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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(110) :ID の前提(GOLD メソッド版)ができました
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ヒゲ講師は、3月8日大阪市中央公会堂のホールにいた(国の重要文化財だそうです)。日本医療教授システム学会(JSISH)第 17 回総会で教育講演を依頼されたためである。自身が大会長を務めた第16回でネタを使い果たしたあとだったこともあり、予稿集には何も書けなかった。当日の配布資料と投影資料としてお披露目したが、これ幸いということで、この連載で紹介しておきたい。JSISHが推している人材育成の枠組み「GOLDメソッド」の前提となるIDの考え方として提案した「IDの前提(GOLDメソッド版)」である。この連載(68)で7年前に披露した「IDの前提(病院版)」(https://idportal.gsis.jp/magazine/doc_magazine/157.html)の後続版になる。さて、読者の皆様は、以下の15項目に示す考え方に同意してもらえるだろうか。また、同意はできるとしても、日ごろの教育実践で取り入れているだろうか。取り入れていないとすればどのような障壁があるからだろうか。あるいは、医療領域以外でも使えるだろうか。思いを巡らせてほしい。
ID の前提(GOLD メソッド版)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー20250308 第 17 回総会講演用
今の気持ちに〇をつけてください。( )の中の番号は『ID の道具箱 101』の項目を示す
- 【賛成・反対・保留】学習する内容は個別の項目を別々に扱うのではなく、まず全体を網羅する枠を示してそこにはめ込みながら学ぶのが良い (043 先行オーガナイザ)
- 【賛成・反対・保留】基礎知識をすべて覚えてから実習に移るのではなく、必要に応じて情報(カード)を参照しながら仮想的な実践を経験する中で徐々に覚えてカードが不要になることを目指すのが良い (094 ジョブエイド)
- 【賛成・反対・保留】実践力を身につけるためには、いきなりやらせて失敗させるよりは、まず見本を見せてから、徐々に足場を外して自立させるプロセスを踏むのが良い (037 認知的徒弟制)
- 【賛成・反対・保留】安心して取り組めるレベルでの積み上げ式の機械的な繰り返しで学ぶよりは、失敗の可能性もある挑戦的なレベルで緊張感をもって学ぶ経験を続けるのが良い (008 学習経験の質モデル)
- 【賛成・反対・保留】機械的な繰り返しが続くとすべてを暗記すればよいと勘違いするので、少しずつ異なる「類題」をいくつか扱うことで、同じように見えても応用するための判断が必要であることを経験してもらうのが良い (008 学習経験の質モデル)
- 【賛成・反対・保留】仕事の中ではタイミングよく学ぶチャンスが来るとは限らないが、失敗経験を省察することができる人はどんどん成長していく (019 経験学習モデル)
- 【賛成・反対・保留】基礎教育においても積み上げ式で教えるよりは、将来の医療職になったつもりで仕事の体験を疑似的に重ねる中で基礎を固めていくのが良い (019 経験学習モデル)
- 【賛成・反対・保留】基礎教育における演習やタイミングよく経験できない実務上の経験は、疑似的な教育研修環境を意図的に整備して仮想的に行うのが良い (015 ID第一原理)
- 【賛成・反対・保留】評価は教えてから最後に行うだけではなく、教える前にも行い、できていないことを確認して学習の必要性があることを認識してもらうのが良い (074 TOTE モデル、072 3つのテスト)
- 【賛成・反対・保留】患者とは、患者が主人公の物語を生きる人であり、生活者としての患者に医療・看護を実践するためには、電子カルテ情報から患者物語を想像・創作する必要がある (2 患者物語カード)
- 【賛成・反対・保留】患者が主人公の物語を生きる人として患者物語を描くためには、自分も自分が主人公の物語を生きる人としての自覚をもって学び続ける必要がある (20 成長カード)
- 【賛成・反対・保留】できる医療職になるための姿勢や困難を乗り越える心(マインド)は、実践現場に入る前にあらかじめ基礎教育の中で教えると良い (20 成長カード)
- 【賛成・反対・保留】教育研修は、体系化した知識を身につけるというアプローチよりも、未経験の課題に挑戦するプロセスを繰り返して経験のレパートリー(事例辞書)を増やしていく方が習得しやすい (023 GBS 理論)
- 【賛成・反対・保留】基礎教育は、教科書の内容を頭に入れることを中心に進めるのでなく、将来の医療職になった学習者を主人公に展開する起承転結(筋書き)がある物語(疑似体験)として再構成する方が効果的である (023 GBS理論、007 ID美学の第一原理)
- 【賛成・反対・保留】教育担当者とは、教科書の中身を噛み砕いて説明する人ではなく、学習者が主人公として経験する物語の作者であり、ときとして助演者を演じたり、主人公のモデルとしての役割を果たす人である (007 ID美学の第一原理)
追記:10~12の根拠はGOLDメソッドに含まれる2枚のカードです。GOLDメソッドについては、以下の記事で紹介しているので、あわせて参照いただければ幸いです。
鈴木克明(2024)インストラクショナルデザインとGOLDメソッド(総力特集:熟達ナースの思考を可視化・活用する実践教育)看護人材育成(日総研)8・9月号 21(3):5-10.
(ヒゲ講師記す)