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IDマガジン第97号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2021年 7月31日━━━━
<Vol.0097> IDマガジン 第97号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
本格的な夏が到来し暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

今回のコンテンツメニューはこちら↓
《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(88):        
   アフターコロナの大学のニューノーマルに残したい5つの要素(Educause 2021)
2. 【ブックレビュー】GB4輪読シリーズ:      
   第5章「カリキュラムの新しいパラダイム」(マーク・プレンスキー)
3. 【報告】第50回まなばナイトレポート 「GSIS15年のリフレクションとIDの未来」
4. 【ご案内】第51回まなばナイト@オンライン 8月21日(土)の開催案内
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(88)
:アフターコロナの大学のニューノーマルに残したい5つの要素(Educause 2021)
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米国を中心に2千以上の大学などが加盟する高等教育機関のICT活用推進非営利団体EDUCAUSEは、2020年春休みを直撃したコロナ禍は「史上最大の非伝統的教育の実験であった」と総括した論文を掲載した。中断はイノベーションを産み出すのが歴史の常であり、コロナ禍で在宅勤務が広がったように、アフターコロナの高等教育の「ニューノーマル」に残すべき意義ある改善のポイントを次の5つにまとめた。いずれも教壇からの講義を減らし、学生により強い関与を求めるための工夫としてコロナ禍のベストプラクティスで観察できたものであり、これを「ニューノーマル」として広く普及させるべきであるとしている。

1.意味生成のための協働的テクノロジー
ネットワーク上の共同編集文書、ディスカッションボード、ホワイトボードなどを講義ノートの作成のためでなく、学習内容や教員、あるいはクラスメートとつながるために活用し、情報の生成・共有・フィードバック供与・省察のプロセスを可視化し、タイムリーに進行させるために用いる。
2.学習とテクノロジーの学生エキスパート
コロナ禍以前から有効であったピアチュータリングをテクノロジーに強いデジタルネイティブの活動に広げ、学部学生が学習とテクノロジーの両面で活躍・貢献できる場面を増やす。自然発生的に活発になった学生相互の助け合いの輪を制度的に定着させ、新しいテクノロジーの活用を提案してもらい、教員の指南役をも果たしてもらう。
3.インフォーマルコミュニケーションのためのバックチャンネル
テキストメッセージの交換を日常的に行っている世代に親和性が高いチャット機能を用いてインフォーマルで抵抗感が少ない会話を維持し、挙手による発言よりも気軽な形でのやり取りを可能にする。「はい」「いいえ」での回答を促すことから、質疑応答、多様な視点の表明など学生の積極的な関与を促す気軽な道具になる。
4.協働学習のためのブレークアウトルーム
数人ずつの学生ごとに区分した小部屋を設け、最初に前提知識を確認したり、与えられたケースの解釈を試みたり、振り返りや質問をまとめる協働学習で学生を関与させる。ブレークアウトルームでの活動中もそれぞれの部屋でホワイトボードや画面共有、ネット検索などのツールを併用させることができ、教員は入退室して進捗状況を把握できる。
5.学習空間拡張のための録画提供
反転授業を採用している場合であってもなくても、授業に出席できない学生のために録画を提供することで、学生の再視聴と教員の授業分析を可能にする。オンラインセッションの録画・公開は容易になり、欠席者だけでなく、試験対策や外国人学生の再学習の機会となり学習空間が拡張できるメリットは大きい。

 1から4は同期型授業のことで、5だけが非同期への拡張。やはり関心は非同期型のデザインではなく同期型の改善が主流なのかな、残念、と思いつつ、一つずつの説明に日本ではあまり注目しないキーワードがちりばめられている。与える教育から学び合う教育へ。デジタルネイティブ向けの教育への変換。ICT利用が一気にグンと進展した今こそ、新しい発想で、古くなったKKD(D=惰性)をトランスフォーメーションするためにIDの活躍が期待される、と解釈した(普通はそうは読めないかもしれませんが・・・)。動向を調査してヒントをまとめて欲しいとの依頼を受けて調べた結果、いろいろ見つかったものの一つがこれだった。勉強になりました!

(ヒゲ講師記す)

出典:Glantz, E., Gamrat, C., Lenze, L. and Bardzell, J. (2021 March). Improved Student Engagement in Higher Education’s Next Normal. EDUCAUSE Review, Teaching & Learning. [Available online]: https://er.educause.edu/articles/2021/3/improved-student-engagement-in-higher-educations-next-normal#fn12

