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論文(修士論文)[2018年度] に属する文献一覧 (12件)
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鈴木真保(2019)オンライン教育におけるドロップアウト防止のためのチュータリング方略の研究 ~方略平準化のための手引書作成~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
筆者が所属する団体では、認定講座等のオンライン講座化を進めている。2018 年 1 月には、最上位資格の認定講座のオンライン化を開始した(第 1 期オンライン講座)。しかしながら、オンライン化したところ、採点対象となる課題レポート等をそもそも提出しないため、合格に至らない例が増えていることが判明した。認定希望者は、当該講座を受講するしか方法がないため、オンライン講座への適応を余儀なくされるが、その準備が不十分 であったことが推測された。本研究では、そうした環境下においても、受講者が学習を完遂できるための施策を検討した。 過去の対面講座および第 1 期オンライン講座における合格率を調査したところ、レポート提出率、ロールプレイ試験受験率が、科目合格率に影響を与えていることが推察された。そのため、レポート提出率やロールプレイ試験受験率を上げるサポートをすることが有効であると考えられた。 第 2 期オンライン講座では、筆者がチュータ/メンタとして、ドロップアウトを防止する施策を実施する形で介入を行った。行った介入は、主に以下の 3 点。具体的なレポートの 書き方のコンテンツ化、グループワークの導入、中間確認日の設定である。これらの介入の結果、ドロップアウトは減少し、合格率の上昇という結果となった。 しかしながら、第 2 期オンライン講座では、チュータ/メンタの作業工数が増え、講師やチュータ/メンタに時間的その他の負荷が増加しており、効率性に疑問が残った。そのため 次期以降の改善として、効率化を追求する目的で、講師(SME)がチュータ/メンタとして兼務しドロップアウト防止のための活動ができるための、手引書を作成する試みを行った。これにより、ID 専門家やチュータ/メンタの教育を受けていない講師(SME)であっても、効果的にドロップアウト防止のサポートが可能になる。手引書は以下の手順で検討・作成 された。最初に、チュータ/メンタによる介入項目のリストアップと学術的エビデンスの紐 付け・検討。次に、手引きの作成、続いて、エキスパートレビューの実施。最後に、形成的評価である。 今後は、実際環境での使用や他講座への移植により、小規模な講座で専任・専門のチュータ/メンタを配置できない場合でも、効果的なドロップアウト防止サポートができる体制作りに寄与する研究に発展させたい。
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安藤文人(2019)知的技能・運動技能が連携した歯科臨床基礎実習のブレンデッド・ラーニングの 教育設計分析と改善.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
医学の進歩により,医療系教育において学生が学ばなければならないことが近年急 速に多くなってきている.従前は臨床実習前に臨床基礎実習で患者に対応できることのできるレベルまでの知識・技能を習得し,その後,臨床実習の中で患者の診療を通してさらなる知識・技術レベルの向上を図ることが容認されてきた.しかしながら,未熟な医療者が対患者診療の中で知識・技能を習得していくという従来のシステム は,それを由としない世の風潮により,行い続けることが難しくなってきている.それゆえ,以前から求められていたよりも多くの知識量,高い技術レベルを,臨床実習に出る前までという短い時間で習得させることが必要とされるようになってきた.歯学教育において授業の効率化は喫緊の課題となっている.また,同様の理由で,知識・技能を対患者診療で学ぶ代わりに,シミュレート実習(医療系教育では,模型,マネキンを用いた実習や相互実習を指す)で学ぶ必要が生じてきている.実際の医療の手技は複雑な教授構造をとるが,シミュレート実習実施上の制約(時間,マンパワ ー,器具・器材等)により,単純化,典型化した実習で臨床に出ることのできるレベルまでの学習をし,その後の臨床実習の患者の診療の中で学習内容を精緻化してい る.これらの様式についても改めていかねばならず,より実際の臨床の文脈に則した臨床基礎実習を行う必要がある. 