トップIDマガジンIDマガジン記事[131-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(104) :ビデオ講演の聴き方・学び方

[131-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(104) :ビデオ講演の聴き方・学び方

ヒゲ講師は、とある3月の休日、「教育でのAIの動向と将来への新しいコンピテンシー」と題する講演をビデオ録画で聴いた。話者はスタンフォード大学教授のPaul Kim氏。何度か国際会議で面識がある国際派のやり手がこのタイトルで何を話すのか、興味深く拝聴した。2024年3月8日にカリフォルニア州立大学で開催された学会の講演ビデオ録画がもう視聴できるようになっている。時差ボケに悩まずに聞けるのは嬉しい限りである。「新しく学んだことが多くて2回聞いた、もう一度聞き直すかもしれない」と、この情報源をFacebookで紹介してくれたのは、これも長い知り合いのインディアナ大学教授Curtis Bonk氏。昨年12月に松江で開かれた国際会議ICCE2023にも招かれていたのに会いに行けなかったが、顔が広くて情報通(早口過ぎて、追いついていくのが大変な人ではあるが、PPTはいつも公開してくれている)。

ビデオ講演を聴くときに最近便利に使っているのは画面キャプチャ―(Print Screen)。これをPPTに貼りつけていき、必要に応じてメモを取る。キム教授の講演メモはこんな感じになった。

 

https://www.futuretools.io/
Merlyn Mind GenAI platform
Khanmigo
Chegg
生成AIの主なユースケース:
 A.コンテンツ生成(Copilot for Education等)
 B.チュータリングと支援(カーンアカデミー等)
 C.追跡とフィードバック(markr等)
 D.学生ライフサイクル管理(aible等)
学習機会の創出:
 1.問題点や齟齬の同定課題(AIからの回答を注意深く分析して正確さ・真正性・バイアス・引用元などをチェックさせる)
 2.思考プロセスの説明課題(どんな質問をどの順序で投げかけて結論に至った経緯を説明させる)
 3.比較と改善課題(複数の生成AIツールを使って複数の回答を引き出し、自分の回答と比較させる。個人的な考えや経験を追加することを推奨)
 4.創造性を育む課題(ブレストや常識を超える思考、前提や伝統を疑うこと等で生成された反応を超えるイノベーティブな創造性や想像性を要求する)
Stanford Mobile Inquiry-based Learning Environment(SMILE)
Seeds of Empowerment(ゲーム、SMILE質問生成、SMILEコーチ)

 

改めて見直すと、知らない言葉だらけでした。やっぱりもう一度講演を聞きながらメモにあるWeb上の情報を確認する作業が必要ですね(すぐにはやらないかもしれないので、この時点でメモを共有しておきます)。

以下は講演終了後の質疑応答の超訳。初回には「おいおい、それを聞くのか」というような質問ばかりだな、という印象を持った程度だった。この日誌を書くのに聞き返したら、「スマートに答えていてすごいなぁ」という印象に変わりました。

 

Q:世界中の大学で最初の2年間はGoogleで検索可能な基礎知識を中心に教えているという現状を考えると、大学の将来をどう考えたらよいか。本質的に問う力を育てるはずが、質問をするという文化が根づいていない国が多く困惑している留学生が多い。

A:質問すること、とくに本質的な問いを発することを怖がらないような文化を醸成することが重要。匿名で聞くことを恐れない相手としてAIを使う事例もある。大学では情報を供与することではなくコーチングの文化を醸成すること(そのためには個々の学生を知ること)が重要。アントレプレナーシップを誰もが育み、先が読めない世界に備えるためには、コンパッションとコミットメントを育てることを重視するカリキュラムや授業が重要。

 

Q:テクノロジー恐怖症にどう備えるのか。

A:AIについての様々なワークショップを開催しているが、まずはアンケートを取り、受講者に寄り添うことから始めている。成功者の事例のみならず、恐怖を感じていた人・この人さえも使って成功しているのか、という事例を紹介している。現地の先輩や同僚にワークショップをリードしてもらうのも効果的。

 

Q:単位を認定する、成績を付与するときに、点数を取ることにしか関心がない学生の見方をどう変えていけばよいのか。

A:高得点をとることが重視される分野でもコンパッションやコミットメントは必要。韓国では医学生の定員を増やす政策に医者が反対をしている状況だが、一日200人の患者を診るために電子カルテを眺めて一人30秒で診察が終わるような現状でよいのかどうか考え直す必要があるのではないか。

 

Q:高次元の学習が必要であることやコーチングの重要性には同意するが、探究することよりも、単に正解を知りたがる学生が多い。どうアプローチすればよいだろうか。

A:学習アドバイザー1人に対して200人の学生がいるような状況では、アドバイザーの人数を増やすのも一案だが、カウンセリング前の予備的対応にAIツールを活用することも検討すべき一つの方策。商用Webサイトのボットの現状は決して満足できるものではないが、もっとよい品質のものが実現している。近い将来、大学教員並みの知識を背景に応対してくれるAIも登場し、人間と協業することができるようになるだろう。
 
さすがでした。二度聴くと、印象は全く違いました。録画で提供することは意義深いことだなぁ、と改めて思いました(連載88の5.学習空間拡張のための録画提供を参照ください:https://idportal.gsis.jp/magazine/doc_magazine/1018.html)。

 

情報源:https://www.youtube.com/watch?v=DsUEhxlNku8

 

 (ヒゲ講師記す)

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