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【ブックレビュー】GB4輪読シリーズ:第5章「カリキュラムの新しいパラダイム」   (マーク・プレンスキー)
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インストラクショナルデザインを学ぶ方の必読書である『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザインの理論とモデル』のブックレビュー「GB4輪読シリーズ」、今回は第5章を取り上げます。
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「カリキュラム」と聞くと、何を思い浮かべますか? 私の場合、科目や資格、人の配置をどうするかといった業務上の問題が頭をよぎります。IDを学んだものとして、どのように教えるかを問題意識とすることは多いのですが、カリキュラムは既存の与えられたものであり、何を教えるべきかについては疑問を持つことは少ないように思います。
しかしながら、学習者中心の教育パラダイムにおいては、すべての人に共通の知識基盤型のカリキュラムは時代遅れであり、これまでとはまったく異なるカリキュラムの考え方が必要だというのが、「デジタルネイティブ」の発案者でもあるマーク・プレンスキーの主張です。
国語・算数・理科・社会(プレンスキーはMESSと呼んでいます)の4つの主要教科を基盤とした現在のカリキュラムでは、ポスト産業社会の新しい世界に対して子どもたちは備えることはできません。ある人が何かになり(becoming)、世界で成功するためには、誰であっても効果的に考え、効果的に行動し、効果的に関係を作り、そして効果的に達成することが必要であり、新しいカリキュラムはこの4つの主要な主題で構成され、学習者も評価されるべきだというのが本章の提案です。
ここまで読むと初等中等教育(K-12)の話だと思われるかもしれませんが、これら4つの新しい科目は、「公的およびインフォーマルの両方で、合目的な学びが望まれるあらゆる種類の文脈」を前提としており、高等教育や企業と政府関係者の研修にも等しくあてはまるとのことです。
では、それぞれのスキルについて下位スキルを見ていきましょう。

1.効果的な思考
 下位スキルには、コミュニケーションの理解、定量的およびパターン的思考、科学的思考、批判的思考、歴史的展望、問題解決(個人、協働)、好奇心と問うこと、創造的思考、デザイン思考・統合的思考、システム思考、財政的思考、探究と議論、判断、自己認識などが含まれます。

2.効果的な行動
下位スキルには、間陛に効果的な人々の習慣、身体と健康の簸適化機敏性、適応性、 リーダーシップとフォロワーシップ、不確実性下での意思決定力、実験、研究、慎重なリスクテイキング、現実性テスト、忍耐力、前向き思考、粘り強さと「根性」、起業家精神、革新性、即興力、障壁の打破、プロジェクトマネジメントなどが含まれます。

3.関係づくり
効果的な下位スキルには、コミュニケーションと協働(1対1、チーム内、家族内、コミュニティ内、職場、オンラインあるいは仮想世界で)、傾聴、ネットワーキング、関係柵築、共感、勇気、同情、寛容、倫理、政治的能力、市民性、衝突の解決などが含まれます。

4.効果的な達成
効果的な達成とは、現実の世界でプロジェクトを実行することを指します。小規模またはローカルなものから始まり、より大きなスケールで、最終的には世界規模のプロジェクトでの成果を発揮するように、システム的に教える必要があります。

では、この新しいカリキュラムの実践において、指導者はどのような役割を果たすのでしょうか。コンテンツ面ではテクノロジーが有効な基盤となるため、指導者はこれまでのようにMESSや専門領域に関するコンテンツの配信者である必要はなくなります。しかし、テクノロジーは教育のすべてを担うことはできず、新しいスキルの多くは「ニュアンス」を必要とするため、指導者には学習者を深く動機づけ、尊重し、共感し、そして個々の情熱を呼び覚ますという重要な役割が求められます。そして、これまでとは異なる形の指導者研修が必要となります。
これら4つの新しい分野のうち、あなたが専門分野として教えることに興味がある可能性のあるものはどれか、と読者に問いかけられていますが、皆さんはいかがでしょうか。新しいカリキュラムを教えるための主題分野は、学習者にとって興味があるものであれば何でもかまわないとのことなので、新たな学びの実践方法を考えるという観点からもワクワクしますね。
本書の監訳者である鈴木克明先生も、この分厚い本の中で最初に読むべき章として第5章を勧められています(IDマガジン88号参照)。刺激的な第5章を読んで、自分が教えたい新しいスキルは何か、そしてどのように教えることができるか、一緒に考えてみませんか。

(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 桑原千幸)


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【報告】第50回まなばナイト@オンライン レポート「GSIS15年のリフレクションとIDの未来 」
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東京では3回目の非常事態宣言がまもなく終わろうかという6月19日に、第50回まなばナイトは開催されました。

今回もフルオンラインでの開催となりました。全体は3部構成。まずは修了生と鈴木先生とで写真などを共有していただきながら、GSIS15年のふりかえりを行いました。事後のアンケートからは、最近修了された方にも位置付けがわかったとコメントをいただきました。

三期生で非常勤講師もされている森田さんからは、修了生で会社を設立した話や記念品として贈った柱時計、まなばナイトの立ち上げなどもお話しいただきました。 

まなばナイトも50回を数えました。参加いただいてきたみなさま、話題提供くださったみなさまのおかげです。時には来日されたIDの巨匠をお迎えしてのセッションであったり、さまざまに企画のアイデアをいただきながら続けて来ることができました。

続いてのセッション「IDの未来」では、博士前期課程7期の修了生にして現在はGSISで指導を行う平岡先生と鈴木専攻長の二人のトーク。平岡先生の「不易と流行」というキーワードから事前にいただいていた参加者からの質問をネタにしたトークまで、時にはオーディエンスにもしゃべってもらいながらのセッションとなりました。

