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江尻寛正(2025)「新たな教師の学びの姿」を実現する教員研修デザインチェックリスト及び補助教材の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
「「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて 審議まとめ」(令和3年11月25日)において、「令和の日本型学校教育」を実現する上でふさわしい高い資質能力を教師が身に付けるためには、研修自体も課題解決型にしていく必要があり、指導主事には研修デザインの学び直しが必要とされている。これを受け、A県でも指導主事の学び直しの取組を2023年度に行った。ただし、この取組は筆者が介入して行ったため、汎用的なものにしていくにあたって、筆者の介入以外の仕組みをつくることが残された課題であった。本研究は、「教員研修デザインが、文部科学省が求めるものになっているか」を指導主事自身が吟味して自覚できるように、チェックリスト及び学び直しのための補助教材等を示そうとするものである。 チェックリスト及び補助教材等の作成に向けて、まずは「新たな教師の学びの姿」として求められていることを分析し、その結果を基にチェックリスト及び学び直しができるポータルサイトの案を作成した。次に、教育センターの指導主事を統括する立場の方による形成的評価を行い、内容を改善した。さらに、改善した資料を活用する流れを示したフロー図及び教員研修デザインをどのように改善したかを明示できるシートを作成し、これらについてインストラクショナル・デザインの専門家による形成的評価を行い、内容を改善した。最後に、実際に研修に携わる指導主事にこれらのチェックリスト等の活用及び評価を依頼した。 その結果、所属先に指導主事が1人の場合や指導主事経験が1年の場合であっても、チェックリストを活用することで教員研修デザインを改善する視点を見つけられることが分かった。また、チェックリストと連携したポータルサイトを参考にすることで、実際に教員研修デザインを改善していくことができた。以上のことより、本研究の目的は達成できたと言える。 ただし、本研究は、教員研修デザインが文部科学省が求めるものになっているかを見直すという点に注目しており、実際に研修を実施して、参加者に変容が見られたかどうかまでは評価していない。研修デザインを改善した指導主事が実際に研修を行い、参加者の学びを評価した上で、教員研修デザインをさらに改善していくプロセスについて検証していくことなどが残された課題である。
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岩澤孝徳(2025)⽣成 AI を活⽤した短答質問作成および評価のための教師向けシステムの設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
先行研究調査と教育現場へのヒアリングを通じて、生成AIの活用可能性が高い業務領域を特定し、特に負担の大きい記述問題の採点業務に焦点を当て、生成AIを活用した採点支援システムを開発を行い、実際の教育現場で実証実験を行い、システムの有効性と課題を検証した。生成AIの代表ともいえるChat GPTから、急速に生成AIの教育利用の在り方、活用方法など、賛否両論を含め、活発な議論が行われるようになった。教育分野におけるAIに関する研究は、藤村(2023)によると日本ではまだまだ文章生成AIなど教育分野における生成AIの利用研究は不十分1)と述べている。また、生成 AI 教育利用の留意点「生成AIを児 童・生徒に使用させるために,課題の解答や レポート・作文の作成などについて、アドバ イスにとどめ,直接的な回答や作品完成など をさせない工夫等が必要だと思う」と述べている。 そこで本研究では、Open AI社の Chat GPTの教育利用に関するシステムを試作し、今後の生成AIの進化も踏まえながら研究を進めた。実証のためにFileMaker Cloud上にProof of Concept(PoC)として環境を構築し、API連携が行える実稼働にも耐えうる自動採点支援システムの構築を行なった。 PoCの開発にあたりこのような手法を行ったのはインストラクショナルデザインの原則に基づいて、生成AIを活用した教育支援システムの開発を行う際に、ADDIEモデルを適用し、効果的・効率的で魅力的な学習環境の設計・開発を目指し、システムを評価する際には、教育現場で教員の協力を得て、生成AIから作成されたフィードバックが、学習者の行動変容をおこさせることにつながるように、フィードバックコメントに、更なる学びの支援となる追加の質問を含めるようにプロンプトの開発を行なった。
