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IDマガジン第96号

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2021年5月30日━━━━
                 <Vol.0096> IDマガジン 第96号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
今年は各地の梅雨入りが早いようですね。IDマガジンでジメジメを吹き飛ばしてもらえると嬉しいです。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

今回のコンテンツメニューはこちら↓
《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(87):評価を自分のために使いこなそうというメッセージ
2. 【ブックレビュー】GB4輪読シリーズ:
    第4章「個人に合わせたインストラクションの原理」
    (ウィリアム・R・ワトソン、サニー・リー・ワトソン)
3. 【ご案内】第50回まなばナイト「GSIS15年のリフレクションとIDの未来」
4. 【ご案内】2021年度まなばナイト開催スケジュール
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(87):評価を自分のために使いこなそうというメッセージ
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評価とは、何ができて何ができないか、目指すゴールと現状とのギャップを確認することである。確認したらどうするか、その先は自分で決める。もう少し頑張ってゴールを達成するか、それとももうこれで十分だからほかのことを学ぶ道を選ぶか。それを決めるための道具として使えばよい。その道具は自分で作る場合もあるが、たいていの場合は誰か自分以外の人が作ったものだろう。でも、誰が設定したゴールか、どうしてそのゴールを設定したかはどうでもよい。それを自分自身のために使う、と決めよう。そうでないと、評価結果に振り回されることになる。長年にわたって「テスト」に振り回された経験を重ねた結果、ほとんどの人は評価が嫌いになった。できれば避けたいと思うようになってしまった。でもそれではもったいない。もしもあなたが教える側にいる人ならば、学ぶ側にいる人に「テスト」に振り回されるな、自分のために使うべきだ、ということを伝えよう。それは評価を強いる立場にある者の責任だと思う。

誰が何の目的に作った評価か。評価は千差万別、いろいろな評価が世の中にはある。評価は一般的に、誰かが何かを決めるために情報を集めるために行われるものである。定員が決まっている大学のある学部に誰を入学させるか。誰を有資格者と認定して免許を出し、誰には出さないか。受講者の中で「合格」と判定できるのは誰で、誰にはやり直しを求めるか。誰かが何かを決めるために行う評価は、受けざるを得ない場合が多いけど、それはその評価を受けることに合意した人だけに求められることである。評価を受けるか受けないか、自分以外の誰かが設定した土俵に上がるかどうかは、たいていの場合、自分で決めることである。挑戦する学部を受験しようと選んだのも、何かの免許を獲得したいと思ったかも、あるいはどの授業の単位を取ろうとしているかも、ほとんどが自分で決めたことだ。

(中略)

本書では、評価問題を自分で作りながら、評価を自分のための道具として活用する方法を身につけていく。教える立場の人にとっては、自分が何を教えようとしているのかを明らかにする方法が得られる。学ぶ立場の人にとっては、誰かに何かを教えてもらわなくても、自分で設定したゴールに向けて学んでいくための道しるべになる。また、自分で作ることによって、自分以外の他者が作った評価方法を評価する審美眼を身につけることもできよう。評価が妥当かどうかを評価できれば、それに振り回されることも少なくなるかもしれない。自分の目指すことをはっきりして、現状とのギャップを把握しながらゴールに近づいていくための道具として賢く使うことができるようになることを目指そう。

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「本書」とは、設計マニュアル第5弾『評価設計マニュアル』になる予定のもの。そうです、「長」がつく肩の荷が3ついっぺんに降りて精神的に余裕が生まれ、コロナ禍の幽閉状態も追い風となり、ようやく書き始めました、というご報告です。「本書」が完成する暁には、上記の「はじめに」の何%がそのまま生き残るか分かりませんが、『学習設計マニュアル』の次に来る本(『教材設計マニュアル』よりも前に読む本)を想定して書き進めることにしました。
(ひげ講師記す)

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【ブックレビュー】GB4輪読シリーズ:第4章「個人に合わせたインストラクションの原理」(ウィリアム・R・ワトソン、サニー・リー・ワトソン)
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インストラクショナルデザインを学ぶ方の必読書である『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザインの理論とモデル』のブックレビューが前号から始まっています。原著の装丁が緑色なので通称「グリーンブック4」とも呼ばれる本書の、今回は第4章をご紹介します。
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本章の最初の方に「ライゲルースは、工業時代の社会のニーズを満たすという目的のために、時間基盤型の教育システムが如何に適してきたかを述べています。それには、教育時間を固定化することで、パフォーマンス結果に差異が生じることを強いるシステムであり、学習者を工場労働者と管理者に分類するというニーズに合致していた。」という引用があります。つまり、今現在において、種々の学校で用いられている時間基盤型教育システムは、今よりもだい~ぶ前の、ある時代のニーズによって生まれてきたものである、と言ってるってことですね。それなら今は、今の時代にあった教育システムにするのが、今のニーズに合致するのでしょう。それが「個人に合わせたインストラクションの原理」ということになるのでしょうか?

