トップIDマガジンIDマガジン記事【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(111) : 経営トップへの提言:人材育成についての神話を払拭しよう!

【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(111) : 経営トップへの提言:人材育成についての神話を払拭しよう!

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(111) : 経営トップへの提言:人材育成についての神話を払拭しよう!

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ヒゲ講師は2025年5月のとある日、迫りくる複数のイベント登壇のためのネタを整理していた。そのプロセスの中で、10年ほど前に熊本経済同友会の管理職向け人材育成セミナーで話したときの資料が見つかった。タイトルは、「経営トップへの提言:人材育成についての神話を払拭しよう!」である。資料には、2014 年11 月21 日と書かれているので、10年半前のことか。この時期は『研修設計マニュアル』の執筆中だったので、書籍の中で紹介した気になっていたが、見当たらない。あれ、これってどこにも公開していなかったのか。いや待てよ、最近どこかで使ったような記憶もある。少し調べてみたら、2019年6月25日に登壇した「人材開発研究会」と銘打ったセミナーの配布資料で紹介していたようだ。その後、社内誌のインタビューを受けて記事も出たようだが、その中には紹介されていない模様(国会図書館には所蔵されているようだが、本文は出回っていない)。

それならば、ということで、ここで紹介しよう。読み方は、最初に書いてあるのが世の中で根拠もなく広く信じられていること(つまり、神話)で、それに続くカッコの中の記述が、「そう考えた方が良いと思いますがどうでしょうか」という提案である。例えば、1.研修はイベントである、と考えている人が多いですが、「業務への準備と日常的で継続的な振り返り」(つまり、イベントではない)と考えた方が良いですよ、というように読んでください。

 

■経営トップへの提言:人材育成についての神話を払拭しよう!
1. 研修はイベントである(業務への準備と日常的で継続的な振り返り)
2. 研修は福利厚生の一部である(業務改善・組織発展の手段)
3. 研修はコストである(投資である)
4. 研修はコストカットや外注化の対象である(組織の中枢にあるコア・コンピタンスである)
5. 研修は新しいことを知るためのインプットである(情報提供=研修ではない)
6. 人材育成は研修で実現する(基本は自己啓発とOJT:研修以外の手段をまず検討すべき)
7. 人材育成は研修担当部門の仕事である(社員自身と上長の仕事、上長の支援がHRD の仕事)
8. 研修担当部門の仕事は新入社員研修と講師招聘である(上長支援と内製化)
9. 研修担当部門は事業部門の下請けである(経営トップの戦略遂行支援と企業文化の創造)

 

10年ほど前に経営トップ向けに発したメッセージであるが、今日でも神話が払しょくされたわけでもないケースも多く残ってますよ。登壇予定イベントの主催者で熊大の修了生にそう言われた。それならば、ずいぶん昔に作ったものだが、ここで紹介する意味がまだ残っているかもしれない、と思った次第。読者諸氏の周囲では、どのような状況だろうか。いまだに研修をイベント(つまり、毎年行う単発型の恒例行事)だと考えているのか、あるいはすでに日常的で継続的な営みと考えられていて、仕事と直結したものになっているのか。一度たな卸しするためにも、9つの神話それぞれがどの程度まだ信じられているか、あるいはすでに払拭できたのか、省察してみても良いかもしれませんね。

 

ちなみにこの払拭すべき「神話」という形式で関係者の常識に根拠がないことを指摘し、その枠組みから抜け出せば見える世界が変わりますよ、というアプローチで刺激的な話をした人がいる。その人の名はロジャー・シャンク。時は2003年1月で場所はフロリダ州オーランドのASTD:Techknowledge2023の基調講演だった。ヒゲ講師がそのスピーチに感銘を受け、テキストのコラムで紹介したのは20年以上前のこと。その形を10年前に思い出し、真似して経営トップに語りかけてみようと考えたのは、疑いもない事実である(本人が言うのだから間違いありません)。

 

(ヒゲ講師記す)

 

参考文献:鈴木克明(2003)eLFテキスト序章 教育工学者が見たeラーニング.コラム:eラーニングにまつわる15のおとぎ話(図表0-5)
https://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/iel/contents/003/eLF2003t161.pdf

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