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片山謙吾(2025)化学物質のリスク管理の行動化を促す e ラーニングコースの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
詳細はありません。
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西野明子(2025)救命救急センターに従事する看護師を対象とした 効率的な学びと業務遂行を支援するための研修設計 ~OJTを補完するマイクロラーニングの開発~.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
看護師が所属する組織や部署で業務を遂行するためには、医療の知識や技術はもとより、組織の方法や文化に適応する必要がある。救命センターの看護業務は、高度な専門性が必要とされることに加え、多種多様な患者や病気に対応しなければならない。また多くの医療機器を安全に運用するための方法や記録などは、各々の組織の文化(使用している機器の違いや過去の医療事故等の事例からの対策案など)と密接に関係している。そのため、業務遂行の具体的手順は各組織や部署の個別性が高く、資料や教材は内製し、部署内において研修を実施する必要がある。 そのような背景の中、現場では口頭での伝達が好んで行われ、学習者が主体的に学習を進めることが困難な状況がみられていた。加えて、救命センターは患者の搬入や患者の容体変化など、突発的な事象が起こりやすい部署であり、勤務中に計画的な対面学習を推進することが困難である。 本研究では既存の研修をIDチェックリスト等により見直した。実践と研修の標準化のためにジョブエイド(手順チェックリストと解説の参考資料)を作成し、ジョブエイドを活用するのに必要な知識の獲得のためにガニエの 9 教授事象に沿って研修を設計した。さらに、学習者の効率的で主体的な学習のために、研修をブレンド型学習とし、教材をマイクロ化するなどしてマイクロラーニング型教材を開発した。eラーニングの実装にはMoodleを用い、小テストの即時フィードバックなどを工夫し、自己学習であっても必要なタイミングで学習者支援ができる構造とし、双方向性の学習を目指した。 形成的評価の結果、SME、ID専門家、学習者ともに、研修に対し肯定的な意見が得られ、本研修が現場のニードを満たす方法であり、効率的な学習に繋がったと評価できた。一方で、これまでOJTで多くを網羅しようとしていた知的技能の学習については、改善する必要があることが明らかになった。言語情報の習得後に、知的技能の訓練をする場を設けることで研修を改善できることがわかった。また、Moodleの設計と運用についても改善できる余地があり、より学習のしやすい教材を目指せることがわかった。 今後はこれらの課題を解決し、さらなる評価・改善を継続していく。知識と業務オリエンテーションは言語情報、それを用いての看護実践は知的技能、というのは多くの研修に該当する。言語情報の部分はマイクロラーニング化、そして事例を用いた練習を行い、OJTで独り立ちに向かう、というブレンド型学習はパッケージとして使用できる。また、それらをLMSに実装することで、進捗管理などもシステム化を行うことができ、学習側・運営側の両者に利点がある。LMS を活用した効率的な学びと業務遂行の支援を可能とする看護師育成システムが構築されることが期待される。
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河居貴司(2025)中等教育における批判的思考に焦点化したニュースリテラシー学習の開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