矯正歯科での重要なシミュレート実習のひとつにタイポドント実習がある.本学においてのこの実習は多大なマンパワーを必要とし,現状では学生の学習効果測定も行われていない.タイポドント実習の教授構造を明らかにし,授業改善のためのデザイン原則案を提案することが本研究の目的である.それにより類似の歯科臨床基礎実習の改善を効率的・効果的に行うことができるものと思われる. まず,従来型のタイポドント実習の ID チェックリストによる分析,学習者分析,課題分析,可変要素の分析を行い,メリルのID 第一原理を応用して教材の設計を行 い,タイポドント実習のブレンデッド・ラーニング用教材を作成した.SME のレビューを受け改訂した教材について,4 名の実験協力者(実際に教材を利用する学生では ない)の協力を得て小集団形成的評価を行った.その知見に基づいて教材を改訂,ID 専門家にレビューしてもらい,さらに実際の学生で実地トライアウトを行うための教 材へ改訂した.日本歯科大学生命歯学部5 年生,128 名の学生を 8 名ずつの 16 グル ープに分け,1 週間に1または2グループがタイポドント実習を行った.インストラクタ 2 名が学生の指導にあたり,著者は基本的に実習の進行を記録した.実践の記録,学生アンケート,インストラクタの聞き取り調査をまとめた.結果,今回の実践を経て以下のデザイン原則案を得た. 1.教授構造がループ構造の場合,すなわち類似の項目を繰り返す場合,言語情報の習得は事前学習よりも対面実習に組み込み,インタイムに知識を提供することで教育効果が増強される. 2.学生の間違いを許容し,省察を促すことが学習を効果的にする. 3.対面実習での学生同士の会話を促進することで,より学びが深まる. 今後は,上記知見に基づき改訂したタイポドント実習教材を新たな学生に適用し,上記デザイン原則案の精緻化を図る.
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堀坂佳宏(2019)態度変容を目指した大学生のリスク情報報告を促すモバイルアプリケーションの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
事故やヒヤリハットに関する情報は、顕在化した危険源の確認や潜在的な危険源を探すために必要な情報である。これらの情報を分析することで、事故の再発防止や未然防止といった対策を取ることができる。しかし、事故またはヒヤリハットに関する情報の報告は、その役割や重要性が理解されておらず、さらに無報酬の行動のため、収集しやすい状況ではない。本研究は、これから社会に出る大学生を対象として、ヒヤリハットが起きそうな場所やものをリスクとして報告させ、リスク情報を共有することでリスク認知度を高め、リスク報告を行い続ける態度を身につけさせる教材を開発することを目的とする。まず大学生に対して、リスク報告に関するニーズ分析を行ったところ、大学生のほとんどが利用しているスマートフォンのアプリケーションで報告できるなら、リスク報告を行いたいと分析することができた。そこで本研究の目的を達成するために3つの研究目標を設定した。1つ目はリスク報告に関する教材開発のために学習課題を分析すること、2つ目はモバイル機器のアプリケーションの 利点を活かして、アプリケーション上で教材を開発すること、3つ目は開発した教材に対して大学生および専門家による形成的評価を受け、教材の改善を行うこととした。リスク報告に関する教材開発のための学習課題の分析は、3つの学習課題があると分析した。1つ目はリスク報告の重要性を知識として得るための言語情報の学習、2つ目はリスク報告を実際に行う運動技能の学 習、3つ目にリスク報告をし続ける態度の学習とした。特に報告されたリスク情報を共有することで、リスク報告の重要性やリスクの認知度を高める教材開発を目指したアプリケーション上の教材開発について、モバイル機器にインストールされたアプリケーションは、身近にいつも所持しており、起動も早く、操作性もわかりやすく簡単であることを利用した。特にプッシュ通知による情報提供は、アプリケーションのユーザーからすると開封率が高く、アプリケーション利用の継続率を高めることが知られている。これらの利点は、リスク報告を行い続ける教材につながると考え、アプリケーション上に教材を設計した。大学生および専門家に対する教材の形成的評価について、実際にアプリケーションをインストールしてもらい利用を依頼した。専門家については、安全管理者、アプリ開発者、インストラクショナル・デザイナーとした。評価については、アンケート評価によって行った。(評価結果については、公聴会までに得ます) 本研究で開発した教材は、モバイル機器のアプリケーションで開発したので、スマートフォンを持っている多くの大学生、さらに他大学の大学生でも利用できる。また大学生だけでなく、地域の小学校、中学校、高等学校の教職員や保護者でも利用できると考えている。この教材の普及によって、リスク情報の収集と共有が効率よくでき、安全確保のためのリスク認知度が高まった人が増えることを期待している。 キーワード:リスク情報、危険源、態度変容、アプリケーション、モバイル機器
