トップIDマガジンIDマガジン記事[141-03] 【ブックレビュー】『その幸運は偶然ではないんです!―夢の仕事をつかむ⼼の練習問題』(2005) J.D.クランボルツ,A.S.ラーヴィン 著

[141-03] 【ブックレビュー】『その幸運は偶然ではないんです!―夢の仕事をつかむ⼼の練習問題』(2005) J.D.クランボルツ,A.S.ラーヴィン 著

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【ブックレビュー】『その幸運は偶然ではないんです!―夢の仕事をつかむ⼼の練習問題』J.D.クランボルツ, A.S.ラーヴィン 著, 花⽥光世, ⼤⽊紀⼦, 宮地⼣紀⼦編訳 (2005) ダイヤモンド社. 

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これまでのキャリアで、予期せぬ出来事にどう対応すべきか悩んだことはありませんか?

最近私は、キャリア設計において予期せぬ出来事に遭遇し、キャリアチェンジを余儀なくされた時期に⾃⾝の今後のキャリア再考のきっかけとして⼿に取ったのが本書『その幸運は偶然ではないんです! ―夢の仕事をつかむ⼼の練習問題』です。

 

本書を読む前にまず前提条件として、筆者クランボルツが提唱するプランド・ハップンスタンス理論(Planned Happenstance Theory)について知っておく必要があります。

 

プランド・ハップンスタンス理論 (Planned Happenstance Theory) とは、クランボルツが1999年に提唱したキャリアの理論です。「⼈のキャリアは偶然の出来事によって左右される。本⼈も予想しなかったことで興味が喚起され、学ぶ機会が得られ成⻑する」という考え⽅のことです。(p.90 より抜粋)

さらに、クランボルツは、本書出版後の2009年にプランド・ハップンスタンス理論と「職業選択は、学習の結果である」とする社会的学習理論を統合し「ハップンスタンス・ラーニング理論(Happenstance Learning Theory)」へ発展させています。

 

本書は、プランド・ハップンスタンス理論をベースに4⼈のインタビューから彼らがどのような⾏動を選択し、キャリアにどういう影響を及ぼしてきたかが紹介されています。紹介されている45⼈は、何か⼤きな功績を残した「成功者」ではなく、どことなく⾃分にも状況が似通ったケースもあり、⾃分⾃⾝が学⽣時代同じ悩みを抱えたことがあったなぁと想起し、共感する場⾯もありました。奇跡的な成功ではなく⾃分⾃⾝にも⽇常の中でもあり得そうな状況(困難?)課題に向けて、どのようにキャリアを切り拓いていくかが、記されています。これらのエピソードは、読み⼿へ「代理経験(⼈間モデリング)」をさせることにより、擬似的選択による⾏動場⾯で、⾃⾝ならどうするか?を練習問題で問う、それはガニエの「態度」学習にも共通しているという印象を受けました。

 

各章の最後には「あなたは...?」といくつかの質問形式による以下のような練習問題があります。

 1章    あなた⾃⾝の⼈⽣のための簡単な練習問題

 2章    選択肢をオープンにしておくための練習問題

 3章    夢の仕事に関する練習問題

 4章    新しく挑戦したいことを⾒つけるための練習問題

 5章    あなたの失敗に関しての経験を振り返るための練習問題

 6章    話をする時間はもうおしまいー⾏動に移すための練習問題

 7章    学び続ける⼈になるための練習問題

 8章    内なる壁を克服するための練習問題

 

読み進めていくたびに、これら各章最後の練習問題を⾃⾝で回答しながら書き出していくと、⾃分⾃⾝の他者との出会いからどんな出来事があったのか、どんな失敗が⾃分への学びを与えたのか、これまでのキャリアの棚卸しをしながらも新たな⾃分の発⾒ができたことやのちの⾏動計画(アクションプラン)につなげられたことは、⼤変興味深かったです。

 

本書を読み終えた私は、これまでの熊本⼤学⼤学院⼊学から現在までの事を思い返し、プランド・ハップンスタンス理論と⾃⾝の経験を照らし合わせてみることにしました。46 ⼈⽬のケースとして紹介いたします。

 

―どんな活動にも積極的に取り組んだ濱崎あゆみのケースー

・⼤学院⼊部式で、在学中にあるカリキュラム外の「オプション」へ参加すると良いとアドバイスをもらった。

・⼈⽣初めての学会へ⾶び込み参加したところ、先⽣⽅や⼤学院の先輩⽅が温かく迎え⼊れてくださった。

・「オプション」の参加がとても楽しく、1つ1つの経験が学びとなり、「オプション」参加の重要性に気づいた

・修了後も積極的に図太く「オプション」参加し続け、キャリアチェンジの相談に乗ってもらった

・⾃信がなかったが、本ブックレビューの依頼を引き受け、挑戦してみることにした

・ブックレビューを書き進める中で、新たなキャリアへの挑戦を⾒つけることができた

 

上記の⾏動は、想定外の出来事であり、熊本⼤学⼤学院在学中と修了後の様々な⼈との交流した⽇々という⼩さな出来事(=これがクランボルツのいう「計画的偶発性」)の結果として、本記事を書かせてもらう経験を⽣み、その経験が次へのチャレンジに向けたステップを与えてもらった結果につながったのだと考えております。

 

最後に、私がとても印象に残った本書の⾔葉で締めたいと思います。

「あなたのキャリアが「もつれた⽑⽷の⽟」のようであっても、それでよいのです。常に学び、挑戦し、好奇⼼を持ち続けてください。」(p. 228)

 

好奇⼼を持つことが、⾏動を起こし継続的な学びと挑戦を与えるファーストステップであることにあらためて気づかされた⼀冊です。

 

※参考⽂献:

⽊村周, 下村英雄 (2021)「キャリアコンサルティング理論と実際   専⾨家としてのアイデンティティを求めて 6訂版」⼀般社団法⼈雇⽤問題研究会 p. 90-91.

 

(熊本⼤学⼤学院教授システム学専攻    博⼠前期課程17期修了⽣    濱崎あゆみ)

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