのに必要な ファシリテーション・スキルを育成する研修報告はない。現状の ACP 実践研修の成果は「知識 の向上」「自信につながった」などで評価される一方、「知識にはつながったがすぐには実践で きない」と臨床実践での転用が困難な状況である。
ACP は、対話の繰り返しであり社会的構成主義に位置付けられる。その特性から相互学習 の研修がほとんどであり、外部リソースで行われている。ACP ファシリテーターの研修は、座 学・事例検討とロールプレイが中心で設計される。既存研修を Kolb の経験学習モデルで検 証すると、具体的経験と内省における特に「描写」「外化」(中原 2021)が不足しており省察が 不十分であることや抽象的概念化の支援がないことがわかった。経験学習は、具体的経験だ けでは、職場での能力向上には結び付かず、内省と概念化が重要であると言われており(池 尻ら 2022)実践への活用に至っていない要因であることが示唆される。
ACP ファシリテーターに必要な前提知識を完全習得させる学習支援と経験学習に基づい た内省的観察と抽象的概念化の学習支援を強化することで、OJT に必要な知識とスキルを習 得することを目指した研修の開発を行う。開発した研修の専門家レビューでは、IDer の専門家 レビューを受け学習目標と研修評価の方法の改善を行った。また、ACP ファシリテーター経験 を多く持つ専門家レビューでは、現場で ACP の実施においての看護師に求められるニーズと 学習目標が概ね合致しており、ロールプレイシナリオは、現場でも汎用性があることを受けた が、研修時間や研修内容の難易度が高いとの懸念があった。形成的評価では、個人学習と 集合学習ともに1対1の形成的評価を行った。個人学習では、概ね問題なく取り組めたが、事 例問題には正解がないため自己での答え合わせに不安があった。集合研修では、前提テスト で想定より大幅に時間を要したことや話し合いや個人ワークの時間が足りず中途半端になっ てしまい、概念化のワークシートはほとんど記載するまでに至らなかったなどの課題が上がっ た。ロールプレイにおいては、実践をビデオでとり自分のファシリテーターの姿を「描写」するこ とができたとの意見が多く、リフレクション後にもう 1 度実施する機会があることでより深い学び につながるのではと、受講生からの意見があった。
本研修は、ACP ファシリテーターとしての必要な知識と業務スキルを習得するのに有用であ り、ロールプレイの実践を描写することで効果的なリフレクションに繋がった。課題は、研修時
の合意形成と協調的に対立を解消させ、患者にとって最善の医療・ケアを導く、高度な能力を
患者・家族らの意思と医療者間
必要であり、人材育成が必要である。
ACP に関する間の再構成と前提テストと事前学習の相関性についてである。また、評価方法と行動目標の 整合性を上げることも重要な課題である。
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菅広信(2023)ジョブエイドを組み込んだ人工呼吸器のアラーム設定学習プログラムの開発
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
2019 年 12 月からの新型コロナウィルスのパンデミックの影響により人工呼吸器や
ECMO(体外式膜型人工肺)などの治療法が注目された。生命を維持する機能をもった人 工呼吸器は、同時に管理する側に高度な知識と実践能力が求められ、医療事故を防止する 必要もある。その際、人工呼吸器を使用している患者の引継ぎの際は、人工呼吸器保守点 検チェックリストを用いて、問題がないことを確認してから、自分の勤務を始めることが 鉄則となっている。
この人工呼吸器保守点検チェックリストは目視で確認するような部分と、換気条件や換 気状態など、見るだけでは正しいかどうか分からない部分がある。一方、見るだけでは正 しいかどうか分からない部分は、換気条件の中の「モード」や「アラーム設定」が挙げら れる。このアラーム項目は、患者の症例によって、正しいアラーム設定が変化する。例え ば、発熱や疾患の特徴により、呼吸回数が増加する場合、それ以上悪化したときに看護師 がアラームにより気付くことができるように数値を設定する必要がある。したがって、チ ェックリストでデフォルトの設定値を確認できても、患者の症例の特徴に合わせたモード やアラーム設定は経験や学習が必要であり、新人看護師や集中治療室に異動したばかりの 看護師には難しいことが、部署の教育担当者及び、リスクマネジメント委員、そして新人 看護師へのニーズ分析で明らかになった。
本研究はこの「症例に合ったアラーム設定を行うことができる能力」を新人看護師・集 中治療室に異動したての看護師でも行えるようにジョブエイドを開発する。この能力は経 験上、就職後 24 ヶ月〜36 ヶ月以上実践して得られる能力であり、難しい能力である。こ の能力をサポートするジョブエイドを作る際には、症例とアラーム設定に、ある程度のパ ターンが存在し「症例に合ったアラーム設定を行うことができる」ようになると予測され るが、ジョブエイドを使う上で疑問となる医療用語が存在し、これらの学習も行う必要が 生じる。したがって、ジョブエイドを組み込んだ、人工呼吸器のアラーム設定学習プログ ラム(ジョブエイドを組み込んだアプリケーションを含む)を開発し、その効果を検証し た。
1 対 1 評価の結果、学習者はジョブエイドを使いながら「症例にあったアラーム設定を 行う」ことができた。しかし、その目標を達成するまでに必要な時間が多くかかること で、ジョブエイドとしての効率性、学習者が、自分の力で達成したと思えず、満足感が得 られていないことが課題として挙げられた。
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月足由香(2023)企業内教育における実務スキル育成を支援する学習プログラムの開発―対話テキストを用いた構造化ワークによる商談スキルの習得―
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
詳細はありません。
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坂本昌宏(2023)地方自治体職員の業務関連性に着目したDX人材育成eラーニングの開発
.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2022年度提出修士論文
要旨(日本語)
ネットワークの高速化やコンピュータの処理能力の向上、そしてスマートデバイスの浸
透による社会の変革を受けて、2016 年 1 月に狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society
2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会モデルとして、
Society5.0 を目指すことが閣議決定された。
これにより社会全体で「DX(= Digital Transformation)」の推進が課題とされ、社会機構
のデジタル化を推進することが強く求められることとなった。
しかし、従前は住民基本台帳カードと呼ばれる部分的なデジタル化は推進されていたも
のの、地方自治体の2~3年で異動を行うジェネラリスト型人事制度と、それに基づき情報
システムは外部委託をするという基本的な方針により、地方自治体において特にデジタル
専門人材という枠で職員を養成することはされておらず、単に「情報部門の担当者」として
「委託先事業者との調整を行う職員」としての能力しか求められてこなかったことから、現
在 DX 推進を担当する「DX人材不足」が課題としてクローズアップされている。
そして、地方自治体にとって、DX推進及びデジタル人材確保はここ数年間対応が必要な
課題ではなく、Society5.0 時代の地域を支える存在となる全ての地方自治体にとって、継続
的に取り組むべき課題であることから、有効なDX人材育成の手法の必要性は高まってい
るが、これといったものが提供されておらず、全国的に試行錯誤しているのが現状である。
ところで、過去自組織で委託により実施した情報セキュリティ及び情報化において、民間
事業者を対象とした教材をそのまま実施した場合と、特に自治体業務での事例を説明しそ
れを取り入れて実施した場合について理解度の差が生じた。この差を生む要因を考察した
ところ、民間事業者のデジタル化と地方自治体のそれを比較し、それぞれの職員における
「情報化経験」に大きな開きがあるのではないかと考えた。
この結果を踏まえ、地方自治体職員の業務関連性に着目した e ラーニングコースを作
成し、広島市・広島広域都市圏職員に提供。その受講データを元に改善を重ねた結果、学習
目標である「受講者のDX推進に関する意識を改善する」ことについて全ての受講者から肯
定的な回答を得られるコースの作成に成功した。また、そもそもデジタルは難しいものだと
思っている地方公務員から「とっつきやすさ」に関する評価が、肯定的・否定的に二分され
ていた教材から全ての受講者から肯定的な評価を得るものへと改善することに成功した。
また、これらのとりくみの研修効果について、カークパトリックの4段階評価を用いて
測定したところ、第3段階に到達しているといえる、つまり十分な研修効果を得るコースを
作成できたことも確認した。
一方で課題として、コース完走者を対象とした形成的評価による改善であったことか
ら、離脱者への対応が取れていないこと。その前提となるスキルサーベイが必要であること
が判明した。
今後も本研究の成果をもとに、判明した課題の解決を図るとともに、DX の各分野に関し
地方自治体の業務関連性に注目した「とっつきやすい」e ラーニングコースを順次作成し、
改善を重ねることで「学習者中心の DX 人材育成プログラム」を作成する手法を確立したい
と考えている。
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川島孝太(2022)看護管理者のフィードバックを支援するジョブエイドと行動特性に応じた思考と対応を習得するeラーニング教材の開発~多様な部下の問題行動の修正に焦点をあてて~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
看護管理者の役割にはスタッフ看護師の人材育成があり、一般的に目標管理面接や個別
面談を教育機会としている。それらは同時に問題行動修正の機会となるが、そこで用いられ
る指導法は看護管理者個々の自学や経験に基づいていることが多い。そのため、指導対象と
なるスタッフ看護師背景が多様化する中、個人的な経験やスキルに基づくだけの指導では
問題行動が修正されず、看護管理者はスタッフ看護師の個別指導に難渋している現状があ
る。
一方、効果的な指導法の一つであるフィードバック技法に関する研究は行われているが、
看護領域の特性に対応したフィードバック技法の教育プログラムに関する研究はない。
そこで、フィードバック技法に基づいて必要な事前準備を行い、行動プロセス・マインド
を整えることを補助するジョブエイドとして、基本モデルに沿ったチェックリストを作成
した。さらに部下看護師の問題行動修正と個人行動特性に応じた思考と対応を練習するた
めのノベルゲーム式のeラーニング教材を開発した。
ノベルゲーム式 e ラーニング教材の特徴として、シナリオの差し替えにより事前・事後確
認テストや練習教材に転用できるように設計し、プロトタイプを作成し、その妥当性を検証
した。
その結果、プロトタイプにおけるシナリオの整合性・妥当性、ノベルゲームの妥当性、チ
ェックリストの援用性が証明できた。つまり、同形式のノベルゲームに多様なシナリオを差
し替えることにより、練習教材やテストとして利用できるため、本教材は基本的フィードバ
ック技法と個人行動特性に応じた思考と対応が習得できるものと考えられた。
今後は教材全体を完成させ、シナリオ作成のシステム化やカテゴリー化、問題行動修正以
外の医療安全や教育指導領域への拡大によって、看護管理者のためのナレッジバンクとし
て発展させていく。
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三枝澄絵(2022)PLE30 を評価指標および行動指標とした肯定的学習環境構築のプロセス設計と実践―活動支援主体の段階的委譲―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
企業の人財育成は、個々人のパフォーマンスを向上させ、経営に資することが目的
である。育成現場においては、研修を始めとした学びを職場で活かして行動変容につ
なげ、学習効果を高めていくことが期待されるが、その実現には職場の肯定的な学習
環境づくりが重要である。昨今、学習環境として職場が持つ可能性への関心の高まり
はある一方、学習環境を自組織が自ら評価する指標や、その改善サイクルを職場が
主体で実践する方法によって実効力を上げた報告はあまり見られない。
本研究では「職場が肯定的学習環境かどうかを見極めることができる 30 の指標(以
下、PLE30)」を評価指標および行動指標として用いて、段階的に育成担当者から当
該職場の上司に活動支援を委譲するプロセスの設計と実践を行い、自律的な肯定的
学習環境の構築を目指すものである。
自律的な肯定的学習環境を構築するために、対象期間を 2 つのフェーズに分けて
プロセスを設計した。フェーズ 1 は、PLE30 を評価指標および行動指標とし、職場に
学習基盤が根づくように育成担当者が主導して、人財育成のためのルーブリック(以
下、育成ルーブリック)の開発や、学習プロセスの実践を行った。フェーズ2では、フェ
ーズ1の結果を受けて、職場の上司職にある人物(以下、上司)に活動の主体を委譲
し、学習プロセスを上司が主導する方法で、自律的な肯定的学習環境の構築を図っ
た。肯定的学習環境であるかの評価は、各フェーズの前後で、PLE30 及び育成ルー
ブリックで行い、評価値の向上を確認した。
PLE30 が示す行動指標そのものを実行するだけでなく、PLE30 の背景となる考え
方の理解や実行が、肯定的学習環境構築において重要であると考え、PLE30原典を
要約して抽象度をあげたメタ概念を抽出し、その概念が職場に根付いているかをイン
タビューから確認し、肯定的学習環境が構築できていることを検証した。
実践を踏まえた改善として、実践を始める前に、当該組織が自らメタ概念を例にし
て、PLE 向上の目標を決める活動を、プロセスに追加する提案をした。この提案は、当
該組織の目的理解や意欲向上に寄与するものと考える。今後は、新プロセスを他部署
にも展開して、組織因子の違う場合の効果を検証するとともに、事例やベンチマーク
データを蓄積して、プロセスの精度・品質の向上を図ることで、企業内における学習環
境構築のひとつの方法として確立していくことが期待される。
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植草恵(2022)臨床推論・臨床判断の思考過程の習得を目指した学習支援~救急外来に配置転換を希望する看護師のレディネス形成を目指して~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
救急外来での看護実践は、少ない情報から患者の訴えの他に実際に患者の症状や経緯な
どから病態を捉え、診療にも遅れがないように予測し検査や処置の準備を行わなければな
らない。また、状態が安定化していない患者は急変しやすい。経時的に観察し患者の変化に
気づき、医師と情報を共有し、患者の状態を安定化できるように協働して診療を行うことも
重要な役割である。そこで、必要になってくる看護実践能力は、臨床推論、臨床判断である。
救急外来では、診断がつく前の段階であり症状から臨床推論を進めていく。一方で救急 ICU
での看護実践は、入院時に患者の診断がついていることがほとんどである。そのため、疾患
から病態を捉え、看護実践する。また、臨床推論には、その疾患に見られる症状や所見、そ
の疾患に特異的な症状や所見を関連付けた知識が必要となる。若手看護師は、知識が体系化
されていないことがあり、起きた事象だけ捉えて臨床判断し、エビデンスに欠けることもあ
る。これらの理由から、配置転換後の看護師は思考をシフトするまでに時間を要し、戸惑い
がある。
本研究では、救急外来に配置転換を希望している看護師を対象に、救急外来で必要な臨床
推論・臨床判断の思考過程を習得し、症状や所見に関連する知識の定着に向けた学習支援を
目的とした。
代表的な臨床推論アプローチである仮説演繹法を基に救急外来における臨床推論のプロ
セスに沿って 6 つの学習目標を設定し、プロセスを図式化した。付随する知識は、リンクを
貼り付け、学習者が必要と感じた場合に選択できるように e-learning 教材を開発した。TOTE
モデルを援用し、症例ベースのテストを作成した。学習前に事前テストを実施し、事前テス
トで提示した症例について学習し、確認テストを実施する。事後テストは、別の症例でテス
トを行い、到達点に達するまで何度でも繰り返しテストを実施するようにした。
救急 ICU 看護師 6 名に対し、小集団評価を実施した。各実施者による各学習の事前テス
ト・1 回目の事後テストの結果は、1 名のみ事後テストが事前テストより片麻痺 0.13 点、胸
痛 0.57 点評点を下回る結果となったが、その他の実施者はいずれも事前テストより 1 回目
の事後テストの方が評点を上回る結果となった。アンケート結果は、学習の難易度に対する
質問に対し、「呼吸困難」「片麻痺」に対し、難しかったと回答したものは、1 名(16.67%)、
「胸痛」難しかったと回答したものは 2 名(33.33%)であった。その他の者は、適当だっ
たと回答しており学習内容の難易度は妥当であった。「学習の深化」「学習の転移」「学習へ
の興味」「学習のやりがい」「自己効力感」「学習の有用性」に対する質問に対し、「そう思う」、
6
「とてもそう思う」のいずれかの回答であった。「満足感」「期待感」の質問は、全員が「と
てもそう思う」と回答していた。「自己効力感」だけは、「どちらともいえない」と 2 名(33.33%)
回答していた。概ね高評価の回答を得ることができた。
学習方略シートの各フェーズで学習者が振り返り、学習後の学習目標と計画を考えるこ
とができた。
配置転換前の看護師を対象に臨床推論の思考過程を学習することにより、看護師が臨床
で実践する際に救急外来看護師の思考や行動が整理でき、救急外来での実践に必要な知識
が何か個々の学習者が明確にすることができた。また、個々の学習者が不足している知識を
整理し、今後の学習目標と計画を見出すことができた。これにより、レディネス形成を促進
することも期待できる。救急外来に配置転換を希望する看護師に対し、学習の有用であるこ
とが示唆された。
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荻野禎之(2022)実験教育 TA が経験学習を通じて学生との関わり方を習得する学習環境の構築.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
高等教育機関において、ティーチング・アシスタント(TA)の活用は質の高い授業を運
営するために必要不可欠である。TA は主として大学院生が担当しており、海外の大学にお
いては業務の仕組みや育成制度が以前から構築されているが、日本では諸外国とは違う形
で独自に TA 制度が運用されてきた。早稲田大学では、通常の TA と比較してより高度な業
務を行う高度授業 TA という制度が運用されており、授業中のディスカッションのファシリ
テーションや、教員とともにチームティーチングによる指導を行っている。特に実験・実習
授業では、安全に配慮した密度の濃い授業を展開するため、担当教員と高度授業 TA に加え
て、実験室を管理する技術職員の三者が協働して授業を運営している。高度授業 TA の研修
として、制度の概要や FD の基礎に関する e ラーニングと、授業開始前に実験室にて行われ
る実験技術習得のための事前練習が用意されている。
高度授業 TA の育成の仕組みはそれぞれの部署で独自に行われているものもあるが、授業
中の学習支援として重要な学生とのコミュニケーションスキルのトレーニングの機会が十
分に設けられていない。さらに、授業中に高度授業 TA の最も近くでともに業務にあたって
いる技術職員の支援の質も一定ではないという問題もある。そこで本研究では、高度授業
TA が学生とのコミュニケーションスキルを効率的に身につけられるようにすることを目的
として、e ラーニングと対面でのディスカッションを取り入れた新しい高度授業 TA 向けの
研修を開発し、長期的な視点で高度授業 TA が経験学習によりスキルを身につけることので
きる学習環境を構築した。
まず TA 育成や企業などの組織における経験学習に関する先行研究を踏まえ、本学におけ
る高度授業 TA 育成に関する課題を分析し、その課題を解決するための本研究におけるリサ
ーチクエスチョンを設定した。リサーチクエスチョンへの解を得るため、まず高度授業 TA
が独学で学生とのコミュニケーションを学ぶための導入教材と、授業中に起こりうる、高度
授業 TA として対応しなければならない事例を含んだストーリー型教材を開発した。次に、
高度授業 TA が実際の業務において振り返りを行うためのリフレクションシートを開発し
た。また、これらの教材やツールの使用方法のマニュアルも作成した。これらの教材やツー
ルについて研究協力者の大学院生や技術職員、教育工学専門家の形成的評価を受け、内容を
修正した。
実際に高度授業 TA に教材やツールを実践してもらい、これらの効果について検証するた
め、半構造的面接を実施した。面接内容を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに
基づいて分析し、面接内容の逐語録から高度授業 TA の成長・学習に関係する概念やカテゴ
リを生成して、それらの関係性から成長・学習の仮設モデルを構築した。その結果、本研究
で開発した教材は、そこで取り扱っている内容と、高度授業 TA が過去に「教える」ことに
関する記憶を関連付けスキーマを形成することを促進し、実際の授業での業務に向けた準
備の機会となっていたこと、またリフレクションによって高度授業 TA の経験学習が促進さ
れ、次のトライアルにつなげやすくなっていたことが示された。また授業での高度授業 TA
の経験を、それ以外の「教える」ことに関連した経験と往還させて、高度授業 TA の業務で
学んだことを外化させている傾向も見られた。
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長山琢磨(2022)実践コミュニティ設計テンプレートによる継続的な学習コミュニティ運用の再設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
1. 研究でやったこと
権藤,合田(2013)による「実践コミュニティ設計テンプレート」に基づき、2020 年
9 月から実践していた大学教職員 5 名で構成される「大学教育の質保証研究会(J-QA
研究会)」を実践コミュニティに再設計した。再設計後のコミュニティでは、参加者の
経験に基づく大学設置認可申請のナレッジ生成と改訂を行った。
2. 成果
実践コミュニティ設計テンプレートの作成過程において、明文化されたコミュニティ
の目標等を議論した結果、行うべき目標・メンバー間の役割が整理され、正統な実践コ
ミュニティへの転換を行うことができた。
また、その副次的効果として「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引」の読み方
を解説するナレッジを生成し、公表することに繋がった。
再設計後のコミュニティにより、参加者がナレッジの生成と改訂を繰り返しながら成
長を実感できるような継続的なコミュニティの運用が可能となった。
3. 特徴
実践コミュニティ設計テンプレートの有用性を検証し、大学設置認可申請のナレッジ
生成と改訂を構造化した。
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吉田文子(2022)キャリアコンサルティング面談における問題把握を支援するジョブエイドの開発~初学者キャリアコンサルタントの問題把握の実践知獲得を目指して~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
キャリアコンサルタント資格は国家資格であるが、面談の質に関する客観的評価は行わ
れておらず、質的格差が指摘されている。
養成課程における学習が知識の習得に重きがおかれ、面談スキル習得のための練習時間
が十分でないことが原因の一つと考えられる。また、先行研究において、キャリアコンサ
ルティング面談の意義などの研究は見られるが、面談の質を向上させるために研究者が直
接的に介入した形で効果を測定している研究事例はまだ見られない。
そこで本研究は、初学者キャリアコンサルタントが面談においてクライアントの
①問題把握
②目標設定
③解決のための具体的方策の提案
を支援するジョブエイドの開発・評価を目的とする。
ジョブエイドは、面談中に使用する「面談メモ」、問題把握の視点を示した「面談支援
シート」、ジョブエイドを正しく使用するための使用説明書の 3 点を、キャリアコンサル
ティング理論、カウンセリング理論、インストラクショナルデザイン理論および熟練者の
実践知に基づき開発した。「面談メモ」は、システマティックアプローチのステップをジョ
ブエイドに沿って面談を行うことで、ステップごとに必要事項をヌケ・モレなく面談を展
開できる設計にした。「面談支援シート」は、クライアントの問題把握を支援する視点をツ
リー図で表現した。
ジョブエイドはキャリアコンサルティングの専門家、インストラクショナル・デザイナ
ーのレビューとキャリアコンサルタントによる試用により、妥当性と有効性があるとの評
価を得た。その後、初学者のキャリアコンサルタント 3 名が模擬面談で使用した。
ジョブエイドを使用した模擬面談を評価した結果、当初の目的通り、クライアントの問
題把握、問題解決のための目標設定、具体的な方策の提案の支援に有効であることが明ら
かになった。
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用田歩(2022)リハビリテーションにおける動機づけ介入の体系化を目指した動機づけ方略集の開発と研修設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
リハビリテーションにおいて、動機づけが患者の帰結の決定要因となり得ることが示
されており、リハビリテーションに対する患者の意欲は、治療効果を高める重要な要因
であると考えられている。しかし、臨床現場において療法士が患者への動機づけ方略を
どのように選択しているのかに関しては、療法士個々に委ねられているのが現状である。
一方、教育分野においては、学習者の動機づけを設計する枠組みモデルとして、ARCS
モデルが活用されている。
そこで、療法士のリハビリテーションにおける患者動機づけにおいて、患者の状況に合
わせて動機づけができるようになるために ARCS モデルを活用した「リハビリ動機づけ
方略集」を開発し、方略集が使えるようになる研修を設計することを本研究の目的とし
た。
動機づけ方略集の作成方法として、現役理学療法士に動機づけ方略をインタビュー調
査し、データを収集し、方略集を作成した。また、方略集以外の動機づけ支援ツールと
して「記録表」や、研修資料としての「説明書」「ペーパーペイシェント」を作成し、ID
の第一原理を用いて、研修を設計した。開発、設計した動機づけ支援ツールや研修内容
は、内容領域専門家、ID 専門家のレビューを実施することで妥当性を確認した。有用性
においては、研修対象の新人理学療法士に 1 対 1 評価を実施した。医療倫理の観点から、
開発段階の動機付け支援ツールを実際の患者に適応させることは困難であったため、本
研究では、臨床現場に近い状況を想定したペーパペイシェントを研修に事例問題で用い
ることで、動機づけ方略集の活用能力を評価した。
学習者の事前・事後アンケートの結果から、療法士の患者動機づけに対する自信が向上
したことが示唆された。また、動機づけ支援ツールとその研修を実施することで、手順
に従い患者の状況に合わせた動機づけが選択できるようになり、動機づけを体系化でき
るようになったのではないかと考える。
今回の研究限界として、動機づけ方略が各疾患や様々な病院施設に対応できるもので
あるかどうか、現場の患者に対して有効性があるものかどうかは検証できていない。今
後は、疾患や病期などの特性における動機づけを大規模調査にて明確にし、臨床現場で
患者適応することで、現場での有効性を検証していく予定である。
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栗山俊之(2022)GBS 理論に基づくエラー誘発型ロールプレイ教材の開発−失敗から学ぶ対外折衝スキル−.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
国内の大学・研究機関において、URA の体制整備が進んでいる。URA の職務は研究資
金の導入支援、研究プロジェクトの運営管理など多岐にわたり、企業、公的機関、地域社
会など多様なステークホルダーとの連携・調整を担う職務に従事している。
一方で、URA の能力開発の機会は限定的である。特に、URA の職務に必要な対外折衝
スキルを組織的に研修することが課題である。
本研究では、URA の対外折衝スキルを効果的、効率的に習得するために、実際の研究現
場で起こりうる業務場面を想定し、シナリオ型の研修教材を開発することを目的とする。
本論文の構成は次の通りである。
第 1 章は、研究の背景として、日本国内における URA の体制整備状況について概説し
た。
第 2 章は、URA 向け研修プログラムの先行事例について分析するとともに、立命館大学
の URA を対象に研修ニーズについてインタビュー調査を行い、その分析結果をまとめ
た。
第 3 章は、本研究で開発した研修プログラムの設計プロセスと、GBS 理論を応用したシ
ナリオ型の研修教材の内容を記載した。
第 4 章は、開発した研修プログラムのエキスパートレビューと形成的評価の結果を示
し、研修プログラムの改善点を分析した。
第 5 章は、本研究で得られた成果や今後の課題、将来展望についてまとめ、本論文の結
論とした。
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加藤圭太(2022)通信制高校の数学における個別化教授システム(PSI)を用いた単位修得のための包括的支援設計による面接指導の改善.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
公立通信制高校では,私立通信制高校と比較して単位修得率が低いという課題があり,公
立通信制の実践校でも約半数の生徒が必修科目「数学I」の単位を修得できていなかった。
また,対面指導の機会である「面接指導」の本来の在り方は個別指導であるが,多くの学校
は一斉授業形式をとっているという課題もある。個別指導を重視する面接指導の方法とし
て,個別化教授システム(PSI)が有効であると考え,実践校の数学Iでは,PSI を参考に
した実践に取り組んできたが,完全習得が指向されていない,出席できなかった回の学習機
会が保障されていないという課題が残されていた。
本研究では,PSI を用いて単位修得要件のレポート・面接指導・試験を自宅での自学自習
と学校での面接指導の両面から包括的に支援する設計を行い,単位修得率の向上と面接指
導の改善を目指した。2021 年度後期に半期間の試行的な実践と評価を行い,設計の改善も
行った。
2021 年 11 月に教育工学専門家による設計の形成的評価を行い,設計が教育工学の観点
から単位修得率の向上や面接指導の改善に有効であるか(または有効でありそうか)を評価
し,設計には一定の効果が期待できると評価された。評価結果から設計の改善についても検
討した。
2021 年度後期に4回の面接指導の実践を行い,改善すべき課題を整理した。実践の評価
はアンケート調査の結果,通過テストの結果,単位修得要件と単位修得率によって行い,単
位修得率の向上や面接指導の改善につながることが示唆された。アンケート調査の結果,面
接指導の出席やレポートの提出への意欲向上を図ることができたが,試験への自信があま
りつかなかったということが課題として明らかになった。また,後期の面接指導と前期の面
接指導の比較について質問した結果,「次回の出席への意欲」「レポート提出への動機づけ」
「試験への自信」の3つの項目において,後期の面接指導が前期よりも改善されたことが示
唆された。通過テストの結果については,後期最初の第5回通過テストに合格した生徒は全
体の3分の1程度と少なく,通過テストに合格できなかったことが,試験への自信につなが
らなかった要因だと考えられた。単位修得要件に関しては,レポートに関しては筆者以外の
教員と大きな差はなかったが,面接指導の出席要件を満たせなかった生徒はおらず,試験の
得点は筆者以外の教員よりも 14.1 点高い結果となった。後期開始時に単位修得が可能であ
った生徒の内,単位修得者の割合が筆者担当は 89.1%であるのに対して,筆者以外の教員
担当が 78.7%であり,筆者の方が 10.4 ポイント高い結果となった。このことから,本設計
による実践が単位修得率の向上につながることが示唆された。
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立山愛(2022)外国人児童生徒等教育における校内連携体制づくりのためのシナリオ型研修の設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
