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IDマガジン第133号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2024年5月29日━━━

<Vol.0133> IDマガジン 第133号

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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。

気温の変化が大きい毎日が続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

 

今回のコンテンツメニューはこちら↓

《 Contents 》

1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(105) :創立50周年イベントに参加して思ったこと

2. 【修論紹介】家庭での防災対策をナッジにより促す高校生向け防災教育プログラムの開発

3. 【ご案内】第65回まなばナイト6/8(土)「企業内教育におけるパフォーマンス評価とリフレクションを軸にしたラーニングデザインの実践」

4. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?

★ 編集後記

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(105) : 創立50周年イベントに参加して思ったこと

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ヒゲ講師は年度初め早々、フロリダを久しぶりに訪ねた。コロナ禍以来、初めての海外。ヒゲ講師がお世話になった大学院が創立50周年を迎えるイベントに参加するためであった。学内のカンファレンスセンターを使って、歓迎レセプション、過去・現在・未来をテーマにしたパネルディスカッション、現役院生や同窓生による並列セッションやラウンドテーブル、50周年記念ディナーやオークションなど、3日間にわたり多彩なプログラムが企画され、盛況であった。創立からの歴史を振り返る最初のパネルに登壇した名誉教授たちはヒゲの恩師揃い。創立前から在籍していたディック(あのディック=ケアリーモデルのディック先生です)からは、朝鮮戦争後の韓国の教育改革を先導したモーガンが中核になって、ガニェの招聘に成功したこと(そして予想に反して長い期間、転職しないでくれたこと)がプログラムの基盤を形成したことが語られた。

ヒゲ講師が修士課程に留学したのは、プログラム設立10年目の1983年。プログラム創設メンバーの講義を直接受け、博士論文の執筆にあたってはガニェの最後の弟子の一人になれた恩恵をいただいたことなど、当時のことが走馬灯のように思い出された。そうか、あれからもう40年がたつのか。帰国後も交流を続け、日本にも多くの教授を招聘したし、翻訳書もいろいろ出せた。放送大学の科目ビデオでは「ID発祥の地」においてロケをして、インタビューも届けた。あれからの充実した日々に感謝しつつも、もうあの日には戻れないんだな、と少し感傷的にもなった。

現在をテーマにしたパネルでは、現役教員が登壇し、設立当時の教授陣が去った後の継続策について語った。国際レベルでの博士課程を維持するための奨学金の充実(私の時代にはなかった!)に加えて、オンライン修士課程への展開や州内の学校関係者をターゲットにした教育学博士課程の創設などを含め、現在の姿に至る道筋が紹介された。未来をテーマにしたパネルはどうなるのか、気になるところではあったが、ヒゲ講師のイベント参加はここまで(紹介できなくてすみません)。健康状態が気になっていたジョン・ケラーと夫人と一緒に州境を超えてドライブし、郊外のレストランで旧交を温めた。今回のフロリダ訪問で、どちらが優先事項だったのか。この選択に体現されていることは、言うまでもない。

改めて、ヒゲ講師は幸運であったことを実感した。留学時期がプログラムの最盛期であったこと、途中でジョンが転入してきたことなど、セレンディピティに感謝するしかない。あれから、巨匠たちの時代を受け継いだ現在の先生方も様々工夫してきたんだなぁ、50周年を迎えるイベントを盛大にできるのも彼らの貢献の賜物に他ならない、継続は力なり、と思った。

インストラクショナルデザインを日本語で学べる場所をつくりたい。そういう思いを実現させてもらったヒゲ講師の古巣GSISも、来年には創立20周年を迎える。これからも紆余曲折あるだろうとは思うが、無事に50周年を迎えるまで、創意工夫を重ねながら、大いに進化しながら、走り続けて欲しいものだ。

ところで、こちらは予想に反せず、帰国後の時差ボケには長い期間、悩まされた。旅行後の復活に時間がかかりすぎるので、短期間の米国旅行は当面、やめようと思う。しかし他方で、時差が少ない近隣諸国には積極的に出て行こうと思う。旅に出ることの効用を改めて感じた旅であった。読者諸氏も、内外問わず旅に出て、新たな出会いや新たな気づきに巡り合えるよう祈っています。

(ヒゲ講師記す)

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【修論紹介】家庭での防災対策をナッジにより促す高校生向け防災教育プログラムの開発

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2023年度に提出された修士論文の内容をご紹介します。

開発した防災教育プログラムは、①学校における防災教育、②家庭における実践活動、③振り返りの3部構成となっています。このうち、②家庭における実践活動について、ナッジを援用した支援策を講じることで、防災対策行動(家庭における家具家電の固定対策)の促進をねらいました。

