━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2024年11月25日━━
<Vol.0139> IDマガジン 第139号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
涼しくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
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《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(108) :その時を待つ瞬間が合計4回ありました(うち1回は不発)
2. 【ブックレビュー】『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024)三宅香帆 著
3. 【報告】第67回まなばナイトレポート10/12(土)関西「高等教育機関におけるDXの取り組み」
4. 【ご案内】第68回まなばナイト&大忘年会12/21(土)東京「この世は「誤概念」であふれてる!? ~「スキーマ」から考える学びのありかた~」
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記
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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(108) :その時を待つ瞬間が合計4回ありました(うち1回は不発)
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ヒゲ講師は2024年10月29日の夕方、修了生が代表を務める会社で打ち合わせする中、その時を待っていた。NHKニュースーン午後5時台から「オンライン教育に詳しい人」として取材を受けていたからである。ニュースに取り上げられたのは、ZEN大学が設置認可を受けたこと。入学定員が3500人と規模が大きく、何かと話題になってきたN高S高の受け皿としての開学が一度保留になり、いよいよ認可、ということで注目を集めていた(らしい)。この日、文科省が来年度の設置認可校の一覧を発表する予定で、それに合わせての取材ということだった。案の定、予定通り文科省の発表があり、予定通り番組の中で取り上げられた。「すべての授業インターネットで受講可能 “ZEN大学” 開設へ」というコーナーである。オンラインの強みを生かして住む地域や収入などで格差が生じない教育を提供していこうとするこの試みがニュースバリューがあることだというアナウンサーとコーナー担当者とのやりとりのあと、ヒゲ講師が専門家として登場。何やら発言しているようだ、という確認ができたところで、すぐ出番は終了。あっという間の出来事であった。
ニュース番組の取材はなかなか断りにくいが、いつも心配がつきまとう。長々と取材を受けて、いろいろ発言し、「繰り返しになる部分もありますが・・・」と前置きされて、同じような質問に何度も答える。しかし、その発言の中のどの部分がどの程度取り上げられるのかは、放送日まで分からないままだ。放送日に緊急性が高いニュースが勃発すれば、見送りになる場合もあるし、予定した時間より尺が短くなる場合もある。それが報道の宿命。どこを切り取られても大丈夫なように配慮し、なるべく否定的な表現は使わないようにする。でも誤解を生じるようなものにならないか、心配は尽きない。結果としては、それほど長く使われないので、一瞬で終わり、「あ、出た!」という印象が残るのがせいぜい。なので、それほど心配する必要は、実はない。そのことが今回も確認できた、というわけでした。
一方で、同日NHKのWebサイトで番組放送とほぼ同時に公開された記事には、番組での発言を超えて、かなり詳細に「専門家の意見」を紹介してもらった。
Q.今回の通信制大学の開設 どうみる?
Q.通信制大学のニーズは高い?
Q.大規模な通信制の課題は?
Q.ほかの大学へのインパクトは
ということで、番組はNHKプラスでの見逃し視聴も含めて終了した今でもWeb記事は読むことができる。ZEN大学の認可がおりることを取材を受けて初めて認識した程度の「オンライン教育に詳しい人」が何を発言したか、興味を持っていただけると嬉しいです。
放送局がWebという二次手段を持つようになったことで、とても興味深い変化が生じている。取材も、もちろんリモートインタビューだった。これも小さくない変化なのだろうと思う。その時を待つシリーズの第1回目のご報告でした。
(ヒゲ講師記す)
■参考Webサイト■
文科省認可校一覧:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1420729_00018.htm
NHKWebサイト:すべての授業インターネットで受講可能 “ZEN大学” 開設へ(2024年10月29日 17時05分):https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241029/k10014622611000.html
■追記(後日談)■
このあと、ZEN大学が設置認可を受けて記者会見を行った。そのタイミングで日本テレビ系列土曜日朝の報道番組「ウェークアップ」とNHKサタデーウオッチ9 (2024年11月16日放送)からも取材を受けて、どちらもちょこっと顔を出した(その時を待つ体験の第2回・第3回)。記者会見当日の夕方のNHKニュースでも、先日の取材を再利用するという告知を受けた。番組では取り上げられなかったようだが、Webサイトに使ってもらえた(不発の4回目、いや、こっちが先でしたが、合計4回)。