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伊藤香菜子(2019)継続的なダブル・ループ学習を促進する学習支援プロセスの設計及びツールの開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
定型業務全般において、決められた手順を基にいかに効率的かつ正確に作業を行うか、という視点での「シングル・ループ学習」は働くが、その目的を考え、目標の見直しを行う「ダブル・ループ学習(アージリス、2007)」が働く機会が乏しいことをしばしば経験する。「ダブル・ループ学習」が長期間に渡って行われないことによって発生する問題としては、不必要な業務が取りやめられていないこと、現状に沿った業務に改善されていないこと、必要な業務の創出が行われにくい環境になっていることなどが挙げられる。例えば、活用度が低くなっているデータの作成に作業時間を割かれるという状況が発生し、不適切なリソース配分となっていること、目的意識の欠如から作業の意義が感じられないために業務担当者自身のモチベーションの低下を招くこと、目標が曖昧なため担当する個人によって業務の質に変動が生じていることなどが実際に起こっている。 本研究は、各種業務の目的や目標を定期的に業務担当者自らが見直すことで、業務の改善、不必要な業務の取りやめ、および必要な業務の創出を行うために、「ダブル・ループ学習」を促進するための学習支援プロセスを「学習環境デザイン」および「経験学習モデル」の観点から設計し、「ARCS モデル」、「ID 第一原理」、「経験学習モデル」を踏まえた学習支援ツールを開発、運用および効果検証を行うことによって、『業務担当者自らが、「ダブル・ループ学習」を行い業務の目的・目標の見直しを継続的に実施できる学習支援プロセスおよびツールの提案およびその有用性』を明らかにすることを目的として行った。 筆者の職場における現状の問題点を整理し、その支援方略を「学習環境デザイン」を基に策定し、学習支援プロセスの設計を行った。また、「ARCS モデル」、「ID 第一原理」、「経験学習モデル」を踏まえた学習支援ツールの開発を行った。学習支援プロセスおよび学習支援ツールについて、業務担当者のレビューおよびエキスパートレビューを受けた後に、業務担当者 2 名にて運用し、評価およびツールの改善を行った。 今後は、現組織にて、ダブル・ループ学習が行われるよう運用を続けると共に、本ツールを他組織での運用することを提案し、ダブル・ループ学習の継続的な促進を支援していきたい。
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加藤幸路(2019)MOOC を設計する教員のための チェックリストとマニュアルの開発と評価.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
多様な学習者が、学びたい講座を選び、目的に応じた学び方を選択できるのが MOOC 本来の魅力である。そのためには各講座が明確化された学習目標に向け、構造化された教育設計に基づいて開発されていることが大前提となる。しかしインストラクショナルデザイナーやコンテンツ制作の専門家による組織的支援のもとにコースを設計する欧米と異なり、日本では設計を担当する教員の大部分は e ラーニングによる独学教材を設計するスキルを持っていない。また、組織的支援体制があるのは稀である。そのような状況下で、教員が対面授業を実施した経験のみに基づいて自己流で設計せざるを得ないのが現状である。その結果、教育設計がされていない講座が散見される。特に、受講者が講義動画を含め、何かを参照しながら問題を解くことが想定さ れるオンラインテストによる修了判定にも関わらず、講義の内容を暗記しているかどうかを問う言語情報のテスト問題が多い講座があることが、修了証の価値づけをする上で問題となっている。 本研究では教育設計の課題について、最低限の質が保証された MOOC を設計するための講座設計シートとチェックリスト、それらを使うための知識とスキルを養うマニュアルを開発し評価を行う。またオンラインテストに適したテスト開発を支援するため、言語情報のテストを知的技能のテストに変換するテンプレートを試作し、評価を経て改訂版を提案する。
