(株)ヒューマンパフォーマンスの鹿野と申します。IDマガジンの編集、根本さんから「パフォーマンス・コンサルティング」の解説記事の打診があり、身の程も知らず、お引き受け致しました。この記事では、背景にあるISDやHPT、現在の広がりなど、ふれたいことはいくつかありますが、今回は「パフォーマンス・コンサルティングとは」についてです。
パフォーマンス・コンサルティングは、Robinson & Robinson “Performance Consulting”1995(拙訳『パフォーマンス・コンサルティング』2007年)が始まりだと言われています。この本は世界の人材開発関係者の間で大きな反響を呼び、スペイン語、アラビア語、中国語、そして、日本語(遅れましたが)に翻訳され、大学のテキストにもなっています。
いきなりですが、次のような状況を考えてみてください。営業本部長から「若手の提案書はひどい。提案スキルを高める研修をしてほしい」という要望がありました。そこで、人材開発担当者が現状をアセスメントしたところ、確かに「若手の知識・スキル不足」は見られますが、同時に「上司が提案書の指導をしていない」「残業中に先輩社員が若手に雑用をさせるため、若手は提案書をじっくり考えられない」ことがわかったのです。さて、この状況で提案スキル研修を実施するだけで、若手の提案書の質は改善するでしょうか?
パフォーマンス・コンサルティングの定義は次のとおりです。
「パフォーマンス・コンサルティングとは、クライアントとコンサルタントが協働し、職場のパフォーマンスを事業目標の達成に役立つように最大化することで、戦略レベルの成果を実現するプロセスである」―拙訳『パフォーマンス・コンサルティング2』2010年
先の例で言えば、営業本部長がクライアント、人材開発担当者がコンサルタント、質の高い提案書をつくることがパフォーマンス(従業員の実務行動)です。パフォーマンス・コンサルティングとは、事業目標の達成に役立つパフォーマンス(従業員の実務行動)を最大化することで業績向上に貢献する、「人材開発の仕事の進め方」です。重要なポイントは、「事業目標の達成にカギとなる従業員の実務行動」とそれらを「最大化」するための促進・阻害要因(上司の指導や役割分担など)を特定し、合わせ技の手を打つところです。
パフォーマンス・コンサルティングでは、企業内の実務家が実践するために、分析モデル、成果物、インタビューのコツなどが体系化されています。そして、「事業目標~職場での実務行動~(学習を含む様々な)施策」を連動させて設計するので、行動レベルの効果測定がわかりやすいというメリットがあります。このパフォーマンス・コンサルティングの源流には、HPT、ISD、IDがあります。次回はそのあたりをみていこうと思います。
株式会社ヒューマンパフォーマンス 鹿野尚登
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パフォーマンス・コンサルティング・ワークショップ
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