NHKWebサイト:通信制大学“ZEN大学”会見「学生の挑戦を後押しする大学に」(2024年11月12日 17時30分)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241112/k10014636261000.html
■追記2■
ところで、ヒゲ講師のID活動日誌(81)で触れた4年前の取材(NHKニュースウォッチ9)のWeb記事はどうなっただろうか。改めて調べたら、まだWebで公開されていた。いつなくなるのだろうか・・・。
NHKWebサイト:オンライン授業「導入・検討」大学の9割超 現場の教員に負担も(2020年5月19日 20時46分):https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200519/k10012436611000.html?fbclid=IwAR0FSbdZa0bjIa-COMbHSPUdzQj4ySLAmPh8n8Xs-dEOn305b2tsCIkepHk
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【ブックレビュー】『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024)三宅香帆 著
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タイトルをみて、ドキッとした人も多いのではないでしょうか。私が書店で初めてこの本を見かけたとき、同時に帯に書かれた「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」という言葉が目に飛び込んできて、自分の痛いところを突かれているなと、その場をそっと通り過ぎました。しかし数日後、改めてこの本を見かけたときに、もう一つの私の痛いところ(且つ、研究としての私の関心領域の一つ)である「リスキリング」のヒントになるかもと思い、思い切って読み始めることにしました。
いわゆる「自己啓発本」かと思いきや、そうではありません。目次を見ると、「労働と本を読むこと」との関係の変遷が、明治時代から2010年代までを9つの時代にわけ、その当時に流行った書籍の紹介とともに、丁寧に描かれています。見方を変えれば、企業の労務管理・人的資源管理の観点での経営学、社会階層の観点での社会学、それぞれの時代の読書文化に関しての人文科学を広くカバーした人材育成の専門書の一つといえるかもしれません。
本の著者は、本が好きで文学部に進学し、IT会社に勤務したものの本が読めなくなっていることに気づき、会社勤めを辞めて、文芸評論家に転身されたそうなのですが、随所に、本を読むということに対する熱い想いが散りばめられています。
各時代における「本を読むこと」の位置づけと、労働に関連して読まれていた本の種類については、ぜひ本書を手に取って読んでいただければと思いますが、私が特に印象に残ったのは、以下の3つです。
一つは、1990年代を境に自己啓発書で描かれる内容が変わったという点です。自己啓発書が、内面の在り方(態度)から、具体的な行動を示すものに変化したことを、以下のように記しています。
自己啓発書の原点として明治時代に流行した『西国立志論』を紹介したり、1970年代のサラリーマンに読まれた司馬遼太郎の小説を紹介した。それらと90年代の自己啓発書と最も異なるのは、同じ自己啓発的な内容ではあれどそのプロセスが「心構え」や「姿勢」「知識」といった<内面>の在り方を授けることに終始していたことだ。たとえば偉人の人生を紹介することで、その生きる姿勢を学ぶ。そこに<行動>プロセスは存在しない。しかし90年代の自己啓発書は、読んだ後、読者が何をすべきなのか、取るべき<行動>を明示する。(p170)
二つ目は、読書はノイズであるという点です。
90年代以降の自己啓発書は、ノイズ(他者や歴史や社会の文脈)が除去されています。その背景には、人々が現代の労働市場に適合するには、自分がコントロールできる行動の変革が求められている点にあります。その結果、(自己啓発書以外の)読書が「労働のノイズ」になったと、著者は述べています。
最後は、知識と情報の差異(p206)についてです。著者は、「情報」=知りたいこと、「知識」=ノイズ+知りたいことであると整理し、読書はできなくても、インターネットを見ることができるのは「ノイズなく、欲しい情報を得られること」によるものだからと説明しています。
という話を、10数年ぶりに会った大学院の同期に話していたところ、「でも、仕事を進めるうえではノイズも大事なんじゃないの?」と言われました。ノイズは、IDの学習の出入口を見極め、方略を考えるうえで重要な情報の一つです。そのことに気付かなかった自分にヒヤッとするとともに、本を読んで語りあうことの大切さを改めて痛感しました。こうやってノイズとうまく付き合い、使いこなすことが、これからの学びや、学びの支援を考えるうえで、とても重要なことなのかもしれません。
※「ノイズ」や「働きながら本を読むコツ」について詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。
PIVOT TALK 三宅香帆 社会人になると本が読めなくなる
https://pivotmedia.co.jp/movie/11705
(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士後期課程修了 石田百合子)
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【報告】第67回まなばナイトレポート10/12(土)「高等教育機関におけるDXの取り組み」
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毎年秋に行なっている,まなばナイト関西バージョン.今年は鈴木先生の強いご希望?!のもと,お酒と食事を楽しみながら,の名古屋方式!での開催となりました.