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川端潤(2019)病院前小児救急におけるゴールベースシナリオ理論に基づいたeラーニング教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
小児が一旦心停止に陥ると予後が悪く,病院前救急(救急車内)活動では,小児の安定化を目指した迅速な救急初期対応が求められる.その小児救急傷病者の症例数は成人に比して少なく,現場経験だけでトレーニングすることは難しく,より多くの教育・トレーニン グが望ましいとされる. 医療教育における Off The Job Training では,シミュレーションが主流となっており,その有用性を多くの研究者が唱えている.一方,シミュレーションはチームを構成する人的リソース及び,時間的制約があるため,継続的に実践することが難しい.根本ら(2005) は,シナリオによる手法が「既知の情報や用意された情報から必要な部分を抽出し活用させ,一つの判断をさせる.」と述べており,ケーススタディとは異なり,学習者がより主体的に状況を判断して,自ら意思決定を行う学習手法であるとしている.救急医療の現場は意思決定の連続であることから,シナリオによる学習が効果的であると考えられる.このように意思決定場面を提供するシナリオを活用した教材を開発するインストラクショナル・デザインの手法としてゴールベースシナリオ(Goal-Based Scenario,以下,GBS)理論が存在する.そこで,本研究では,病院前小児救急について学ぶ教材を GBS 理論に基づいて開発し,オンラインで提供することで,学習者がいつでも,どこでも,繰り返し,現場活動を想定した意思決定を体験しながら小児救急対応に必要なスキルを習得できると考え た. GBS 理論に基づく e ラーニング教材の先行研究調査で,教材以外にシミュレーション教育が必要との結果が示されているが,私は教材が十分な現場体験を表現できていなかった ためだと考え,十分な現場体験を補うために,現場活動の演出を高めた GBS 教材の開発が必要と考えた.そのような GBS 教材を提供することで,小児傷病者対応における問題解決や判断力を学習でき,現場活動での不安軽減や自信向上につながると期待できる. 現場さながらの判断や対応を体験できる GBS 教材を目指し,現場活動の演出を高めた方略として「リアリティのあるシナリオ」と,「現場のような体験」の2つを抽出した.教材開発に際し,学習目標に沿ったシナリオを,GBS 理論に含まれる 7 つの要素との整合性 を点検しながら、フローチャートを作成した.現場演出を高めた方略の「リアリティのあ るシナリオ」では,様々なストーリーが展開されるシナリオに加え,現場で起こり得る予 期せぬ展開や,医師や救急隊との協働場面を付加したシナリオを記述した.「現場のような体験」では,バーチャルリアリティ学の3要素「3次元の空間性」「実時間の相互作用性」「自己投射性」をもとに設計した.教材で必要となるシナリオ操作は JavaScript を利用して実装した. 開発した GBS 教材は,フローチャートと併せ,ID 専門家 2 名により,その理論的妥当性のレビューを受け修正した.また,ストーリーや表示されるバイタルサインの値,傷病者に起こり得る変化や,確認テストにおいて医学的に誤りがないか,専門医のレビューを受け修正した.この教材の対象と想定される看護師 3 名に web 上で形成的評価を実施した.学習後のアンケートでは,現場活動の演出や主体的な学びについて,概ね満足度の高い結果が得られた.また,自由記述式から更なる現場活動を演出するためには,モニターの音を演出すること,多くの情報を得るための選択肢を増やすことなど,教材改善のための具体的な要素が抽出できた. 本研究では,GBS 理論に基づいた学習教材の構成においてリアリティという要素に着目し,現場活動の演出を高めた教材によって,実際の救急現場での意思決定を体験できる学習環境を提供することを目指した.形成的評価の結果,概ねリアリティが高められた教材であるという評価は得たが,不安軽減や自信向上に繋がる教材とまではいえず,より現場活動の演出を高める方法の検討が必要であることがわかった.救急現場では,同時多発的に,複数の課題が迫られるため,そのような演出を加える事も今後検討したい.