ということで、読み進めます。本章の理論的基盤には、次の5つが挙げられています。構成主義(知識は主観的、個人的に構成される)、目的思考理論(ゴールを持っているべきで、そこに焦点を合わせれば他人との比較による要らぬ劣等感などを回避できる)、自己調整学習(ゴールを設定し、そこに至るプロセス・環境をモニタ・調整し、評価する)、自己決定理論(自分でやって、やり遂げてる感覚)、フロー理論です。耳なじんだ学習理論・心理学的フレームワークです。ここはこの本を通じて何度もでてきます。

で、この章のポイントは、個人に合わせたインストラクションの原理である5つの指針です。ここを紹介します。

1.個人に合わせた教育ゴール
「現代の画一的な教育システムで学んでいる多くの学習者のように自己調整スキルが限られている学習者にとっては、自分が学びたいことや学ぶ必要があること、あるいはなぜ学ばなければいけないかについての明確な見通しを欠いているのが最も一般的である。」いきなり激しく同意しました。なんとなくのレールがあって、それに沿って、なんとなく勉強していって、なんとなくそこを通過する、、、という教育のイメージが浮かびました。
したがって、インストラクションを個人に合わせるプロセスは、短期的、長期的な個人のゴールを引き出し、学習計画と達成記録を記録することから始まる、となります。「計画」と「記録」。この2つはセットですね。
興味深かったのは、「短期ゴールは、学習者がそれほどやる気になれない必須のコンピテンシー達成のための、一定の外発的動機づけにもなる。あまり魅力的でない課題をクリアした後でないと次の課題に進めないというような方法である。」のところです。長期的に立派なゴールを持っていても、それを達成するためには、あまりやる気になれない項目も含まれていることが多いです。わたしにも思い当たる節がありありです。そんなとき短期ゴールが役立つのですね。

2.個人に合わせた課題環境
課題選択については、学習者の興味や短期的なゴール(長期的なゴールと同調するもの)、それまでの学習(進捗と経路)に合わせるべき、とあります。選択肢が多すぎると、特に初学者には認知的過負荷になるとありました。自分で選ばせることが自律性を促すとしても、やりすぎには注意ということですね。「指導者と学習者の協働」「何がなんでもグループで行うという意味ではない」も響きました。協働して学習を作り上げるという環境づくりにはぜひチャレンジしたいと思いました。

3.個人に合わせた指導的足場かけ
指導者による足場かけだけでなく、ピアチューターによる足場かけと評価へ移譲することによって、形成的評価の頻度が上がるという例が紹介されていました。忙しい(人員削減の嵐が吹き荒れている?)教育現場に、とても有用なポイントだと感じました。また、コンピュータ支援の限界も考えておくべきというのも響きました。また、学習者にも足場かけの好みがあるというのもスッと入ってきました。対面がいい人も、コンピュータがいい人も、過去の事例を調べるという形を好む人もいる。いろいろ試してみたい人もいそうです。

4.個人に合わせたパフォーマンスと学びの評価
専門領域に特化した専門家を評価者にするだけでなく、より真正で複雑な課題を評価するためには、地域の力を借りたり、外部の専門家に依頼したりすることも必要になる、とのことです。最近の大学は地域へ進出(?)していますよね。地域の力で評価する事例、どういう状況なのかなあ、と思いました。学習成果の表現方法もさまざまなものがあるとして、レポート、芸術作品や制作物などもが挙げられていました。これはすんなり理解できました。もっと取り入れたいなあ、と思ったのは、「異なる型式で同じ能力を繰り返し表現することで、より詳細で正確な評価が実現できる。また異なる文脈への学習の転移を促進することができる」の部分です。表現方法にも好き嫌い、得意不得意があるので、必要性を感じました。この方法が「異なる文脈への学習の移転」を促進する点については、さらに調べてみたくなりました。