実地テストの結果、77.4%(177名中134名)の家庭で家具家電の固定対策が実行されるなど、プログラムが家庭における防災対策行動の促進に有効であることが示唆されました。

【問題意識】
学校における防災教育では、「日常的な備え」を実現すること、つまり家庭を含む日常場面における防災対策を促進することがねらいの1つとされています。

しかし、知識の獲得や防災意識の向上にも関わらず、防災対策が実行されないという課題が先行研究で指摘されており、筆者も過去の実践を通じて同様の課題意識を持っていました。

また、防災教育において、行動の変容に着目した取り組みは必ずしも盛んではなく、特に、防災教育を通じた家庭における防災対策の促進について蓄積はほとんどなされていません。

防災の必要性は理解されたとしても、行動が変わらない防災教育はモッタイナイの一語に尽きます。
意識の変容がきちんと行動の変容に結びつくことを目指して研究を行いました。

【家庭における防災対策行動を阻害する要因と対策】
家庭での防災対策行動を目指した防災教育では、たとえ知識の獲得や防災意識の向上に成功したとしても、外部要因の影響によって、行動の変容が阻害されるという示唆が先行研究や筆者が行った過去の実践から得られました。

そこで、外部要因の制御が行動の変容を促すキーポイントであるという仮説のもと、行動科学の知見を援用して、家庭における防災対策行動の実践過程について行動分析を行いました。分析の結果、鍵となるいくつかの行動と当該行動を阻害する心理的・認知的要因を特定しました。特定した要因に対する対策として行動経済学におけるナッジを援用した支援策を複数講じました。

ナッジの具体例を1つあげると、「死神家具シール」を危険度が高い家具に貼付する支援策を展開しました。大抵の人は、自身の自宅を安全だと考えています(少なくとも、今この瞬間はまぁ大丈夫だと考えています)。授業を受けた生徒も、授業から時間が経過することや、学校という空間を離れて「いつもの安全なおうち」に帰宅することで、防災は大事だと頭ではわかっていても、家庭における危険性をうっかり忘れてしまったり、見落としたりしています。そこで、危険な家具を顕在化させる目的で、おどろおどろしい死神を描いたシールを貼付することで、危険を見える化するとともに、防災対策の必要性を視覚的にリマインドすることを狙いました。

なお、ナッジを援用した支援策はあくまでも外部要因を制御するための方策に過ぎません。
従って、①学校における防災教育についても、先行研究に基づき精緻化を行うことで、知識の獲得や防災行動の意図の向上を高い水準で達成することを目指してプログラムの開発を行っています。ナッジはやはり、最後の一押しでしかありませんから、一押しがしっかり効くようにプログラムを設計しました。

【防災教育プログラム成果と限界】
高校における実地テストの結果、77.4%(177名中134名)の家庭で家具家電の固定対策が実行されるなど、プログラムが家庭における防災対策行動の促進に有効であることが示唆されました。

結果の中でとりわけ興味深かったのは、過去の実践と防災教育プログラムとの間に統計的に有意な差が確認できなかったにも関わらず、家庭における防災対策行動の有無では大きな差が生じていた点です。
これまで、防災教育の実践では、防災意識の向上が教育プログラムの評価指標として用いられることが少なくありませんでしたが、防災教育の有効性を評価する際には、評価指標について留意する必要がありそうです。

今後は、動機づけの内発化が課題です。防災教育プログラムでは、ナッジを用いた環境調整により行動を促進しています。従って、必ずしも内発的な動機づけによって防災対策行動が実行されたとまでは言えません。このため、同様の効果が継続して得られる可能性は低いと思われます。

ご意見やご感想などございましたら、下記のメールにご連絡いただけましたら幸いです。みなさまの防災教育や研修のお役に少しでも立てればと思っていますので、遠慮なくご連絡ください!

Mail:masatakababa@gmail.com

(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士前期17期生 馬場政尚)

 

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【ご案内】第65回まなばナイト6/8(土)「企業内教育におけるパフォーマンス評価とリフレクションを軸にしたラーニングデザインの実践」

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第65回まなばナイトテーマ:「企業内教育におけるパフォーマンス評価とリフレクションを軸にしたラーニングデザインの実践」

2024年4月15日に熊本大学大学院教授システム学専攻修了生(9期生)の荒木恵さんが「インストラクショナルデザイン 成果から逆算する 評価中心 の研修設計」をプレジデント社から出版されました。

https://x.gd/8DvH6

出版記念講演も兼ねて荒木さんにお話し頂きます!

書籍の内容ですが、企業研修に用いたインストラクショナルデザインの理論や、逆算研修等実践された内容も記載されておりますので、みなさま是非お手に取っていただき、読んでご参加いただけるとさらに理解が深まるのではないでしょうか。

質問タイムもご準備しておりますので、みなさま質問を握りしめてご参加ください。

そして書籍で鈴木先生と対談されていますが、リアルでも対談いただきます!!