本研究では、中等教育を対象に、ニュースリテラシー学習を通じて批判的思考を育成するプログラムを開発する。 インターネットやSNSの普及が進む現代社会において、生徒たちには膨大な情報の中から信頼性の高い情報を選び取り、適切に活用する能力が求められている。このような能力を支える「批判的思考(クリティカル・シンキング)」は、情報を多角的な視点で吟味し、合理的な判断を下すために不可欠なスキルであり、国際的な教育プロジェクトでも21世紀スキルとして重視されている。 一方、学校現場においては、新聞を教材として活用する「NIE(Newspaper in Education、教育に新聞を)」の取り組みが行われてきたが、批判的思考を明確なプロセスや要素として学習に取り入れる実践例は少なく、多くの情報の中からニュースを抽出し、その背景や目的、バイアスを掘り下げて考察する活動は未開拓の領域が多い。さらに、新聞の発行部数の減少やデジタルニュースの普及を背景に、従来型の新聞活用教育では対応しきれない課題も浮かび上がっている。 こうした現状を踏まえ、本研究ではデジタルニュースを題材に、情報の信頼性を検証し、背景や意図を分析するプロセスを通じて、生徒が批判的思考を養う学習プログラムを設計する。これにより、現代の情報社会に即したニュースリテラシー教育の新たな実践モデルを提供することを目的とする。
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服部聖子(2025)多様な学習者の看護技術習得と実践力向上をめざして: TCI とルーブリックを用いる反転授業の設計.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
准看護学校の入学には、中学校卒業程度の学力を要し、基本的に入学資格に年齢の上限はない。このため、生徒は社会人経験者や、ひとり親家庭の担い手たちに対応して、研究対象校では午前に勤務して午後から登校するコースを備えている。しかし、就労その他による時間的拘束によって、生徒が学習に割ける時間に制限のある実態がある。このように、多様な社会背景をもつ生徒達が所属する当該校で、2022 年に新カリキュラムが施行され、求められる教育と学習の質と量は高まりを見せるいっぽうで、看護技術習得に充てられる授業時間数は実質の減少をみた。このため、看護技術習得教育にはいっそうの効率を重視せざるを得ない状況となった。 また、2019 年以降の新型コロナウイルス感染症流行の只中にあって、多くの大学看護学部および看護師養成所が臨地実習を学内での実習に切り替えるなか、当該校では、学校を所轄する上位機関から臨地実習での履修時間が要求された。本研究で取り上げた技術習得科目は、他の技術習得科目と比較して、抜群に身体接触の多い技術単元を取り扱い、これを不完全な習得のまま臨地実習に向かえば、他技術習得科目への影響も大きく、何より生徒が患者に看護を提供するさい、最も困難感を抱きやすい看護技術であり、実践につながる得る転移の効果に焦点を当てざるを得ない状況であった。 これら、要求された効率と効果に対応するため、2022年、2023年度の一年生が受ける一部の看護技術習得科目に、反転授業の課題中心型インストラクション(以下、TCI)アプローチによる授業設計を適用した。科目の初期設計にはTCIとの関連が深い 4C/ID モデルの一部を援用し、生徒が臨地実習実践への効力感が持てるよう、事例患者に対する全体課題の演示ができることを目標に、授業と演習を展開した。 その応答として、生徒の実践と関連する項目に、どのような効果や影響が見られたかを、生徒の自己評価から検証した。中途退学者が多かったため、応答者人数の変動があり、2022年~2023年の各学年ともサンプル数は概ね25~35人前後となった。方法は無記名のアンケート調査法で、授業終了後と基礎実習終了後のタイミングで実施した。その結果、授業後や実習での技術実践において、習得技術の転移と考えられる結果が示唆された。
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濱田勇(2025)職業訓練校におけるコンピテンシー基盤型教育の普及を目指して: 訓練用教材の開発と汎用プロセスの提案.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
コンピテンシーには,教育訓練機関の組織内部だけで定めたコンピテンシーと外部の内容領域専門家の評価を受けたコンピテンシー(以下 外部コンピテンシー)があると考える.これらの違いは,前者がコンピテンシーを活用する文脈が抽象的であるのに対し,後者は想定する仕事の文脈(以下 文脈)が具体的である点にある.外部コンピテンシーを OffJT の教育訓練に活用する場合,筆者は文脈を取りこぼさずに教育訓練に反映させることが重要である考える. 政府は業界団体が定めた外部コンピテンシーを活用したリスキリングによる雇用の流動化や構造的賃上げを支援している. 国の公共職業訓練を担う高齢・障害・求職者雇用支援機構(2024-a)では,業種別に98の外部コンピテンシーを整備しているが,公共職業訓練のカリキュラムでは,業種別の外部コンピテンシーに基づくコンピテンシー基盤型教育の展開は十分おこなわれていない.