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栗原光江(2019)自治体職員の文章に関する基準モデルを用いた推敲セルフトレーニング方略の設計.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
住民の信頼により成り立つ地方自治体の職員(以下「自治体職員」という。)にとって、住民の理解や納得を得られる分かりやい文章を書く力(以下「文章力」という。)は極めて重要である。文章の質は、読み手の立場に立って、目的に応じた推敲を行うことにより高められる。しかし、推敲は複雑な認知過程であり、高度な認知能力を要するため、単に見直しの視点や修正方法を教示しただけではスキルを獲得させることが難しい。また、文章の推敲において求められる水準や範囲、目標が明確でなければ、読み返し、修正を繰り返していくという具体的な行動に結びつけることも困難である。さらに、職員削減、職務増大が進んでおり、管理監督者によるきめ細かな指導を期待することはできない状況にある。 本研究は、自治体職員の文章力向上のために必要なスキルや態度の獲得に有効な訓練や職場環境を明らかにし、推敲セルフトレーニングの方略を開発することを目的とする。 本研究では、ニーズ分析、職場内実態調査、既存ツールの問題点分析、学習課題分析などを行い、文章の質の基準を階層構造に整理したレイヤーモデルを作成した。そして、基準を用いて、既存ツールの改善、トレーニングの方略設計を行った。設計にあたっては、推敲の視点やスキルの個人差を踏まえ、TOTE モデルを用いて、必要なトレーニングのみ実施すればよいように、ツールを開発した。また、設計したツールは、専門家レビューによる形成的評価による改善を行い、改善後のツールを自治体職員が試用した。試用後に実施するアンケート及び上司ヒアリングにより、その有効性を確認することができた。 今後は、試用結果を反映した改善を行うとともに、職場において本格的にツールを導入することで、ツールの精度や効果の向上を図る。また、職場でツールを使った推敲が定着し、仕組みとして継続するための条件を明らかにすることで、さらに汎用性の高い方略になることが期待できる。
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中山かつよ(2019)勤労者看護実践に必要な臨床判断を学ぶ e ラーニング教材の開発 -メリルの ID 第一原理を活用した教材設計-.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
勤労者看護とは、「勤労者が健康と労働とをよりよく調和させ、勤労者各人がその健康レベルに応じて健康的に働くことができるよう、看護の立場から主として臨床の場で健康支援活動を実施すること」である。療養後に職場復帰ができず就労を断念する,あるいは就労を継続できず離職せざるを得ない場合があることは,勤労者に大きな不安を与えるとともに,労働力人口が減少する少子高齢社会において,貴重な労働力を失うことを意味する。これに対処するため,国等による健康投資によって勤労者の療養後の職場復帰や就 労しつつ治療を継続できるシステムとして勤労者医療が推進されている。しかし、そのための看護学生への教育は充実しているとは言いがたい。看護学生に対する勤労者看護の教育が抱える課題として、看護基礎教育における勤労者看護教育の到達が明確でないこと、勤労者看護の実践過程を学ぶ教材がないこと、教育の到達は臨床現場で実践できることを 目指しているが、そのための思考や判断を学ぶ機会が十分でないことがわかった。本研究の目的は、組織の人材教育としての立場から、看護基礎教育における勤労者医療に貢献できる看護実践者の育成の到達を明らかにすること。そして ID 理論を用いた教材設計により勤労者看護教育が抱える問題解決に貢献できる学習教材を開発することである。方法として、勤労者看護の実践内容を明らかにすることから始めた。成人期以上にある勤労者を 対象とすることから、アンドラゴジーを意識した勤労者看護の実践プロセスを作成した。また、看護実践の内容を、実践事例の分析から「勤労者看護実践のためのチェックリスト」として明らかにした。以上の内容を用い、講義で学習する基礎的な知識を臨床での実践につなぐ教材としてeラーニングを設計した。ID の第一原理に基づく事例演習ができるものとした。取り扱う事例は、勤労者医療の対象として頻度の高い疾患の内、過去に臨床で学生が遭遇した事例をもとに作成した。作成した教材は形成的評価と修正を経て、臨地実習前の学生に使用する。教材をeラーニングとすることで、他校での実施も可能とな り、勤労者医療に関与しない他の組織の看護師養成所においても、働く人を支援する看護の教育教材として活用することが期待できる。今回は、プロトタイプ作成の経緯及び今後の計画について報告する。 <Keyword>勤労者看護 両立支援 人材教育 e ラーニング アンドラゴジー ID の第一原理
