トップIDマガジンIDマガジン記事[084-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:第14章「教授理論のアーキテクチャー」

[084-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:第14章「教授理論のアーキテクチャー」

いろいろなIDに関する理論を学習してきて、いろいろな「困りごと」に対して、理論的(だと自分が考える)方略を用いたりしている。しかし、様々な理論がどのように関連しているか、という点について漠然と疑問に思っているだけで、その関連について深く考えたことはあまりなかった。様々な理論を学習して、それぞれの学習課題の解決に有効だったりすることは理解できるが、教授という現象のどのような課題に対して、どのような理論が有用なのであるか、という点についてはまだ曖昧で、本当にその課題に対して適切な「理論に裏打ちされた方略」を用いているのか?という疑問と不安が常にある。今回GB3のレビューの機会をいただき、この章を取り上げたのにはそんな理由があった。
が、この14章を読んだ。何度も読んだ。GB3の他の章も読んだ。が、わからない。わかった気になって、他を読んで別解釈から理解しようとしても、意味が繋がらない。現時点でもまだ、頭の中がカオスである。さて、どうしようか?ということで、わかる範囲、事例紹介のみのレビューになってしまうことをまず、お詫びさせていただきたい。
14章のタイトルでもある「アーキテクチャー」にはそれを用いる分野によっていろいろな解釈があるようだが、基本は「建築学、構造、構成」という意味合いである。教授理論を構成しているもの、というテーマであると解釈すると、その答えは「デザインレイヤー」だと思われる。
GB3の第1章で説明されている教授設計理論を構成している6種類のなかの「教授計画理論」がID理論、「教授事象理論」が14章では「教授理論」として扱われている。このID理論がデザインレイヤーとデザイン言語で表現されており、教授事象理論で扱う効果的教授についての構造の考え方や教授時の運営方法に反映されている。ということで、「教授事象がデザインレイヤーという構造で説明される」ということだと理解した(本文中にも「ID理論、レイヤーの構造的な枠組みを提供しており、それによって解く手に教授理論を分析・比較することが可能になる」とある)。
レイヤーはID全体の問題解決のために機能的に分解した時に生じる特定の設計の下位問題として表され、ギボンズによって以下7つに命名されている。
1.コンテンツレイヤー
2.方略レイヤー
3.制御レイヤー
4.メッセージレイヤー
5.表現レイヤー
6.メディア理論レイヤー
7.データ管理レイヤー
実際によく知られている教授理論(アンダーソンの知的チュータリング、認知的徒弟制、ガニエの学習の条件理論)がレイヤーで説明されている(P347、表14.2)。これらの理論において、喫緊の課題であるとされるレイヤーについて多く述べられており、すべてのレイヤーにおけるデザイン構造について形式化されているわけではない。これはレイヤーに特化した複数のローカルな理論が関与していることの明白な証拠、とされている(レイヤーありきで理論が構築されるのではなく、課題解決のための取り組みから理論が構築されている、ということか)。
他の理論家も異なるレイヤーについて述べているが、デザイン原理についての著述がレイヤーと何らかの関連があることについて述べられているにとどまっており、7つのレイヤーについてはこれまでの様々な研究においても、コンテンツレイヤーや方略レイヤーのように盛んに述べられている分野とそうでない分野にばらつきがある。
このようなレイヤー理論によって「経験豊富なデザイナがデザインの知識と判断について初心者とのコミュニケーションを迅速に行えるようにするだろう」、と最後に述べられており、私たちがGSIS(熊本大学大学院教授システム学専攻)で自分自身の課題解決のために取り組んだ具体的方略や理論を他者と共有し、改善していくプロセスにおいて、この考え方を自分のものにし、他者に紹介、あるいは学習者にもその学習意図を伝えていくことでより効果的な改善が行えるということであろう、と思った。
私は仕事においては自分が教える側であり、日々様々な課題に直面している。それを解決する手段が欲しくて GSISで研究を続けているが、「喫緊の課題」であると思われるコンテンツや方略レイヤーに相当することに多くの関心が向いていた。しかしデザインレイヤーの最後に挙げられているデータ管理レイヤーなどは適応型教授との関連がある、とされており、これらが学習者中心・個別化、といった視点からの課題解決のヒントになるかもしれない、と思った。
(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士後期課程 中前雅美)

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