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IDマガジン第129号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2024年1月22日━━

<Vol.0129> IDマガジン 第129号

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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。

新しい年が始まりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

 

今回のコンテンツメニューはこちら↓

《 Contents 》

1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(103) :新しい年はV字回復になるのだろうか(合掌)

2. 【ブックレビュー】『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた―あなたがあなたらしくいられるための29問』佐藤文香監修/一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同(2019)明石書店

3. 【報告】第63回まなばナイトレポート 12月9日(土)「ChatGPTとインストラクショナルデザイン」

4. 【ご案内】第64回まなばナイト2月24日(土)@東京 開催案内

5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?

★ 編集後記

 

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(103) :新しい年はV字回復になるのだろうか(合掌)

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2024年の幕開けは、まさかの能登半島地震。災害はいつでも「まさか」のタイミングだが、元旦早々とはエライことになったものだ。220人を超える死者に哀悼の誠をささげたい。災害関連死がこれ以上増えないことを祈るばかりだ。能登半島は昨年12月に福井出張のついでに北陸フリー切符で鉄分補給したばかりの場所。中学生の頃、初めての鉄旅で訪れた輪島まではもはや鉄道では行けなくなった。のと鉄道七尾線の終着(かつて七尾線と能登線が分岐した)穴水駅を訪ねた。駅前にある町立図書館を併設した「さわやか交流館プルート」で地元出身力士遠藤の特別展示を眺めたり、車窓からは遠藤の化粧まわしにデザインされている「ボラ待ちやぐら」も見た。今はどうなっているのだろうか、復旧と復興が進むことを祈念したい。

出身大学の先輩であり教育工学研究の先達である先生の訃報も届いた。享年80歳ということだが、「まだ早い」と感じるのは人生100年時代と言われるためだろうか。会長時代に采配に悩んだときに新潟に相談に出向き、結局ご馳走してもらうことになってしまうような面倒見の良い人だった。対面すると背筋が伸びる気持ちになり、その一方で、困ったときに頼りになる人。そういう人がいなくなるのはとても寂しい。ご冥福をお祈りしたい。訃報と言えば、4C/IDモデルの発案者メリエンボアーも昨年11月に亡くなった。こちらは現役引退直後の出来事だったらしく、昨年3月に行われた最終講義ビデオが残されていた(https://www.youtube.com/watch?v=M3STl3izLJs:演者紹介や挨拶はオランダ語だが、講義は英語)。
今から1年前の2023年1月29日に他界したロジャー・シャンクは享年76歳だった。自分自身が現役のうちに何を残すべきか、改めて考えるきっかけとしたいと思う。合掌。

今年は、これから、どんな出来事が待ち受けているのだろうか。紆余曲折いろいろあるだろうが、一日一日を大切に過ごし、満足するアプトプットが出せる年にしていきたいものだ。V字回復を祈りつつ、多くの皆様と出会い・再会し、一献する機会に恵まれることを願っています。

どうぞご自愛くださいませ。

(ヒゲ講師記す)

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【ブックレビュー】『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた―あなたがあなたらしくいられるための29問』佐藤文香監修/一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同(2019)明石書店

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ブックレビュー執筆のご依頼を受け、自分の本棚をながめ、ぜひ取り上げたいと真っ先に思ったのが本書です。自分自身の専門分野であるキャリア関連でも、インストラクショナルデザインや教育工学に直接的な関わりがあるものでもありませんが、内容が興味深いことはもちろん、本書の構成や本書執筆にあたり進められたであろう教育/学習活動が、インストラクショナルデザインの観点から面白いのではないかと思い選びました。

本書は、ジェンダー研究の「超」入門書という位置づけで、ジェンダーに関するさまざまな問いに、大学生が「大学生の視点」から回答したQ&A集です。「大学生活を過ごすなかで友人や家族から疑問を投げかけられたり、議論をしたりする経験を数多くしてきました。(中略)この本に収録された29の質問は実際にわたしたちが投げかけられてきた問いです。(本書「はじめに」より)」とあり、どのトピックもジェンダー研究初心者からすると、これってどうなの?という素朴な疑問かつ、誰かに聞いたり、議論したりするには少々勇気のいるような問いばかりです(以下、トピック抜粋)。

・男女平等をめざす世の中で女子校の意義ってなに?
・「○○男子/○○女子」って言い方したらダメ?
・友達だと思ってたのに告られた…誰かに相談していい?
・どうしてフェミニストはCMみたいな些細なことに噛みつくの?
・東大が女子学生だけに家賃補助をするのって逆差別じゃない?
・女性はバリキャリか専業主婦か選べるのに、男性は働くしか選択肢がないのっておかしくない?
・性暴力ってある日突然見知らぬ人からレイプされることだよね?