日本社会のグローバル化を背景に、公立学校に在籍する外国人児童生徒や日本語指導が必要
な日本国籍の児童生徒(以下「外国人児童生徒等」)は増加している。外国人児童生徒等教育に
あたっては、児童生徒の言語や文化的背景、家庭環境などを踏まえた受け入れ体制づくり、適切な
生活適応指導、日本語指導や教科指導等、教員に求められる内容は多岐にわたっている。そのた
め、それらを担う管理職、学級担任、日本語支援や母語支援に関わる教職員等、校内のさまざまな
立場には多様かつ専門的な役割と、担当者同士の連携が求められている。しかしながら、外国人児
童生徒等が少数で散在する地域では、どこの学校に、どのようなタイミングで転入してくるか予測
が難しく、外国人児童生徒等教育に携わることになる教員が果たすべき役割や連携に必要な知
識・スキルを習得するための教育・研修の機会は保証されておらず、転入してから手探り状態で対
応せざるを得ないという課題がある。
こうした中、文部科学省は「外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム
開発事業」を 2017 年から 3 か年計画で実施した。この事業では、外国人児童生徒等教育を担う
人材を育成するため、学校現場の実践課題の解決に必要な教員の資質・能力として「捉える力」
「育む力」「つなぐ力」「変える/変わる力」という 4 要素と実践場面が提示され、これらの力を養う
ためのモデルプログラムが開発された。しかしながら、提示された 4 要素について学ぶ研修の提供
の場やあり方は各地域や教育委員会、学校単位で開拓していかねばならない。また、4 要素の中で
も、異なる立場や担当者同士の連携した校内体制づくりに必要な「つなぐ力」は、先行研究や既存
の研修プログラムに練習できるものはなく、担当者別の研修で定着している。
そこで、本研究では、学校現場で外国人児童生徒等教育に関わる多様な立場の教員が共に参
加することができる校内研修を学びの場として設定し、現実的なシナリオに沿って連携して外国人
児童生徒等の受入れ場面に必要な「つなぐ力」を中心に学ぶ校内研修を設計・開発した。研修は、
GBS 理論(Goal-Based Scenarios Theory 行動することによって学ぶシナリオ型教材を設計
するためのインストラクションデザイン理論)を活用した。
今後、校内連携体制づくりを学ぶ効果的で効率的な研修モデルとして筆者の勤務する小学校で
実践し、その後同市内および県内の小・中学校の校内研修として普及させることで、外国人児童生
徒等教育の知識・スキル・態度を持つ教員の育成に寄与することを目指す。
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奥野将太(2022)課題分析図に基づき紙媒体とデジタル媒体を融合した改訂版ジョブエイドの設計と開発〜在宅酸素療法導入時の理学療法士の役割に着目して〜.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2021年度提出修士論文
在宅酸素療法導入時の理学療法士の役割は、患者の生活背景や身体機能を考慮して、酸素
流量やデバイス、運搬方法などを調整して、元の日常生活動作能力を再獲得することにある。
このような役割は、手順が複雑で失敗の影響が大きく、多くの情報が必要であり、導入自体
の頻度が少ないなど先行研究で報告されているジョブエイド使用条件と一致していた。そ
こで、2019 年よりジョブエイドを導入していたが、作成したジョブエイドとマニュアルは
34 枚の紙媒体となっており、ユーザビリティが低く有効に機能していない現状があった。
ジョブエイドは、パフォーマンスを支援するツールとして古くから使用されており、その有
効性は多くの研究で示されている。このパフォーマンスの支援は、遂行中の支援である「サ
イドキック」と、遂行前後の支援である「プランナー」の 2 つに分けられる。一般的なジョ
ブエイドは「サイドキック」のみで開発されている場合が多く、プランナーまで含めたジョ
ブエイドの開発の報告は少ない。そこで本研究は、課題分析図を用いてプランナーまで含め
た業務全体を網羅して支援する改訂版ジョブエイドの開発を行うことを目的とした。
開発は ADDIE モデルに従って実施した。分析では、まず課題分析図を作成した。課題分
析図は、課題分析により抽出された 72 個の課題と 5 つのゴールを概念化した。課題分析図
を基に分析した結果、既存のジョブエイドは、課題を 20 個しか支援できていなかったこと
が明らかとなった。分析結果を踏まえて改訂版ジョブエイドは、サイドキックとプランナー
に分けて、全ての課題を支援できるように設計した。また、プランナー部分は 2 次元バーコ
ードを使用してデジタル化した。開発されたジョブエイドは、形成的評価を受けて改訂して
1 対 1 評価まで実施した。1 対 1 評価では、紙面上での評価として、シミュレーションテス
トを実施して正答率は 97%、設計通りにジョブエイドを使用したかの一致率は 94%と高い
成果を示した。実際の現場での評価では、パフォーマンスチェックリストを用いて指導者が
観察によって評価した。結果は、全ての項目が指導者の「助言が必要ない」もしくは、「少
しの助言で実行できる」という回答であった。
今後は、評価対象を拡大して、より効果的でユーザビリティの高いジョブエイドへ改訂し
ていくことで、在宅酸素療法導入時の経験が少ない理学療法士でも熟達者と同じパフォー
マンスを発揮できる人材の育成に寄与する研究に発展させたい。
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浅井佑也(2021)大学教職課程事務初任者のための学習支援プログラムの開発-ジョブエイドと e ラーニングによる支援-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
詳細はありません。
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川村美好(2021)設計協力スタッフを対象とした業務遂行能力にばらつきのある場合の TOTE モデルによる学習支援ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
近年の建築設計業界では、深刻な人手不足のため社外の協力スタッフ(派遣社員)の 力に頼らざるを得ない状況である。特に、構造設計に関する部門の図面作成要員の協力スタッフ依存率は高い。その協力スタッフの全体数自体も少ないため、企業は一度採用したスタッフを長期で雇用し続ける傾向にあり、社員との協働も重要になる(経済産業省 2019 年版ものづくり白書)。これらのことから、協力スタッフ向けの教育の必要性があると考えている。
協力スタッフが担う主な業務は、コンピュータ設計支援ソフト(CAD)を用いた図面の作 成で、その中で設計者の下書きの指示通りに図面を作成する人を CAD トレーサーと呼ぶ。 通常、設計業務を行う協力スタッフは、CAD トレーサーかつ構造図を作成した事があるという前提で業務契約がされているが、実際にはその業務遂行能力にはある程度ばらつきが あるといわれる。建築設計会社X(以下X社)における業務を依頼する立場の社員数名によると、依頼の説明にかかる時間、必要な資料の量、図面の仕上がりなどに差(ばらつき)があるという。その理由として、一般的な経験やスキルの差だけではなく、企業間で設計手 順や構造形式の違いがあることもその一因と考えられる。
協力スタッフの教育は、一般的に業務を遂行する中(OJT)で補完する場合が多いと思われるが、それでは、個々の才能やモチベーションに頼るところが大きく、社員の業務負担 も増えることが考えられる。また、協力スタッフには社員教育のような研修による知識の積み重ねの機会は少ない。
本研究では、先に実施した協力スタッフと協働する社員に対するヒアリング調査の結果の分析を反映させ、1✛3分野に分類し、TOTE モデルによる自学教材を LMS 上に構築 した。LMS は Moodle を使用した。TOTE モデルに基づいた設計によって、無駄のない効率よく学習できる構成になっている。スキルや構造設計に関する知識がない受講者でも、段階を追って知識が身に付き、業務に活用できることで更に向上心を高め、独学を支援するためのツールを開発した。eラーニング化したことで時間にとらわれずに利用できる。
開発にあたり、プロトタイプで ID 及び SME による専門家レビューを実施した。レビュー実施後に形成的評価を行い、改善を行った。その後、X 社で働く協力スタッフによる実 地テストを実施し、形成的評価を行い、更にツールの改善を行った。実地テスト後にはツ ールによる学習によって、協力スタッフの意欲向上の確認ができた。
以上のツール完成までの調査、設計及び開発について報告する。
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藤崎隆志(2021)INARS コースの学習課題分析と TOTE モデルに基づいた知的技能の習得に向けた e ラーニング支援教材設計・開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
詳細はありません。
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楠本朗(2021)産業保健体制確立のためのジョブエイドの開発 -メンタルヘルス対応における連携を中心に-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
詳細はありません。
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三浦玲(2021)学生の主体的キャリア選択支援プログラム作成の試み -キャリア選択自己効力感を指標として.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
学生たちを社会へ送り出す役割を担う大学等の高等教育機関において、就職活動のみ ならず人生全体に渡るキャリアヴィジョンを与えるキャリア教育が必要である。現状、多くの大学では、主に 3 年次の学生向けに行われているガイダンスやマッチング中心のキャリア教育に留まっており具体的な支援の実施や効果検証はあまり行われていな い。また、昨今の新卒採用動向としては、就職活動時期が変動し、就職活動の早期化や通年化へと動きは加速しており、学生たちは早期から自らの進路や就職先等のキャリア選択に向けた主体的な活動が求められている。学生支援の実務者によると、キャリア選択の準備が足りない学生は目の前の採用選考への短期的な対応に注目しがちで、長期的 なキャリア選択を熟考する時間が持てないままにうまくいかないと悩み、自己効力感が持てず苦悩することが多い。また複数の先行研究よりキャリア選択における自己効力感の重要性が示唆され、学生の進路やキャリア選択に対する自己効力感を高める研究についても多数発表されている。つまり、高等教育機関におけるキャリア教育では、就職活動というキャリア選択に対する自己効力感を高めるアプローチが必要であると言える。
本研究では学生の意識が高まりつつ、企業の選考が本格化する前の時期として、2 年 次から3 年次半ばまでにキャリア選択に関する学習活動に取り組める教育プログラムによる介入を計画した。3 年次の就職活動時期(3年次の後期以降)前までにキャリア教育をはじめることで、自身について、キャリアについて、時間をかけて熟慮する時間 が確保でき、キャリア選択に対する自己効力感が高められると考える。学生たちが自己効力感を高め、「やってみよう」と思えるような動機づけをし、主体的にキャリア選択を行うための学習活動として就職活動に取り組み、継続しようと行動できるようなプログラムを作成することを目指した。内容は、就職活動において習得すべき 3 点:1.自らを知り理解する「自己分析」、2.雇用されうる企業や職種など仕事を知り理解する「企 業・業界研究」、3.書類選考や面接選考などの各種選考(マッチングの仕組み)を含めたプログラムとした。そして、学習への動機づけを高めるために、ARCS モデルを援用してプログラム設計を行い、評価指標として ARCS 評価シートを用いた。また、キ ャリア選択自己効力感の変化を測り、分析し考察するために、キャリア選択自己効力感尺度を用いた。結果を評価・分析し、本研究の課題と展望を述べる。また、今後のキャリア選択支援プログラムの示唆やキャリア支援策の可能性を見いだすべく考察する。
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宮下和⼦(2021)⽇常業務についてのリフレクティブ・サイクルを⽤いた省察⽀援ツールの開発 ―産学連携専⾨⼈材のコミュニティを対象として―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
詳細はありません。
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西尾宗高(2021)心肺蘇生講習会(ICLS)コースの行動目標の分析結果を基にしたコース設計 〜参加型学習から習得学習への転換〜.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
病院とは国民が安全で安心な医療が受けられる場所であることは周知のことである。近年、病院機能評価により、病院自体の客観的評価がなされるようになっている。病院機能評価の評価項目には、“全職員を対象に心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:以下CPR という)の訓練が行われている”と示されており、病院全体の取り組みが必要となっている。
WHO によれば急性期病院での有害事象の発生率は 3.2〜16.6%であり、筆者の施設でも年間数件の予期しない心停止が発生していることとなる。そのため、筆者の施設では、全職員を対象にした心肺蘇生講習会(Immediate Cardiac Life Support:以下 ICLS コース)を不定期で開催し、心停止患者に対応すべきシミュレーション講習を実施している。ICLSは日本救急医学会が主催する講習会で、“突然の心停止に対して最初の 10 分間の適切なチ
ーム蘇生を習得する”ことが目標となっているが、技術習得や知識習得の評価方法は施設に委ねられている。筆者の施設では ICLS 終了後にアンケート調査(Course Interest Survey:以下 CIS)を行っているが、その結果“自信”が明らかに低下していた。その要因として、客観的評価のための筆記テストやスキル評価が設けられていないことによる蘇生スキルの習得への不安があると考えた。
そこで今回、ICLS コースでの習得学習を目指すため、ICLS の目標を課題分析し、ICLSコースの設計を考えた。ICLS の目標を課題分析した結果をもとに、客観的スキルチェック表、事前学習の開発を行い、筆者の施設で使用している指導書の修正を行った。今回は、それらを活用できるまでの ICLS コース設計についての研究成果を報告する。
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内山厳(2021)取捨選択可能な動画教材を利用した課題設定と相互評価によるe ラーニングの改善ー ワークショップデザインの視座において ー.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
人生 100 年時代の到来を見据えた、高等教育機関による社会人向け講座への期待が高まる中、e ラーニングにおいて効果的な学びの場を提供できず、学びの質保証が疎かになっているケースも多い。e ラーニングにおける相互作用の効果は様々な報告があるが、学習者がレポート課題の相互評価を有意義に感じる工夫を取り入れた実践例は見られない。また、e ラーニングの動画教材をすべて視聴させるための提案はあるが、動画を分割して視聴を取捨選択可能にした取り組みは見られない。本研究では、大学の社会人向け講座における非同期型オンライン授業の選択科目を取り上げ、課題レポートの提出前に学習者間での相互評価を課すと同時に既存の動画教材を分割し、それぞれに解説文を用意した上で学習者に視聴の取捨選択を任せることで、想定される学習時間を変えない改善をして、課題レポートの質と学習意欲の向上について、その効果を形成的に評価する。形成的評価にあたっては、過去に本講座を受講している 7 名の修了生と 1 名の講座メンタに参加してもらい、LMS に設置した改善版授業のプロトタイプを使って、学習過程とレポート課題の成果について、直近の従来版授業の記録と比較した。また、参加者に対して今回の授業改善についてのアンケート調査と追加の聞き取り調査を実施し、学習のしやすさや学習意欲について、従来版授業と比較した。その結果、改善版の授業は従来版よりも学習効果が期待できることと、学習意欲が高まることが示唆された。また、動画教材の分割や解説文の用意による学習効率は一部示唆されたものの、動画コンテンツの取捨選択による大幅な効率化は認められなかった。最後に、この形成的評価の結果から講座へ実装する際に検討すべき課題について考察を加える。
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髙橋一樹(2021)「学びの第一原理」を参考にした理学療法士の臨床推論能力を育成する OJT プログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
理学療法士は患者の基本的動作能力回復のために、臨床推論能力を発揮して原因を特定し、理学療法プログラムを決定する。しかし、臨床場面では原因特定の遅延などの問題が発生している現状である。先行研究では理学療法士養成校における臨床推論能力育成の報告はあるが、現職の理学療法士を対象にした職場における教育の実践報告は少ない。そこで本研究では、「呼吸器機能障害を主因とした重複障害を持つ入院患者に対する理学療法士における臨床推論能力の育成」を目的に、「学びの第一原理を参考にした理学療法士の臨床推論能力を育成する OJT プログラム」を開発した。
OJT プログラム開発にあたっては、臨床推論能力の育成機会をメリルの ID 第一原理を用いて分析し課題を抽出した。学びの第一原理を参考に OJT プログラムを設計し、メリルの ID 第一原理で抽出した課題への対応状況を整理した結果、課題の解決を確認できたため、理学療法実践に実装した。開発した OJT プログラムは SME と IDer のレビュー結果に対応することにより妥当性を担保した。1 対 1 評価において、レベル 2 評価では 2 名の学習者共に事後テストに合格し学習目標に到達し、レベル 3 評価では学習者の行動変容と理学療法の品質向上が示唆され、レベル 1 評価では学習者の満足度が高い状態であることを確認できた。よって、理学療法士の臨床推論能力を育成することができる有用なOJT プログラムであると言える。一方で、「臨床推論能力の発揮場面と定義」、「対象患者」、「対象とする学習者」、「所要時間」の観点において限界と課題がある。今後は、まず OJTプログラムの所要時間を短縮させることで、学習者がより効率的に臨床推論能力を高めることができるようにしていきたい。
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ワード弥⽣(2021)院内⼈⼯呼吸器ワークショップ後の学習の転移を促進する⾃⼰内省型評価ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
本研究では米国呼吸療法学会(American Association of Respiratory Care、AARC)の人工呼吸管理に関連するコンピテンシーを参考に、臨床で簡便に使用できるコンピテンシー評価ツールを開発し、その開発した評価ツールを実際人工呼吸器ワークショップ(WS)に参加した受講者に使用し、WS 前後の彼らの学習の転移を比較検証することが目的である。
開発した評価ツールは、院内人工呼吸器 WS 基礎編の学習内容に対応したものであり、コンピテンシーは「知識」、「スキル」、「態度」の 3 つの側面からテストおよびアンケートにより量的評価する。評価のタイミングは、WS 前(レデイネスフェーズ)、WS 後(フォローアップフェーズ)の2回施行する。また2回の評価の間は自己研鑽フェーズと称し、コンピテンシーに基づいたリフレクションをほぼ毎週行い、OJT の中で遭遇する様々な事象の中で、 人工呼吸管理に必要なコンピテンシーに関連するイベントはジャーナルに記録し、リフレクションの参考資料として活用できるようにした。
「知識」はケースシナリオを含んだ 20 題の設問で、Google Forms を使用し作成した。「スキル」は普段使用している人工呼吸器に人工肺のシミュレーターを使用し、医療安全の観点から業務のタスクである人工呼吸器作業点検表の記入、生体モニタリング、吸引方法、異常 グラフィックの認識と対処方法、2つの異なる換気様式での肺メカニクスに関する応用問題を口頭試問と実技を交えて行った。「態度」に関しては 1)業務遂行力 2)データ分析力 3)問題解決能力 4)患者ケアのコーデネーション能力 5)教育介入実践能力についてのルーブリック評価によるアンケートを作成し、彼らの上⻑へ WS 前後 2 回施行してもらい、行動変容を分析した。
WS 前後の約2ヶ月間の研修期間を通して、受講者の知識、スキルは確実に向上した。また行動変容が反映される上⻑からの態度に関する評価も受講者4人共レベルアップした結果が得られた。
今回は母数が少ないが、今まで評価できずにいた WS 後の臨床でのパフォーマンスの向上が量的にも実証でき、これはカークパトリックのレベル3を満たした結果につながったと言える。
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石津真保(2021)部下の研修転移を促す上司向け行動支援ツールの開発 - パフォーマンス向上のためのチェックリストとデザインシート –.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2020年度提出修士論文
研修転移については、教育研修担当者向けにその重要性が示されているが、教育研修担当者以外に重 要性が伝えられ、テキストやガイドが示される動きは、一部の先進的な教育を行う企業を除いてはあまり見られない。また、教育研修担当者向けのテキストにおいても、研修転移を目指すための具体的な設計方法に触れたものはあまり見られない。
本研究では、研修転移を促進する一つの方法として上司向けの行動支援ツールを開発する。研修転移に大きな影響を及ぼす要因の一つが上司の関わりであることは数々の研究で報告されている。一方で、上司本人に対して関わりを支援するテキストやガイドがないこと、上司の具体的な関わりについて明確な共通認識ができていないことが、上司の巻き込みや上司自身の動きの不十分さにつながっていると考えられる。そのため、上司向けの支援ツール開発によって、研修転移を促進したいと考えた。
研修転移には様々な要因が影響するため、上司の関わりだけで研修転移が成功するわけではないが、活用できる方法の選択肢を増やすことを目指す。また、上司という立場では教育より業績の優先順位が高くなりがちだが、支援ツールを通じて上司が育成に対する意識を高めると期待される。これは、今後、人材開発の 重要性が一層高まる中で企業内の人材育成を進めるために重要な点である。
開発にあたっては、先行研究として 68 項目の 6Ds チェックリストを参考に、上司の行動リスト案を作成し た。その上で、上司経験者へのインタビューを実施し、8 項目の行動リスト案へと改善を行った。このリスト案を組み入れて 2 種類のシートで構成される上司の行動支援ツール案を作成し、SME(企業内の教育担当者)および ID 専門家のレビュー、現役上司による形成的評価を行った。
形成的評価の結果、上記のツールを使用することで、受講者上司が部下の研修転移を促す行動を起こした。また、その結果、部下の言動に研修転移につながると考えられる変化が起きた。以上より、本研究の目 的は達成できたと言える。
ただし、本研究は、ツールを取り入れることで、上司が部下の研修転移に必要な行動をとることができるという点に重点を置いており、部下の研修転移が成功するというアウトカムまでは評価していない。また、限られた条件下での使用であり、他の環境でも同じ結果が出るかどうかは未確認の段階である。今後はこれらの点を検証し、発展させていくことで、本ツールが研修転移、つまり業務パフォーマンス向上に貢献していくと期待され る。
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小池啓子(2020)中堅看護師の行動変容を促す院内教育担当者向け研修支援パッケージの開発 - キャリアラダーとアクションプラン活用型研修の提案 - .熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
看護師の能力やキャリア開発の指標・評価システムの 1 つであるキャリアラダーを活用し, 中堅期にある看護師(以下, 中堅看護師)の行動変容を促す研修パッケージを開発することを研究全体の目的とした. パッケージの開発は 5 つの過程を踏んだ.中堅看護師がキャリアラダーIIIの活動を促進するための院内研修の改善を検討していた
A 病院において, 研修改善と実践, および評価までの過程を 「phase 1 :A 病院の従来の中堅研修における課題を洗い出し,改善. 新設計研修を開発する」, 「phase 2 :A 病院中堅研修の実践」, 「phase 3 :phase2 の実践を通じて新設計研修の評価を得る」とし, 次いで「phase4 :phase1∼3 のエキスパートレビューを得て内製研修に向けた準備をする」, 「phase 5 :研修資材と活用ガイドを梱包したパッケージを開発し, 実用可能か SME レビューを得る」の過程を本研究では辿っている.
従来の A 病院の中堅研修を ID 第一原理と経験学習モデルを援用し新設計研修(以下, 新設計)に改善した. 新設計で 2018 年度に研修を実施した結果, 受講者の 8 名は自部署でキャリアラダーレベルIIIに相応した役割発揮を果たした. また, 研修修了半年後も活動を維持・促進していることが明らかになった. この成果を考察し, 汎用性が期待できる研修支援パッケージを開発した. この開発は, 新設計が A 病院の中堅看護師育成に寄与できたとい
う成果検証を経て, 中堅看護師育成を担当する教育担当者が本研修の再現を可能にするための支援を目的としている. 中堅看護師の行動変容を促す研修支援パッケージを活用し,院内の教育担当者による内製研修を可能にすることで, 中規模病院の人材育成上の課題である「教育を担う人材の確保」, 「中途入職者への教育内容や体制の整備」, 「中堅看護師への教育内容や体制の整備」への一助となる. 本稿では, A 病院の従来の中堅研修を新設
計に改善, 実践した成果から, 院内の教育担当者による内製研修を可能にするために活用ガイドを梱包した研修支援パッケージの開発経緯を示し, 活用の提案準備を整えたことを報告する.
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清水久輝(2020)ルーブリック評価における評価者と被評価者間のバラツキを抑制するためのチェックリスト開発と研修設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
現在所属している企業においては,医薬情報担当者(以下 MR)の育成が急務となっている.2018 年からは MR の育成を目的に,MR の高業績者の行動を基にした企業内のコンピテンシーである「Top MR Competency(仮称)(以下 Top MR Competency)」が導入されている.「Top MR Competency」は 21 項目から成り,それぞれルーブリック評価としてレベル1〜4の目標行動が記載されている.「Top MR Competency」の評価は,現在年 2 回実施されており評価者である MR の 上司(以下 DM)と MR 本人によるルーブリック評価を行い 21 項目毎のレベルをつけ日々のコーチング 等に役立てられている.しかし,「Top MR Competency」のルーブリック評価を行う際に評価者である DM と被評価者である MR との評価にバラツキが発生しており,「Top MR Competency」を基にした 質の高いコーチングや面談が行われていない.その理由として,各コンピテンシーのルーブリックの記載内容が抽象的で実際の行動に落とし込まれていないためであると考えられる.この問題を解決するために,ルーブリックレベルに具体的な目標行動を記載した「目標行動チェックリスト」を設計・開発することとした. また目標行動チェックリストを使用した研修の設計・開発も行う.研修については研修パイロットを行うこととし,目標行動チェックリストの使用によるバラツキの抑制状況の確認を行う.研修パイロットの方法は,オンライン教材と対面研修を実施する.具体的な方法として,2名の MR にオンライン教材で自己学習を進めてもらい,架空 MR の活動について「Top MR Competency」のレベル評価を実施してもらう. その上で,目標行動チェックリストの使用法を学び,最後に目標行動チェックリストを用いて自己評価を実施する.オンライン教材終了後は,対面研修で他 MR の活動について目標行動チェックリストを用いて他者評価を実施する.対面研修には DM も参加して改めて目標行動チェックリストを用いて評価を行った場合にバラツキが出ないかどうかの確認を行う.万が一,バラツキが確認される場合は改めてレベル 評価の目線合わせを行い MR と DM の3者でレベル評価を決定する.最後に研修パイロットのアンケートを実施し,さらなる改善項目を特定し,来年度以降全社展開できるようにする.以上の取り組みにより MR と DM のルーブリック評価のバラツキを抑制し,質の高いコーチングや面談を実施し Top MR 育成に繋げる.
今回の研究による期待される成果は「目標行動チェックリスト」のよる目標行動の明確化により,ルーブリック評価の評価者と被評価者間のバラツキを無くすことである.またこの成果から得られるベネフィットとしてコーチングや面談の質が高まり結果的にコンピテンシー達成者いわゆる Top MR が増加すると考える.
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富永志津江(2020)職業訓練受講生のキャリアシート作成を支援するジョブエイドの開発 ―コンセプトマップ表現による職業情報提示の試み―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
近年,少子高齢化に伴う労働力不足および個人の職業生活の長期化への対応として,労働者のキャリア形成支援が喫緊の課題となり,多くの政策的キャリア形成支援が行われている.生き方・働き方の変化と多様性の中で,労働者がエンプロイアビリティの維持・向上を図り,満足度の高い生涯を過ごすためには,キャリアコンサルティングが実践・普及されることが必要である(厚生労働省 2018a)とされ,平成 28 年のキャリアコンサルタント国家資格化・登録制度をはじめとして様々な人材開発施策が行われるようになった.
キャリア形成支援に関する先行研究は,キャリア教育や人材育成,労働行政において数多く存在し,様々な技法の開発が行われてきた.ビジネススクール学生のキャリア開発の事例では,職務分析の視点と職務内容および職務行動表現の獲得が効果的であると指摘されている(R A. Cheramie 2014).また,公共職業訓練における就職支援の報告では,受講生が採用可能性および職務遂行の見通しを持てることが,特に,業界未経験者の意思決定に有効であることが明 らかになっている(松本 2018).
一方,職業訓練機関等におけるキャリア形成支援者については,定められた講習の受講のみでキャリアコンサルティングを実施しているケースにおいて,「相談者からうまく話を引き出せな い」,「強みを的確な言葉で言い表せない相談者に適切に対応できない」,「相談者への情報提供が必要だが最新の情報・知識が不足」など支援者側の知識・経験の不足による課題が指摘されてき た(厚生労働省 2016b).平成30年には,厚生労働省において,労働者属性ごとの課題に対応した新たなキャリアコンサルティング技法の研究・開発が行われ,さまざまなツールの活用による効果が示されている(厚生労働省 2018b).しかし,支援の効率および魅力を高める介入手法に関する研究はほとんど見られない.
筆者は,公共職業訓練における就職支援に従事し,キャリアシートの作成にあたり「どう書 いたらいいかわからない」「自己アピールできない」といった相談が寄せられること,多くの 受講生に業種・職種・職務の混同や,職務経験の体系的把握および標準的理解といった基本的 職業理解に不足や偏りが見られることを経験している.そのため,これまでは個別支援におけ る職務経験の棚卸しや言語化の支援,および集団研修による職務分析スキルの指導を行ってきた.しかし,限られた時間の中で職務分析の視点や職務内容・行動表現のスキルを習得することは,多くの受講生にとって認知的負荷が高く,容易ではないことが課題であった.
そこで,標準的な職業情報を簡易に利用できるようデザインしたジョブエイドを開発・導入し,受講生の認知的負荷を軽減しつつマッチングポイントの発見を促し,自己アピールの言語化を支援することで,個別支援の効率化・省力化を図ることができるのではないかと考えた.
本研究は,職業訓練受講生のエンプロイアビリティを高めるために,職務分析の視点で自己 理解とアピールポイントの発見を促し,キャリアシートの作成を支援するジョブエイド(以下, ジョブエイド)を開発・評価した.