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西村由弥子(2019)学習者の現状と求められる知識・スキルとの差の認識を深めるケーススタディ教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
薬剤師は日々進歩する医療水準や社会のニーズに合わせ、薬物治療が有効かつ安全なものとなるよう、薬学的知見に基づきマネジメントする能力を継続的に維持・向上するため、生涯にわたり自己研鑽を続ける必要性がある。 先進国を中心に諸外国では免許更新制度を採り、「個々の薬剤師が、専門職としての能力・適正を常に確保するために、生涯を通じて知識、技術、態度を計画的に維持、発展、拡充するという責任行為」と国際薬剤師連盟(FIP)1)が定義づける「継続的な専門能力開発(CPD)」2)を採用し、学んだ成果をポートフォリオとして提出することを条件に更新を認めている。 一方、わが国では免許更新制度は採られておらず、研修会参加等で得られる認定単位の一定数以上の取 得により「自己研鑽を継続する行動」を認定する「生涯研修認定制度」3)をもって、専門職としての能力 を保つための知識・技術をアップデートすることを推奨している。「生涯研修認定制度」の認証機関である公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(CPC) は、FIP が定義する CPD の概念に基づき、「自己査定→計画立案→実行→事後評価→自己反映」(以下、CPD の過程) という一連のサイクルの継続を学習者の自己責任により行う5)ことを推奨している。そのため、学習成果に対する評価を含め全てが学習者に委ねられることがデメリットとなり学習の形骸化という問題を生んでいる。 研修制度ではより多くの薬剤師が学習機会を得られるようe-ラーニングが活用されるも、その多くが 講義視聴を目的に提供され、学習の真正性が担保できない状況が指摘されている。しかしながら、多忙を極める薬剤師にとって時間と場所に制約のない e-ラーニングの有用性は否定できないものであり、学習の真正性を担保すべく改善の必要性がある。 この研究の目的は、「学習行動の形骸化」という問題に対して利便性に終始することなく、CPD の過程に基づく真の学習行動を導けるよう、学習者各々が、自身に不足する知識・スキルを認識することを視点に効率的に学習を行うことを可能にする e-ラーニングの提供を目指し、Learning Management System (学習管理システム:以下、LMS)が備える機能の活用および TOTE モデルの適用によりシステマティックに e-ラーニング教材を開発することにある。 開発したコースは、CPD の過程「自己査定→計画立案→実行→事後評価→自己反映」の一連のサイクルがもたらされるよう、次の 2 つの特徴を持つ。 1)到達目標と現状の差を認識する「自己査定」を可視化 2)ギャップを効率的に埋める学習プログラムと環境(TOTE モデルの応用) 開発した e-ラーニングコースは、小集団評価による形成的評価およびその後の実証に向けた改善を行うため、ID の専門家および指導的立場にある薬剤師のレビュー、実務に従事する薬剤師数名による 1 対 1 の形成的評価を行いその結果をまとめる。 この研究の限界点は、理論モデルを応用する教材の完成度を評価するにとどまることから、今後は実証実験を通して学習効果に加え、行動変容に関連する学習者の自己効力感の変化を測定・評価する予定である。
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澤山芳枝(2019)アルツハイマー型認知症に特化した認知症模擬患者の 演技トレーニング養成プログラムの提案 ~シナリオとチェックリストの作成~.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