まず熊本大学名誉教授でGSIS同窓会顧問、現在は武蔵野大学響学開発センター長の鈴木克明教授からご挨拶と乾杯のご発声をいただきました(リアル会場では飲み物が間に合わずエア乾杯になってしまったことはふれないでください・・・)
本日のテーマは「高等教育機関におけるDXの取り組み」ということで,Gsis後期課程前専攻長で大阪大学スチューデント・ライフサイクルサポートセンター教学DX部の都竹教授にご講演いただきました.講演後は鈴木先生と都竹先生お二人での対談!という大変贅沢な時間を堪能させていただきました.
私事ですが,今回のまなばナイトではZoom当番をしていたので,全体を把握し損ねてしまいました.でも「こんな贅沢な時間は滅多にないっ」と必死にお話の断片を拾い集めメモを取りました.
・やる気の継続は1人より3人
・大学入学直後の1年生にARCSを教えるとその時はいい感じになる
・オープンバッジは学習履歴がなければ無意味
・オープンバッジやマイクロクレデンシャルを学生のスキルや学習成果として認めている企業は少ない
・アメリカでは学士号がなくてもオープンバッジでの採用がすすんでいる
・LMSのようなデジタルにならない学び(アナログなノートやインフォーマルな学び)をどう評価するか,デジタルとかアナログにこだわらず自分の学習履歴を自分で残すことが出来ればスキルアピールが出来る
・ARCSは相手のやり方を非難せずに導入しやすいIDの考え方
・OBを繋ぎ止めるには「お得感」が必要で寄付のお願いばかりだと萎える
・Gsisはオンラインなのに同窓会がナゾに活発(と鈴木先生がどなたかから言われた)
・・・etc・・・
上記は私が必死に?iPadにメモった内容です.意味不明なものもありますが,規格化された学びの場だけでなく,学習者個人が何を身につけているのか,それを個別に正しく評価することの大切さを痛感しました.
教育現場にいるものとしては,「(教える側が)これだけやったから」と「(学ぶ側が)これだけ身についた」に大きな違いがあることを身にしみて感じており,そのギャップをどうするか?に日々悩んでいるので,当たり前のことを行うことの難しさとともに,日々の取り組みを反省しながらお話を伺っていました.
初めてのカラオケボックスパーティールームの勝手の違いに,スタッフは開始まであたふたしてしまって,いろいろ不手際もあり,Zoom参加の皆さんのフォローなども至らぬことばかりでした.準備をしてくださった皆さん,当日の司会や運営など皆さんお疲れ様でした.これに懲りずまたご参加いただければ嬉しいです.
次回は東京開催です.年末の押し迫った中ですが,また皆さんの参加をお待ちしています.
(Gsis9期生+博士後期課程 中前雅美)
○写真入りレポートは以下をご覧ください。
https://www.manabanight.com/info/manabanight67report
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【ご案内】第68回まなばナイト 12/21(土)「この世は「誤概念」であふれてる!? ~「スキーマ」から考える学びのありかた~」
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第68回まなばナイトのご案内
今回のまなばナイトは毎年恒例!大忘年会も併せて開催致します。
お時間許される方は是非現地まで足をお運びください。
もちろんハイブリット開催ですので、関東以外のみなさまも奮ってご参加ください。
テーマ:この世は「誤概念」であふれてる!? ~「スキーマ」から考える学びのありかた~
みなさんは以下のような経験は無いでしょうか?
・子供に何度説明しても同じ間違いを繰り返す
・学生に解き方を教えたはずなのに問題が解けない
・部下に指示を出して「わかりました!」と返事したのに抜け漏れがある
これは、みなさんの伝え方が悪いのでしょうか? あるいは、 相手がみなさんの話を理解する能力が無いのでしょうか?