「超」入門書としながらも、各トピックに①ホップ(ジェンダーって聞いたこともないという初心者向け)、②ステップ(ジェンダーの授業でおおよその知識を持っている中級者向け)、③ジャンプ(ジェンダー研究の最新動向もおおむね理解している上級者向け)という三段構えで回答されており、初心者にとってはわかりやすく、また上級者にとっても読みごたえがある内容になっています。

 このトピックの選定や回答の方法は、インストラクショナルデザインの道具の中でも中心的なARCSモデルを想起させ、本書の主なターゲットであるジェンダーを学びたい学習者にとってわかりやすく、魅力的だと感じました。大学生の視点からのジェンダー入門であり(Attention)、実際にジェンダー研究初心者の一般人から寄せられた問いを扱っています(Relevance)。また、ホップ、ステップ、ジャンプと段階を踏んだゴールが設定されていて(Confidence)、問いに対してジェンダー研究の観点からわかりやすく回答されており、それが唯一の正解ではなく、さらに知りたくなるような、学びたくなるような回答になっており、巻末には読書案内として参考図書も列挙されています(Satisfaction)。

 ちなみに、本書の監修者である佐藤文香先生のゼミ案内のサイトには、「ゼミは共同作業なので、『お客さん』にならず、『馴れ合い』にも陥らず、異なる意見をもった他者に敬意を払いながら議論を深められるかどうかは参加者全員にかかっている。共通テキストをもとに噛み合った議論ができたときの楽しさを感じとってほしいし、ここで習得したお作法は卒業しても必ず役立つと信じている。」とあります。本書執筆を通して、また本書執筆のみならず、ゼミ活動のスタンスが、ジェンダーに興味関心の高い学習者たちが自己主導的に、経験を自分や他者の学習に役立てながら、社会や生活課題に直面する問いに対して自分たちなりの答えを導き出している―そういった成人学習モデルに基づいたゼミ活動がなされているのだろうと感じました。

 私も大学でキャリア教育を教える教育者の立場ですが、あらためて成人学習学の原則やモデルの観点から、自分の教育実践を点検・改善しなければと考えました。このブックレビューでは、インストラクショナルデザインに関連づけて本書をご紹介しましたが、ジェンダーの入門書としてわかりやすく良書で、老若男女問わず、さまざまな立場の方におすすめの本です。自分自身や身の回りにある小さな偏見にも気づくことができるかと思います。

 

(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士前期課程 16期修了生 濵田佳奈子)

 

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【報告】第63回まなばナイトレポート12/9(土)「ChatGPTとインストラクショナルデザイン」

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2023年12月9日(土)、年内を締めくくる「まなばナイト」が千葉工業大学津田沼キャンパス、高橋先生の研究室を会場として開催されました。

テーマは「ChatGPTとインストラクショナルデザイン」。話題提供者は熊本大学大学院教授システム学客員教授の仲林清先生と、修了生(第10期)の北川周子さんでした。

仲林先生からは「ChatGPTにレポート作成を指示する演習の実践」の研究成果について御講演いただきました。講義で「ChatGPTにレポートを書かせる」課題を出し、学生がどのようなレポートを作成するのか、その作成レポートの分析からの考察をお話してくださいました。

同じテーマで、同じ教材(ビデオ)を視聴しても、各々の使用する用語や入力する文章の違いで、ChatGTPから返されるレポートが異なり、そのレポートの分析から学生に対する教育的観点と今後ChatGTPをうまく利用していくためにはどうしたらよいのか、改めて考える講演でした。

今は新しいツールとして何となく使っているChatGTPですが、今後は教育の場でも日常的に使用するようになりそうです。そのため、ChatGTPの「適切な使い方」や「利用することの意味・目的」を含めたルール作りと事前周知が必要となりそう・・・・・・と考える機会となるお話でした。

次の話題提供者北川さんからは「ChatGPTに丸投げして講座を作ってみた」という実践についての御講演でした。

実際にChatGTPだけで作成した場合でも音声が入り動画として見栄えのする講座が作成できていたことに驚きました。そのあとに述べられた考察で、プロンプトの書き方には注意や工夫が必要である点、万一ChatGTPにウソをつかれたらどうするのか?この作成した動画にだれが責任取るのか?とありました。この考察を聞いて、今後利用していく場合には内容のチェックや確認、精査など自分自身で気を付けて行わなくてはならない事と感じました。その他の考察でSMEは必要であること、IDを取り入れる構成についても述べられていました。

講座(教材)はChatGTPに作れたとしても、内容のチェックや確認、精査などの見極めや構成の助言などには、まだ人間(SMEとして)の能力が必要とされていると感じました。

