トップIDマガジンIDマガジン記事[118-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(98) :最終講義はこうでなくては、の巻

[118-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(98) :最終講義はこうでなくては、の巻

ヒゲ講師は2023年3月21日、明治大学のグローバルホールを尋ねた。少しだけ交流があった阪井和男先生の最終講義イベントに参加するためである。少しだけの交流は、熊本での第一期生の研究を通して始まり、富士通や経産省のプロジェクトに誘っていただき、先生の縦横無尽の活躍ぶりに驚嘆したことを思い出す。これは馳せ参じなければ、きっと学びがあるはずだ、との思いで弟子筋でも関係者でもないのに申し込んだのである(もちろん懇親会も)。

 

先生の縦横無尽の活躍ぶりは、最終講義にも体現されていた。主催は明治大学サービス創新研究所とアート思考研究会の共同開催。第一部は「アート思考と創造性」というパネル、第二部は阪井先生の最終講義「隠蔽され誤解される創造性」をはさんでのパネル「変容する社会に生きる~リベラルアーツと知識労働者~」という4時間の構成。デザインが顧客への共感から始まるのに対してアートは自分起点だが、創造性は自由の中に自分で枠を決めていくことで達成される。アートは鑑賞に留まらず表現することで他者からのフィードバックを得て共鳴するのが重要。正解を急がず、プロセスを決めず、もやもやを持ち続けることを楽しみ、ダイナミックにデザインする仕掛けが大事。KJ法は分類的なものではなく創造的なものにしなければならない。やる気のスイッチを入れるのは良いが、「切り方」を教えないと危険(柔道は技からではなく受け身から教える)。教育を受けることで生じる責任、組織を率いる責任をまっとうするには「真摯さ(integrity)」が不可欠。「真摯さ」は持って生まれたものかもしれないが、真摯でありたいと思って生きることは誰にもできる(注:阪井先生はドラッカー学会フェロー。以上、不正確なメモによる)。

 

結語は「創造性とは、成果をもたらす要因のひとつで、 多くは後知恵によって解釈され、 思考停止による副作用も伴う」。おかしいんじゃないの、その説明で満足していいの、というクリティカルな視点を持ち続け、思考停止に陥らないようにしたいものだ、としみじみ思いました。

 

懇親会は隣のビルの地下にあるイタリアン食堂。300人くらいはいただろうか、会場を埋め尽くす人の熱気にあふれ、参加したみなさんがこの日、この瞬間を愛おしんでいる空気に包まれていました。私も新しい出会いや古い知人との思わぬ再会もあり、阪井先生のバトンを次につなげていくチャンスにできればと願っています。

 

私自身の最終講義がいつになるか(やることになるかどうかすらも)分かりませんが、ベンチマークすべき手本をいただきました。深謝。

 

(ヒゲ講師記す)

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