近年,本邦ではコミュニケーション能力等,医師をはじめとする医療者の臨床能力や実践能力に対する社会からのニーズが非常に高まりつつあり,医療者を育成する大学医学部等の責務も年々大きくなっている.それに伴い,医療者教育のあり方も変化してきており,その 1 つに模擬患者・標準模擬患者(Simulated Patient/Standardized Patient,以下 SP )を活用した教育が増加している.SP とは一定の訓練を受けて患者役として医療者教育に協力,参加する人のことで,全国で1000名以上が活動している. SPには教育効果を高めるためフィードバックや演技の能力が重要である.効果的なフィードバック法についてはこれまで研究が行われているが,演技トレーニングについてはほとんど行われていない. 一方,日本の高齢化の現状は 65 歳以上の高齢者人口は 3,515 万人,高齢化率は 27.7%であり,2025 年には 65 歳以上の認知症患者数が約 700 万人に増加と見込まれている. 医療者が増加する認知症高齢者との良好なコミュニケーションを築いて患者の診断・治療のために必要な情報を収集できるスキルを持つにはリアリティのある認知症模擬患者との練習が必要であり,認知症を演じることができる模擬患者の養成プログラムの開発が不可欠である.しかし,認知症は他の腹痛,胸痛などのシナリオと違い,認知症ゆえの独特なコミュニケーションや動きがあり,従来のプログラムでは養成が難しい. そこで,本研究では運動技能の指導方略を用いて認知症模擬患者の演技トレーニング養成プログラムの開発する.今回は,プログラム開発にあたり,シナリオとチェックリストの作成を行った. シナリオは,医師役の学生と医療面接ができる重症度が軽度の患者であることを考え,最も多い認知症の「アルツハイマー型認知症の初期」とした.認知症疾患診療ガイドライン 2017 より「アルツハイマー型認知症の初期」に現れる機能障害を抽出し,演技を定義しシナリオに組み込んだ.シナリオは医学的なレビューを受けた. 次に,養成プログラムを受講した SP の演技を評価するツールとして今回,本プログラムに特化した演技のチェックリストを開発した.チェックリストは医師によるレビューと ID 専門家のレビュー,医師と SP 養成者による信頼性の検証を行った. 今後はプロトタイププログラムを開発し,エキスパートレビュー後,改善し,少人数からの試行を行う予定である.SP へのアンケートやインタビューを実施し,さらに改善を行って認知症模擬患者の演技トレーニング養成プログラムの実用化を目指したい.本研究は医学教育だけでなく,他の医療系の模擬患者養成にも貢献できると考える.
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関山裕一(2019)ジョブエイドを基幹としたOJT教育プログラムの開発〜救急外来における急性期脳梗塞治療に焦点を当てて〜.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
救急外来は、年齢、性別、基礎疾患など多様な背景を持つ患者が来院し、緊急度・重症度も様々であり、そこで働く看護師には、少ない情報から患者の病態をアセスメントする能力や診療を円滑に進めるための調整能力、家族ケアなど多くの知識・技術が求められる。しかし、救急外来における On the job training(以下 OJT)の看護師教育の現状として来院する患者は流動的で一回性という特性を持つことから、救急外来でのOJT教育はこの特性に対応できる計画された教育システムが必要である。しかし、先行研究に置いて、各病院の特殊性を考慮した救急外来でのOJT教育プログラムは見当たらなかった。そこで、本研究は、急性期脳梗塞に対応する救急外来看護師の行動に焦点をあて、求められる行動とそのプロセスを明記したジョブエイドを活用し、OJT 教育プログラムを設計する。これにより、OJT を通して臨床で行った看護実践を評価し課題を見出し、救急外来において身につけておくべき知識・技術を習得することを目指す。 ジョブエイドの開発では、脳卒中ガイドラインと筆者の所属する病院の特殊性を考慮し、急性期脳梗塞治療を進める上で、治療や行うべき行動を記述し、看護師が時系列で記載でき、かつ記録及びチェックリストとして臨床で活用できるジョブエイドを作成し、SME よりエキスパートレビューうけ、改定・試用で改善点を洗い出し修正し、運用した。 その結果、患者来院から根本治療での時間短縮(P-0.019)の成果を確認した。 OJT 教育プログラムの設計・開発では、ジョブエイドを基盤に臨床現場で看護業務を行えることを学習目標に設定し、課題分析を行った。