書籍での内容とは異なりますので、参加されてのお楽しみです。

東京の会場とオンライン(Zoom)でのハイブリッド開催を予定しています。

東京会場は名古屋形式を取り入れて、初の飲食店開催となります!

飲食しながらのまなばナイトをお楽しみください。

 

オンライン参加される方には前日にZoomへの招待メールをお送り致します。

※迷惑メールに振り分けられていることもございます。必ず前日までにご確認ください。

当日開催時間中は事務局が確認出来ないことがございます。メールが届いていない方は

午前中までに必ずご連絡ください。

【日時】
 2024年6月8日(土)17:00~19:00(現地:懇親会含め20時終了)
 Zoom待機室入場時間 16:45~

【会場】
 新橋:会場決定後ご連絡いたします。

【プログラム】
◆テーマ
「企業内教育におけるパフォーマンス評価とリフレクションを軸にしたラーニングデザインの実践」

◆オープニング

◆セッション1
  荒木 恵さん(博士前期9期生)
   リープ株式会社 取締役

◆セッション2(18:05~)
 グループワーク(Zoomブレイクアウト)

◆対談(18:50~19:00)
 鈴木克明先生と荒木恵さん
  鈴木克明先生
    武蔵野大学 響学開発センター 教授 (センター長)
    熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 客員教授
    熊本大学大学院 教授システム学専攻同窓会 顧問

◎クロージング

19:00 閉会

19:00~20:00 懇親会

【定員】専用フォームからの申込み
  東京会場 30名
  オンライン90名

【参加費用】
  現地参加:5,000円 (懇親会費用含む)
  ※東京会場は店舗で行います。飲食しながらの参加となります。
  ※当日現金でお支払い願います。

【まなばナイトへのお申込み】
  お申し込みは、こちら https://forms.gle/qmCjHeLMFzdsUy6C7

6月7日(金)正午までにアクセス方法を登録いただいたメールアドレスにお知らせします。
6月7日(金)正午にメールが届いていない場合は、事務局までご一報ください。

最新の情報は、まなばナイトのサイトでご確認ください。
https://www.manabanight.com/event/manabanight65

【キャンセルについて】
まなばナイト参加キャンセル等のご連絡は、6月5日(水)までに info@manabanight.comまでお願いいたします。
※現地参加の方は6月6日からキャンセル料がかかります。
使用するシステムの都合上、当日の参加取消しはご遠慮ください。

【主催者】熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会 https://www.gsis.jp

 

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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2024/6~2024/7

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2024年6月1日 (土)
情報処理学会 コンピュータと教育研究会 175回研究発表会@埼玉工業大学

2024年6月4日 (火)~2024年7月1日 (月)
デジタルラーニング・コンソーシアム eLP「教授法設計」コース開講

2024年6月8日 (土)
第65回まなばナイト

2024年6月15日 (土)
情報処理学会 第43回教育学習支援情報システム研究発表会@近畿大学(ハイブリッド予定)

2024年7月13日 (土)
日本教育工学会 2024年度 第2回研究会「初年次教育・キャリア教育/一般」@鹿児島大学

2024年7月21日 (日)
教育システム情報学会 2024年度 第2回研究会「ICTを活用した学習支援と教育の質保証/一般」@札幌市社会福祉総合センター

2024年7月27日 (土)
人工知能学会 第101回 先進的学習科学と工学研究会@長岡技術科学大学

2024年7月28日 (日)
日本教育メディア学会 2024年度第1回研究会「探究的な学びとメディア/一般」@中京大学

 

★ 編集後記

町内会で今年度から回覧板を回すのを辞めてLINEを導入しました(やっと!)。でも、デジタルが苦手な人がいるから紙も残すとのことです。会議資料は紙で見たい人もいるから一定数は印刷しておくとのことです。日本は非デジタルでも不便を被らない優しい国です。でも、その優しさには莫大なコストがかかるんだよな、とモヤモヤしています。今号が初の編集担当でした。

(第133号編集担当:三井一希)

 

よろしければ、お知り合いの方に、Webからの登録をお勧めしてくださいませ。

また、皆さまの活動をこのIDマガジンに載せてみませんか?

ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!

【 mail to:  id_magazine@go.gsis.kumamoto-u.ac.jp 】

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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<編集>

名誉編集長:鈴木克明

共同編集長:市川尚・根本淳子

編集幹事:高橋暁子・竹岡篤永

ID マガジン編集委員:石田百合子・市村由起・甲斐晶子・桑原千幸・仲道雅輝・三井一希

 

<発行>

熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会

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本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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