仲林先生、北川さんの講演の後にはグループディスカッションを行いました。各グループでのディスカッションの後にはそれぞれからたくさんの意見が発表されました。

今回もまなばナイトでは、最近のトレンドであるChatGTPを通して色々な事を考える機会となりました。ChatGTPに作業内容の公平性や作業軽減の期待はできますが、現時点での整合性の不安や最終的な確認作業の負担が危惧される一方、我々人間の存在意義も確認でき、少しだけホッとしました。


(川村美好 熊本大学大学院教授システム学専攻修士課程13期修了生)

 

○写真入りレポートは以下をご覧ください。
https://www.manabanight.com/info/manabanight63report

 

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【ご案内】第64回まなばナイト 2/24(土)@東京 開催案内

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第64回まなばナイトテーマ 「GSIS修了生の今」


第64回まなばナイトは、参加者アンケートでも関心の高い「修了生のその後」の活動について取り上げます。さまざまな分野で活躍されているOBOGのうち、今回は活躍されている同窓生の中からおふたりに発表いただきます。

話題提供の詳細やグループセッションの企画はまとまり次第お知らせいたします。気になる方は予定を入れておいてくださいね。

 

東京の会場とオンライン(Zoom)でのハイブリッド開催を予定しています。是非奮ってご参加ください!!

 

【日時】
2024年2月24日(土)17:00~19:30
Zoom待機室入場時間 16:45~

 

【会場】
熊本大学東京オフィス
東京都千代田区内幸町2-1-4 日比谷中日ビル4階 
https://www.kumamoto-u.ac.jp/kenkyuu_sangakurenkei/sangakurenkei/office/index
・三田線「内幸町」 (A7 出口)から徒歩4分
・東京メトロ千代田線等の「霞ヶ関」(C4 出口)から徒歩1分
・JR山手線・京浜東北線、都営浅草線「新橋」(徒歩10分)も利用可能 

 

【プログラム】
セッション1
◎話題提供
 「テーマ未定」
平岡 斉士さん(博士前期4期生)
放送大学 准教授

「看護師教育に携わる人の育成とIDの普及」
小池 啓子さん(博士前期13期生)
埼玉医科大学短期大学 看護学科 講師/熊本大学大学院教授システム学専攻 非常勤講師 

◎グループワーク(Zoomブレイクアウト)
セッション内容は検討中

◎クロージング

19:30 閉会
19:45~21:45 懇親会

 

【定員】
専用フォームからの申込み 
会場10名様/zoom先着 90名様

 

【参加費用】
現地参加:500円 
※当日現金でお支払い願います。お茶や飲み物等準備いたします。 
  

【懇親会】(オプション)
まなばナイト終了後、懇親会(現地会場のみ)を予定しています。
懇親会のみ参加についてもお申込みフォームからお願いします。
(まなばナイト:参加しない/懇親会:参加するを選択してください)

 

【まなばナイトへのお申込み】
お申し込みは、こちらから https://forms.gle/dRAagHu4ARjWDsgb7
2月22日(木)正午までにアクセス方法を登録いただいたメールアドレスにお知らせします。
2月22日(木)正午にメールが届いていない場合は、事務局までご一報ください。

最新の情報は、まなばナイトのサイトでご確認ください。

 

【キャンセルについて】

まなばナイト参加キャンセル等のご連絡は、2月21日(水)までに info@manabanight.comまでお願いいたします。使用するシステムの都合上、当日の参加取消しはご遠慮ください。

懇親会のキャンセルにつきましても2月21日(水)までにご連絡がない場合はコース費用をご負担いただきますことご了承ください。

 

【主催者】熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会
https://www.gsis.jp
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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2024/1~2024/2

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2024年1月23日 (火)
第36回 熊本大学 eラーニング連続セミナー@熊本大学
2024年2月3日 (土)~2024年2月4日 (日)
情報処理学会 コンピュータと教育研究会 173回研究発表会@大阪大学

 

★ 編集後記

年末年始は、家族が少し体調を崩したこともあり、正月三が日を過ぎるまで、家から一歩も出ずに過ごしました。普段は、いつも何かに急かされている感があるのですが、久々に時間の流れをゆっくり感じることができ、こういう時間は意識的に取らないといけないのだなと、よい気づきが得られたお正月でした。
(第129号編集担当:石田百合子)

 

よろしければ、お知り合いの方に、Webからの登録をお勧めしてくださいませ。

また、皆さまの活動をこのIDマガジンに載せてみませんか?

ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!

【 mail to: id_magazine@mls.gsis.kumamoto-u.ac.jp】

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<編集>

名誉編集長:鈴木克明

共同編集長:市川尚・根本淳子

編集幹事:高橋暁子・竹岡篤永

ID マガジン編集委員:石田百合子・市村由起・甲斐晶子・桑原千幸・仲道雅輝・三井一希

 

<発行>

熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会

http://www.gsis.jp/

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謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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