ジョブエイドは,希望職種に求められるスキルや経験に関する情報をコンセプトマップ表現 により提示し,これまでの職務経験・職務行動とのマッチングポイントの発見を促す「職務経 験マップ(以下,マップ)」と,マップに記載した各項目に必要とされる知識と技術・技能を列挙した「添付資料」,マップと添付資料の使用方法および記入例を示した「指示書」の3点を試作した.
試作したジョブエイドは,デザインの妥当性を評価するため専門家によるレビューを受け,その結果をもとに改訂を行った.その後,改訂したジョブエイドの有用性を評価するため,受 講生のうち希望者を研究協力者とし,1 対 1 評価を行った.その結果,本ジョブエイドは使用 者にとって使いやすく,簡易な作業でアピールポイントの発見,およびキャリアシートの記述 を充実させることが可能であることが示され,「キャリアシートの作成を支援する」という目 的は達成された.
また,有用性を多角的に評価するため,個人面談においてジョブエイド使用者群と不使用者 群に分けた各群の求職票の記述と作成に要した時間の比較,および作成支援者(職業訓練指導 員)へのインタビューを行った.そこで得られた結果から,ジョブエイド使用者群は,不使用者群と比較して,個人面談時間の短縮は見られなかったものの,アピールポイントの記述に個別のばらつきが少ないことが明らかとなった.また,訓練指導員へのインタビューにおいて, タスクベースで表現する言葉の獲得や行動面への肯定的な変化が見られ,本ジョブエイドの有用性が示唆された.
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立和名房子(2020)初任日本語教師のための教案作成支援ツールの開発 - 学習目標・評価・練習の整合性の取れた授業設計を目指して -.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
本稿の筆者が勤務する日本語教育機関に所属する初任教師とその初任教師を指導する教師の間で行われている教案指導を支援するため、教案作成支援ツールの開発を行った。
開発に先立ち、教案指導の課題を明らかにするための予備調査として初任者 4 名と教案指導担当者 2 名にインタビューを実施した。さらに詳細な情報を得るために、筆者を含む勤務校の教案指導担当者にこれまでに提出された初任者 12 人分の教案と教案に対するフィ ードバックを分析した。この分析の結果、授業の目標・評価・練習の不一致がもっとも多く指摘を受けている点であることが分かった。次に、これらの結果から得られた情報をもとに教案作成時に使用する1教案記入シート、2教案チェックリストとそれらの付属資料であ る教案の記入例(3教案記入シート使用前、4使用後)、5教案記入例についての説明、6教案記入シート使用前(3)と教案記入シート使用後(4)を比較したもの、7チェックリストの記入例、8チェックリスト記入例についての説明を開発した。 ツールの開発後はインストラクショナルデザインの専門家 2 名と内容領域の専門家 2 名 にレビューを実施し、その結果を受けてツールの改訂とそれらの使い方を説明した9マニュアルの作成を行った。そして、次の段階として、初任者による有用性についての形成的評 価を行い、本稿の筆者本人が教案指導担当者の視点でチェックリストを使用した。その結果 にもとづき、さらに支援ツールを改訂した。再度、改訂した支援ツールのエキスパートレビューを実施した。
レビューを経て改訂した支援ツールは初任者と本稿筆者間で試用し、教案作成支援ツールの効果を検証した。本ツールの開発目的は教案作成時に初任者自身が教案を自己点検する際のガイドとなるツールの開発であったが、この点について有用性が確認できた。また、本ツール使用の効果として、教案作成の負担軽減、授業の質向上につながるよりよい授業設 計、効率的、効果的な教案指導の実現も目指していた。これらについても一定の成果が得られる結果となった。
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工藤由美子(2020)小学校教員と ALT との授業打合せのための研修設計 ―外国語不安の軽減を中心に―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
2020 年から小学校の外国語活動が教科になることを受けて、文部科学省は新な学習目標として、「英語コミュニケーションの素地を養う」ことを指し示した。これにより教師は、これまでの訳読スタイルの授業や、インターラクションがない一斉授業の教授法とは異なる、「英語コミュニケーション」を目的とした英語の指導・運用、ALT(外国人指導助手)とのティーム・ティーチングなど、新しいスキルの習得が急務となった。小学校の教員は、英語免許状の取得は義務ではなかったこともあり、英語の指導力や運用力、教員自身の英語力向上を目指した研修の必要性が高まってきている。新たに学習項目に加わった「英語コミュニケーション」の指導に、不安を抱えている者は少なくない。新しい学習目標を教えるために、必要な英語のスキル研修はまだ組織的な運用が始まったばかりである。しかし、研修の多くは、英語指導力に関するものがほとんどであり、教員自身の「英語のコミュニケーション力向上」を主とした研修はまだ確認できていない。また、研修は宿泊型や集合研修が主流で、日程の調整や研修時間の確保、および交通費などのコスト面で研修に参加することが困難なケースもある。本研究は、小学校教員のニーズにあった効果・効率的かつ研修の魅力を高めるために、インストラクショナルデザイン (以下,ID)の手法を取り入れ、「外国語」の指導に不安を抱えている教員の不安軽減に焦点をあて、研修の設計・開発をおこなった。ARCS モデルをベースに研修を設計することで、教員の学習意欲を高めることが外国語不安軽減へのアプローチになると考えた。よって、研修には、教員が現場で使う英語と関連性の高い、「ALT との授業打合せ(外国語)」の場面を設定した。研修開発は、迅速に課題解決を提案するためにも、短期間で学習効果の高い研修を目指した。そこで、研修開発に ID プロセスを短縮化した「ラピッド・プロトタイピング・モデル(分析・開発・実施・評価)を取り入れた。このモデルは、学習者のニーズに的確に対応した教材の試作品を作成し、何度も実施して改善するため、学習効果の高い教育システム開発をすることが期待できる。
学習内容に最適だと思われるIDの方略をもちいて、パイロット版として1回目を実施した。そして、データ分析に基づいた教材の改善をおこなった。それに基づいて、2回目の研修を実施した。各フェーズで実施したアンケート調査の結果、ARCS モデルをベースにした同期型の研修は、学習意欲を高めることが示唆された。また、研修期間中に学習した英語を現場で活用するという行動が見られた。現場のニーズにあった関連性の高い研修であったことを示唆している。一方で、小学校教員の IT リテラシーの課題も大きく、十分な学習支援が提供できなかったことは、少ならからず学習効果に影響をおよぼした。期待していた外国語不安軽減には至らなかったことから、研修環境の設定の課題も見えてきた。
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宮道亮輔(2020)コンピテンシーに基づいた経験学習の実践支援 - ICLS 指導者養成ワークショップの設計・開発 -.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
本研究は、Immediate Cardiac Life Support(以下、ICLS)インストラクターが自身の経験学習のサイクルを循環させることができるようになる ICLS 指導者養成ワークショップを設計・開発することが目的である。
ICLS コースは、突然の心停止に対する最初の 10 分間の対応と適切なチーム蘇生を習得することを目標とした医療従事者対象の医療シミュレーションコースである。ICLS コースの指導者(インストラクター)を養成するための ICLS 指導者養成ワークショップ(以下、WS)も開催されているが、WS の学習目標は提示されておらず、明らかでない。
本研究では、ibstpi®インストラクターコンピテンシーを参考に 41 項目からなる WS の学習目標を作成した。ICLS インストラクターに調査した結果、インストラクターとしての経験回数が少ないグループは 41 項目中 18 項目(44%)の到達度が低かった。インストラクターとしての経験回数が多いグループでは多くの項目で到達度は高いが、自己の経験学習についての項目などは、経験回数が増しても到達度は低いままだった。既存のテキストや先行研究の WS 内容が学習目標 41 項目を充足しているか確認したが、両者とも 5 割程度しか記載されていなかった。これらの結果から、より多くの学習目標を達成し、特に自身の経験学習について扱う WS の開発が必要と考えた。
経験学習を支援するための手段として、先行研究や文献を参考にして、経験を記述し、発表して討議し、まとめるという手順を採用した。また、内省的観察と抽象的概念化を効果的・効率的に行うための経験学習支援ツールを開発した。そして、学習者自身が経験学習のサイクルを回せるよう、実践事例の提示、eラーニングでの実践、ロールプレイによる実践という 3 つの段階を含む WS を設計・開発した。開発したツールや WS は、専門家
のレビューと形成的評価を行い、内容を改善した。5 名に WS を受講してもらった結果、受講者は学習目標を達成でき、経験学習尺度も上昇した。このことから、作成したツールや WS は、経験学習のサイクルを循環させることにつながると考えられた。今後は WS 修了後、時間をおいても経験学習のサイクルを循環させられているかを確認する必要がある。その上で、日本救急医学会などで報告し、著者以外も実施できるようにして普及をはかる。さらに、ツールや WS が他の医療シミュレーションコースにも展開できるか確認する。
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加嶋多恵(2020)GBS教材を用いた患者対応スキル向上のための授業設計 ―看護学生のための患者安全教育―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
詳細はありません。
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高瀬良重(2020)小学校教員のための学校図書館活用支援ツールの開発と評価 ―授業における学校図書館活用のための知的技能の習得を目指して ―.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
詳細はありません。
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金武雅美(2020)GBS理論を応用した日本語支援員養成プログラムの eラーニングの教材 -外国人児童生徒等の支援を目的として -.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
詳細はありません。
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伊藤洋一(2020)合意形成過程を伴う研修の精緻化理論に基づく再設計 - データモデリング入門コースを題材にして –.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
本研究は,反転学習導入による新たな問題を解決するために,精緻化理論で再設計した場合の有効性について検証した。研究題材は,データベース設計で使われるデータモデリング入門コースとした。本研究の背景にあたる反転学習導入の問題点は,反転学習導入以前に使っていた詰め込み教育のテキストを学習者に読んでもらいながら,独学で個人課題に取り組む大変さであった。精緻化理論導入前の研修設計は,階層化された知識構造で系列化されていた。学習目標は学習課題を通じて複雑なタスクができるようになることであった。しかし,インストラクショナルデザインの視点では,階層化された研修を通じて,複雑なタスクができるようになるには,学習者への負担が大きく,推奨されていなかった。そこで,本研究では,精緻化理論を導入することで,学習者が全体像を掴みながら,必要最小限の知識を使って,基礎的なタスクから複雑なタスクへ進めることができるため,学習者にとって負担の少ない研修ができると考えた。先行研究では,個人学習による精緻化理論の効果は得られていたため,データモデリング入門コースにおける個人課題についても効果が得られると予想した。合意形成が必要なチーム課題については,精緻化理論の先行研究が見当たらなかったため,協調学習の教授法で
工夫した。研究結果は,個人課題では学習効果が得られたが,合意形成過程が伴うチーム課題では変
化がなく,今後の研究課題として残った。今後の研究テーマは,合意形成過程が伴う研修におけるデザイン原則を見出すことを目的に,データモデリング入門コースで研究を進めたいと考えている。
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増永恵子(2020)ID第一原理を活用したリーダー看護師育成の事前教育教材の開発 -マネジメント業務に焦点をあてて-.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
P、Benner(P、Benner 1984、井部2005)によれば、臨床経験年数2、3年目看護師は、意図的に立てた⻑期の目標や計画を踏まえて自分の看護実践を捉え始める時期であるとしている。この時期は、指導体制が整った環境下で臨床実践を経験した後、ほぼ1人前とみなされ、病棟業務における役割が課せられる。その1つとして、勤務帯リーダーがある。勤務帯リーダーとは、各勤務帯で、リーダー役割を担う看護師のことであり、医師の指示等の情報を収集し、入室している患者の全体像を把握し、起こりえる状況を予測すると共に様々な状況下でチームメンバーの実践能力や業務内容、業務量などを総合的に判断しマネジメントを行ない、その勤務帯に提供する看護の責任を担う。経営学者であるジョン・ P・コッター(2002)は、「複雑な環境にうまく対処していくのがマネジメントの役割である。これに対してリーダーシップとは、変革を成し遂げる力量を指す」と述べ、リーダーシップとマネジメントは根本的に異なると述べている。リーダーシップの機能は、組織の方向性の明確化・共有・浸透に加え、フォロワーを動機付け鼓舞することで、変革を起こすことであり、一方で、マネジメントは、計画策定、人材配置、予実管理・修正をおこない、確実に組織で業務を遂行していくことである。リーダーシップよりもテクニカルなことがメインの機能と述べているように、勤務帯リーダーはマネジメント的要素が多く含まれている。しかし、現状はマネジメントに対するフォーマルな研修や学習機会はなく、リーダートレーニング(以下、LT とする)を受けるスタッフにとって、LT がマネジメントの視点や業務をはじめて集中的に体験することであるといえる。
そこで、LT の事前学習となる教材を提供することで、LT 受講者が自信と期待をもって LT に臨むことが できると共に LT の事前学習と LT の組み合わせで学習効果のある LT を構成していくことを目的にマネジメント業務に焦点を当てて、メリルの第一原理を用いた教材を開発することとした。
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生田正美(2020)急臨床現場で役立つ新聞デジタルアーカイブの開発 ~二次救急看護師のための研修以外 での人材育成~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
救急看護師が救急現場や自己学習の場で活用できる、新聞形式資料のデジタルアーカイブを開発した。この新聞デジタルアーカイブを活用、作成することによって、研修以外の人材育成を考察する研究である。
二次救急医療施設で勤務する救急看護師は、資源も人員も限られた環境下にある。救急看護は看護師個々の知識やスキルが患者の生命に直結する場面が多く存在する。迅速・的確に救急患者の緊急度・重症度を判断し、患者の状況をアセスメントしていくことが求められる。そこで救急 看護師の知識向上を目指し、対面型学習会と新聞形式の資料作成を 7 年間で 40 回行った。新聞形式の資料は A4 用紙 1 枚で完結し、学習会に出席できないスタッフにも簡潔明瞭に学習会の内容を伝える手段として作成した。新聞形式の資料は、救急搬送までの数分の間に疾患や観察事項の再確認に利活用されており、スタッフ個々がスクラップやファイリングして活用している現状である。
しかし,長年開催してきたことによって、新聞枚数が多くなるにつれ過去に作成した資料の更なる活用が十分にされていないことなどが問題であった。
そこで蓄積された新聞形式の資料を効果的に利活用できるよう、新聞デジタルアーカイブを開発した。この新聞デジタルアーカイブは、仕事中や職場以外での自己学習の際に活用でき、欲しい時に欲しい情報が、いつでもどこでも入手できるように開発した。
さらに、新聞デジタルアーカイブの中で、学習者同士で事例を共有し、学び会えるフォーラムを設けた。
この一連の学習のサイクルは、看護のナレッジマネジメントであり、学習者同士がともに教え学びあえる場となり、研修以外の人材育成を実現すると考察した。
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高畠(倉本)知佳(2020)ARCS モデルに基づく歯科矯正治療の患者教育用オンラインコンテンツの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2019年度提出修士論文
現在、歯科矯正治療分野に新しい治療方法であるマウスピース矯正治療が急速に普及している。
歯科矯正治療は、不正歯列と咬合機能、顎関節機能等の顎顔面機能と口腔関係領域の顎顔面形態の劣成長の改善・回復を行う治療であり、その病態形成を見ると慢性疾患と位置づけられる。その為、現状の臨床での矯正治療に必要な治療期間は長期となっている。
治療期間が長期となる歯科矯正治療では、歯科医師が患者に配慮してインフォームドコンセントにおける治療説明義務を果たすことが患者からの治療全体の評価に大いに 関係する。
しかしマウスピース矯正治療においては、治療に使用する矯正用マウスピースが患者自身で装着・取り外しが可能な治療である為、患者が治療に積極的に参加する治療参加型矯正治療とも言え、患者のマウスピース矯正治療の知識の有無や理解の程度が矯正治 療結果の良不良や治療期間の長短など治療全体に大きく影響してくる。
本研究では、マウスピース矯正治療を開始する前に患者が理解することが望まれる知識に焦点を当て、患者教育用オンラインコンテンツの開発を行う。
患者のマウスピース矯正治療での理解度が不十分とされる1患者自身の努力が必要 となる態度2患者自身が必要となる知識3患者自身が改善すべき生活習慣などの具体例を挙げた教材を ARCS モデルに基づいて作成する。
患者自身が独学で学ぶことで患者の治療への主体性を意識させ、教材を通して生じた 疑問点を個別相談で解消することで、医療者の治療説明の質と効率を向上させる。形成的評価と教材の改善を行い、実施テストを行う。
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鈴木真保(2019)オンライン教育におけるドロップアウト防止のためのチュータリング方略の研究 ~方略平準化のための手引書作成~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
筆者が所属する団体では、認定講座等のオンライン講座化を進めている。2018 年 1 月には、最上位資格の認定講座のオンライン化を開始した(第 1 期オンライン講座)。しかしながら、オンライン化したところ、採点対象となる課題レポート等をそもそも提出しないため、合格に至らない例が増えていることが判明した。認定希望者は、当該講座を受講するしか方法がないため、オンライン講座への適応を余儀なくされるが、その準備が不十分 であったことが推測された。本研究では、そうした環境下においても、受講者が学習を完遂できるための施策を検討した。
過去の対面講座および第 1 期オンライン講座における合格率を調査したところ、レポート提出率、ロールプレイ試験受験率が、科目合格率に影響を与えていることが推察された。そのため、レポート提出率やロールプレイ試験受験率を上げるサポートをすることが有効であると考えられた。
第 2 期オンライン講座では、筆者がチュータ/メンタとして、ドロップアウトを防止する施策を実施する形で介入を行った。行った介入は、主に以下の 3 点。具体的なレポートの 書き方のコンテンツ化、グループワークの導入、中間確認日の設定である。これらの介入の結果、ドロップアウトは減少し、合格率の上昇という結果となった。
しかしながら、第 2 期オンライン講座では、チュータ/メンタの作業工数が増え、講師やチュータ/メンタに時間的その他の負荷が増加しており、効率性に疑問が残った。そのため 次期以降の改善として、効率化を追求する目的で、講師(SME)がチュータ/メンタとして兼務しドロップアウト防止のための活動ができるための、手引書を作成する試みを行った。これにより、ID 専門家やチュータ/メンタの教育を受けていない講師(SME)であっても、効果的にドロップアウト防止のサポートが可能になる。手引書は以下の手順で検討・作成 された。最初に、チュータ/メンタによる介入項目のリストアップと学術的エビデンスの紐 付け・検討。次に、手引きの作成、続いて、エキスパートレビューの実施。最後に、形成的評価である。
今後は、実際環境での使用や他講座への移植により、小規模な講座で専任・専門のチュータ/メンタを配置できない場合でも、効果的なドロップアウト防止サポートができる体制作りに寄与する研究に発展させたい。
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安藤文人(2019)知的技能・運動技能が連携した歯科臨床基礎実習のブレンデッド・ラーニングの 教育設計分析と改善.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
医学の進歩により,医療系教育において学生が学ばなければならないことが近年急 速に多くなってきている.従前は臨床実習前に臨床基礎実習で患者に対応できることのできるレベルまでの知識・技能を習得し,その後,臨床実習の中で患者の診療を通してさらなる知識・技術レベルの向上を図ることが容認されてきた.しかしながら,未熟な医療者が対患者診療の中で知識・技能を習得していくという従来のシステム は,それを由としない世の風潮により,行い続けることが難しくなってきている.それゆえ,以前から求められていたよりも多くの知識量,高い技術レベルを,臨床実習に出る前までという短い時間で習得させることが必要とされるようになってきた.歯学教育において授業の効率化は喫緊の課題となっている.また,同様の理由で,知識・技能を対患者診療で学ぶ代わりに,シミュレート実習(医療系教育では,模型,マネキンを用いた実習や相互実習を指す)で学ぶ必要が生じてきている.実際の医療の手技は複雑な教授構造をとるが,シミュレート実習実施上の制約(時間,マンパワ ー,器具・器材等)により,単純化,典型化した実習で臨床に出ることのできるレベルまでの学習をし,その後の臨床実習の患者の診療の中で学習内容を精緻化してい る.これらの様式についても改めていかねばならず,より実際の臨床の文脈に則した臨床基礎実習を行う必要がある.
矯正歯科での重要なシミュレート実習のひとつにタイポドント実習がある.本学においてのこの実習は多大なマンパワーを必要とし,現状では学生の学習効果測定も行われていない.タイポドント実習の教授構造を明らかにし,授業改善のためのデザイン原則案を提案することが本研究の目的である.それにより類似の歯科臨床基礎実習の改善を効率的・効果的に行うことができるものと思われる.
まず,従来型のタイポドント実習の ID チェックリストによる分析,学習者分析,課題分析,可変要素の分析を行い,メリルのID 第一原理を応用して教材の設計を行 い,タイポドント実習のブレンデッド・ラーニング用教材を作成した.SME のレビューを受け改訂した教材について,4 名の実験協力者(実際に教材を利用する学生では ない)の協力を得て小集団形成的評価を行った.その知見に基づいて教材を改訂,ID 専門家にレビューしてもらい,さらに実際の学生で実地トライアウトを行うための教
材へ改訂した.日本歯科大学生命歯学部5 年生,128 名の学生を 8 名ずつの 16 グル ープに分け,1 週間に1または2グループがタイポドント実習を行った.インストラクタ 2 名が学生の指導にあたり,著者は基本的に実習の進行を記録した.実践の記録,学生アンケート,インストラクタの聞き取り調査をまとめた.結果,今回の実践を経て以下のデザイン原則案を得た. 1.教授構造がループ構造の場合,すなわち類似の項目を繰り返す場合,言語情報の習得は事前学習よりも対面実習に組み込み,インタイムに知識を提供することで教育効果が増強される. 2.学生の間違いを許容し,省察を促すことが学習を効果的にする. 3.対面実習での学生同士の会話を促進することで,より学びが深まる.
今後は,上記知見に基づき改訂したタイポドント実習教材を新たな学生に適用し,上記デザイン原則案の精緻化を図る.
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堀坂佳宏(2019)態度変容を目指した大学生のリスク情報報告を促すモバイルアプリケーションの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
事故やヒヤリハットに関する情報は、顕在化した危険源の確認や潜在的な危険源を探すために必要な情報である。これらの情報を分析することで、事故の再発防止や未然防止といった対策を取ることができる。しかし、事故またはヒヤリハットに関する情報の報告は、その役割や重要性が理解されておらず、さらに無報酬の行動のため、収集しやすい状況ではない。本研究は、これから社会に出る大学生を対象として、ヒヤリハットが起きそうな場所やものをリスクとして報告させ、リスク情報を共有することでリスク認知度を高め、リスク報告を行い続ける態度を身につけさせる教材を開発することを目的とする。まず大学生に対して、リスク報告に関するニーズ分析を行ったところ、大学生のほとんどが利用しているスマートフォンのアプリケーションで報告できるなら、リスク報告を行いたいと分析することができた。そこで本研究の目的を達成するために3つの研究目標を設定した。1つ目はリスク報告に関する教材開発のために学習課題を分析すること、2つ目はモバイル機器のアプリケーションの 利点を活かして、アプリケーション上で教材を開発すること、3つ目は開発した教材に対して大学生および専門家による形成的評価を受け、教材の改善を行うこととした。リスク報告に関する教材開発のための学習課題の分析は、3つの学習課題があると分析した。1つ目はリスク報告の重要性を知識として得るための言語情報の学習、2つ目はリスク報告を実際に行う運動技能の学 習、3つ目にリスク報告をし続ける態度の学習とした。特に報告されたリスク情報を共有することで、リスク報告の重要性やリスクの認知度を高める教材開発を目指したアプリケーション上の教材開発について、モバイル機器にインストールされたアプリケーションは、身近にいつも所持しており、起動も早く、操作性もわかりやすく簡単であることを利用した。特にプッシュ通知による情報提供は、アプリケーションのユーザーからすると開封率が高く、アプリケーション利用の継続率を高めることが知られている。これらの利点は、リスク報告を行い続ける教材につながると考え、アプリケーション上に教材を設計した。大学生および専門家に対する教材の形成的評価について、実際にアプリケーションをインストールしてもらい利用を依頼した。専門家については、安全管理者、アプリ開発者、インストラクショナル・デザイナーとした。評価については、アンケート評価によって行った。(評価結果については、公聴会までに得ます) 本研究で開発した教材は、モバイル機器のアプリケーションで開発したので、スマートフォンを持っている多くの大学生、さらに他大学の大学生でも利用できる。また大学生だけでなく、地域の小学校、中学校、高等学校の教職員や保護者でも利用できると考えている。この教材の普及によって、リスク情報の収集と共有が効率よくでき、安全確保のためのリスク認知度が高まった人が増えることを期待している。
キーワード:リスク情報、危険源、態度変容、アプリケーション、モバイル機器
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伊藤香菜子(2019)継続的なダブル・ループ学習を促進する学習支援プロセスの設計及びツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
定型業務全般において、決められた手順を基にいかに効率的かつ正確に作業を行うか、という視点での「シングル・ループ学習」は働くが、その目的を考え、目標の見直しを行う「ダブル・ループ学習(アージリス、2007)」が働く機会が乏しいことをしばしば経験する。「ダブル・ループ学習」が長期間に渡って行われないことによって発生する問題としては、不必要な業務が取りやめられていないこと、現状に沿った業務に改善されていないこと、必要な業務の創出が行われにくい環境になっていることなどが挙げられる。例えば、活用度が低くなっているデータの作成に作業時間を割かれるという状況が発生し、不適切なリソース配分となっていること、目的意識の欠如から作業の意義が感じられないために業務担当者自身のモチベーションの低下を招くこと、目標が曖昧なため担当する個人によって業務の質に変動が生じていることなどが実際に起こっている。
本研究は、各種業務の目的や目標を定期的に業務担当者自らが見直すことで、業務の改善、不必要な業務の取りやめ、および必要な業務の創出を行うために、「ダブル・ループ学習」を促進するための学習支援プロセスを「学習環境デザイン」および「経験学習モデル」の観点から設計し、「ARCS モデル」、「ID 第一原理」、「経験学習モデル」を踏まえた学習支援ツールを開発、運用および効果検証を行うことによって、『業務担当者自らが、「ダブル・ループ学習」を行い業務の目的・目標の見直しを継続的に実施できる学習支援プロセスおよびツールの提案およびその有用性』を明らかにすることを目的として行った。
筆者の職場における現状の問題点を整理し、その支援方略を「学習環境デザイン」を基に策定し、学習支援プロセスの設計を行った。また、「ARCS モデル」、「ID 第一原理」、「経験学習モデル」を踏まえた学習支援ツールの開発を行った。学習支援プロセスおよび学習支援ツールについて、業務担当者のレビューおよびエキスパートレビューを受けた後に、業務担当者 2 名にて運用し、評価およびツールの改善を行った。
今後は、現組織にて、ダブル・ループ学習が行われるよう運用を続けると共に、本ツールを他組織での運用することを提案し、ダブル・ループ学習の継続的な促進を支援していきたい。
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加藤幸路(2019)MOOC を設計する教員のための チェックリストとマニュアルの開発と評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
多様な学習者が、学びたい講座を選び、目的に応じた学び方を選択できるのが MOOC 本来の魅力である。そのためには各講座が明確化された学習目標に向け、構造化された教育設計に基づいて開発されていることが大前提となる。しかしインストラクショナルデザイナーやコンテンツ制作の専門家による組織的支援のもとにコースを設計する欧米と異なり、日本では設計を担当する教員の大部分は e ラーニングによる独学教材を設計するスキルを持っていない。また、組織的支援体制があるのは稀である。そのような状況下で、教員が対面授業を実施した経験のみに基づいて自己流で設計せざるを得ないのが現状である。その結果、教育設計がされていない講座が散見される。特に、受講者が講義動画を含め、何かを参照しながら問題を解くことが想定さ れるオンラインテストによる修了判定にも関わらず、講義の内容を暗記しているかどうかを問う言語情報のテスト問題が多い講座があることが、修了証の価値づけをする上で問題となっている。
本研究では教育設計の課題について、最低限の質が保証された MOOC を設計するための講座設計シートとチェックリスト、それらを使うための知識とスキルを養うマニュアルを開発し評価を行う。またオンラインテストに適したテスト開発を支援するため、言語情報のテストを知的技能のテストに変換するテンプレートを試作し、評価を経て改訂版を提案する。
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川端潤(2019)病院前小児救急におけるゴールベースシナリオ理論に基づいたeラーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
小児が一旦心停止に陥ると予後が悪く,病院前救急(救急車内)活動では,小児の安定化を目指した迅速な救急初期対応が求められる.その小児救急傷病者の症例数は成人に比して少なく,現場経験だけでトレーニングすることは難しく,より多くの教育・トレーニン グが望ましいとされる.