指導法略として OJT、off-JT を含めた段階的なゴールベースのパフォーマンス支援ができるよう各段階に前提条件や達成するべき事項を示し、OJT 教育プログラムの入り口、出口を明確にした。OJT 教育プログラムの出口は、ジョブエイドに基づいて、急性機能コク即治療に求められる行動をチェックリストで明記し、作成した。OJT 教育プログラムの入り口は、OJT を行う前の前提条件を設け、前提テスト、off-JTマニュアルを作成した。また、OJT 指導者が OJT 教育プログラムに基づいて、一貫した指導が行えるようOJT指導者マニュアル、新規配属者が OJT での経験を OJT 指導者と共に振り返り、OJT での経験から知恵と昇華できるよう振り返りの内容と対策を、記録できるリフレクションシートを作成した。 設計、開発したOJT教育プログラムのエキスパートレビュー(SME 、ID 専門家)を行った結果、教育内容や方法についての妥当性が示唆された。一方で OJT チェックリストの修正点、OJT 指導者へのジョブエイドの必要性など開発物の修正点が明らかになった。今後は、指摘箇所の改善を行い、形成的評価を経て OJT 教育プログラムの評価を行うことが必要であると考える。
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吉村依里(2019)日本語母語話者のための「やさしい日本語」e ラーニング教材の開発と評価 ―市役所職員による着実な知的技能の習得と態度形成を目指して―.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2018年度提出修士論文
日本語母語話者(以下、「日本人」)が普段使っている日本語を平易な語彙や表現を使って日本語非母語話者(以下、「外国人」)に分かりやすく伝える「やさしい日本語」の取り組みが日本全国で進められている。多言語対応サービスの充実とともに、自治体や外国人支援団体等によって手引書、事例集、e ラーニング教材等が多数開発されてきた。しかし、既存の資料・教材を分析した結果、「やさしい日本語」への言語調整のための練習が量と質において十分ではなく、自信をもって使えるレベルの習得には至らないことが1つ目の課題としてあげられた。また、相手の日本語能力や気持ちを考慮して、どのようなコミュニケーショ ンが「易しい」かつ「優しい」ものであるかを考え、実際の場面で活用しようと思う意識や姿勢の形成も重要だが、その点に関して配慮されていないことが2つ目の課題としてあげられた。そこで、本研究では言語調整のノウハウの習得と態度形成の2つの目標の習得を目指す。そして、外国人住民の生活を支える市役所職員が「やさしい日本語」の使い手となる ことには意義があると考え、市役所職員を学習対象者とした e ラーニング教材を開発する ことにした。 教材は、学習対象者分析の結果を踏まえ、効率的・効果的な学習を促進できるように設計した。最初に、効率的で着実な知識の習得と態度形成のための作戦として、「学習課題の種類と指導方略」(鈴木 2002)に即して、学習目標の達成に必要な要素を構造化し、指導方 略を決定した。また、学習活動への能動的な参加を促し学習効果を高めるために、M・デイビッド・メリルが 2002 年に提唱した ID の第一原理に基づいて学習活動を展開した。さらに、1970 年代にマルカム・S・ノールズによって提唱された成人学習理論の知見を活かした。成人学習理論に基づいた大人の学びを支援する4つの観点(リー・オーエンズ 2003) に基づき、学習対象者がもつ成人の特性を活かし、学習活動や学習環境をデザインした。 学習の過程では、個人での学習による「やさしい日本語」の言語調整のための規則の着実な習得とともに、さまざまな部署や課からの受講者がオンライン上で個々がもつ知識、経験、知恵の共有をしながら、「やさしい日本語」をどのように自身の業務の中で活用していけるかを考えていく。個人として、また組織の一員として考える活動によって、一人で学ぶ以上のより深い学びを実現させることを狙いとした。 さらに、考案した設計に基づきプロトタイプを作成した後、教材の改善と教材の妥当性を確認する目的で、日本語教育専門家と ID 専門家によるエキスパートレビューを受ける。設計の見直しを経て、教材全体を完成させる。続いて、1 対 1 の形成的評価を実施し、さらなる教材の改善を行った後、市役所職員の協力を得て小集団での形成的評価を実施する。教材学習前後の課題の結果、アンケート調査結果、学習活動の観察から教材の有効性を検証し、 最後に課題と今後の展望を述べる。