こうした状況においては,学習者が外部コンピテンシーに基づき学習を行いたくても適切な教育訓練を選択できず,政府が目指すリスキリングによる雇用の流動化や構造的賃上げにはつながりにくい. 筆者は職業訓練校におけるコンピテンシー基盤型教育の展開に向けた課題を調査し,3つに整理した.1)訓練用教材のインストラクショナル・デザイン的な充足が不足していること,2)外部コンピテンシーを教材開発に利用するプロセスが不明確であること,3)職業訓練指導員のコンピテンシー基盤型教育の理解が不十分であること. 本研究の目的は,上記の課題のうち1)と2)に取り組み,職業訓練指導員が有用だと判断する訓練用の教材開発および,職業訓練指導員がコンピテンシー基盤型教育を実施する際に利用可能な教材開発の汎用プロセスを提案することした.上記の3)職業訓練指導員のコンピテンシー基盤型教育に対する理解の促進は,今後,取り組むこととした. コンピテンシー基盤型教育のコンピテンシーとして,高齢・障害・求職者雇用支援機構が持つ「職業能力の体系」を活用し,「のこぎりの取り扱い」を訓練テーマとする教材開発を行った.教材開発ではReigeluth et al.(2017)が提案するコンピテンシー基盤型教育の8つの設計原理を全て活用した.さらに,教材の開発プロセスを整理し,汎用プロセスを提案した.汎用プロセスは,西岡(2008)の「逆向き設計」アプローチを活用して次の4つのステップで構成した.1)コンピテンシーに職業訓練を位置づける,2)コンピテンi シーが仕事で活用される文脈を特定する,3)学習の評価課題と評価基準を決める,4)指導内容を開発する. 開発した教材と汎用プロセスの評価は,職業訓練指導員に形成的評価を依頼し,公共職業訓練における訓練用教材の妥当性と汎用プロセスの有用性が確認できた. 特にコンピテンシーが仕事で活用される文脈を特定することは,教材開発のプロセスとして有用であることを確認した.一方,教材を活用するうえで,教材の運用方法の詳細化や他のコンピテンシーにおける有効性の検証,習得度の個人差の低減などの課題が残された.
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平山祐(2025)外国人留学生の支援を行う日本人学生チューター向けe ラーニングプログラムの開発.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
日本の大学には, 外国人留学生を日本人学生が生活面及び学習面で支援するチューター制度というものが存在する. しかし、日本人学生チューターへの適切な指導や情報共有の促進などの課題があることが明らかとなっている. 筆者が所属する大学においても, チューターを担う日本人学生に対して, 1回のオリエンテーションとチューターの手引きの配布のみが実施されるのみで 「チューターへの教育不足」や「チューター間の情報共有不足」といった課題が存在する. 本研究では, これらの課題を解決するために, 初めてチューターを担う日本人学生が基本的な知識・スキルを習得し, お互いの情報共有を促進するeラーニングプログラムの開発を行った. なお, 今回は滞在期間が短いなどの理由から, 支援内容が正規生に比べて, 比較的限定される短期留学プログラム学部生(以下, 短プロ生)と呼ばれる非正規生を支援するために必要な知識・スキルを学習する内容に限定して検討した. また, 学習効果を高めるためにID第一原理および学習意欲を高めるためにARCSモデルを用いて設計した. 設計後、3名の内容領域専門家と2名のインストラクショナル・デザイン専門家による専門家レビューを実施, 学習内容の妥当性やID第一原理およびARCSモデルが適切に用いられているか等を確認した. また, 4名の日本人学生による形成的評価にて, 学習目標が習得できること, 学習意欲を向上させる効果があることを確認した.専門家レビューおよび形成的評価を経て改善したeラーニングプログラムを, 2024年10月から短プロ生のチューターを担う一部学生に使用してもらい, 学習目標としている知識・スキルを習得し, 学習意欲を向上させるものとなっていることが確認できた. 一方で, 半数以上の学生が学習を完了しておらず,この点について原因分析と改善が必要との課題が明らかとなった. 加えて, チューター活動完了後の実施したアンケート結果により, eラーニングプログラム受講者と非受講者で支援実施への困難さ等に関して顕著な差は見られなかったものの, 情報共有の面においては, 一定の効果があることが伺えた.