医療教育における Off The Job Training では,シミュレーションが主流となっており,その有用性を多くの研究者が唱えている.一方,シミュレーションはチームを構成する人的リソース及び,時間的制約があるため,継続的に実践することが難しい.根本ら(2005) は,シナリオによる手法が「既知の情報や用意された情報から必要な部分を抽出し活用させ,一つの判断をさせる.」と述べており,ケーススタディとは異なり,学習者がより主体的に状況を判断して,自ら意思決定を行う学習手法であるとしている.救急医療の現場は意思決定の連続であることから,シナリオによる学習が効果的であると考えられる.このように意思決定場面を提供するシナリオを活用した教材を開発するインストラクショナル・デザインの手法としてゴールベースシナリオ(Goal-Based Scenario,以下,GBS)理論が存在する.そこで,本研究では,病院前小児救急について学ぶ教材を GBS 理論に基づいて開発し,オンラインで提供することで,学習者がいつでも,どこでも,繰り返し,現場活動を想定した意思決定を体験しながら小児救急対応に必要なスキルを習得できると考え た.
GBS 理論に基づく e ラーニング教材の先行研究調査で,教材以外にシミュレーション教育が必要との結果が示されているが,私は教材が十分な現場体験を表現できていなかった ためだと考え,十分な現場体験を補うために,現場活動の演出を高めた GBS 教材の開発が必要と考えた.そのような GBS 教材を提供することで,小児傷病者対応における問題解決や判断力を学習でき,現場活動での不安軽減や自信向上につながると期待できる.
現場さながらの判断や対応を体験できる GBS 教材を目指し,現場活動の演出を高めた方略として「リアリティのあるシナリオ」と,「現場のような体験」の2つを抽出した.教材開発に際し,学習目標に沿ったシナリオを,GBS 理論に含まれる 7 つの要素との整合性 を点検しながら、フローチャートを作成した.現場演出を高めた方略の「リアリティのあ るシナリオ」では,様々なストーリーが展開されるシナリオに加え,現場で起こり得る予 期せぬ展開や,医師や救急隊との協働場面を付加したシナリオを記述した.「現場のような体験」では,バーチャルリアリティ学の3要素「3次元の空間性」「実時間の相互作用性」「自己投射性」をもとに設計した.教材で必要となるシナリオ操作は JavaScript を利用して実装した.
開発した GBS 教材は,フローチャートと併せ,ID 専門家 2 名により,その理論的妥当性のレビューを受け修正した.また,ストーリーや表示されるバイタルサインの値,傷病者に起こり得る変化や,確認テストにおいて医学的に誤りがないか,専門医のレビューを受け修正した.この教材の対象と想定される看護師 3 名に web 上で形成的評価を実施した.学習後のアンケートでは,現場活動の演出や主体的な学びについて,概ね満足度の高い結果が得られた.また,自由記述式から更なる現場活動を演出するためには,モニターの音を演出すること,多くの情報を得るための選択肢を増やすことなど,教材改善のための具体的な要素が抽出できた.
本研究では,GBS 理論に基づいた学習教材の構成においてリアリティという要素に着目し,現場活動の演出を高めた教材によって,実際の救急現場での意思決定を体験できる学習環境を提供することを目指した.形成的評価の結果,概ねリアリティが高められた教材であるという評価は得たが,不安軽減や自信向上に繋がる教材とまではいえず,より現場活動の演出を高める方法の検討が必要であることがわかった.救急現場では,同時多発的に,複数の課題が迫られるため,そのような演出を加える事も今後検討したい.
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栗原光江(2019)自治体職員の文章に関する基準モデルを用いた推敲セルフトレーニング方略の設計.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
住民の信頼により成り立つ地方自治体の職員(以下「自治体職員」という。)にとって、住民の理解や納得を得られる分かりやい文章を書く力(以下「文章力」という。)は極めて重要である。文章の質は、読み手の立場に立って、目的に応じた推敲を行うことにより高められる。しかし、推敲は複雑な認知過程であり、高度な認知能力を要するため、単に見直しの視点や修正方法を教示しただけではスキルを獲得させることが難しい。また、文章の推敲において求められる水準や範囲、目標が明確でなければ、読み返し、修正を繰り返していくという具体的な行動に結びつけることも困難である。さらに、職員削減、職務増大が進んでおり、管理監督者によるきめ細かな指導を期待することはできない状況にある。
本研究は、自治体職員の文章力向上のために必要なスキルや態度の獲得に有効な訓練や職場環境を明らかにし、推敲セルフトレーニングの方略を開発することを目的とする。
本研究では、ニーズ分析、職場内実態調査、既存ツールの問題点分析、学習課題分析などを行い、文章の質の基準を階層構造に整理したレイヤーモデルを作成した。そして、基準を用いて、既存ツールの改善、トレーニングの方略設計を行った。設計にあたっては、推敲の視点やスキルの個人差を踏まえ、TOTE モデルを用いて、必要なトレーニングのみ実施すればよいように、ツールを開発した。また、設計したツールは、専門家レビューによる形成的評価による改善を行い、改善後のツールを自治体職員が試用した。試用後に実施するアンケート及び上司ヒアリングにより、その有効性を確認することができた。
今後は、試用結果を反映した改善を行うとともに、職場において本格的にツールを導入することで、ツールの精度や効果の向上を図る。また、職場でツールを使った推敲が定着し、仕組みとして継続するための条件を明らかにすることで、さらに汎用性の高い方略になることが期待できる。
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中山かつよ(2019)勤労者看護実践に必要な臨床判断を学ぶ e ラーニング教材の開発 -メリルの ID 第一原理を活用した教材設計-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
勤労者看護とは、「勤労者が健康と労働とをよりよく調和させ、勤労者各人がその健康レベルに応じて健康的に働くことができるよう、看護の立場から主として臨床の場で健康支援活動を実施すること」である。療養後に職場復帰ができず就労を断念する,あるいは就労を継続できず離職せざるを得ない場合があることは,勤労者に大きな不安を与えるとともに,労働力人口が減少する少子高齢社会において,貴重な労働力を失うことを意味する。これに対処するため,国等による健康投資によって勤労者の療養後の職場復帰や就 労しつつ治療を継続できるシステムとして勤労者医療が推進されている。しかし、そのための看護学生への教育は充実しているとは言いがたい。看護学生に対する勤労者看護の教育が抱える課題として、看護基礎教育における勤労者看護教育の到達が明確でないこと、勤労者看護の実践過程を学ぶ教材がないこと、教育の到達は臨床現場で実践できることを 目指しているが、そのための思考や判断を学ぶ機会が十分でないことがわかった。本研究の目的は、組織の人材教育としての立場から、看護基礎教育における勤労者医療に貢献できる看護実践者の育成の到達を明らかにすること。そして ID 理論を用いた教材設計により勤労者看護教育が抱える問題解決に貢献できる学習教材を開発することである。方法として、勤労者看護の実践内容を明らかにすることから始めた。成人期以上にある勤労者を 対象とすることから、アンドラゴジーを意識した勤労者看護の実践プロセスを作成した。また、看護実践の内容を、実践事例の分析から「勤労者看護実践のためのチェックリスト」として明らかにした。以上の内容を用い、講義で学習する基礎的な知識を臨床での実践につなぐ教材としてeラーニングを設計した。ID の第一原理に基づく事例演習ができるものとした。取り扱う事例は、勤労者医療の対象として頻度の高い疾患の内、過去に臨床で学生が遭遇した事例をもとに作成した。作成した教材は形成的評価と修正を経て、臨地実習前の学生に使用する。教材をeラーニングとすることで、他校での実施も可能とな り、勤労者医療に関与しない他の組織の看護師養成所においても、働く人を支援する看護の教育教材として活用することが期待できる。今回は、プロトタイプ作成の経緯及び今後の計画について報告する。
<Keyword>勤労者看護 両立支援 人材教育 e ラーニング アンドラゴジー ID の第一原理
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西村由弥子(2019)学習者の現状と求められる知識・スキルとの差の認識を深めるケーススタディ教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
薬剤師は日々進歩する医療水準や社会のニーズに合わせ、薬物治療が有効かつ安全なものとなるよう、薬学的知見に基づきマネジメントする能力を継続的に維持・向上するため、生涯にわたり自己研鑽を続ける必要性がある。
先進国を中心に諸外国では免許更新制度を採り、「個々の薬剤師が、専門職としての能力・適正を常に確保するために、生涯を通じて知識、技術、態度を計画的に維持、発展、拡充するという責任行為」と国際薬剤師連盟(FIP)1)が定義づける「継続的な専門能力開発(CPD)」2)を採用し、学んだ成果をポートフォリオとして提出することを条件に更新を認めている。
一方、わが国では免許更新制度は採られておらず、研修会参加等で得られる認定単位の一定数以上の取
得により「自己研鑽を継続する行動」を認定する「生涯研修認定制度」3)をもって、専門職としての能力
を保つための知識・技術をアップデートすることを推奨している。「生涯研修認定制度」の認証機関である公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(CPC) は、FIP が定義する CPD の概念に基づき、「自己査定→計画立案→実行→事後評価→自己反映」(以下、CPD の過程) という一連のサイクルの継続を学習者の自己責任により行う5)ことを推奨している。そのため、学習成果に対する評価を含め全てが学習者に委ねられることがデメリットとなり学習の形骸化という問題を生んでいる。
研修制度ではより多くの薬剤師が学習機会を得られるようe-ラーニングが活用されるも、その多くが 講義視聴を目的に提供され、学習の真正性が担保できない状況が指摘されている。しかしながら、多忙を極める薬剤師にとって時間と場所に制約のない e-ラーニングの有用性は否定できないものであり、学習の真正性を担保すべく改善の必要性がある。
この研究の目的は、「学習行動の形骸化」という問題に対して利便性に終始することなく、CPD の過程に基づく真の学習行動を導けるよう、学習者各々が、自身に不足する知識・スキルを認識することを視点に効率的に学習を行うことを可能にする e-ラーニングの提供を目指し、Learning Management System (学習管理システム:以下、LMS)が備える機能の活用および TOTE モデルの適用によりシステマティックに e-ラーニング教材を開発することにある。
開発したコースは、CPD の過程「自己査定→計画立案→実行→事後評価→自己反映」の一連のサイクルがもたらされるよう、次の 2 つの特徴を持つ。
1)到達目標と現状の差を認識する「自己査定」を可視化 2)ギャップを効率的に埋める学習プログラムと環境(TOTE モデルの応用)
開発した e-ラーニングコースは、小集団評価による形成的評価およびその後の実証に向けた改善を行うため、ID の専門家および指導的立場にある薬剤師のレビュー、実務に従事する薬剤師数名による 1 対 1 の形成的評価を行いその結果をまとめる。
この研究の限界点は、理論モデルを応用する教材の完成度を評価するにとどまることから、今後は実証実験を通して学習効果に加え、行動変容に関連する学習者の自己効力感の変化を測定・評価する予定である。
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澤山芳枝(2019)アルツハイマー型認知症に特化した認知症模擬患者の 演技トレーニング養成プログラムの提案 ~シナリオとチェックリストの作成~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
近年,本邦ではコミュニケーション能力等,医師をはじめとする医療者の臨床能力や実践能力に対する社会からのニーズが非常に高まりつつあり,医療者を育成する大学医学部等の責務も年々大きくなっている.それに伴い,医療者教育のあり方も変化してきており,その 1 つに模擬患者・標準模擬患者(Simulated Patient/Standardized Patient,以下 SP )を活用した教育が増加している.SP とは一定の訓練を受けて患者役として医療者教育に協力,参加する人のことで,全国で1000名以上が活動している. SPには教育効果を高めるためフィードバックや演技の能力が重要である.効果的なフィードバック法についてはこれまで研究が行われているが,演技トレーニングについてはほとんど行われていない.
一方,日本の高齢化の現状は 65 歳以上の高齢者人口は 3,515 万人,高齢化率は 27.7%であり,2025 年には 65 歳以上の認知症患者数が約 700 万人に増加と見込まれている.
医療者が増加する認知症高齢者との良好なコミュニケーションを築いて患者の診断・治療のために必要な情報を収集できるスキルを持つにはリアリティのある認知症模擬患者との練習が必要であり,認知症を演じることができる模擬患者の養成プログラムの開発が不可欠である.しかし,認知症は他の腹痛,胸痛などのシナリオと違い,認知症ゆえの独特なコミュニケーションや動きがあり,従来のプログラムでは養成が難しい.
そこで,本研究では運動技能の指導方略を用いて認知症模擬患者の演技トレーニング養成プログラムの開発する.今回は,プログラム開発にあたり,シナリオとチェックリストの作成を行った.
シナリオは,医師役の学生と医療面接ができる重症度が軽度の患者であることを考え,最も多い認知症の「アルツハイマー型認知症の初期」とした.認知症疾患診療ガイドライン 2017 より「アルツハイマー型認知症の初期」に現れる機能障害を抽出し,演技を定義しシナリオに組み込んだ.シナリオは医学的なレビューを受けた.
次に,養成プログラムを受講した SP の演技を評価するツールとして今回,本プログラムに特化した演技のチェックリストを開発した.チェックリストは医師によるレビューと ID 専門家のレビュー,医師と SP 養成者による信頼性の検証を行った.
今後はプロトタイププログラムを開発し,エキスパートレビュー後,改善し,少人数からの試行を行う予定である.SP へのアンケートやインタビューを実施し,さらに改善を行って認知症模擬患者の演技トレーニング養成プログラムの実用化を目指したい.本研究は医学教育だけでなく,他の医療系の模擬患者養成にも貢献できると考える.
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関山裕一(2019)ジョブエイドを基幹としたOJT教育プログラムの開発〜救急外来における急性期脳梗塞治療に焦点を当てて〜.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
救急外来は、年齢、性別、基礎疾患など多様な背景を持つ患者が来院し、緊急度・重症度も様々であり、そこで働く看護師には、少ない情報から患者の病態をアセスメントする能力や診療を円滑に進めるための調整能力、家族ケアなど多くの知識・技術が求められる。しかし、救急外来における On the job training(以下 OJT)の看護師教育の現状として来院する患者は流動的で一回性という特性を持つことから、救急外来でのOJT教育はこの特性に対応できる計画された教育システムが必要である。しかし、先行研究に置いて、各病院の特殊性を考慮した救急外来でのOJT教育プログラムは見当たらなかった。そこで、本研究は、急性期脳梗塞に対応する救急外来看護師の行動に焦点をあて、求められる行動とそのプロセスを明記したジョブエイドを活用し、OJT 教育プログラムを設計する。これにより、OJT を通して臨床で行った看護実践を評価し課題を見出し、救急外来において身につけておくべき知識・技術を習得することを目指す。
ジョブエイドの開発では、脳卒中ガイドラインと筆者の所属する病院の特殊性を考慮し、急性期脳梗塞治療を進める上で、治療や行うべき行動を記述し、看護師が時系列で記載でき、かつ記録及びチェックリストとして臨床で活用できるジョブエイドを作成し、SME よりエキスパートレビューうけ、改定・試用で改善点を洗い出し修正し、運用した。
その結果、患者来院から根本治療での時間短縮(P-0.019)の成果を確認した。
OJT 教育プログラムの設計・開発では、ジョブエイドを基盤に臨床現場で看護業務を行えることを学習目標に設定し、課題分析を行った。指導法略として OJT、off-JT を含めた段階的なゴールベースのパフォーマンス支援ができるよう各段階に前提条件や達成するべき事項を示し、OJT 教育プログラムの入り口、出口を明確にした。OJT 教育プログラムの出口は、ジョブエイドに基づいて、急性機能コク即治療に求められる行動をチェックリストで明記し、作成した。OJT 教育プログラムの入り口は、OJT を行う前の前提条件を設け、前提テスト、off-JTマニュアルを作成した。また、OJT 指導者が OJT 教育プログラムに基づいて、一貫した指導が行えるようOJT指導者マニュアル、新規配属者が OJT での経験を OJT 指導者と共に振り返り、OJT での経験から知恵と昇華できるよう振り返りの内容と対策を、記録できるリフレクションシートを作成した。
設計、開発したOJT教育プログラムのエキスパートレビュー(SME 、ID 専門家)を行った結果、教育内容や方法についての妥当性が示唆された。一方で OJT チェックリストの修正点、OJT 指導者へのジョブエイドの必要性など開発物の修正点が明らかになった。今後は、指摘箇所の改善を行い、形成的評価を経て OJT 教育プログラムの評価を行うことが必要であると考える。
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吉村依里(2019)日本語母語話者のための「やさしい日本語」e ラーニング教材の開発と評価 ―市役所職員による着実な知的技能の習得と態度形成を目指して―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
日本語母語話者(以下、「日本人」)が普段使っている日本語を平易な語彙や表現を使って日本語非母語話者(以下、「外国人」)に分かりやすく伝える「やさしい日本語」の取り組みが日本全国で進められている。多言語対応サービスの充実とともに、自治体や外国人支援団体等によって手引書、事例集、e ラーニング教材等が多数開発されてきた。しかし、既存の資料・教材を分析した結果、「やさしい日本語」への言語調整のための練習が量と質において十分ではなく、自信をもって使えるレベルの習得には至らないことが1つ目の課題としてあげられた。また、相手の日本語能力や気持ちを考慮して、どのようなコミュニケーショ ンが「易しい」かつ「優しい」ものであるかを考え、実際の場面で活用しようと思う意識や姿勢の形成も重要だが、その点に関して配慮されていないことが2つ目の課題としてあげられた。そこで、本研究では言語調整のノウハウの習得と態度形成の2つの目標の習得を目指す。そして、外国人住民の生活を支える市役所職員が「やさしい日本語」の使い手となる ことには意義があると考え、市役所職員を学習対象者とした e ラーニング教材を開発する ことにした。
教材は、学習対象者分析の結果を踏まえ、効率的・効果的な学習を促進できるように設計した。最初に、効率的で着実な知識の習得と態度形成のための作戦として、「学習課題の種類と指導方略」(鈴木 2002)に即して、学習目標の達成に必要な要素を構造化し、指導方 略を決定した。また、学習活動への能動的な参加を促し学習効果を高めるために、M・デイビッド・メリルが 2002 年に提唱した ID の第一原理に基づいて学習活動を展開した。さらに、1970 年代にマルカム・S・ノールズによって提唱された成人学習理論の知見を活かした。成人学習理論に基づいた大人の学びを支援する4つの観点(リー・オーエンズ 2003) に基づき、学習対象者がもつ成人の特性を活かし、学習活動や学習環境をデザインした。
学習の過程では、個人での学習による「やさしい日本語」の言語調整のための規則の着実な習得とともに、さまざまな部署や課からの受講者がオンライン上で個々がもつ知識、経験、知恵の共有をしながら、「やさしい日本語」をどのように自身の業務の中で活用していけるかを考えていく。個人として、また組織の一員として考える活動によって、一人で学ぶ以上のより深い学びを実現させることを狙いとした。
さらに、考案した設計に基づきプロトタイプを作成した後、教材の改善と教材の妥当性を確認する目的で、日本語教育専門家と ID 専門家によるエキスパートレビューを受ける。設計の見直しを経て、教材全体を完成させる。続いて、1 対 1 の形成的評価を実施し、さらなる教材の改善を行った後、市役所職員の協力を得て小集団での形成的評価を実施する。教材学習前後の課題の結果、アンケート調査結果、学習活動の観察から教材の有効性を検証し、 最後に課題と今後の展望を述べる。
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蘆原友里(2018)課題分析図を基盤とした診療放射線技師向け 「心停止回避コース」学習支援教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
現在、日本では心停止回避コース INARS(アイナース:Immediate Nursing Assessment Recognition Stabilization)1が普及途上にある。このコースは心停止に陥ってからの蘇生 技能習得コースとは異なり、心停止に至る前段階の兆候をいかに早く察知・対応し、最終的 な心停止を回避させるためのコースである。INARS の目的 3 つを以下に示す。
1 患者の見方や対応について学ぶ(個々のスキルアップ)
2 チームで戦うことの意義を学ぶ(チームのスキルアップ)
3 必要なタイミングで医師を要請するための報告について学ぶ
(NPO 法人医療危機管理支援機構1より引用) しかし、上記は全医療職にとって習得すべき重要な項目であるにも関わらず、現状ではコー ス受講生を看護職に限定している地域がほとんどであり、看護職に特化した INARS コース学習項目は我々診療放射線技師にとって実施可能な学習項目と法律上実施不可な項目が混
在し、加えて職種背景・医療機関背景等は没却されている。
今回、INARS の 6 種の学習項目(第一印象・1 次評価・2 次評価・3 次評価・チームワーク・ 報告)のうち基盤的学習内容である「第一印象」と「1 次評価」に着目した。まず、それぞれ の学習項目に対して課題分析図を作成し、看護職での学習領域を明確にした。さらにそれを もとに法律上技師の実施可能領域を分類した上で、技師の職種(職域)背景および所属する 医療機関背景(救急医療体制の違い、該当診療科の有無など)から、技師が達成困難と予測さ れる学習項目に対し、それらを補強する教材を作成し INARS 受講へ向けた診療放射線技師 向け学習支援教材を作成したので報告する。
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星野健(2018)病棟看護師の電子カルテ操作に関する効率的な操作方法への気づきと実践を促す教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
A 病院では 2012 年 1 月に電子カルテが導入された。導入初期の操作研修は基本的な手順について伝達する集合研修のみであった。2014 年 5 月には全病床の無線LAN環境が整ったことにより、全病棟でベッドサイド入力が可能となる環境が整ったが、多くの看護職が電子カルテを効果的かつ効率的に活用できているとは言い難い状況にあった。しかしながら、研修環境や研修時間の問題から、基本的な操作を習得するものにとどまっており、電子カルテの効率的な活用は、各看護単位または各個人の努力に委ねられている状況であった。そこで清水ら(2013)[1]は、全看護職を対象に、電子カルテの効率的な活用のための独学できる学習教材を、インストラクショナルデザインの技法を用いて開発し使用した。その結果、教材に対する満足は概ね高く、電子カルテの効率的な操作の学習についてのニーズは潜在化していることが示唆された。また、独学については「自分のペースでできる」「好きな時間にできる」と肯定的に評価される一方で、動機づけ、質問対応、実際の操作が正しくなされているかを確認できないことが課題であった。その後の状況を改善 するために、A 病院における電子カルテ操作研修に関する現状と課題分析を行い、病棟看護師が、ルーティーンで行うような電子カルテ操作について、非効率な操作を行っている場合に気づきをもたらし、効率的な操作方法を選択および実行できるように、教材を開発しサポートを行うこととした。観察および課題分析の結果、1.電子カルテを使用することは可能な状況だが、非効率なことも散見される状況がある 2.非効率な操作に特に気づかずに操作を継続している 3.漠然ともっと効率の良い操作がないかと思っている 4.取り扱い説明書は読む気がしないスタッフが多い、ことが見いだされた。そして、解決に向けて以下のような問題や課題があった。1.新入職研修から実際の業務への橋渡しは OJT に委ねられているが、情報リテラシー能力の差によって、また病棟内のスタッフによって能力・活用に差が生じる。2.研修方式ではコストがかかりすぎカバーしきれない(交代勤務、対象者の多さ)3.操作説明書はあるが活用はされていない 4.独学(教材提供)では自己調整 学習への誘導がないと、必要なスタッフに継続的な学習が発生しない可能性が高いことがあった。
そこで、インストラクショナルデザイン関連の理論である「ARCS モデル」「自己調整学習理論」「ガニェの 9 教授事象」を用いた系統立てた教材の作成と効率的な操作に気が付くための方略として、操作診断ツールを作成して学習を促すことを目指した。これらの教材およびツールについて形成的評価を行い、その結果受けて修正点および改善点を抽出し、教材の精度向上に努めた。これらの成果は、今後の新入職スタッフへの知識の継承や知識の均てん化に寄与できると示唆された。
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峰内暁世(2018)初めて仏教学を学ぶ学習者向け学習支援環境の開発―デジタル素材とボットを活用して―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
本論文では、ICT(情報通信技術)の利活用に不慣れな学習者・教授者が、オンライン上のデジタル教材および学びに有用な ICT を容易に利活用することにより、学習者の学びを促進でき、教授者はその環境を簡便に提供できる、初めて仏教学を学ぶための学習支援環境の開発とその形成的評価について論考している。
第1章では,仏教学の学びにおいて、(1)用語の定義を明確にして、典拠を示して、(2) 指導者(=教授者)のリード・監督のもと、これまでの学びを未習の事項に応用して他者と対話する、これらの学びを反復練習することの継続が有効である、とされている点に着目して ICT によるサポートが可能な点を検討するとともに開発の与件について考察した。
第2章では、開発した学習支援環境の要件定義と設計、および実装について述べている。上記(1)については、あらかじめ教授者が精選した複数のオンライン辞書のみから学習者が用語を検索した結果を表示する機能、(2)については、教授者の設定した未習の事項について、これまでの学びを応用して学習者は他者(=チャットボット)と対話することから言語として自己の思考を外化する機能、ならびに、全学習者のチャットボットとの対話を俯 瞰できるように可視化表示する機能、を提供して、学習者と教授者の双方にとって負担なく学習者は反復練習を継続することができる環境を開発した。
第3章では、開発した学習支援環境についての形成的評価の実施結果を示した。信ぴょう性の高いオンライン辞書を気軽に利用できること、ならびに、人間を相手にした対面による実践よりも緊張・気兼ねすることなくチャットボットと何度でも練習することができ、なおかつそのチャットボットとの練習は言語化されるため、学習活動に有用と思う等のコメン トを評価者から得た。これらの評価から、本学習支援環境は想定どおりの学習支援を行えることが確認できた。それのみならず、チャットボットとの対話において、音声認識入力を利用することにより学習者はフリック入力と比較して 2~3 倍の情報を入力することができる
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直嶋大助(2018)一次救命処置学習経験者における 学習到達度に応じたフォローアップ研修の設計と開発 ―歯科衛生士を対象とした実践を通して―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
わが国の蘇生ガイドライン 2015 において、心停止傷病者の生存率を改善する には、バイスタンダーによる迅速な心肺蘇生の開始、普及には効果的で効率的な教育が重要であると報告されている。また、一次救命処置の技能は、訓練後 3~ 12 か月で低下するため、再評価や再講習の実施が推奨されている。しかしながら、現状では学習経験者を対象とした再学習の機会であるフォローアッププログラムの内容は確立されておらず、繰り返し受講することで、積み重ねの学習効果が期待されている。学習経験者は、既習知識の学習到達度にかかわらず初学者 と同内容の研修を受講しているため、非効率的であり時間のムダが生じている。
本研究では、一次救命処置学習経験者における学習到達度に応じたフォローアップ研修を提案するものであり、研修の学習目標として、既習知識を想起させ待合室(床上)における 1 人法の一次救命処置を職場で実践できることを目指すものである。
研修の設計は、鈴木(2015)の研修の効果・効率・魅力を高めることを目指し てシステム的アプローチに基づいて研修を設計する枠組みに基づき、4 つのインストラクショナルデザイン(ID)理論・モデルの視点である、ゴールに達したかどうかを確認しながらムダを省く TOTE モデル、研修評価を検討するときに有用な 4 段階評価モデル、授業や教材を魅力あるものにするためのアイデアを整理する枠組みである ARCS モデル、あらゆる状況において効果的な学習環境を 実現するために必要な 5 つの要素である ID 第一原理から、筆者がこれまで歯科衛生士を対象に実施してきた救急救命研修会デンタルコース[前編]の分析を行い、改善策を提案した。また、改善策の工夫として、事前学習にて忘却しやすい 一次救命処置の手順を繰り返し問うテストの導入、協同学習の導入、振り返りの導入、職場での活用意識の更なる醸成を試みた。
設計と開発をしたフォローアップ研修の評価を行った結果、事前学習が不要であった章の数は最大 3 個であり、最大 30 分の事前学習時間が短縮できた。また、ARCS モデルの観点から、興味深さ、やりがい、自信、満足度をそれぞれ 7 段階で評価してもらい、魅力的な研修と評価された。4 段階評価モデルの満足度評価(レベル 1)では、フォローアップ研修の受講者背景として、全員が一次救命処置の既習知識があり、対面での研修時間短縮(TOTE モデルの成果)は、全員が受けやすいと評価された。また、実技の練習やグループディスカッションに より既習知識の応用と統合を促したと評価でき、研修成果の職場での活用意識の更なる醸成を促したと評価された。学習到達度評価(レベル 2)では、事前学 習で 3 個学習不要と判定された受講者の前提テスト(言語情報)、事後テスト(運動技能)は共に 100 点で点数の低下は認められなかった。また、前提テスト(言語情報)は 99.3 点/Avg.(n=4)、事後テスト(運動技能)は 97.5 点/Avg.(n=4) であり、従来の研修時間は 6 時間でしたが、フォローアップ研修では 2 時間に 短縮されても、テストの点数はほぼ同点であり、効率的な研修に改善できたとい える。行動変容(レベル 3)は、研修直後は職場での活用意識が高いことから、一定の成果として評価できる可能性が示唆された。
今後は、これまで実施していた研修を改善して、より効果・効率・魅力的な研 修を目指すとともに、歯科衛生士学生を対象とした研修設計を新たに行い、前編、フォローアップ編、生徒編、後編と体系的な救急救命研修会を実施していきたい。
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土屋理恵(2018)継続的な授業改善のための研修設計と実践の共有支援 -日本語教育機関における教師コミュニティの構築-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
多くの日本語教育機関では,フリーランスの非常勤教師が高い割合を占める中で日本語 科目をチームで指導している.そうした状況下では互いの実践が見えにくく,教師間の連 携がうまく取れないことによりチームで効果的な指導ができない,授業改善の取り組みが 効率的に進まない等の問題が起きることも少なくない.しかし,もし教師コミュニティが専門的な学習共同体(Professional Learning Community)として機能すれば,そうした問題は改善できるのではないだろうか.そこでその実現に向けた支援環境を設計し,ある日本語教育機関(以下,対象校)で実践してみることとした.対象校では,教師が互いに 学びのリソースとなり対等な立場で協働的かつ継続的に自身の授業改善に取り組めるコミュニティを専門的な学習共同体と定義し,これを目指す.本研究の目的は,実践結果を通して授業改善促進および教師の関係性構築に有効な支援環境を提示することである.