実はこの原因は、相手が持っている誤ったスキーマ(誤概念)が原因かもしれません。
人間はスキーマ(知識・概念の集まり)を使って、相手の言っていることを理解したり、問題を解いたりします。
そのため誤ったスキーマ(誤概念)を持っていると、コミュニケーションがうまくいかなかったり、的外れな解答を導いたりします。
今回は、このような観点から教育現場の課題を扱った「学力喪失※」という本を題材に、 千歳科学技術大学、熊本大学大学院教授システム学客員教授仲林先生の研究やIDの理論も交えて、みなさんとより良い学びの方略を考えてみたいと思います。
※ https://www.iwanami.co.jp/book/b650415.html
【日時】
2024年12月21日(土)17時00分~20時00分
Zoom待機室入場時間 16:55~
会場:銀座スプラッシュ
東京都中央区銀座7-2-20 パシフィック銀座ビル7階
※受付は16時50分となります。(早く来られてもお店が開いてませんのでご注意ください)
飲食しながらのまなばナイトをお楽しみください。
【プログラム】
◆テーマ:「この世は「誤概念」であふれてる!? ~「スキーマ」から考える学びのありかた~」
仲林 清 先生
千歳科学技術大学 情報システム工学科 教授
熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 客員教授
◆セッション2(18:05~)
グループワーク(Zoomブレイクアウト)
【テーマ】
みなさんが感じたスキーマについての対応
部下とのコミュニケーションや学生との理解の食い違い等、自分の経験した問題を例に挙げ、
本日の内容をヒントになぜそのような問題が起きていて、どうすれば問題に対応できるかを話し合っていただきます!
◎共有タイム・質疑応答 or 先生コメント
◆クロージング
鈴木 克明 先生
【定員】
現地会場 20名
オンライン会場 90名
【参加費用】
現地会場 6,500円(食事・アルコール飲み放題付き)
オンライン会場 無料(各自でお飲み物、おつまみをご準備ください)
【まなばナイトのお申込み】
お申し込みは、こちらから https://forms.gle/4RS4o1k59VGNnEX48
申込締切は12月3日(金)です。
締切日以降のお申し込みはinfo@manabanight.comまでご連絡ください。
【参加費について】
現地会場のご参加につきましては当日お支払いください。
【キャンセルについて】
まなばナイト参加キャンセル等のご連絡は,12月3日(金)までにinfo@manabanight.comまでお願いいたします。それ以降のキャンセルはお受けいたしかねますのでご了承ください。
※無断キャンセル、当日やむを得ずキャンセルする場合はキャンセル料(6,500円)を12月25日までにお支払いください。
【その他】
12月11日(水)正午までに登録いただいたメールアドレスにアクセス方法をお知らせします。
12月11日(水)正午にメールが届いていない場合は、事務局までご一報ください。
※当日は連絡がつかない可能性が高いので、必ず事前に確認してください。
【主催者】
主催:熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会 https://www.gsis.jp
みなさまのご参加お待ちしております!!
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10期 北川 周子
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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2024/11~2025/2
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2024年12月7日 (土)
2024年度日本教育工学会研究会「探究学習・情報教育/一般」@岩手県立大学滝沢キャンパス(滝沢市)
2025年1月14日 (火)・15日(水)
人工知能学会 第131回 人口知能基本問題研究会(情報処理学会第201回アルゴリズム研究会との合同開催)@くまもと県民交流館パレア
2025年2月16日 (日)
日本教育メディア学会第2回研究会「学習者主体の学びとメディア活用/一般」@京都教育大学
★ 編集後記
温暖な気候の四国・松山にも、少しずつ冬の気配がしてきました。道後温泉本館の重要文化財の公衆浴場の保存修理工事(日本初の取組)が、完了し、全館再開となっています。皆さま、ぜひ四国・松山にお越しください。
(第139号編集担当:仲道雅輝)
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名誉編集長:鈴木克明
共同編集長:市川尚・根本淳子
編集幹事:高橋暁子・竹岡篤永・石田百合子
編集委員:市村由起・甲斐晶子・桑原千幸・仲道雅輝・三井一希・カッティング美紀
<発行>
熊本大学大学院社会文化科学研究科 教授システム学専攻同窓会
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