5.個人に合わせた省察
学習プロセスの省察については、組み込まれた頻繁な省察でうまくいく学習者もいるし、最後に一回するだけでうまくいく学習者もいるとのことです。個別の学習者が持っている自己調整レベルと過去の学習経験からわかるとありました。学習結果の省察については、学習者が自分で十分に把握できていない場合は、形成的フィードバックが重要とありました。

第4章は第1部「学習者中心の教育パラダイムの基本原理」の中の一章なので、それほど具体例があるわけではありませんが、読んでみると、もっと知りたいなあと思わせる部分が満載でした。
(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生、竹岡篤永)


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【ご案内】第50回まなばナイト6/19(土)「GSIS15年のリフレクションとIDの未来」
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まなばナイトも開催から50回!!
ご参加してくださったみなさまに支えて頂き、50回を迎えることが出来ました。ありがとうございます。

■テーマ1「GSIS15年のリフレクション」
50回記念&鈴木先生が15年勤められた専攻長の任を解かれたこともあり、GSISの15年の歴史を鈴木先生と同窓生とでリフレクションを行います。
記念すべき第1回を始めてくださった三期生の森田さんはじめ、当時のGSISの苦労話や想い出話を様々な期の方々との対話を通じて、これからのGSISへの期待も膨れることだと思います!

■テーマ2「IDの未来」
鈴木先生と平岡先生の対談形式で行います。
「ID」の概念は今も昔も変わることはないですが、世の中のIDへの受け入れる環境は異なっていることだと思います。これからのIDについて事前にみなさまから頂いた内容を元に対談を行います。
※事前質問はこちらから受け付ます。【締切:6月16日(水)18:00】
https://forms.gle/fcsgXaCd9wX7Myhd8

【注意事項】
前日にZoomへの招待メールをお送り致します。
迷惑メールに振り分けられていることもございます。必ず前日までにご確認ください。
当日開催時間中は事務局が確認出来ないことがございます。
メールが届いていない方は午前中までに必ずご連絡ください。

【日時】
2021年6月19日(土)

待機室入場時間 16:45~
まなばナイト 17:00~19:30
Zoom懇親会 20:00~

【プログラム】
テーマ1「GSIS15年のリフレクション」
テーマ2「IDの未来」

--- グループディスカッション  ---
「未来に向けての提言とアクションプラン」

--- クロージング ---
 熊本大学教授システム学研究センター  鈴木克明教授

【会場】
 オンライン(Zoom)での開催となります。

【定員】
 先着90名様

【締切】
 定員になり次第締め切らせて頂きます。

【参加費用】
 無料
 ※おつまみお茶菓子、ドリンク類につきましては、各自ご用意ください。

詳細、申し込みフォームは下記ご確認ください。(Zoom先着90名)
 https://www.manabanight.com/event/manabanight50

問い合わせ先:
 まなばナイト事務局  info@manabanight.com

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【ご案内】2021年度まなばナイト開催スケジュール
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2021年度は以下の開催を予定しております。
会場は仮のもので、オンライン開催の可能性もあります。

8月21日 (土)名古屋
10月23日(土)大阪
12月11日(土)東京
2月19日(土)東京

詳細はまとまり次第告知サイトにてお知らせいたします。
http://www.manabanight.com/

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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2021/6~2021/7
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2021年6月5日 (土)~2021年6月6日 (日)
情報処理学会 コンピュータと教育研究会 160回研究発表会@オンライン

2021年6月19日 (土)
第50回まなばナイト

2021年7月3日 (土)
日本教育工学会研究会「インストラクショナルデザイン/一般」@オンライン

2021年7月10日 (土)
人工知能学会 第92回 先進的学習科学と工学研究会@岡山大学

2021年7月17日 (土)
教育システム情報学会2021年度 第2回研究会@オンライン

2021年7月31日 (土)
日本教育メディア学会 第1回研究会「新しい生活様式における教育とメディアの活用/一般」@オンライン

★ 編集後記
(わたしも)引っ越しました。新しい地でまず、電子レンジのヘルツの壁(?)に翻弄されました。そして、4月いっぱいなんだか肌寒い… しかし職場環境は快適で、新しい授業も楽しくデザインしています。
(第96号編集担当:竹岡篤永)

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ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!
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<編集>
編集長:鈴木克明
副編集長:市川尚・根本淳子
ID マガジン編集委員:石田百合子・甲斐晶子・桑原千幸・高橋暁子・竹岡篤永・仲道雅輝
<発行>
熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会
http://www.gsis.jp/
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本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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