教師に対する支援は,研修内容が実践の場につながるようインストラクショナルデザインの知見に沿って設計した研修と,各自の授業実践内容を共有するための日常的な支援とを組み合わせて実践することとした.それに伴い,教師のコミュニケーションツールとして Google グループを,情報の貯蔵庫として Google ドライブを導入し運用を開始した. 本研究の対象期間は 2017 年 3 月から 12 月であり,3 月から 7 月を第 1 期,8 月から 12 月 を第 2 期として取り組んだ.
設計した支援環境を実践した結果,これまで勤務の曜日や時間帯が重なる教師間に限られていたインフォーマル学習が全体に共有されるようになった.その結果,共有された実 践が他の新たな実践や工夫につながる事例も増えている.同一クラスを担当する教師同士が悩みや進め方について議論や相談をする場面も見られる.最も大きな成果は,教師同士 の関係が近くなり悩みや授業プランについて相談しやすい雰囲気になった等,全ての所属教師が教師の関係性の変化について肯定的に捉えていることである.
ICT ツールの活用には個人差があり十分に使いこなせないケースがあること,研修内容を実際の授業実践につなげることにおける個人差にどう対処するか等の課題が残るものの,専門的な学習共同体としてスタート地点に立てたことが示唆された.今後は教師コミュニ ティがうまく機能するよう取り組む中で,実際に授業の質を向上させ,留学生の学習成果に反映させることが求められる.
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山本文枝(2018)eラーニング教材開発マネジメントのための業務支援ツール開発と教材設計 –「教材開発マネージャー」の役割の明確化と熟達化支援 –.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2017年度提出修士論文
社員教育における e ラーニング教育は年々広まっており、e ラーニング教材を開発する人材の必要性が高まっている。一方で、e ラーニング教材を開発するための知識と技能を持つ人材をどのように育成するかが大きな課題となっている。
e ラーニングの教材開発は IDer、ビジュアルデザイナー、イラストレーターなど、各専 門分野のプロジェクトメンバーが複数名で行うことが多い。これらのプロジェクトメンバ ーを取りまとめて、適切な知識や技能を持つ人をプロジェクトにアサインし、適切な役割を与えたり、品質管理や検収をしたりする技能が必要である。
そこで本研究では、e ラーニングの教材開発におけるプロジェクト・マネージャーの必要性を分析した上で、特有の技能を明確化し、必要な知識や技能を仕事をしながら習得できる業務支援ツールと教材を設計する。その後、プロジェクトマネジメントとインストラクショナルデザインの専門家にレビューを行い、形成的評価を実施した後、改善点の検討について述べる。
この仕組みは将来的に独り立ちを目指すためのものであり、いずれは教材と業務支援ツールを使わなくとも教材開発マネジメントできるようになることを目指している。
尚、本研究では教材開発におけるプロジェクト・マネージャーを「教材開発マネージャー」と定義する。
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丹羽優(2017)リフレクションの促進を意図した<いいねマーカー>の設計とMaharaへの実装.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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佐久間あゆみ(2017)中堅看護師における問題解決力修得の現状と強化研修の開発.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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辰巳早苗(2017)教学マネジメントを担う大学職員の業務支援に関する研究.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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大庭小百合(2017)理系研究者を対象としたワーク・ライフ・バランス意識啓発研修プログラムの開発.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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川村和美(2017)緩和薬物療法認定薬剤師のコンピテンシー開発.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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北川周子(2017)シナリオ型オンライン教材作成のためのMoodleレッスン用プラグインとテンプレートの開発.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文,
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三宮有里(2017)既習の知識・スキルの活用を促す看護臨地実習準備教材の設計と提案.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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豊場沢子(2017)看護基礎教育課程における看護技術(運動技能)の習得度の向上を目指した教授方略の開発.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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西村恭子(2017)後進指導の態度・スキルの習得を目的とする習熟度別研修の設計-介護施設の接遇マナーの熟達者・初学者向け研修-.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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政岡祐輝(2017)活用画面の類推による学習転移の促進を目指した内省支援ツールの再設計-看護師を対象として-.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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山下藍(2017)音読評価基準の設定と授業外フィードバックを導入した韓国語音読教育の設計と実践.熊本大学大学院教授システム学専攻提出修士論文
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八尋 芙美子(2016)ディベートを中心とした演習型授業における図書館と学部教員による授業実践の試み.
本研究の目的は、国内の大学図書館において「情報リテラシー教育の一環」として実施している情報検索の講習のうち、授業の全ての課題に必要なスキルとして、情報検索が要求される授業に対して、インストラクショナル・デザインの理論に基づき、教材等の設計および開発、授業実践を試みることで学習効果を上げることにある。先行研究を調査したところ、現在、従来の講習に教授方法として e ラーニングやインストラクショナル・デザインの理論を用いた事例や、通常授業と連携して、講習とは違う方法で図書館が授業の課題に必要な情報提供を行った事例は存在したが、まだ数が少ないのが現状であった。そこで本研究では、学部教員および図書館の協力のもと、授業の全ての課題に必要な基礎スキルとして、情報検索が要求される初年次向けのディベートを中心とした演習型授業において授業実践を試みた。対象授業は 2014 年度に情報検索の講習を課題前の必要なタイミングで実施したにも関わらず、課題の合格基準である文献数が探せないこと、信頼性の高い文献を探すことをせず、検索サイト等から安易な情報入手に頼る傾向にあることが課題であった。その課題と 2015 年度の授業の前提条件等について、教員と図書館職員が共同で事前分析を行い、その結果をもとに ARCS モデルおよびガニェの 9 教授事象を用いて講習内容、教材等の設計および開発をし、授業実践と事後フォローを行った。特に学習意欲の観点から授業分析を実施した結果から明らかになった受講生にとって一番の課題となる「自信」の部分について、講習内容、教材、フォロー体制の 3 点から工夫を試みた。受講生から提出された課題の内容分析と教員へのインタビュー結果から、学習目標としていた信頼性の高い根拠資料を探せるようになるという点については、2014 年度に比べて効果が上がったことが確認できた。また、同じく提出課題の内容分析の結果から、毎回、ディベートのテーマが変わる状況でも、2014 年度に比べて信頼性の高い文献を探して選ぶことができるようになったことが確認できた。受講生個人の理解度のばらつきへの対応は今後の課題とする。
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大西 孝明(2016)ID理論を活用した教えない学習による製薬企業インストラクターの質向上に関する研究.
本研究の目的は、国内の大学図書館において「情報リテラシー教育の一環」として実施している情報検索の講習のうち、授業の全ての課題に必要なスキルとして、情報検索が要求される授業に対して、インストラクショナル・デザインの理論に基づき、教材等の設計および開発、授業実践を試みることで学習効果を上げることにある。先行研究を調査したところ、現在、従来の講習に教授方法として e ラーニングやインストラクショナル・デザインの理論を用いた事例や、通常授業と連携して、講習とは違う方法で図書館が授業の課題に必要な情報提供を行った事例は存在したが、まだ数が少ないのが現状であった。そこで本研究では、学部教員および図書館の協力のもと、授業の全ての課題に必要な基礎スキルとして、情報検索が要求される初年次向けのディベートを中心とした演習型授業において授業実践を試みた。対象授業は 2014 年度に情報検索の講習を課題前の必要なタイミングで実施したにも関わらず、課題の合格基準である文献数が探せないこと、信頼性の高い文献を探すことをせず、検索サイト等から安易な情報入手に頼る傾向にあることが課題であった。その課題と 2015 年度の授業の前提条件等について、教員と図書館職員が共同で事前分析を行い、その結果をもとに ARCS モデルおよびガニェの 9 教授事象を用いて講習内容、教材等の設計および開発をし、授業実践と事後フォローを行った。特に学習意欲の観点から授業分析を実施した結果から明らかになった受講生にとって一番の課題となる「自信」の部分について、講習内容、教材、フォロー体制の 3 点から工夫を試みた。受講生から提出された課題の内容分析と教員へのインタビュー結果から、学習目標としていた信頼性の高い根拠資料を探せるようになるという点については、2014 年度に比べて効果が上がったことが確認できた。また、同じく提出課題の内容分析の結果から、毎回、ディベートのテーマが変わる状況でも、2014 年度に比べて信頼性の高い文献を探して選ぶことができるようになったことが確認できた。受講生個人の理解度のばらつきへの対応は今後の課題とする。
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荒木 恵(2016)MRの医薬情報提供スキルにおける医師視点の評価指標の提案.
製薬会社の医薬情報担当者(Medical Representatives、以下 MR)は医師にとって有益な医薬情報提供を行うためには、画一的ではなく医師の反応や納得度に合わせた情報提供を行う事ができる対話力の向上が求められている。医師にとって有益な医薬情報提供活動を行うために MR のとるべき行動を記述したチェックリストによる OJT や、医師から医薬情報活動の評価をフィードバックとして受けるロールプレイトレーニングが行われているが、日常の OJT の場面において医師以外の第三者が医師の視点で MR の対話力を評価する事ができる評価指標により実効力を上げた報告はまだあまり見られない。本研究では MR の医薬情報提供スキルの評価指標を作成するにあたり、MR のあるべき姿の分析方法であるパフォーマンスモデルの作成方法と介護予防アセスメントツールを開発した先行研究(岡本ら2002)を応用し、上長など医師以外の第三者が日常のOJT で活用できる医師視点の評価指標を提案するものである。医師視点の評価指標を作成するにあたり、筆者が今まで活用していた既存アセスメント項目をベースとして MR の情報提供場面の動画素材をもとにアセスメント項目原案を作成した。臨床医と研修担当者(MR のスキルトレーナー)に対してインタビューを通じて意見の抽出を行い、アセスメント項目原案の修正を行った。本研究においては医師の視点を指標に盛り込む事が重要なポイントである事から、臨床医の「なまの声」を体系的に整理する方法としてフォーカスグループインタビューを採択した。作成した評価指標の形成的評価を行った結果、第三者が医師の視点で MR の対話力を評価できる評価指標にはなったが、評価者間における評価結果のバラつきなど課題も見られたため、更なる検証・改善が必要であると考える。今後は評価者トレーニングも開発し、改善した医師視点の評価指標を組み合わせる事により、上長による医師視点の OJT が促進され、MR の対話力が向上する事が期待される。
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天野由貴(2016)学習意欲継続のためのeラーニング教材チェックリストの開発.
e ラーニングは,学習者が時間・場所の制約を受けずに学習をおこなえるというメリットをもつ一方,対面授業のようにその場での質疑応答,学習支援などを受けられないというデメリットをもつ.多くの場合,e ラーニングでは学習者はひとりで学習に取り組み,自身で学習ペース配分を決め, 学習意欲を維持しなくてはならない.これらは往々にして,学習継続の断念に繋がっている.学習意欲を継続させ,断念を防ぐための方策を考えた場合,学習意欲を阻害・減退させないようにすること,学習意欲を継続・向上させるようにすることの 2 つの工夫があると考える.そこで,本研究ではそれらの 2 つを改善し,学習意欲を継続させるような e ラーニング教材を作成する際に利用できるチェックリストを開発・提供する.本チェックリストを利用することで,授業を提供する教員は e ラーニング教材を作成する際に教材に足りない点や改善したほうが良い点などの気づきを得られるようになる.e ラーニングコンテンツ自体に,わかりにくさや見にくさといった情報デザイン(Information Design)的な欠点があると,学習意欲を阻害することがある.その場合にはまず,「ユーザビリティ」「アクセシビリティ」の配慮が必要であると考える.学習意欲継続の工夫としては,「ARCS モデル」を用いたインストラクショナル・デザイン(Instructional Design)の技法が必要であると考える.ARCS モデルは,Keller の提唱した学習意欲モデルで,A:注意(Attention),R:関連性(Relevance),C:自信(Confidence),S:満足感(Satisfaction)からなる.チェックリスト作成に関しては,以下のものを参考にし,ユーザビリティやアクセシビリティ,ARCSモデルの知識のない教員でも,自身の教材を Instructional Design・Information Design の2つの IDの観点でチェックできることを目的として,先行研究を元に抽出・整理・表現の変更をおこなった.作成したチェックリストは,2つの ID を専門とする教員及び専門としない教員の両方から専門家レビューを受け,客観的な指摘をうけた問題点を修正し,その後 Web 上で公開した.Web 上で簡単にいつでもチェックできるようにすることにより,特定の組織に限らず汎用的に利用してもらうことを目指し,2つの ID の意識づけがより多くの教員に行えればと考えている.
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下坂充(2016)理学療法学生の臨床実習支援目的の仮想ホームルーム設計と形成的評価.
(背景)理学療法士の卒前教育における臨床実習で学生にかかる過剰負担が大きな課題となっているが、効果的対策はまだ出されていない。一方、組織内の知識共有促進などの学習パフォーマンスを高める協調学習のツールとしてウェブ・ベースの技術は発展を続けている。そこで、遠隔地に分散して実習に臨む理学療法学生の臨床実習完遂を支援するウェブ・ベースの「仮想ホームルーム」と名付けた学生の相互支援活動を強化するシステムの設計を試みた。本研究の狙いは、「仮想ホームルーム」の実地試行と形成的評価を反復して段階的改良を進め、実態に即した効果的な設計内容を明らかにすることである。(方法)「仮想ホームルーム」は、学習管理システム Moodle ver.2.9 を基盤として各種のフォーラム機能を主に実装し、学習動機づけ理論の「ARCS モデル」を参照して設計を行ったシステムである。実地試行は専門学校在学中の理学療法学生 41 名を対象とした。最初のバージョン(ver.0.5)は次のバージョンのプロトタイプとして、1 対1 形成的評価を実施して改良を図った。3 種類のバージョンのうち、後発の 2種類のバージョン(ver.1.0 と 2.0)は 8 週間の臨床実習で実地試行した。それぞれの臨床実習後に、形成的評価手段として質問紙調査と面接を行い、アクセス・ログ・データ分析によりアクセスの傾向を確かめた。また、バージョン 2.0 では、ネットワーク分析により対象学生集団の特徴と学生の集団内役割の確認を行って形成的評価の一助とした。各バージョンの特徴と改良点、および改良の理由を整理して示し、得られた結果を「ARCS モデル」と照合し、その関連性を分析した。(結果)学生は「仮想ホームルーム」に強い関心を示した。その一方で、バージョン 1.0 ではアクセス数の維持が課題となり、次のバージョン 2.0 では投稿率の向上が課題となった。それらの課題に対し、段階的に改良を図った。しかし、バージョン 2.0 の時点では、ウェブ上での学生相互の自発的な支援関係形成までには至らなかった。学生に対する質問紙調査と面接結果から、専門的知識・技術向上のニーズに対して仮想ホームルームの役割は不十分だったことが分かった。また、クラス全体を支援関係範囲とすることは、コミュニケーション相手が不特定となり、参加や投稿を躊躇させる要因の 1 つとなっていた。(結論)学生間の相互支援活動を促すためには、学習動機づけ理論の「ARCS モデル」のうち、特に「Relevance」の要素の採用をより一層強く推進する必要があった。また、次のバージョンにおいては、学生間の支援関係の範囲を小グループ単位へと改めることが効果的だと判断し、学生が自発的かつ建設的コミュニケーション活動を行うことを可能とする仕組みを取り入れた設計とする方針である。
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菊内由貴(2016)事例演習中心の独習型がん看護研修の設計 ー臨床応用を目的とした学習目標と評価基準の見直しによる効率化ー.
平成 18 年のがん対策基本法の施行に伴い、がん医療におけるがん看護の質の向上は重要な課題となっている。しかし、がん看護の質の向上を目指して行われている「がん看護実践に強い看護師育成研修(厚生労働省)」は研修期間が 40 日程度と長期間であることや講義や他施設での実習における指導者の不足による負担等の理由から継続困難な状況に陥っている。また、長期間に及ぶ研修では、受講者の職場や家庭の事情等で受講をあきらめざるを得ず、貴重な人財を損失することとなっている。本研究では、「事例演習中心の独習型がん看護研修の設計―臨床応用を目的とした学習目標と評価基準の見直しによる効率化―」と題し、「がん看護実践に強い看護師育成研修」の課題をインストラクショナルデザイン(教育設計)の観点から明らかにし、より効果的、効率的、魅力的なプログラムの再設計に取り組んだ。その結果として、看護師が臨床現場を離れることなく知識習得や事例演習に取り組むことができるよう、e ラーニングと対面研修をブレンドした「知識習得→事例演習→臨床応用」という3ステップを核とした研修を設計した。本研修は、独習を中心としながら、e ラーニングや対面研修等の学習形態が選択できること、細分化された学習目標に対応する合格基準の設置により、不要な学習内容を省き、学習者個々の学習ニーズに応じた学習内容の厳選と学習時間の確保ができることを目指した。また、事例演習において失敗からこそ学ぶ方針とし、合格基準に達するまで繰り返し練習ができること、臨床応用において必要時に教師のコーチングを利用しながら臨床実践に取り組めることから、自信をもって臨床応用としての実践ができ、OJT(On-the-JobTraining)を含めた研修を設計することにより、実践を通じた実践現場の質向上にも貢献できることを目指した。さらに、学習者自身が、自分に不足している能力を、学習に必要な時間を費やして繰り返して独習できる教材を提供することで、看護師の専門家としての自律的学習態度の醸成に貢献することを目指した。以上のような本研究の成果は、異なる知識や経験を有する臨床実践家に対するがん看護教育において、より効果的・効率的・魅力的な学習環境を提供し、がん看護の質の向上と均てん化に貢献することができる。今後は、本研修企画を実際に現場で活用できるようにするために、多様な環境・背景をもつ臨床現場での形成的評価を実施し、さらなる検討と改善を重ね、その有用性を客観的に示していく。
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中前雅美(2016)病院実習前の学内実習の設計 eラーニングとのブレンド型シミュレーション演習.
医療従事者養成教育において、医療機関における実習は不可欠であり、その場合有資格者と同等に扱われることも多い。そのため学生とはいえ有資格者に近い知識、技量が要求される。臨床検査技師養成教育においても、カリキュラムに病院実習がある。今回の研究対象である1年次の病院実習は心電図検査を中心とした1週間の実習であり、検査技術と患者対応を学ぶために行われている。医療従事者による患者対応では、医療を提供する際に「安全」「安楽(患者に不安不快感を与えない)」「確実性」の担保が必須であり、これは学生であっても不可欠である。そのためこれまでも病院実習前の学生に患者対応に必要な知識や技能を身につけるための学内実習を行ってきた。しかし近年、病院実習指導者より患者特有の配慮が必要な検査時の学生の対応力不足が指摘されるようになっており、従来の学内実習がその目的を達成しきれていないことが示唆された。そこで本研究では、インストラクショナルデザイン(以下 ID)の考え方をベースに、学生が病院実習で患者状態に応じた適切な対応が出来るようになるための学内実習の設計・開発を行った。適切な患者対応が出来る、という学習目標は学習成果の5分類のなかの「態度」に相当する。「態度」として患者に適切な対応を提供するためには、患者行動からその状況を認識し、その状況に応じた適切な行動を知っている必要がある。その前段階として行動特徴を知り(言語情報)、その特徴を例示された実際の行動から区別(弁別)し、適切な対応を理解する(ルール適用、問題解決)必要がある。しかし、一言で患者といっても病院にはさまざまな特性を持った患者がおり、その一つ一つの事例に適切に対処するにはある程度の経験が必要である。今回のように経験の少ない学生が患者安全などを図りつつ、実務経験をおこなうための事前学習では、ある程度患者特性と対応を限定する必要がある。そのため患者の代表として患者数が多く、かつ加齢による機能低下対する配慮が必要な高齢者をとりあげ「高齢者に対する対応」と視点を明確にし、対応についても「特徴的行動を認識し、それに対する対応を学ぶ」という事例学習として学習範囲を明確に定めることで学生が十分に患者に対応できるような設計を試みた。このような方法はこれまでと異なり多くの学習段階が必要であり、全て学内の対面実習で行う時間的余裕はなく、なんらかの形で効率化する必要がある。そのため弁別、ルール適用・問題解決の段階の学習を e ラーニングで提供し、実際の患者に対する態度面のみをシミュレーションによる実習にすることで効率化をはかった。態度学習の前にはその前提となる学習目標を達成していることが必要なので、e ラーニングでは学習した事実だけではなく、確実な理解を確認するため、学習コンテンツと同時に合格基準を設けた確認テストも提供した。このテストに合格することで学習内容を理解したと判断できる。この確認テストには動画を用い、実際の行動の弁別がより明確になるようにした。
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小山田 陽「協調学習によりチーム構築を支援するベトナム現地法人企業向けeラーニング研修教材の開発」
詳細はありません。
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清水將統(2013)看護実践の自律したリフレクションを支援するeポートフォリオ・プロトタイプの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
詳細はありません。
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石井恵利佳(2013)GBS理論を活用したクレーム対応能力向上のための看護師育成e-learning教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
詳細はありません。
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渡邊浩之(2013)学生チューターの質の保証をおこなうためのガイドラインの作成と評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
現在日本では、学生の成長を促すための指導の一環として、授業以外での学習支援を行う大学
が増えてきている。
その主な要因としては、高等教育のユニバーサル化により、基礎的な学力が
不足している学生が入学してきたことやアウトプット重視の教育への転換があげられる。そして、
この学習支援を行う人材として重要な役割を担っているのが、大学院生や学部の上級生が担当する
学生チューターである。その役割は、新入生や学習につまずいた学生が自立した学習ができるよう
に支援することにある。
北米には、 チューターの質を保証するために、CRLA(
College Reading & Learning
Association)
による各大学のトレーニングが一定の要件を満たしていることを証明する制度があ
る。しかし、日本においては、このような質を保証するような事例はほとんど見られない。そこ
で、本研究では先行研究としてピアサポートガイドラインの作成、
eメンタリングガイドライン
の作成および
北米の大学のガイドライン等を調査し、学生チューターの質の保証に寄与できる可
能性がある新たなガイドラインを作成することにした。なお、作成にあたっては、日米26大学、
機関のチューターハンドブック、ガイドライン、マニュアル等からチュータリングに必要な要素を
抽出し、統合して作成した。
なお、作成後、2段階にわたる形成的評価により改訂している。形成的評価は、対面のインタ
ビュー形式で、第1段階はスタッフ側3人、第2段階は現役の学生チューター2人にお願いした。
まず、第1段階のスタッフ側の構成は、学習支援を担当している教員2人、職員1人である。
良い評価を得た点は、レイアウトやボリュームは適当であること、自己評価シートはチューターの
行動を習慣化するのに必要ということであった。また、問題点の対応策として、自己評価シートの
項目を増やすこと、回答欄をチェックしやすくすること等の改訂を行った。
次に第2段階は
、現役の学生チューターに改訂ガイドラインを渡し、インタビューを行っ
た。学生チューターの2人は共に学部の4年生である。良い評価を得た点は、要素が多いこ
と、評価シートを利用することで改善点が認識できるということであった。問題点の対応
策としては、1ページあたりの文字数を少なめにすること、グループチュータリングの内容
を簡略化すること、評価シートの選択肢を増やし、コメント欄を追加すること等の改訂を
行い完成した。
最後に、ガイドラインが、チューターの質の保証に繋がるものであったかどうかの考察を行
い、今後の課題を考えてみた
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山田紀昭(2013)研修と実践のタイムラグを考慮したジョブエイド組み込み型研修~医療機器スキルアップコース「人工呼吸器コース」の設計・開発~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
医療機器の操作スキルは、日常で頻繁に使う機器だけでなく、ごく稀にしか使用されない機器や緊急時に使用される機器がある。日常使われない機器や、緊急で使用される機器に関しては、研修を行っても実際にそのスキルを活用されるまでにタイムラグが生じてしまう。 本研究は、医療従事者である看護師を対象とした医療機器スキルアップコースにおいて、研修を受けたタイミングからそこで得たスキルを実際に活用する場面に遭遇するまでのタイムラグを考慮した効果的なジョブエイドを作成するための設計・開発ポイントを明らかにする事を目的としている。モデル研修のデザインと開発は鈴木(2004)の「教材設計マニュアル」及び「教育工学をはじめよう」、「はじめてのインストラクショナルデザイン」(2004)ウォルター・ディック、ルー・ケアリー、ジェイムズ・O・ケアリーを参考にした。開発された研修は、プレ・ポスト・遅延テストの3つのテストと形成評価アンケート、インタビューにて形成評価を実施した。その結果、開発した研修はJob Aidsによって研修と実践のタイムラグを考慮した研修となるうることが示唆された。しかし、形成評価から多くの改善点を得る事ができ、さらなる工夫が必要な事も明らかになった。今後の課題として、より実務的なタイムラグの期間を考慮した検証と、より効率的な研修を目指したJob Aids組み込み型研修のeラーニング化を挙げた。
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嶋田謙一(2013)ゴールベースシナリオ(GBS)理論の適応度チェックリストを活用したシナリオ型教材作成支援手法の提案.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
eラーニングなどの自己学習教材の学習効果を高めるためには、学習者主体で、かつ能動的な学習を促す教材設計が必要である。これらを実現するために有効な材としてシナリオ型教材があるが、シナリオ型教材の作成は難しいため、容易に作成できる手法が求められている。
本研究では、先行研究「ゴールベースシナリオ(GBS)理論の適応度チェックリストの開発」(根本・鈴木2005日本教育工学会論文誌29(3), 309-318, 2005)で開発されたチェックリストを非シナリオ型教材に適用し、非シナリオ型教材をシナリオ型教材に変換する際に必要になる情報や問題点を明らかにすることにより、シナリオ型教材の作成を容易にする手法を提案する。第1章では、上記に記載の、本研究の背景、目的、目標、および本研究の進め方について述べた。第2章では、先行研究においてGBS適合度チェックリストをすべて満たすとされるシナリオ型教材(Y教材)の構造を分析し、シナリオ操作の仕組みを明らかにした。第3章では、Y教材のシナリオ操作の仕組みを利用して、非シナリオ型教材の要素をシナリオ型教材に変換するためのひな型を作成した。また、そのひな型を用いてシナリオ型教材を作成し、評価を行った。第4章では、第3
章でシナリオ型教材を作成した手順を手順書としてまとめ、その手順書に基づいてシナリオ型教材を作成し、手順書の改善を行った。また、改善した手順書を第
三者に渡し、第三者にシナリオ型教材を作成してもらい、その結果を評価した。最終章では、本研究の成果
であるひな型と手順書の作成に対する考察と今後の課題について述べた。
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岡崎大輔(2013)GBS理論を用いた手術室看護師が独学できる災害対策教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
本研究では、手術室における災害時の対策を独学で学習できる教材の開発を行う。提案手法としては、災害時に手術室で実際に起こりうる地震災害のシナリオを想定した上で、GBS理論を用いて教材を作成することである。提案手法を実際の手術室看護師に対し実施したところ、手術室での災害対策教材としての適用可能性が示唆された。
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宮内明美(2013)インストラクショナルデザインに基づいた企業内IT研修教材の設計と開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
IT教育企業では、最新技術を教授するための様々な工夫がなされている。しかし、現在ではITを含む企業研修は縮小傾向にあるため、IT教育企業は如何にして集客するかに力を注ぐ。その一つがインストラクショナルデザインの基本である「入口」(それは通常レディネステストを表す)の撤廃である。それにより、同じ研修内での受講者のレベルの差が激しくなり、IT弱者が排除される傾向にある。IT業界は他の業種と比較しても技術革新のスピードが速いことから、ITトレーナーに求められる知識やスキルの変化が激しい。ITトレーナーは業界で常に最先端を行くための自己研鑚は怠らないが、一方でいまだに存在するIT弱者に対して効果的で効率的で魅力ある研修を実施しているとは言い難い。ITトレーナーは聞けば何でも教えてくれる生き字引ではなく、学習者と学習対象との間のやり取りをつなぐ役割を果たし、学習者の理解を促す存在でなければならない。そのためのツールがインストラクショナルデザインに則った教材である。本論文は、「企業内教育向けの教育工学」とも言われるインストラクショナルデザインの知見に基づいて、企業内IT教材と研修の開発を行い、IT初心者に対しても効果的・効率的・魅力ある研修が実施できることを検証するものである。
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宮原秀明(2013)大学事務職員の相互研修活動へと導く研修ガイダンスシステムの提案.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
大学事務職員同士が教授し合う研修活動を通じて組織を活性化することを支援する,オープンソースシステムを利用したオンライン研修システムを構築することをこの研究の目的として,コンピュータを利用した協調型の研修活動を設計し実験を行った.