3番目のセッションはグループに分かれて「未来に向けての提言・アクションプラン」と題し、IDのこと、ご自身のことなどこの先の展望について、グループメンバーでのディスカッションを行いました。

ブレークアウトの後は、各グループから短くフィードバックを共有していただき、終了となりました。

対面での機会が再開できることも期待しつつ、ひきつづきまなばナイトをどうぞよろしくお願いします。 


(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 加地 正典)


○写真入りレポートは以下をご覧ください。
https://www.manabanight.com/info/manabanight50report


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【ご案内】第51回まなばナイト@オンライン
「GSIS修了生がよく使う一冊  〜手放せないID本はこれ〜」
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熊本大学大学院教授システム学専攻(以下GSIS)の同窓会一同で開催する「まなばナイト」は、アカデミックな見地も交えながら一方通行の講演だけでなく、お食事とドリンクをいただきながら、参加者皆でワイワイ考える参加型ワークショップです。

今年の夏も名古屋で集合形式での開催を考えていましたが、まだまだ新型コロナウイルス感染症が収まることはありませんでしたのでオンライン形式での開催です。でも、オンラインの強みとして、全国、また世界中からの参加が可能であるからこそ、各地からの皆様の参加をお待ちしています。

今回のタイトルは、
「GSIS修了生がよく使う一冊  〜手放せないID本はこれ〜」

【日時】
2021年8月21日(土)午後6時~午後8時30分(5時45分Zoomオープン)

【セミナー概要】
『GSIS修了生がよく使う一冊 〜手放せないID本はこれ〜』

■□■□■ オープニング ■□■□■
熊本大学大学院 教授システム学専攻 同窓生 大石 奨

■□■□■ ID本レビュータイム ■□■□■
GSIS修了生がよく使う一冊 〜手放せないID本はこれ〜

GSIS修了生に「GSISを修了した今でもIDに立ち戻るときに見直す本はどれ?」とアンケート調査をしました。その結果、1位 教材設計マニュアル、2位 インストラクショナルデザインの道具箱101、3位 研修設計マニュアル、4位 学習設計マニュアル、5位 インストラクショナルデザインの理論とモデルとなりました。今回のまなばナイトでは、3位までの3冊をピックアップして、GSIS修了生の方々に本のレビューや、どのような時に使用しているかを語っていただきます。

1.教材設計マニュアル:独学を支援するために・・・博士前期5期 千葉佑介さん

2.インストラクショナルデザインの道具箱101・・・博士後期5期 桑原千幸さん

3.研修設計マニュアル:人材育成のためのインストラクショナルデザイン・・・博士前期13期 川村好美さん


■□■□■ グループワーク(Zoomブレイクアウト) ■□■□■
GSIS修了生とともに語るID本活用方法

GSIS修了生によくある質問として、インストラクショナルデザインを学ぶのに最初に何を読めば良いの?ということがあります。ブレイクアウトでのグループワークでは、GSISに所属している、していない関係なしにして、こんな時にはこのID本が役に立つなどの情報交換ができればと思います。

■□■□■ ID本に関してコメント ■□■□■
熊本大学大学院 教授システム学専攻 教授 鈴木 克明先生

ID本執筆時の苦労話や、こんな人に読んでもらいたいなど

■□■□■ クロージング ■□■□■
熊本大学大学院教授システム学専攻 同窓生 佐久間 あゆみ

【定員】
専用フォームからの申込み 先着 90名様
【会場】
オンライン(Zoom)での開催となります。
【参加費用】
無料 ※おつまみお茶菓子、ドリンク類につきましては、各自ご用意ください。

※詳細、申込フォームは下記をご覧ください。
https://www.manabanight.com/event/manabanight51

問い合わせ先:まなばナイト事務局  info @ manabanight.com

【主催者】
主催:熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会 http://www.facebook.com/gsisAlumni

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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2021/8~2021/9
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2021年8月1日 (日)~2021年12月31日 (金)
 日本医療教授システム学会 医療IDセミナー2021@ハイブリッド開催予定
2021年8月2日 (月)~2021年9月30日 (木)
 日本イーラーニングコンソシアム eLPベーシック・eラーニングコース「第49期」開講
2021年8月18日 (水)~2021年8月20日 (金)
 ICoME(International Conference for Media in Education)2021国際会議@オンライン
2021年8月28日 (土)~2021年8月29日 (日)
 情報処理学会 コンピュータと教育研究会 情報教育シンポジウム@オンライン
2021年9月1日 (水)~2021年9月3日 (金)
 教育システム情報学会 全国大会(第46回)@西区民文化センター(広島市)/オンライン


★ 編集後記
東京オリンピック、開催にあたってはいろいろと思うところもありましたが、始まってしまうとやはりアスリートたちの活躍に感動。さまざまな競技を観戦して楽しんでいます。(第97号編集担当:桑原千幸)

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ID マガジン編集委員:石田百合子・甲斐晶子・桑原千幸・高橋暁子・竹岡篤永・仲道雅輝
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本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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