また,試用システムはMoodle,OpenMeetings2.0,OpenOffice.org
などいずれもオープンソースシステムを利用してオンライン研修システムとして構築した.予備実験で身近な職員から意見を貰い,1対1評価での形成的評価を行った.そして,システムの改善を行った.
その結果として,(1)オープンソースシステムを積極的に活用した研修システムのサンプルが構築できた.(2)想定どおり,
ガニエの9教授事象は発表スライド作成時に有効活用できるというアンケート結果を得た.(3)オープンソースシステムの
ビデオ会議システムとして代表的なOpenMeetings2.0
とBigBlueButton 0.80の比較によりそれぞれの特性と利用価値が確認できた.
本研究で構築したシステムは,オープンソースシステムを利用した試作システムであり,Moodleを利用して作成した.トップページにはビデオ会議システムOpenMeetings2.0を用いてeラーニング研修の受講入口画面を用意した.同様にトップページ上に用意した講師となる事務職員用の入口を進めば,講師役が研修スライドを作成するためのツール,OpenOffice.org形式のスライド作成ガイド(ガニエの9教授事象を基にしたもの)がダウンロードできる.講師はスライドができればオンライン中継での同期型か録画での非同期型でOpenMeetings2.0を利用して発表する.ビデオ会議システムの選定では,BigBlueButton 0.80OpenMeetings2.0
という2つのオープンソースシステムを比較した.双方ともにMoodleにプラグインでき,双方ともに同期型
ビデオ会議システムの機能として十分なものを実装していることが分かった.その上で,最終的に本研究ではOpenMeetings2.0を選定した.その選定理由は,録画と再生機能においてOpenMeetings2.0が勝っていたからである.
本研究では,試作システムの試用と評価を行った.まず予備実験として5名の身近な職員から評価を貰った。その結果,研修全体像が把握しにくい点,ビデオ会
システムの必要性が不明確である点,個人学習と研修活動のいずれに主眼を置いているのかわからない,などの指摘を得た.この予備実験での評価をもとに,研修受講者向けの画面を作り込み,トップ画面を整えた.また,OpenMeetings2.0を利用した同期および非同期型の研修が可能であるシステムであることがよくわかるシステム内容に改変した.その上で,次に1対1評価を行った.大学事務局入職4年目の職員を対象に行った1対1評価では,ガニエの9教授事象を基にしたスライド作成ガイドなど好評を得たが,多くの改善点も見つかり,インタビューで得た評価および試用中の観察によって気付いた点などを中心に改善を行った.この改善結果の確認を経てさらに修正を加えたものを,今度は大学事務局入職2年目の職員の協力をあおぎ,再度
1対1評価を行い,改善を加えた.
本研究は,1対1評価を2度行い,その度改善を加えてきた.今後の課題としては,小集団評価で実際の研修活動として試用し,システムの実運用に向け取り組むこ
とが挙げられる.
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村上幸生(2012)Basic LTIに準拠した学習支援ツールの開発とその評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出修士論文
現在,多くの高等教育機関においてLMS(Learning Management Syste m,学習管理システム)を用いた教育が行われており,そのLMS上で利用される学習支援ツールも様々なものが存在する.特定のLMS上で動作するように設計された学習支援ツールは,同一種類のLMS
上でのみ動作可能であり,また,LMSのインストール毎に,学習支援ツールもプラグイン等としてインストールする必要がある.しかし,Basic LTI(Le arning Tools Interoperability)に準拠した学習支援ツールであるならば,Basic LT Iに準拠したLMSからすぐに動作させることが可能であり,逐一インストールすることも不要である.本研究では,Basic LT Iに準拠した学習支援ツールを開発し,その学習支援ツールがMoodle 1.9,Moodle 2.2,CanvasなどのBasic LTIに準拠したLMSから呼び出すことができることを検証した.また,同一の学習支援ツールでありながら,呼び出し元のLMSコース毎や設置場所毎に別の学習内容を呼び出すことができる検証および学習支援ツールでの学習結果としてのスコア値をLISBasic Outcomes Servic e経由等でLMSに送信することができることの検証を行った.Basic LTIは,eラーニングにおける学習支援ツールの相互運用性を保証する標準規格として広まりつつあるが,その潜在的な可能性を活かした実装例が現
状ではまだ少ない.今後の研究では,開発した学習支援ツールを実際の情報基礎科目の受講生に提供し,学習支援ツールが学習に問題なく利用できるか等の評価を行いたい.また,通例では単一のLMS内の範囲でしか行うことのできない相互評価や協調学習の活動を,Basic LT Iを使うことにより複数のLMS間でも可能にする実装も検討したい
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Evan Qelo Naqiolevu (2012) Ensuring distance learners have learned: Enhancing the Success@USP orientation programme learning package for first year students at the University of the South Pacific. Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2011
詳細はありません。
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竹岡篤永(2012)ストーリー型学習の文脈と個人の文脈との関連づけを促すアドオンの提案~熊大SCC(Story-Centered Curriculum)を題材として~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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鈴木雄清(2012)ARCS動機づけモデルに基づいた授業評価と改善方略提案システムの設計.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
授業の内容や方法の改善のために,多くの大学では学生による授業評価アンケートが実施されている。ほとんどの場合,アンケートの結果から授業をどのように改善すればよいかまでの解決方略までが示されることはない。鈴木(2002a)はKellerのARCS動機づけモデルに照らして授業を評価し,その結果に基づいて適切な改善方略を取れるよう支援するガイドブックを開発している。評価実験の結果から,システムの改善方略の有効性が明らかにされている。
一方,IDの知識に乏しい教員にとって,提案された方略リストの提示のみでは,必要な方略を選択して具体的に授業改善に結びつけるのは難しいという問題があった。そこで本研究では,IDの専門家ではない教員が学生によるARCS動機づけモデルに基づいた授業評価の結果から,授業改善できるようなシステムを設計する。具体的には,まず,学生に鈴木(2002a)の「ARCS評価シート」で授業を評価してもらう。次に,評価の低かったARCSモデルの下位項目について,教員に「教員向けARCS動機づけチェックリスト」による質問をする。最後に,その結果に基づいて教員に解説や事例を提示する。ARCSの下位分類に対応した「教員向けARCSチェックリスト」の作成し,分類する。リストの分類ごとに解説や事例を用意する。作成したプロトタイプを,教員を対象に評価実験をする。「教員向けARCSチェックリスト」の作成にあたって,Armstrong & Keller(1992)の「 動機づけ実施チェックリスト( MDC)」,Keller(2009,鈴木監訳2010)の「科目の興味度調査(CIS)」の項目を大学教員向けの表現に改めた。これらに加えて,鈴木(2002a)の方略リストや鈴木(2002b)のARCSモデルに基づくヒント集,Keller(1987,2009,鈴木監訳2010)のリストを参考にして,155項目からなる質問形式の「教員向けARCSチェックリスト」を作成した。さらに,作成したリストを36項目からなるクラスタに分類した。授業改善に関する書籍や文献を引用して,クラスタごとの解説や事例を作成した。作成したプロトタイプを,IDや教育工学の専門家ではない3人の大学教員を対象に評価した。その結果,いずれの教員も自分の授業について改善案を挙げることができた。改善案の多くは,事例や解説に基づいて出されたアイディアであり,本研究で提案するシステムの有効性が示唆された。今後は,結果のランキング方法の検討や「教員向けARCSチェックリスト」の改訂や解説や事例の充実したうえで実装し,評価する必要がある。
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千葉佑介(2012)講師力の定義・構造化と有用性の検証~研修事業会社の講師力向上への取組みを例として~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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佐藤祥史(2012)同期型遠隔教育の設計ガイドラインの開発と評価~WebExを利用した取り組みを例にして~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
本研究は企業・社会人向けに実施されている1対多形式の同期型遠隔教育において学習者から指摘されている同期型遠隔教育特有の問題点の解決と、同期型遠隔教育を実施する講師の実施準備の負荷軽減および実施に際してのインストラクション品質を一定以上に保つことを目的とした「1対多形式の同期型遠隔教育向け教育設計ガイドライン」の開発と評価を行うものである。
遠隔教育に対する研究は様々な観点から進められているが、非同期型と比較した場合に、同期型については教授設計に対する指針を示すものが非常に少ないのが現状である。 筆者は、勤務先企業(教育サービスベンダー)において1対多形式の同期型遠隔教育(以降、遠隔研修)を試行しているが、集合教育のエキスパートである講師であっても遠隔教育についてのノウハウが無いため、実施準備の負担増や講義におけるインストラクション
の品質低下といった問題が発生している。
この問題への対策として、遠隔研修を実施する講師のために、遠隔研修における「べき/べからず」的な情報を集めたガイドラインがあればと考えたが、有力な先行研究を見つけることができなかった。
そこで本研究では類似する先行研究を参考に、遠隔教育における特性分析研究の結果や遠隔研修の運用経験から得られる知見を整理し、講師のための1対多形式同期型遠隔教育のガイドラインを試作し、実際に遠隔研修に携わっている講師による形成的評価を実施して、その結果をもとに改善を加えた。
本研究の成果物であるガイドラインは、1対多形式での教育を行う企業や学校機関において、効率的・効果的・魅力的な同期型の遠隔教育を実施するための有効なガイドラインになることが期待される。
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紙谷あゆ美(2012)専門家のスキル向上とOJT支援を目指した教材デザインに関する研究-内視鏡センターにおける内視鏡洗浄を題材として-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
本研究は、医療従事者という専門家を対象にした「内視鏡の洗浄・消毒に関するモデル教材」を設計、開発、評価を実施することで、専門家のOJTをより効果的にするeラーニング教材デザインのポイントを明らかにすることを目的としている。さらに、専門家のOJTを効果
的なものにするために必要な設計・開発のポイントを探り、専門家のための教材デザイン方法について提案した。
モデル教材のデザイン・開発には鈴木(2004)の教材設計マニュアルおよびJ.M.ケラー(2010)の提唱する
ARCSモデルを参考にしている。開発されたモデル教材は、学習意欲調査票(IMMS)および堤(2011)の新・リアクションアンケートから抜粋した満足度アンケートを使って形成的評価を実施した。その結果、開発したモデル教材は、OJTを実施する指導者に「使ってみたい」と思わせることができた。ただし、教材を利用する側の学習意欲や満足度を上げるためには、教材内容を詳細に説明する文章や図表の工夫が必要なことも明らかとなった。今後の課題として、本モデル教材のデ
ザイン手法を確かなものにするためにより多くの形成的評価者を得ること、モデル教材の質を評価できる評価方法を再検討すること、そして筆者の専門である医療従事者のためのARCSモデルを提案できることを挙げた。
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鐘ヶ江力(2012)高等教育機関におけるeラーニング活用向け支援サービス構築ツール開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
近年、高等教育機関における教育へのeラーニング活用はこれまでの少数の意欲的な教員が先進的な取り組みとして実施していく段階から、ITにそれほど詳しくない一般的な教員も含めた全学的な活用への段階へシフトしている。一方でそれを支援する学内組織やスタッフはまだ十分とは言えず教員の取り組みへの支援をどのように計画し提供していくかが大きな課題となって
いる。本研究では、教育におけるeラーニング活用の課題を踏まえ、eラーニング導入を担当したサ
ービスベンダーが、顧客である教育機関へ対して導入初期以降に教育の改善を目的とした支援サービスを再構築する提案を行うためのツールを提供する。
本研究では、支援サービスによって、教員が提供する教育に影響を与えることができるかという関連付けを
ID(インストラクショナル・デザイン)理論をもとにして、ADDIEモデルによる再構築プロセスを定義し、分析フェーズでは鈴木らが提唱したeラーニング質保証レイヤーを用いて整理したチェックリストを構築し、それによる分析結果を元に必要なサービスの種類(サービスタイプ)と実際の提供内容(サービス事例)を決定するツール開発の経緯並びにツールを使用した形成
的評価とフィードバック、改善点の検討について述べている.
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上田勇仁(2012)高等教育機関におけるProject Based Learning 設計支援ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
本研究では,高等教育機関におけるプロジェクト型学
習の利用促進を目指し、プロジェクト型学習に
必要な要素を取り入れた授業設計の支援ツールの開発をおこなう.本研究の目的は以下の2点である.
1)プロジェクト型学習の設計を支援するツールの先行事例を調べ,どのような課題があるのか調査する.
2)1)の調査などを参考にプロジェクト型学習を設計するためのプロジェクト型学習設計支援ツールを設計し開発する.条件を指定して.プロジェクト型学習の設計を支援するためのウェブサイトを確認した.日本の高等教育機関に所属する教員がプロジェクト型学習の設計を支援するためのツールとしては以下の課題があ
る.
1.
初等中等教育の授業を対象としたウェブサイトしかない.
2.
事例が初等中等教育に限られている
3.
授業を設計するためのシートがないウェブサイトがある.
4.
シートを記述するための解説がないウェブ
サイトがある.
5.
練習をする機会がないウェブサイトがある.
6.
設計したシートを確認するためのチェ
ックリストがない.本研究では,これらの課題を達成するためのプロジェクト型学習設計支援ツールを
開発する.先行研究や先行事例を踏まえ,
プロジェクト型学習設計支援ツールを作成した.作成したツールに対して教材設計の専門家から意見をもらい,再度設計し直した.プロジェクト型学習設計支援ツールは.プロジェクト型学習の授業を設計するための「プロジェクト型学習設計支援シート」.設計支援シートの記入方法を解説する「プロジェクト型学習設計支援ガイド」.設計支援シートに正しく記入できたかどうか確認するための「プロジェクト型学習設計支援チェックリスト」という3つの形から成り立つ.
作成した
プロジェクト型学習設計支援ツールを高等教育機関に所属する教員の方に,利用してもらい,
設計支援ツールにつてヒアリング調査をおこなった.調査の結果から,設計支援ツールを使って,プロ
ジェクト型学習の特徴を踏まえた授業設計を完成することが確認された.このことから,プロジェクト
型学習設計支援シートを記入していくための支援ガイドに有用性があると考えられる.また,プロジェ
クト型学習を設計する際に,事例が参考になったという意見をもらったが,練習する機会はそれほど,
参考にならなかったという意見があった.高等教育機関に所属する教員のため,練習がなくても,事例
があれば,設計支援シートを記入していくことができるのではないかと推察される.また,インタビュ
ーの結果,プロジェクト型学習の導入に対する意欲の向上がみられる意見があった.
今後の課題として以下の2点があげられる.
1)
高等教育機関におけるプロジェクト型学習の実態調査
についてさらなる調査をおこなう.今回の調査では,文献調査を主に実施したが,実際の授業現場での
調査をおこない,どのような設計の要素が,学習にどのような影響を及ぼしているのかについて,さら
に調査を進めたい.
2)
作成しているプロジェクト型学習設計支援ツールの改善をおこなう.
形成的評価の結果を参考にプロジェクト学習設計支援ツールの改善をおこなう.改善のなかでは,設計支援ツールをe-Learningとして作り直し,より効率的に授業設計ができるようにする必要がある.
さらに,被験者の数を増やし,設計支援ツールを使ってプロジェクト型学習の要素を踏まえた授業設計
ができるかどうか検証をおこなう必要がある.
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石田百合子(2012)キャリア・コンサルタント向けコンサルティング補助ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
近年、キャリア・コンサルタントの社会的必要性が高まっている。現在、厚生労働省が指定するキャリア・コンサルタントの養成能力評機関が10団体を数え、有資格者は2011年には70,000人を超えている。しかし、キャリア・コンサルタントに期待する内容は幅が広がり、深まっている一方、現在のキャリア・コンサルタント達がその期待に応えきれていないという現実がある。筆者は今回、厚生労働省の報告書から彼らへの期待と現状とのギャップ、また養成能力評価機関等で現在行われている講習会を調査した。そのうえで学習の
場が少ない知識・情報を抽出し、これらの情報を集約した補助ツールを開発することで、彼らの資質向上に貢献し、クライエントニーズに対応できるスキル・知識を身につけることができると考えた。上記調査の結果、彼らの活動領域によって重視される必要知識に差があること、養成能力評価機関によって行われている
研修は、内容、量ともに差があることが分かった。さらに人事労務の法律知識に関する講習会は、いずれの
機関もほとんど実施されていないことが分かった。そこで、今回開発する補助ツールではキャリア・コンサルティングの基本ステップに関わる知識を全体的に網羅したうえで、人事労務(ワークライフバラ
ンスを含む)に関する法律知識、彼らが組織内で意識啓発を行うために必要な組織に関する知識、また彼ら自身の自己研鑽やキャリアアップに関する情報を集約することとした。(第3章)なお補助ツールの設計・開発は、インストラクショナル・デザインの基本プロセスであるADDIEモデルに基づき実施した。補助ツールは業務のなかで必要なときにすぐ利用できるようにするため、目次機能を目的別と相談過程のステップ別の2
種類を用意することにした。また、コルブの経験学習モデルのなかにある「省察」を促す目的で補助ツールの1機能として自己チェックリストを加え、自身のコンサルティングを振り返り、知識が不足している点を確認できるようにした。
自己チェックリストは、特にクライエントから質問されることの多い内容とコンサルティングを行う際の前提知識である25項目に絞って質問項目を作成した。作成したモックアップを、実務者を対象に形成的評価したところ、自己チェックリストと情報サイトとの連動
の必要性と、自己チェックリストの質問内容をコンサルティングで起こりうる具体的表現が良いとの意見が挙がった。更に彼らのキャリアアップに関する情報提供の充実や、掲示板を通じて有用なセミナーの情報共有を求める意見があった。開発フェーズ(第5章)では、上記評価を踏まえてプロトタイプの開発を行い、専
門家レビューを行った。本研究では、現状のキャリア・コンサルタントに不足する知識・スキルを抽出し、学習機会の少ない内容を包含した実務補助ツールを作成することができた。これは、あるべき姿に対して現状を理解し、その差を埋めるために学習するという研修の定義に沿ったものである。
今後、更に多くの実務者に使ってもらうことで修正を重ねながら、頻繁に最新情報を更新しながらユーザーニーズに応えていく必要がある。更に自己チェックリストによるチェック結果を多く集めることで、活動領域毎での特徴を分析し、コンピテンシーリストを作成することで、彼らが異なる領域で活動を開始する際の知識確認として活用できる可能性がある。
また今回の開発工程は、事業部制の組織において管理部門で求められる知識スキルが事業部ごとに差異がある場合でも一定水準を満たすための学習ツール開発に
応用することも可能であると考える。(第6章)
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大石奨(2012)ICLS講習会におけるインストラクターが持つ基本教授技術の明文化と共有促進.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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石井嘉明(2012)eラーニングにおける柔軟な協調学習環境の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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野田啓子(2012)大学事務職員を対象とした学習支援職務ミニマム・スタンダードおよびeラーニングプログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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松橋秀親(2012)障害学生の教育設計における適切な支援サポート業務の研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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Alumeci Adibulileka Korobiau (2012)Incorporating e-Learning on Induction Training of Government Employees in Fiji..Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2011.
詳細はありません。
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岩澤亮祐(2012)活用事例に基づく大学向けコース管理システム利用支援ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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青木太郎(2012)患者急変対応力養成プログラムを受講する初学者に足場作りをするためのeラーニング教材の開発-看護師のACLSコース受講を背景に-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2011年度提出修士論文
詳細はありません。
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麻生和彦(2011)現代数学の講義ビデオをeラーニング教材として活用するためのシステム設計と実装の試み.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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Robert Chagwamtsoka Kalima(2011)Effectiveness of e-Learning materials in institutions of higher learning: Case study of Domasi College of Education in Malawi. (高等教育機関におけるeラーニング教材の有効性:ドマシ教育大学の事例研究) .Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2010
詳細はありません。
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谷口弥子(2011)ボランティア組織運営におけるeラーニング活用に関する一考察.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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片野俊行(2011)SCCに基づいたeラーニングによるプロジェクトマネジメントコースの設計・開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
資格試験と実務との間には乖離があるとよく云われる。企業は、資格取得後、即戦力となることを期待して資格取得教育をする。しかしながら、実際には資格を取得したとはいえ、すぐ実務に使えないことが多い。そこで実践で活用できる現実的な課題直結型の教材
の開発がこの課題を解決する方法の一つであると考えた。
次に、資格取得講座の本来の目的は多くの合格者を輩出することである。現実的な課題直結型の実務講座は、学習意欲の観点から学習効果を高めると考えた。本研究は、ゴールベースシナリオ理論に基づくストーリー中心型カリキュラム(以下SCC)に基づいて実務型資格試験対策用eラーニング講座を設計、開発した結果をまとめ、運用結果を報告するものである。学習者は、SCCをオプションとして自由に学習できるものとした。その結果、26%(34人中9人)の学習者は課題をすべて修了させた。課題をすべて修了させた学習者の模擬試験の平均点は175点中131点とすべての模擬試験学習者平均点124点より高いものであった。課題をドロップアウトした学習者及び課題を実施しなかった学習者25人の中でアンケートに答えた22人のうち14人はSCCを不要と考える一方で8人は仕事や業務に関係あるストーリーであればSCCで学習したいというアンケート結果がでた。本研究の知見を踏まえ、今後ストーリーの改善及び別のストーリーの構築などを提案していきたいと考えている。
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都竹茂樹(2011)インストラクショナル・デザインを活用したメタボリックシンドロームの予防改善に資する遠隔型保健指導プログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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石井武士(2011)集合知を活用した協調学習による実践的プログラミング教育の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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植田清一(2011)マイクロブログを利用したリフレクション支援システムの開発-OJTにおいて若手ITエンジニアを育成する支援システムの検討-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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岡田裕子(2011)STAR遺産モデルに基づいた情報教育教材の設計・開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
本研究の目的は、高校の情報教育においてコンピュータの基本操作およびアプリケーションの操作方法を習得した生徒が、その技術を実生活および職業で活用することを支援するために、教授設計理論に基づいた授業を設計し、情報及び情報機器を主体的に活用する能力を育成することとした。
そこで、経験から考案した授業設計だけではなく、なんらかの指標(教授設計理論)に基づいた授業を設計する必要があると思案した結果、学習者が役割を持って授業に参画することにより、学習者相互作用及びアイディアの創出をとおして、道具としてのコンピュータを現実的な状況に活用する力を育成するために、教授設計理論のなかでも教師をサポートする仕組みである「STAR遺産モデル」を選定し実践を試みることとした。コースの開発は、本大学院の科目「学習支援情報システム論」で使用した環境を借用しmoodle上で開発した。授業実施後の実施記録や今後の課題等は、授業実施後に追記する。
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甲斐晶子(2011)自己調整学習能力形成を促すeラーニングコンテンツ推薦手法の提案~日本語学習者を例として~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
本研究の目的は実用的価値の下がりつつある言語の教授時において,カジュアルラーナー
の増加により従来の教材では対応しきれなくなっている点を明らかにし,既存教材と学習の動機付けが十分でないカジュアルラーナーとの橋渡しとなるツールを開発し,自己調整学習能力の形成を支援し得るか検証する
ことである.
まず先行文献研究および日本語教育の既存教材調査では,自己調整学習を引き出す「結果の期待」「自己効力感」「目標」を認識させるという点において,既存の教授法や教材では十分ではないという結論に至った.
本支援ツールでは主要な機能として「クエスト形式」「言語接触場面の推薦」「推薦文の併記」を採り入れ,
自己調整学習が促せるか試みた.オンラインゲーム等で
用いられるクエスト形式になぞらえて,適度に難易度を調整された複合課題を選択させ,それを達成するために
学習ユニットを学ぶという形式をとった.クエストはある言語接触場面を設定して複数作成しており,レコメンドエンジンを用いて興味や嗜好から好みそうなクエストを表示して選ばせる仕組みをとった.学習者にとって関連性のある目標設定が支援できる.学習ユニットの提示法についても文法機能をただ提示するのではなく,言語使用場面を意識させる推薦文を併記することで,実際の使用イメージを湧くようにした.その他,学習進捗状況の確認や振り返りの機会などを設定することで,より楽しく継続できる学習環境となるよう工夫を試みた.
形成的評価では,既存の教材でも本ツールを併用することで目標設定支援や達成感を味わう体験を繰り返させることができ,より自己調整学習能力を適用させる学びを支援し得る可能性があることが示唆された.さらなる機能改善については今後の課題とする
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菊田 美里(2011)「企業内教育における対面型研修の形成的評価の質を高める研修観察支援ツールに関する研究」『熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文』
企業内教育に従事する多くの研修担当者は、インストラクショナルデザイン等の教育に関する専門知識を有していない。そのような研修担当者が研修評価のために研修観察を行っている。
個人的な経験や好みだけを頼りに行う観察によって獲得する情報には、当然のことながら研修担当者によって偏りが見受けられる。また、観察した事象の良し悪しを判定する軸も個々人で異なり、同じ組織内であっても観察者が異なると判定結果だけでなく、判定の項目や基準さえも大きく異なるといった混乱が生じている。このような状況では研修品質の担保は難しく、組織や従業員の問題解決に寄与する研修の安定した提供は困難である。そこで、インストラクショナルデザインの知見に基づき、研修品質を担保するためにまず押さえるポイント、確認方法、手順を示したハンドブックとチェックリストを開発した。また、確認した結果や結果の根拠を記録するためのシートを開発した。開発物はエキスパートレビューによって内容的妥当性を確保し、1対1評価及び改善によってツールの明瞭
性、影響力、実現性を高めた
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堤宇一(2011)ILT(Instructor-Led Training)手法による職業人教育訓練における教育効果測定レベル1評価のための測定ツールの開発研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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西本彰文(2011)eラーニング質保証レイヤーモデルに対応した優先度指標による授業改善方略提示ツールの開発・評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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橋本賢一(2011)GBS理論を用いた失敗事例から学べるシナリオ型教材制作の試み.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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平田良作(2011)大学の情報教育における学習意欲デザインの実践~ARCSモデルをベースとして~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
詳細はありません。
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丸田拓(2011)教育分野における日本の著作権法の規定~韓国、中国、ベトナムの著作権法との比較~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
我が国の著作権法第1条には、著作権法の目的が「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」と規定されている。著作権については、「著作権者等の権利を保護する」ことと同時に「文化的所産の公正な利用に留意すること」及び「文化の発展に寄与する」ことについても十分に配慮する必要があると考えられるが、著作権法に規定されている条文には、著作権者の権利保護に力点が置かれたと思われる規定も少なくない。
著作権者の権利保護に力点が置かれることで、「文化的所産の公正な利用」や「文化の発展」がややもすると疎かにならないとも限らないのではないかと考え、
本研究では、「文化の発展」に大きな影響がある教育分野に焦点を絞り、著作権法を取り上げることとした。
また、韓国、中国、ベトナムの教育分野における著作権法の規定と比較することによって、教育分野における日本の著作物利用に関する規定の特徴を明らかにした。さらに、研究した著作権法に関する内容をまとめ、著作権法の学習を始めようとしている者に対する教材の開発を行った。
その上で、通信技術の進歩が早い現在においては、アメリカのフェア・ユース規定のように抽象的な概念規定を設け、その基準の具体的な判断は判例の蓄積により対応できることを提言した。そうすることによって、eラーニングなどの遠隔教育は今より著作物を広く利用できるようになるのではないかと示唆した。
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米山あかね(2011)インストラクショナルデザイナー養成プログラム(初級)の設計.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2010年度提出修士論文
eラーニングのコンテンツ開発においては、インストラクショナルデザイナーなどのeラーニング専門家の存在が不可欠である。本研究では、サイバー大学におけるインストラクショナルデザイナーと協働で業務を行い、またインストラクショナルデザイナーの候補者でもあるアシスタント・インストラクショナルデザイナーの育成に焦点を当てる。アシスタント・インストラクショナルデザイナーに必要なコンピテンシーを検討し、育成するためのカリキュラム、コース、教材を開発した。インストラクショナルデザイン(ID)を用い、IDの専門家やその候補者を育成するための実践的なプログラムは、まだ日本においては少ない。本研究では、IDの専門家の候補者を育成するプログラムの不在による各種の問題を解決するために一連のプログラムの設計・開発を行った。また、実践的なスキルを育成するためにリフレクションなどの機会を積極的に設けるなどの工夫を行った。本研究により得られたアンケート調査により、アシスタント・インストラクショナルデザイナーの実践的なスキルを効率的・効果的に育成できたかどうかを明らかにする。
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Faridah Binti Ahmad(2011)Guidelines for Creating Effective e-Learning Content to Introduce a New Teaching Style in High Schools in Malaysia.Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2010
詳細はありません。
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北村隆始(2010)「ストーリー中心型カリキュラムによる実務家育成教材の設計・開発」『熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文』
実務家育成教材の開発において,実践的な教育を目指すためには,実務が容易に想像できる何らかの理論に基づいた教育カリキュラムが求められる.
本報では静脈注射の看護指導者向けインジェクショントレーナー養成コースをもとに受講者における実践的な省察を目標とし,ゴールベースシナリオ理論に基づくストーリー中心型カリキュラム(以下SCC)の導入を図った.
多岐にわたる学習成果を連携してカリキュラム化した例は少ない.SCCを利用した先行研究を調査し,その手法を援用して看護師向け実務教育に特化したカリキュラムを設計・開発を行ないその結果を報告する.本報によって得られた受講者アンケートよりSCCの満足度と必要性が高い結果となった.また,従来型SCCにおけるフィードバックをSNSの活用で,相互に閲覧可能な協調学習にした結果,未報告者も気づきを得て,満足度と必要性が高い結果となった.これらの知見を元に,今後のカリキュラムを改訂し,具体的な方策,内容等を提案していく
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Paul Ungilamwagha Mwasikakata Miamba(2010)Using a blended-learning approach in induction training of school inspectors.Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2009
詳細はありません。
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Fanina Nur Widianto(2010)Implementation and Evaluation of e.Learning Safety Course at Industrial Vocational Training Center in Indonesia.Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master’s Thesis in 2009
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吉田明恵(2010)インターネット型大学院におけるオンラインオリエンテーションの改善提案―学習者の立場から―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
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八木秀文(2010)事前テストにおける学習者状態を考慮したフィードバックの与え方と学習効果向上.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
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森田晃子(2010)自主的な学習を促すIDに基づく学習ポータルの設計―MR教育者が学習する「場」を考える―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
製薬業界においては,MR医薬情報担当者:Medical Representative)の教育に変革が求められているため,MR教育者の資質向上が叫ばれている.近年の医学・薬学の急速な進歩およびITの進化などにより,MR
活動に必要な情報や知識の量が急速に増加しており,従来の講義中心から,問題解決型の学習者中心の教育方法が求められるようになった.そのためMR教育者に
は,これまでとは異なる知識,スキル,マインドが求められている.MR教育者の資質向上策の1つとして,財団法人MR教育センターは,MR教育者のためのセミナーを開催しており,筆者はその講師をしている.当然ながら,セミナーを1度受講するだけで,資質が向上するわけではなく,日々の業務を経験する中で学習することが多いため(Kolb,1984),その部分を何かサポートできないものかと考えていた.そこで,筆者は,MR
教育者の業務および学習をサポートする「ポータルサイト」を開発すれば,資質向上策に貢献できると考え,本研究において,MR教育者の学習を促すポータルサイト設計に必要な着眼点を探り,プロトタイプ開発を行うこととした.ポータルサイトの設計・開発は,インストラクショナル・デザイン(Instructional Design :ID)の基本プロセスであるADDIEモデルに基づき実施した.
分析のフェーズ(第3章)においては,
(1)
MR教育者のニーズ分析,
(2)
ベストプラクティス分析,
(3)
理論的背景の調査を実施し,
考察した.
その結果,ポータルサイトの有効性を見出し,設計時の着眼点として,①ユーザー第一主義であること,②業務に役立つコンテンツを充実させること,③コミュニケーションツールを設置すること(実際の活動との
連動は必須である),④本サイトが「省察」の場となるよう“問いかけ”を行うこと,⑤MR教育者のあるべき姿を提示することが必要であることを導き出した.
設計のフェーズ(第4章)においては,設計時の5つの着眼点を基にコンセプト設計を行い,ポータルサイトのデザインを作成した.開発のフェーズ(第5章)においては,プロトタイプの開発を行い,実施および評価のフェーズ(第6章)では,MR教育者,営業部長,専門家に対する形成的評価を実施し,コンセプト設計(仮説)の検証を実施し,ポータルサイトの改善案および運用に向けたヒントを得た.本研究の成果(第7章)としては,設計したポータルサイトは,コミュニティ運用時のしかけに工夫を要するが,業界ニーズをほぼ満たすものであった.今後の課題としては,改善案に
基づき,ポータルサイトの修正およびコンテンツの加行い,同時にMR教育者のあるべき姿(コンピテンシー)の見直しを実施する.また,ポータルサイトを長期的に運用し,MR教育者の行動変容(MR教育者の資質向上に貢献できたのか)について,評価を行いたい.
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村木純偉(2010)OPTIMALモデルによるeラーニング作成支援ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
序論
高等教育機関等でのeラーニングの導入が進んでいる。それによって、今まで、インストラクショナルデザイン(ID)やeラーニングについてほとんど知らなかった教員もeラーニング教材を作成しなくてはならない場合も増えてきた。しかし、ADDIEモデルやそれから派生した
Dick & CareyやKempのISDモデルなど、多くのIDモデルが提唱されているが、簡単にノウハウを学べ、すぐに実践に活用できるようなIDモデルはありそうでない。例えば、初心者向けと言われているDick & Careyでは
ステップの数が多く、開発にかかる時間も長い。さらに、現在、eラーニングを導入している機関の多くは対面授業とeラーニングのブレンド型授業の形態をとっているが、ブレンド型用eラーニングの環境をデザイン
のためのIDモデルはほとんどない。このような状況にふさわしいIDモデルとして提唱されたのが、OPTIMAL
(最適)モデル(鄭仁星ほか2008)である。OPTIMAL
モデルとは、LMS(Learning management System)を利
用したIDに必要なタスクやステップを体系的に含んだ
IDモデルであり、以下の4つの大きな特徴を有する1)実践的である。2)タスク型モデルで、それぞれのタスクについて何をするか、そしていつタスクを終了するのかが示されている。3)タスク型デザインを用いることでデザインや開発にかかる時間が短い4)ブレンド型学習のデザインに簡単に使える。また、手順型のモデルとは違い、手順を重視せずに、どのタスクからでも着手できるようになっており、IDの専門家ではない人でも、簡単かつ短時間で、すぐれたブレンド型eラーニングの環境をデザインできるように考えられたID
モデルである。しかし、このモデルが示された「最適モデルによるインストラクショナルデザイン」(鄭仁星ほか2008)が出版されたのが2008年2月であり、このモデルに基づいた教材の開発や、研究はGeNiiやERIC
では今のところ報告されていない。そのため、OPTIMAL
モデルはID専門家ではない人にも簡単にブレンド型eラーニングの環境をデザインできると謳っているが、初学者にとって十分に親切かどうかはまだ分かっ
ていない
。
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増山純二(2010)BLSの研修モデルの開発~運動技能の再生の検証~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
詳細はありません。
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朴恵一(2010)ゴールベースシナリオ(GBS)理論に基づく情報活用力育成教育の実践.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
序論
近年、情報リテラシーの育成は、大学における
重要な学習課題の一つとなっている。文科省中教審の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」1においては、学士課程共通の「学習成果」の参考指針として「情報リテラシー」が挙げられており、「ICTを用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに則って効果的に活用することができる」能力の育成が求められている。しかし、様々なところで指摘されている通り、従来の情報教育は、コンピュータやアプリケーションの「基本操作の習得」に止まり、「情報機器を使いこなす力」「情報を活かす力」を十分に育成できているとはいえない。単なる「使い方」学習に止まるのではなく、現実の状況の中で、目的に応じて情報機器を活用し、必要なデータ処理や文章作成、資料作成等を行える能力(=情報活用力)の育成が求められている。例えば、ワープロソフトであれば、フォントの変更やページの余白サイズの変更方法のスキルを習得することに止まっては十分とはいえない。重要なのは、それらの機能を活用して、ビジネス文書の体裁に則り、業務報告書を作成できる、などの現実的な活用力を身につけることである。また、表計算ソフトであれば、SUM関数やグラフの作成方法を習得することに止まるのではなく、データの意味に応じた適切な表とグラフを作成し、報告書をまとめられる能力を育成することが重要だといえるだろう。
では、情報を活用できる力の育成に主眼をおいた、効果的・魅力的・効率的な指導法をどのように開発すれば良いだろうか。情報活用力とは、情報知識やスキルを現実の状況の中で活用し、ある目的の作業を遂行する能力である。これらの能力を育成するためには、
教科書通りの操作手順の習得や、脈略のない練習問題を繰り返すだけでは難しい。より現
実的な場面設定の中で、学習者自らが試行錯誤しながら、情報を活用しつつ、一つの意味ある作業に取り組むというプロセスが大事ではないだろうか。そのような問題意識から、インストラクショナルデザイン理論の一つであり、シナリオ型の教授法であるゴールベー
スシナリオ(GBS)理論の活用に着目した。
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早川勝夫(2010)メタ認知向上を目指した新たな成人学習モデルの提案と検証.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
本論文は、成人学習において、メタ認知を向上することで学習成果が向上する成人学習モデルを構築し、その効果を検証したものある。成人学習における学習モデルとして、正統的周辺参加、経験学習モデルなどが提案されているが、本論文では、成人学習における自己調整学習を基にした学習モデルを提案し、提案した学習モデルの正当性を一企業における実践で検証を行った。
成人学習における学習モデルは複数存在するが、成人学習者個々の認知、および、メタ認知を向上することで学習成果を向上するモデルは見当たらない点に着目し、新しい学習モデルを提案した。提案した学習モデルは、成人学習において、学習目標を明確にし、他者を観察する力をつけ、自己評価力を高めることでメタ認知を高めながら実践し、その過程で、リフレクションを起こしていく学習方法である。
このモデルを検証するために、本学習モデルに
基づいた教育実践を行った。
対象はMR
(医薬情報担当者:Medical Representative)を目指す、ある企業に入社した新人社員である。この新人社員に成人学習モデルに基づく実践共同体による教育を実施した統制群と、本学習モデルを活用して設計した教育を実施した実験群2種を設け、学習目標到達度(学習6、9、12、15ヶ月後)の比較、対象社員の上司によるアンケート評価(学習3ヶ月後と1年後)、そして、顧客訪問を行った際の「宣伝回数」を用いたパフォーマンス評価(学習直後から1年間)について検証した。その結果、本学習モデルに基づく学習は、知的技能、運動技能と態度の学習項目において効果的であることを確認した。言語情報の学習項目への影響は
他の学習成果の発現時期とは異なるが、成果のあることが確認できた。また、学習成果の運動技能において、学習目標の設定方法と学習モニタリング機会が学習成果に関与することも確認できた。加えて、社会人基礎力における柔軟性のコンピテンシーに成果があることも確認できた。これらにより、本学習モデルによる学習は、学習者の成長を早める可能性があることが示唆された。
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佐藤淳志(2010)トレーニング・ニーズアセスメントのためのID活用型インタビュー手法に関する研究―人材育成事業者における実践を通じて―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
本研究は、人材育成事業者に対して解決策を希望する顧客(相談者)が、組織の目指すゴールや組織の現状
を適切に把握できているかの確認を行う手法を構築し、把握できていない場合の明確化手法についても提案するものである。相談者は、学習者本人ではなく、企業の人材育成部門の担当者としている。研究成果物として、以下の構成要素を作成した。
(1)
相談者が、組織のありたい姿を相談者が分かっているか、の確認方法
(2)
相談者が、組織の現状を分かっているか、の確認方法
(3)
相談者が、ありたい姿と現状のギャップを分かっているか、の確認方法
(4)
相談者およびその関係者が、人材育成事業者によるバランスド・スコアカードおよびインストラクショナルデザインをベースとしたアカウントプランの作成を通じて相談者が望むありたい姿(ゴール)を明確にする方法
(5)
相談者およびその関係者と人材育成事業者による現状分析を通じて、組織の現状を明確化にする方法
(6)
相談者およびその関係者と人材育成事業者によるありたい姿と現状のギャップ分析により、顧客が直面するギャップを明確にする方法
本研究の成果を用いることにより、人材育成事業者と相談者が、相談者の組織のありたい姿、現状を明らかにし、適切な人材育成施策を検討することができるようになる。今後、この手法を解決策検討前のプロセスに適用することにより、最適な人材育成施策の選択に
貢献できると考えている。
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児玉あゆみ(2010)ストーリー中心型カリキュラム(SCC)におけるリフレクション手法.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
詳細はありません。
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小野達也(2010)コンセプトマップを活用した非同期型eラーニング学習の設計―構造的理解を深めるツールとしての効果的な導入―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
1970 年代にノヴァクらによって開発されたコンセプトマップは,これまでは主に学校の
授業において,生徒たちの構造的理解を促す目的で導入されてきた.コンセプトマップを
同期型 e ラーニング学習に導入する場合には,教授者が学習者に説明を行なったり,描き
方の練習をさせたり,取り組ませることがリアルタイムでできるため,教室での取り組み
とそれほど大きな違いはないと考えられる.
これに対して,非同期型eラーニング学習の場合には,コンセプトマップの解説,描き
方の練習,作成への取り組みという仕組みを e ラーニング教材を設計する段階で盛り込む
ことが必要となる.しかし,これをうまく設計できれば,非同期型 e ラーニング学習にお
いても学習者の構造的理解を促すツールとしてのコンセプトマップを導入することができ
るのではないかと考えた.
そこで,本研究では,オンラインによるコンセプトマップの取り組みを既存の非同期型
eラーニング学習に導入するための教材を開発した.そして,学習者による形成的評価の
結果,非同期型eラーニング学習にコンセプトマップを作成させる取り組みを導入する際
の 3 つのポイントを掴むことができた.
1.コンセプトマップを作成するときのルールを明確にし,練習を通して学ばせる.
2.コンセプトマップを初めて経験する学習者に配慮し,学習時に作成させるマップ
と同程度の複雑さをもつ練習を入れる.
3.コンセプトマップを独力で作成させるときの方法の一つとして,概念ラベルだけ
でなく穴埋め式のリンクワードを提示する方法が効果的である.
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市橋貢(2010)「学習管理システムにおける学習者相互の「つながり感」を高める機能に関する研究」『熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文』
詳細はありません。
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阿部聡(2010)TV電話を利用した遠隔対面教育手法の実践ガイドラインの開発と評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
詳細はありません。
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斉藤和郎(2010)教授法改善のためのナレッジマネジメントシステムの開発―学士課程教育におけるジェネリックスキル育成に焦点を当てて―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
詳細はありません。
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宮下伊吉(2010)e-learningによる大学入学前の文章トレーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2009年度提出修士論文
1-1.
本研究の背景
現行の大学入学前の文章作成指導の問題点は、学習目標が入学後の文章表現指導と接続していないことである。本研究の問題意識は、多くの大学が実施してい入学前教育の文章作成指導が、入学後の初年次教育で行われている文章表現指導につながるような学習目標を設定できていないのではないかという疑問からはじまった。そして、大学入学前の文章作成指導を補完するような自習教材を提供することによって、入学前教育の改善に貢献できないだろうかと考えたのが、本研究の始まりであった。近年、わが国では、大学入学者の基礎学力不足や推薦入学・AO入試等の広がりを背景
として、入学前教育を実施する大学が増加している。1990年代から2000年にかけて、大学設置基準の大綱化や、18歳人口急減期に入り、多様な入試(尐科目入試など)を行う大学が増えたことなどから、大学入学者の基礎学力不足の問題がクローズアップされるように
なった。私立大学では、2000年度より推薦入試による定員枠の規制が入学定員の半数まで緩和されたこと(短期大学では同年撤廃)とAО入試の普及により、入学前教育を行う大学が増えはじめた。
1999年の時点において、すでに国公立大学16大学17学部、私立大学90大学138学部、合計106大学155学部で推薦合格者に対する入学前教育が行われている。(山本2001)その実施内容で最も多く実施されているもの、小論文・レポート作成であった(34大学)。その次多く実施されている内容が読書感想文であった(24大)。どちらも同じ文章作成の課題とすると、文章を書かせ、提出させるという入学前教育は、106大学中58大学で実施されていることになる。現行の入学前教育の実態は、400~4000字のレポートを書かせ、添削・コメントするケースが多い。河合塾が全国の国公立大学AO入試実施校に行った「AO入試・入学前教育に関するアンケート」調査結果報告書(2008)では、入学前教育でレポート作成の課題を課す19校について、実施内容を調べている。その内容をみると、19校中7校が実施しているケースが、大学が指定または複数提示した課題図書を読んでレポートを提出させる課題図書型であった。レポートを書かせ、添削・コメントするという入学前教育は、一般的な実施内容であると捉えられている。その一方で、大学入学前に提出されるレポートを
添削する大学側には負担が生じている。
大学入学前の段階で、学内の教員にまだ入学していない学生のレポートの添削を求めることは、教員の負担増につながるからである。そのため、レポートの添
削指導を予備校などの外部に委託する大学が増えている。
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Sakayi Musango Musopole(2010)Using e.Learning to Expand Opportunities for Learning Physical Science at Secondary School Level in Malawi.Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master"s Thesis in 2009
詳細はありません。
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Stanley Daniel Adamson Kwerengwe(2010)Possibility of Asynchronous e.Learning for Teacher training . A Case for Malawi.Graduate school of social and cultural sciences instructional systems, Kumamoto University, Master"s Thesis in 2009
Acknowledgements
An effort as farreaching as that taken on by the a
uthor could not have been possible
without the invaluable assistance of many talented
individuals. Mr. Austin Phiri, Mr. Staliko
Chibwe and Mr. Ezekiel Kachisa provided continuous
advice, support, and thoughtful
expert review throughout the development and produc
tion of the eLearning instructional
material.
In addition, I wish to acknowledge the tremendous e
fforts of several others:
Web site expert, Mr. Kogure.
Dr. Tokumura Tomoaki for his technical advice and a
ssistance on installing the eLearning
system and uploading the instructional material to
web servers.
Mr. H. Kachale, Principal, Kasungu Teachers Trainin
g College, for his permission to use
the students and facilities at his institution.
Professor Fujio Ohmori provided academic advice and
support during the design and
development of a research proposal paper, as well a
s before, during and after all research
activities. Professor Katsuaki Suzuki and Dr. Junko
Nemoto provided very useful comments
about the draft copy of this thesis.
JICA Okinawa for their financial assistance towards
the author’s education.
Finally, the author is deeply grateful to all Kasun
gu Teacher Training College IPTE 5
teacher trainees that participated in the one and h
alf monthlong online studies, meetings,
and proceedings; provided me with live and online t
estimony which assisted me in
developing this comprehensive report
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村嶋亮一 (2009)教授系列と指導方略の類型化に基づく市民参加型講座のためのコーステンプレートの設計および試作.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
市民参加型による生涯学習の分野において,教育の専門家ではない一般の市民講師が,eラーニングコースを手軽に開発し提供できるよう,類型化された教授系列と指導方略に沿って学習活動の組み立て方や指導の進め方等を簡単に整理できるコーステンプレートを試作した.コーステンプレートは,くまもとインターネット市民塾で開催されているいくつかのコースに適用することにより形成的評価を行い,その効果の検証と改善に取り組んだ.
<キーワード>インストラクショナルデザイン,テンプレート,生涯学習,Moodle
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多賀万里子(2009)仮想学習環境における問題解決型学習を促進するための分析的ルーブリックを使った自己モニタリングと自己アセスメントの試み.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
仮想学習環境(VLE)では,LMS の機能的な制約や,学習が非同期に行われるため,学習者から
は他の学習者やTA,教員の姿を見ることはできない.学習者はたいてい孤立した状態である.
LMS にて掲示板の類のコミュニケーションツールを提供しているとしても,対面教育のように,
学習者は他の学習者の行動を観察し自分のやり方を改善する,自身の学習に採用する,または模
倣するというような機会はない.この研究は,VLE における問題解決型学習を行う学習者が抱え
る,上記のような困難さへの対策としての,分析的ルーブリックを用いた自己アセスメントが学
習者に自己調整を促進する効果を測定することを目的としている.
過年度履修者に対し提供したルーブリックは,コースの学習目標と教材提示内容をもとに抽出・
作成した.形成的評価の結果,提出するプロダクトに対するルーブリックを用いた自己アセスメ
ントは履修者にとって一定の効果が認められた.特に,ルーブリックの利用はVLE だけでなく対
面授業でも効果があるだろうとの評価を得た.一方で,プロダクトに対する履修者による自己評
価と教員による評価に差異が見受けられた.それは,教員による提出プロダクトの評価は学習者
より総じて低い,というものであった.このような事実から,自己アセスメントのツールとして
の改善が求められた.
この研究は,熊本大学大学院でのVLE での問題解決型学習の経験に基づいている.対象科目は,
当該専攻の必修科目であり,履修者は19 名である.筆者は,過年度履修者の形成的評価を踏ま
え,過年度履修者の提出したプロダクトに対し,グラウンデッド・セオリー・アプローチを一部
流用して,どの部分に間違いが多いか,どのような間違いをしているか,何に気が付いていない
か,などの分析を行った.
研究対象科目における学生が提出したプロダクトを分析した結果,筆者は,教員が想定する「一
連の学習行動に基づく自己アセスメント」および,課題提出における「プロダクトの記述内容の
表現方法に関する自己アセスメント」が学習促進に有益である,という仮説を立て,これらの自
己アセスメント項目と達成レベルを,ルーブリックのクライテリアとスタンダードとして,履修
者の提出したプロダクトから抽出する手順を開発した.さらに,学習者に自己調整を促進させる
ために,ルーブリックを用いた自己アセスメントのコース実装,改善を提案した.
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曽山夏菜 (2009)大学受験予備校でのモバイルラーニングにおける英語学習支援.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
本研究では、携帯電話の英語学習サイト「ケータイゼミナール」内のコンテンツ「とみ単」を使った学習活動を分析し、大学受験のための学習に携帯電話教材を導入する事の可能性を探った。研究にあたっては、インストラクショナルデザインの観点から携帯電話教材を分析し、実験として予備校生の小集団に4週間使用させた。実験後半の2週間は、先行研究とインストラクショナルデザインの観点とをもとに、教員によるメール返信や生との学習状況に関する情報提供など、学習効果を上げるための支援を行った。テスト・アンケート・インタビューの結果から「携帯電話教材の有効性」「習熟度による学習効果の違い」を検証したところ、教材や支援に対しては概ね高評価が得られた一方で、上位者と下位者において、学習方法や期待・不安の内容に違いが見られた。これらをもとに、学習者の習熟度に応じた支援を行う事によって携帯電話教材を有効に活用する方法を検討した。
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天木暁子(2009)自己主導的な学習内容選択を支援するMoodleの課題分析図UIの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
近年,学校の授業や企業研修においてさまざまなeラーニングが導入されている.一般的に,ある程度の規模が大きいeラーニングを行う際は,教材や学習者の管理のためにLMS(Learning Management System)と呼ばれる基盤ソフトウェアを利用する.eラーニングの多くは自学自習スタイルであり,成功のためには学習内容の選択,学習方法の選択,進捗管理(自己評価)といった自己主導学習スキルが必要になる(鈴木2006).そこで筆者らは,学習者による自己主導学習を支援する視点に立ち,構造化はするが,系列化は学習者にゆだねることとし,課題分析図に基づくeラーニングシステムを開発した(高橋ほか2007a).代表的な機能に,課題分析図から学習項目の選択をする「課題分析
図インタフェース」があり,自己評価と学習内容の選択の支援において,有効性が示唆された.しかし,e
ラーニングシステムとして広く利用されるためには機能的に不十分で,汎用性に欠けるのが課題であった.
そこで本研究では,オープンソースLMSとして普及しているMoodleで動作する課題分析図ユーザインタフェースと,課題分析図を作成するオーサリングツールを開発した.これにより,一般的なLMSの機能を利用
しながら,自己主導学習を支援する機能を拡張することが可能となり,自己主導学習支援の応用可能性が高まると考えた.教員による形成的評価の結果,全員がオーサリングツールを使って10分程度の時間で課題分析図を作成できた.また学習者による形成的評価の結果,課題分析図UIの操作性を問う5つの項目について,全ての平均が4.25以上であり,問題なく操作できることが示唆された.今後,様々なブラウザに対応するための課題分析図UIのFlash化と,高橋ほか(2007a)
のシステムで実現した事前・事後テスト機能の実装を行い,長期的な運用による学習効果と自己主導学習の支援効果について評価を行いたい
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羽田邦弘 (2009)教科指導力を高めるための現職英語教員向け研修モデル.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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森和哉 (2009)eラーニング教材におけるページ構造のあり方に関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
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阪口詩織 (2009)知識構築に向けた非同期オンライン・ディスカッションの設計.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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石川久吉 (2009)企業内研修におけるeラーニングコース設計・開発プロセスに対するID活用.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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福田珠希 (2009)eラーニング に求められるパーソナライゼーションに関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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望月真紀 (2009)大学におけるアウトソーシングを活用したeラーニング業務の支援体制についての研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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仲道雅輝 (2009)「科目ガイダンス」VODを基軸とした全学的なe-Learning推進に関わる研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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福島誠也 (2009)eラーニングXHTMLエディタeXeのSCORMテスト作成機能の拡張.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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中嶌康二 (2009)インストラクショナル・デザインに基づいたe ラーニング導入支援者のためのARCS+ATチェックリストの提案.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
詳細はありません。
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志田靖雄 (2008)大学通信教育課程におけるメディアを活用した授業の要件に関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2008年度提出修士論文
1.はじめに
本稿では、国内の大学通信教育課程における「メディアを利用して行なう授業(以降、メディア授業)」の要件について、法令(大学通信教育設置基準、文部科学省告示、通達等)をあらためて確認し検討していくとともに、先行研究に示された項目区分を参考にして整理し、具体的な表現で示したい。
先行研究の多くは課程(program)全体の学修をe-learningで実施することを前提として、組織体制やe-learning授業への取組といった政策のあり方、インフラを含む学習環境などの評価項目を機関レベルの視点で整理している内容である[1][2][3]。しかし国内の状況は諸外国とは異なり、e-learning=メディア授業は法令が規定する授業方法のひとつとして、各々の授業科目や教員毎に導入されてきた経緯[4]があり、また、授業を実施運営する通信教育課程の組織も一部の例外を除き、既存の通学課程に併設されている現状がある。そのため、先行研究の内容をそのまま実践に当てはめ活用することは難しいと考える。
特に国内では、授業の方法が大学設置基準や大学通信教育設置基準、あるいは告示・通達といった法令等で規定され、その遵守が必須であり前提条件となる。その一方で、具体的な表現で示された運用基準などは存在せず、実践レベルで活用できる先行研究も見ることはできない現実を踏まえ、国内の状況に適合する内容となるように検討する必要がある[5]。
本稿では、勤務校での経験や先行研究で整理された項目区分等を手がかりとして、法令順守を中核とした最低限の質保証を可能とする評価項目を、『面接授業と同等の教育効果を有する』観点にも留意しつつ検討していく。
設定した評価項目は、メディア授業の「事前評価」や実施後の授業を事後評価するためのアンケート書式としても利用できるツールとして体裁を工夫し、チェックリストのかたちでまとめていく。また、勤務校で授業を担当する教員の協力を仰ぎつつ、その成果物を実際の授業に適用し、授業内容の改善提案を併せて試行する。
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豊永正人(2008)学習オブジェクトモデル拡張の研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
詳細はありません。
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宮原俊之(2008)高等教育機関におけるeラーニングを活用した教育活動の効果的な組織体制とマネージメントに関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
現在、高等教育には「教育(活動)の多様化」への対応が求められている。そのために
は「教育改善(見直し)」が必要であり、教育活動を構造化し役割分担を確実に行う必要が
ある。そして、これは「eラーニングを利用した教育活動を高等教育機関に浸透させるに
は組織体制が重要である」という点と多くを共にしており、eラーニングの戦略的導入が
効果的であるということが予想できる。これらのことを踏まえ、本研究は、前半で「効果
的な教育活動を行うための支援組織のモデルを提案する」ことを、後半で「提案したモデ
ルの評価」を実施した。前半においては、高等教育機関の構造問題とeラーニング特有の
問題点からも教育活動を構造化し役割分担する必要があることを把握し、青山学院大学が
発表した「eラーニング専門家5 職種」をベースに支援組織のモデル(以下、「日本型大学
モデル」という。)を策定し提案した。そして、後半では、事例研究と実証実験という二つ
の方法でこの日本型大学モデルを評価し、基本的には有効であることを実証した。事例研
究は、国内の4 大学にインタビューを実施し分析した。実証実験は、実際に日本型大学モ
デルを大学におけるeラーニングを活用した授業に適用し運営した。各種アンケートと各
専門家間での情報流通量と方向を測定することで、実際の動きを把握し、機能しているか
どうかで評価した。有効な結果は出たものの改良すべき部分も発見されたことから、改良
に取り掛かり、本論文の最後に改良版の日本型大学モデルを提案した。今後は、さらに実
証実験と事例研究を進めるとともに、組織運営のマネジメントについても研究を深めてい
く必要がある。
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花木喜英(2008)映像の教育効果に関するデータベースの構築とeラーニングへの応用.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
第1章 序論
インターネットを利用している世帯におけるブロードバンド普及率が72.2% 1となり、イン
ターネットでの映像配信は非常に身近なものとなった。「YouTube」2をはじめとした動画配信や
インターネットテレビなどコンシューマ向けのWebサービスにおいて、映像は重要な役割を担
っている。一方、企業内においても、ブロードバンド環境が更に整備され、「Skype」3等のWeb
サービスを用いた遠隔会議やeラーニングでの映像の利用も活発化してきている。
このようにWebを介した様々なサービスの中で欠かすことのできない「映像」という情報伝
達の方法を、教育に利用する事例も増えている。例えば、日本でもOCW4が2006年から開始され、
大学等の教育機関で正規に提供された講義とその関連情報を無償で閲覧できるようになった
が、その中でもpod-castingを含む講義ビデオを公開している例が増えてきている。また、財
団法人AVCC(高度映像情報センター)は「videobrowser.jp」5によってビジネスに役立つ映像
コンテンツを提供しており、独立行政法人メディア教育開発センターによるポータルサイト
「NIME-glad」6では映像を用いた教材を検索し、閲覧することができる。
映像の教育的効果や活用方法については心理学や視聴覚教育の領域ですでに多くの先行研
究がなされているが、eラーニングでの映像活用を前提としている研究はWebでの書籍検索や
「NII論文情報ナビゲータ」7での論文検索では見つけることができなかった。映像は教育コン
テンツを開発する上で重要な要素であるにも係わらず、特に社会人の実務教育や成人教育に関
する映像の効果については、心理学や視聴覚教育の領域でも直接的な研究がないばかりか、関
連する先行研究の体系的な整理や教育的効果の分類もなされていない。
以上のことから、社会人教育における映像の利用については、企業内教育担当者や映像制作
者が経験に基づいて判断しているのが現状であるといえる。
体系的に整理された映像に関する先行研究の情報は、映像制作にコストをどのようにかけるべきか、映像をどのように使うことが効果的であるかについて考える際、大いに参考になるで
あろう。
本研究では、eラーニングにおける映像のより効果的な利用、そしてその促進を目的とし、
映像の教育効果に関する先行研究と入手が可能な教材全てに、その領域や教育的効果、内容を
メタ情報として付与し検索ができるように、データベースを構築した。データベースの利用者
は、主に企業の人材育成担当者、コンテンツベンダ等の教育サービス事業者、大学その他の教
育機関でキャリア教育に携わる者、つまり主に実務教育に携わる者を想定している。映像に関
する先行研究や映像を含んだ教材に関するデータベースによって、情報の公開・共有を図れば、
eラーニングにおける映像の新たな活用方法を見出すことも可能である。本研究の成果が、ブ
ロードバンド時代のeラーニングの教育効果とコンテンツ品質の向上に貢献するとともに、今
後のコンテンツ開発への投資に対する判断根拠の参考資料になることを期待している。
本研究の構成は以下に示す通りである。先ず、第2章では研究方法について述べる。第3章で
は映像の教育的効果について根拠とした文献等と分類方法について言及し、第4章では本研究
で構築したデータベースの概要について述べる。第5章ではデータベースの有効性についてユ
ーザアンケートによって評価を行った結果を示す。最後に、第6章では結論としてデータベー
スをどうeラーニングに応用できるか、その活用例を提言する。
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加地正典(2008)LMSの外部での学習行動を統合するWeb閲覧履歴ツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
インターネットの普及に後押しされ、Web の教育利用が大きく進んできた。コンテンツ
の標準化も進み、学習管理システム(LMS)が登場、学習履歴の管理が行われるようになっ
た。一方で、LMS などの学習環境に閉じないWeb 上の学習行動も増えてきている。Web 上
には多くの教育リソースが存在し、Web ブラウザという簡便な道具がLMS 上のコンテンツ
と外部のリソースを組み合わせた学習を現実のものとしている。
こうしたLMS 外の学習行動はもちろん、LMS で管理される学習についても、学習者自身
が進捗を把握することは簡単でない。学習ペースの自己管理が生命線とも言える遠隔非同
期の学習者にとって、この種のフィードバックは貴重なものである。
これまでにも、Web 上の探索活動を支援する研究や製品が多く存在する。その多くは、
視覚化や自動処理による推薦などナビゲーションの支援を中心としたものであり、学習を
振り返ったり集めた情報を繰り返し参照しながらまとめを行うのには適さない。
本研究では、極力学習者の操作を閲覧行動のみに集中させながらも、納得性の高い振り
返りのフィードバックを提供することを目指した。LMS を中心にした学習活動をモデル化
し、コンテクスト/セッション/インスタンスという単位を定義した。Web の閲覧履歴を
これらに割り当てて提示することを提案する。
具体的な評価プロトタイプの実装として、Firefox ブラウザの拡張機能を選択した。本
研究で開発した“あしあと”拡張機能は、WebCT で提供されているコースの種類をコンテ
クストとして対応付け、閲覧ページ遷移と閲覧時刻、インスタンスからセッションを識別
する。同一セッション、同一コンテクスト内の閲覧履歴は、ある学習目標のための行動で
あり、それらが抽出されていることは、従来のWeb ブラウザにある履歴機能にはない視点
を提供することができる。
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宇野令一郎(2008)ストーリーによる意欲向上を意図した社会人向けオンライン語学学習の設計と開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
はじめに 1 . 1 . 学習者の立場から見た本研究の背景と動機
人は、自分の役に立たないことや興味を感じない事柄については、単位取得や
出世等、何らかの強制が無い限り継続的に学習することは難しい。この傾向は、
社会人が実学分野を学ぶ場合に、より顕著である。まず、学習の果実として単位
取得や卒業という事象があるわけではないので、趣味として好きで学習するので
ない限り、実務上役に立たないのであれば、自己実現に繋がらないから学習しな
い。社会人になってからの資格取得や単位取得へ向けての学習があったとしても、
その先には自己実現に繋がるキャリアゴールがある。従って、社会人としての自
己実現のため、実務上有益かどうかという要素が、学習姿勢に大きく関わってく
ることとなる。さらに学習を開始しても、それがストレスを伴う場合は、日中で
もストレス負荷がかかっていることもあり、続かなくなりやすい。
この「実務上役に立つかどうか」「学習にストレスがないかどうか」が重要で
あるというポイントは、試験に合格しない限り単位を与えず、卒業させないとい
う、学習への強制力を持たせることが可能な学校教育とは大きく異なる点である。
無論、社会人教育でも強制力のある教育体系は社内教育において存在するが、一
部である。「如何に自発的に学習を継続させるか」を重視したインストラクショ
ナルデザイン( 以下、「ID」)は、対象学習者が誰であれ、教材設計において必要
な視点だが、とりわけ学習への強制力が殆ど無い社会人を対象学習者とした場合
は、不可欠な要素といえる。
それでは、本質的に社会人が「役に立つ」「ストレス無く続けられる」と実感
できる教材をどうデザインすべきであろうか。
この考察にあたり、まず、学習の提供手段としてパソコンを利用したe ラーニ
ングを選択した。e ラーニングという提供手段は、多忙な社会人のニーズに、潜
在的には非常に合致すると考える為である。学習の提供手段としては、このほか、
教室授業とのブレンディッドラーニング、携帯電話やIpod を利用したモバイル
ラーニングの可能性もあわせて検討した。しかし、前者については、移動時間と
学習時間の制約を伴う教室授業よりも、パソコン上で同期型の学習環境の提供を
研究するほうが、時間的制約性の高い社会人のニーズにより近いと考えたため、
今回の研究対象からはずした。またモバイルラーニングに関しては、技術的に研
4
究コストがかかると考えられたことから、モバイル分野も研究対象から外した。
本研究では、モバイル分野や教室授業との組み合わせの問題以前に、最初にコン
テンツ、即ちID に基づく教授内容のクオリティが重要な研究対象であるとの前
提に立っている。つまり、本研究が一定の成果を残した場合、パソコン上での学
習以外の手段によって、同じコンテンツを応用した研究を行いたいと考えている。
次に教材設計であるが、R.C.Scha nk が提唱するストーリーセンタード・カリ
キュラム( STORY-CENTERED CURRICULUM、以下「SCC」) の考え方に注目し
た。SCC については詳細を後述するが、数あるID 理論の中でSCC に着目した理
由は、社会人を対象とした場合に最も適する手法を提示していると考えたからで
ある。講義形式の教室授業のような、伝統的な情報伝達型の教授法は、効率よく
知識をインプットする上では適するID かもしれないが、学習内容を現実社会で
アウトプットする際に効率よくアウトプットされているかどうかは課題が残る。
現実社会での適用を効率よく実現するID を模索する中、今回はSCC を使用する
こととした。また、SCC は、欧米でも先行事例がいくつかしかないが、本邦で
は本格的な事例は無く、研究の意義も高いと考えた。本研究では、この事例の少
ないこの手法を用いて、e ラーニング形態で実践するにあたり、どのような点が
鍵になるか考察していく。
最後に、学習分野であるが、今回はビジネス英語学習プログラムを設計対象と
して取り上げることとした。英語学習分野は、社会人学習者の間でe ラーニング
化のニーズが非常に高い。e ラーニング白書2007 年/2008 年版1によれば、「個人」
が「今後、e ラーニングを導入してほしい分野」と考える第1 位( 39% ) で、2
位の「ビジネス( 28% )」を大きく引き離している。世の中においてニーズの高
い分野のe ラーニングコンテンツを研究対象とすることは意義が大きいと考え
た。
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中西孝二(2008)営業力強化に向けたワークプレイスラーニングのデザイン.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
詳細はありません。
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福原明浩(2008)eラーニングが組織変革に与える影響と変革指標の考察.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2007年度提出修士論文
詳細はありません。
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楢原芳仁(2007)「通信制高等学校における復習支援システムの設計と開発」 『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2006年度提出修士論文』
本論文では、私立の通信制高等学校であるNHK学園高等学校における、生徒の復習を支援するシステムの設計と試作について述べる。
NHK学園高等学校では、2003 年度からインターネットを利用した通信制高校の添削指導部分をe ラーニング化し(NET学習と呼ぶ)、実施している。2003 年度に試験的に開始したNET学習も、2003 年度の159 名4 科目から、2004 年度511 人15 科目へと受講者数も増え、2005 年度にはさらに増えている。しかし、当初は想定していなかった問題点なども出てきたため、それらの問題のうちのいくつかを解決し、NET学習システムを補助するものが必要だと考えた。そこで、生徒の学習のサポートを行うという点で、生徒の復習を支援するしくみがあると便利だと考え、復習できるシステムの設計と試作を行った。
本研究では、作成したシステムについて、生徒が簡単に利用でき、生徒の復習を支援することが可能なものにすることを第一の目的とした。これは、現在のNET学習システムでは、システムの機能の制約で、生徒が一度学習した内容について自由に復習に利用できない制限があるという問題があることから、教材を利用した学習の自由度を上げることが必要だと考えたからである。
NET学習システムでは、教材の作成は、これまでの通信制の教材作成の経験を活かすため、各教科の担当教員が作成している。プログラミングの知識のない教員も自由度の高い教材を作成できるように、オーサリングツールとしてClick2Learn 社(現 Sum Total Systems 社)のTool Book を利用している。そこで、それらの教材を本システムに再利用することで、専用の教材を用意する必要がなくなり、運用にかかる手間が軽減できることを狙っている。また、これにより、各教科の担当教員が作成している教材の質の向上を目指すと共に、教材作成に慣れない教員が、どのような教材を作成すればよいかという指針をまとめると共に、教材を再利用する際の手順を考える過程から、再利用しやすい教材を作成するための要件をまとめ、今後の教材作成に活用できるようにすることも目的とした。
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高橋充(2006)「ネットワークショップ運用のための進捗管理・EPSSの開発」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2005年度提出修士論文』
インターネットショップにおける従来の研究では、ビジネスモデルを中心とする研究が盛んに行われてきたが、本研究ではインターネットショップの運用に対する業務の効率化を目的とした。そこで、インターネットショップでの業務を遂行する中で挙げられた問題点を解決するために、進捗管理システムの開発とEPSSに基づくオンラインマニュアルを導入し、業務の効率化を図った。
私は平成16年3月に開店したインターネットショップに勤務しており、このショップでは他の業務をしながら働く社員が4人のみという体制である。業務を遂行していく中で、商品を入荷してからインターネット上で購入できる状態にするまでに時間がかかる点が問題となった。その原因として以下の2点が考えられた。
①商品個々の状態が把握できていない。
②商品の入荷から登録するまでの業務を一人で担当しており、仕事量が多い上に仕事分担がうまく行われていない
そこで、①の問題点を解決するために商品個々の進捗管理ができるシステムの開発を行った。また、②の問題点に対してはEPSS(Electronic Performance Support System)と呼ばれる業務の遂行をする上でパフォーマンスの向上を電子的に支援する考え方に基づいて、オンラインマニュアルを設け業務を他の社員に委任することで解決すると考えた。
開発したシステム利用し運用した結果、システムを利用していない従来にくらべ1時間あたりの商品登録数が2倍以上になるという結果が得られた。また今までに月1、2回程度(約1時間/1回)行っていた在庫商品の状況確認を行う時間が大幅に短縮されたとの評価を得た。
本システムは、PHP Version 4.3.7とMySQL 4.0.20a-ntを使用したWebアプリケーションとして開発した。
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佐藤篤(2006)「教育データ解析システムの開発と運用」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2005年度提出修士論文』
本論文は、学部生時の研究「教育データ解析システムの試作」を継続し、旧システムの改善と機能の追加を行い、システムを試験運用して評価を行ったものである。
旧研究では、教育データ解析を行ったことのない利用者でも、難しい計算無しに気軽にデータ解析を行ったり、学んだりすることが出来るシステムをWeb上に試作した。システムには、12種類のデータ解析を行うことが可能なデータ解析機能、各種データ解析法の説明を見ることが可能な解析法説明機能、システムから出題される質問に利用者が回答していくことによって利用者の希望に適する解析法を提示する解析法診断機能を実装した。
それに引き続き本研究では機能の追加・改善として次の7点を行った。
①練習問題機能の追加
②オンラインマニュアル作成
③データ解析機能の結果画面の詳細化とその説明文の簡易化
④データファイル追加・確認フォームの改善
⑤解析法診断機能における利用者が回答した質問と選択肢の情報表示
⑥解析法説明機能の説明文の簡易化
⑦リンク集の作成
改善したシステムを試験運用し評価を行った結果、教育データ解析を行ったことがない利用者でも本システムを利用して、データ解析を行ってその結果を理解することができるということが示された。また、旧システムよりユーザビリティが上昇し、大幅に使いやすいシステムになったということも確認された。
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井ノ上憲司(2006)「教師間コミュニケーションサイトの設計・開発と評価」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2005年度提出修士論文』
本研究では,教育用CMS(Contents Management System)を使用して,コミュニケーションサイト
を設計・構築することで,教育用CMSの可能性を検討する.
本研究の評価として,文部科学省委託事業ネットワーク配信コンテンツ活用推進事業(neco)
にて参加している小・中・高等学校教師(25000人)が, コンテンツ活用や, コンテンツの情報を共
有できるコミュニケーションサイトを設計・構築し,実際に利用する. このコミュニケーションサイト
が構築でき, コンテンツ利用に関する情報の共有が可能であれば,教育用CMSを目的外使用し
た成果とする.
本研究では,数多くあるCMSの中でも,教育用CMS「Moodle」を使用することにした.Moodleはオ
ープンソースソフトウェアの教育用CMSで多数の大学や教育機関で使用されているが,コミュニケ
ーションサイトの作成のために使われることはなく,今回の事例を利用してコミュニケーションサイト
を実現することで,コミュニケーション用途での可能性を示唆できると考えたためである.
コミュニケーションサイトの設計では,コミュニケーションサイトの要求を元にMoodleで実現可能
な機能と,実現が難しい機能に分けて考えることから始めた.
Moodleで実現可能な部分についてもユーザ階層の扱いなど,一部変更を加えている.Moodle
では,コンテンツをコースで管理しているが, このコースをnecoで提供している教育コンテンツ(約
1200個) ごとに作成し,名称を「コンテンツ広場」とした.また,日本語の文章(エラーメッセージ,
コメント,名称など)がカタカナ表記されていることが多いため,今回のコミュニケーションサイトに
合わせ変更した.授業実践報告をフォーラム機能(以下,掲示板と呼ぶ)で実現するため,標準
で投稿用フォームが入るように改変した.
Moodleに標準で備わっていない機能は,独自に開発した.学校別の購入コンテンツ検索シス
テム,掲示板の最新投稿表示機能,ヒアリング結果報告機能がこれにあたる.
これらのシステムについてまず, あるneco参加地域の小中学校の教諭(約50名)を対象にアン
ケートと,手順書による作業課題による評価を行った結果,手順書のような操作の説明があれば
簡単に扱えることが示唆された. この結果で挙げられた不具合,意見を参考に修正したシステム
をnecoの全参加地域(34地域・教諭約25000人)を対象に運用した.
システムの問題はなく,Moodleでもコミュニティサイトを構築することが出来ると示唆された.
今後も運用を続け,Moodleでコミュニケーションサイトを構築する方法,独自開発のプログラムな
どを公開したい.
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楚世斌(2005)「『できる力』診断システムの作成ノウハウの提案」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2004年度提出修士論文』
近年、診断システムは学力の評価や実績のチェックなどの手段の一つとして活用されている。また、企業では成果主義評価制度が導入され、仕事の成果に結びつく行動ができる力を客観的に評価し育成する必要性がますます大きくなっていくと思われる。そこで、仕事の成果に結びつく行動ができる力を「できる力」と名づけた。尚、類似概念として「コンピテンシー」「パフォーマンス」「スキル」などがあるが、それらの定義が論者により異なるので、混乱を避け、論点を明らかにするため「できる力」と名づけている。
知識と技術があっても、実際に企業の現場で仕事が「できる」とは限らない。したがって、「できる力」を診断するには、「知識」「技術」を測定するだけではなく、「適切な行動を選択する」力を測定するための工夫が必要になる。なぜ同じ人間として、できるとでき
ない区別があるのを理論的に裏付ける。この理論は行動分析学のABC 分析理論である。先行条件と行動結果の関係を行動随伴性という。この診断システムの中には、場面設定は先行条件とし、結果はほぼ2 つで、1 つはお客様のプライバシーが保護された、もう1 つはお客様のプライバシーが漏洩されたと想定する。行動はその人の行動選択を方向づけている「こうすればこうなるだろう」という、その人なりの因果理論である。現在、こういう能力がコンピテンシーという定義されている、いわゆる職業能力は、現在従事している業務に必要な能力のみならず先見力、情報力、判断力、決断力、行動力、そして人をも動かす人間的魅力といった、定規では計りきれない多種多様な資質である。現在の職業能力をもつ自分の行動理論から、実際の仕事で表現できるかどうかが、大切なポイントである。
インターンシップ先で取り組んだ仕事の内容を生かして、「できる力」診断メカニズムを模索し、「プライバシー・マネジメント『できる力』診断システム」を試作した。それを診断するシステムの開発を目指し、第一歩として「プライバシー・マネジメント『できる力』診断システム」を試作した。この診断システムを日常実務している実務家にチェックしてもらって、診断システム作りの改善すべきところを見つけ、さらに「いい塾先生になる『できる力』診断システム」を試作した。
さらに、この2つの診断システムを公開し、関係者を受診させ、アンケートなどによってこの診断メカニズムを総合評価する。総合評価の結果に基づいて、「できる力」診断メカニズムのノウハウを整理し、各業種の診断システム作りで汎用的に利用できる形式を整えていきたい。
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猪貝達弘(2005)「通信制高校におけるeラーニング化の実践と評価」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2004年度提出修士論文』
本論文は,わが国で初めての通信制高校における添削指導eラーニング化のシステム及び教材の設計と開発,ならびに遅月引謂始から1年半にわたる実践の効果について報告するものである。NHK学園高校では、通信制課程で学習の基本となる添削指導と面接指導のうち通信制の
要である添削指導部分をeラーニング化した。これは通信制での学習において学習の継続が困難であることが問題であり、その原因としては在宅学習を生徒自らが続けていけない点にある。
そこで添削指導部分をeラーニング化することで在宅学習を支援し学習を続けやすくすることを目指した。集合型の…一斉授業スタイルと比較して、添削指導の利点は、個々の生徒に合わせた指導が可能なことである。しかし、生徒がレポートを提出してから教員が添削をし、再び生徒のもとに戻るまである程度の時間がかかってしまう難点がある。NHK学園高校の場合は約2週間を要する。この生徒がレポートを提出してからその結果を知るまでのタイムラグが学習への動機付けを下げていると考え、添削指導をeラーニング化することで、従来の偶に応じた添削指導は大切にしながら、添削結果を早く返すことを実現し、学習効果の最大化と学習意欲、動機付けを高めることとした。これに加え、マルチメディア教材によるダイナミックな学習展開や、掲示板やホワイトボードを利用した共同学習と在宅生徒同士の活発なコミュニケーションの実現、ワンクリックでリポートの送受信が行える効率化の3つも目標とした。いずれも従来の紙教材、郵送による添削指導では難しかったことを実現することで、在宅で学習する生徒が学習意欲を高め、主体的に学習に取り組め、きめ細やかな指導を受けられることをねらったものである。システムのデザインに当たっては、システムを利用する生徒と教員の活動を分析しどの場面でどの機能が必要かを洗い出しグランドデザインを行った。開発作業はグランドデザインをもとに日本IBMが行った。
運用の開始にあたっては、2003年は試行運用として1年次3科目3年次1科目の計4科目で、各科目100名限定で開始した。2004年度以降1年次科目から芸術を除く全科目を順次開講していく。1年目の運用では、生徒の満足度にシステムのパフォーマンスと教材の完成度の高さが大きく影響することが明らかとなった。一方で即時フィードバックや手軽さが利点としてあがった。また、学習が身につくか心配する生徒もいたが、従来の通信添削とほぼ同等の認定結果が得られた。2年目の運用では1年目に得られたデータをもとに評価し、導入教育を充実しシステムの冗長性を上げた。またパフォーマンス向上とコンテンツリリース前のチェック体制を整えた。結果として生徒の満足度のアップが確認された。また、eラーニングの利点として手軽さや即時フィードバックに次いで、学習情報の提供による自己管理やQ&Aなどの学習支援が有効であることも分かった。さらに、教授方略に関わる教材配置の見直しやプリントアウト版コンテンツの提供が学習効果を上げるために必要なことが明らかになった。2004年度の試験結果や単位認定結果などのデータも踏まえ郵送リポートによる通信教育との比較からeラーニングシステムの評価をし、通信高校生の在宅学習支援としてのeラーニングの効果や問題点などを明らかにする。
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岡本恭介(2005)「数学の問題解決能力を育成する eラーニング教材の設計・開発」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2004年度提出修士論文』
現在、学習指導要領では、基礎・基本を確実に身に付け、それを基に、自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や、豊かな人間性、健康と体力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしている。上述した「自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力」の育成のためには「メタ認知能力」が必要とされている。本研究では、G.ポリアの示す数学の問題解決プロセスを元に「メタ認知能力」と「問題解決能力」を育成する教材を設計し、開発を行った。
G.ポリアの数学の問題解決プロセスとは「問題の理解」「計画の考案」「計画の実行」「振り返り」の4つに分けられたプロセスである。ポリアは数学で問題を解く時に、4つの各プロセスで行うべきことを示している。例えば、「問題の理解」においては「未知のものは何か、与えられているもの(データ)は何か。条件は何かを知る」ということなどである。そして、この4プロセスでの作業を行う事で問題を解く事ができると言っている。本研究では、ポリアの問題解決プロセスに目を付けて、自らの活動をメタ的に捉え、自らつまずく部分を見つけ、克服するといった「メタ認知能力」と「問題解決能力」を育成するe ラーニング教材を開発した。本教材は「事前テストフェーズ」「学習フェーズ」「事後テストフェーズ」の3つを用意した。
事前テストフェーズでは、学習者が問題解決プロセスのどの部分でつまずいていて、つまずいたプロセスで、つまずいた原因、その解決方法をどのくらい把握しているかを診断する。
学習フェーズでは、事前テストフェーズで診断した結果を元に、つまずき部分を克服し、自らの活動をメタ的に捉えることができるようになる教材を提供する。学習フェーズは各プロセスの学習と総合練習問題に分かれている。事後テストフェーズでは、事前テストフェーズで診断されたつまずき部分を学習フェーズで克服できたかを確認する。流れとしては事前テストフェーズと同じで、事前テストフェーズでつまずいていた部分と比較する事で、つまずき部分が克服したかどうかを確認する。本教材は、『二次関数』と『個数の処理』を題材として、「事前テストフェーズ」「学習フェーズ」「事後テストフェーズ」の3フェーズを入れて、FLASH MX 2004 とPerl5.8 にて開発を行った。
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小野幸子(2005)「精緻化理論に基づいた入門情報教育教材の設計・開発」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2004年度提出修士論文』
インストラクショナルデザイン理論の1つである精緻化理論に基づき、入門情報教育教材として、HTML エディタソフトを利用したWeb ページの作成・公開手順の学習を支援する独学教材を設計、開発した。
精緻化理論は、アメリカ インディアナ大学のチャールズ・M・ライゲルース博士により提唱されたもので、より効果的に学習目標を達成するために、内容を選択し、シーケンシング(系列化)することを助けることを目的とした理論である。この理論の特徴は、学習の内容やタスクを細かく砕いて小分けにするのではなく、現実的な内容や、そのタスクの領域を見極めることによって学習の内容を単純化し、単純・包括的なものから始まり、次第に複雑・詳細なものへと学習を進めていくというものである。
本論文は、精緻化理論の紹介と、理論を応用した教材の設計・開発を大きく2 つの柱として構成されている。精緻化理論は、これまで日本で紹介される機会がなかったため、日本語での情報はほとんど存在しない。今回この理論を取り上げることは、精緻化理論の文献やWeb 上の内容を日本語で紹介するという貢献も持ち合わせており、本論文では理論についての説明を大きな柱として取り上げた。
また、この精緻化理論を実際に応用し、教材の設計、開発を行った。教材は、Microsoft社製のWeb ページ作成ソフト「Front Page」の使い方についての学習をSCM によって精緻化した事例を基に、「教材設計マニュアル-独学を支援するために- 」に沿って開発した独学支援教材である。
教材は、事例と同じ学習内容を扱う日本語の既存の市販テキスト(精緻化理論に基づいた系列化のなされていない教材)と、その市販テキストから抜き出して精緻化理論に基づき系列化しなおしたものの2 つを用意した。精緻化理論の学習成果を検証するため、精緻化理論に基づき系列化された教材を教材A、市販テキストの系列による教材を教材B とし、教材A と教材B の間でモチベーションの維持や学習成果に差が見られるかどうかアンケートによる実験を行った。その結果、精緻化理論に基づいて系列を組み替えた教材A の方が初学者にはより適していることが示唆された。
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高橋浩(2005)「高等学校新教科「情報」向けネチケット学習支援システムの開発と評価」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2004年度提出修士論文』
本研究は,高校生を対象としたネチケットの自己診断及び学習を支援するシステムを開発。評価したものである。平成15年度より普通科高校の必修科目となった新教科「情報」の学習指導要領の範囲でのネチケットについては何が必要であるべきかを明らかにするために,ネチケットに関する既存の教材などを調査し,6つの要素に体系化した。それを基に約100項目から34間を層化抽出してWeb上で自己診断ができる評価システムを開発した。診断結果は,ネチケットの体系に基づいて6つの分野の得点で表示され,その結果に応じて弱い分野を効率良く独りで学べるように設計した「指導システム」への橋渡しをした。「指導システム」では,ネチケットの構成要素である”知識”だけではなく”態度”についても学べるように工夫した。つまり,「実行すべきことを知っていながら実行していない」を「実行すべきことを知っており実行している」に導くことを目指したのである。態度の学習支援方略としては,「代理体験」の理論を踏まえ,事例や新聞記事などを紹介しながら,「実行しないとこのようなまずい結果になる(なった例がある)」という具体例を用いた。本システムの開発過程においては,システム的な教材設計理論を応用している。より具体的には,プロトタイプを用いた形成的評価(1対1評価および小集団評価)を行い、学習効果を確かめるとともに修正によるシステムの質向上を行ったものである。
資料
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カイセル ケリム(2004)「ドリル型ウイグル文字学習Web教材の設計・開発」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2003年度提出修士論文』
本研究では、教材設計理論に基づいて、ウイグル語文字学習のためのドリル塑Web教材を開発した。教材設計理論に提唱されている方法を用い、マルチメディアの特性を生かした音声ドリルや筆順ドリル、また項目をしぼって繰り返し練習を可能にするためのドリルメカニズム(項目間隔変動型)を採用した。ユーザテストの後に実施した形成的評価では、良好な評価結果が得られ、学習効果が確認され、また、今後
さらに使いやすく効果的な教材に改善していくための指針も得られた。本研究の成果は、他の教材開発にも応用することが可能である。比較実験など今後の課題について述べた。
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出口昌文(2002)「授設計理論に基づいたIT講習会テキストの試作」『岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科 2001年度提出修士論文』
序論
第1節 本研究の動機
昨年、地域間におけるデジタルでバイトの解消を目的とし、地域のNPOと大学、産業界が一体となって行う「IT教師養成講座」及びそこで用いるテキスト教材を、大学院演習の一環として2000年5月より企画した。そして、私ともう一名の大学院生、そして担当教員によりまとめられた教材の概要を、所属研究室の学部生の手によって実際に作成し、2000年12月に一応の完成を見た。