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星野宏(2025)リフレクティブサイクルを⽤いたキャリアコンサルタントの ⾃⼰リフレクション教材の開発と有⽤性の評価.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
国家資格キャリアコンサルタントは,登録者数が増加する⼀⽅で専⾨性の維持と資質 向上が課題となっている.キャリアコンサルタントの資質向上において,指導者の⽀援のもと⾃分が実施した⽀援を⾃⼰評価し,成⻑課題を明らかにするスーパービジョンの仕組みは,資質向上に⾼い効果があると期待されているが,スーパービジョンを受けている キャリアコンサルタントは,約1割程度と報告されている. ⼀⽅,医療・福祉や教育の分野では,⾃分で⾃分を振り返る「⾃⼰リフレクション」が⾏われているが,キャリアコンサルタントにおいては,実施したキャリアコンサルティングを体系⽴てて振り返る⼿法が確⽴されていない. そこで,本研究では,キャリアコンサルタントの資質向上を⽬的に,キャリアコンサルタントが,実施した個別キャリアコンサルティングを⾃分⾃⾝で振り返り,⾃らの成⻑ 課題に気づき,その克服に向けた⾏動⽬標を設定できることを⽬標にした教材を開発し,その有⽤性を評価した. 教材は,Gibbsのリフレクティブサイクルとプロセスレコードの再構成法を⽤いて⾃⼰リフレクションの⼿順書,⾃⼰チェックリスト,記⼊ワークシート,記⼊例と記⼊のヒントを開発した. 教材のプロトタイプを制作し,ID専⾨家1名のレビューとキャリアコンサルティングの 専⾨家2名によるエキスパートレビューに加え,国家資格キャリアコンサルタント所持者 2名による形成的評価をおこない,各評価結果をもとに改善をした. 改善後の教材を,研究対象のキャリアコンサルタント26名に使⽤し,内23名から事前と事後のアンケートによる量的データと,半構造化インタビューによる質的データを収集した.得られたデータから,本研究で開発した⾃⼰リフレクション教材の使⽤によって, 成⻑課題の気づきと⾏動⽬標の設定に⼀定の有⽤性が確認できた.また,明確化した課題への不安や⾃⼰リフレクションの継続がリフレクションの成果に影響する可能性が⽰唆 された. 今後の課題として,本研究で開発した教材の有⽤性を⾼めるには,⾃⼰リフレクションのサイクル化への動機づけ,明確化した成⻑課題と設定した⾏動⽬標の妥当性の評価, 教材の使⽤者の属性による効果検証等の継続検証の必要性が明らかになった.
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福野憲一(2025)オープンソースBIツールを用いた LMS学習活動履歴の可視化による 学習者動機づけに関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
デジタル庁などが2022年に公開した「教育データ利活用ロードマップ」では,教育データの利活用に向けた施策の全体像を描いており,学習者が学習履歴を活用して自らのデータを蓄積・活用できるようにすることを示している. 様々な種類のLMSが普及する中,国際標準規格であるxAPI規格やIMS Caliper規格により,LMS 学習活動履歴データを蓄積する,LRS (Learning Record Store)も普及してきている. 本研究では,全てオープンソースソフトウェアを用いた可視化システムの構築を行い,LMS学習活動履歴データの可視化による,学習者動機づけに関する研究を行った. オープンソースBIツールを用いたLMS学習活動履歴の可視化を行い,社会的存在感を醸成することで,LMSで学ぶ学習者の動機付けに,どのような変化をもたらすのかを明らかにする. 形成的評価を行った結果,社会的存在感の意味で活動的で,役に立つことが示唆された. また,学習者動機づけへの効果が期待される,いくつかの項目(他者の進度把握,グループ所属感覚)が高い結果が得られた. 学習者自身や,同じ学習を行う集団の学習活動を可視化することにより,学習への動機付けを通して,学習者支援に寄与する.
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松島拓路(2025)情報科教員を対象としたナレッジコミュニティ型学習支援システムの構築と評価.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
本研究では, 情報科教員を対象に, オンライン上で試験問題や教材を共有し, 疑問や悩みを気軽に相談できる「ナレッジコミュニティ型学習支援システム」を構築したうえで, 月1回の勉強会を開催し, 非同期(システム)と同期(勉強会)を組み合わせた実践コミュニティ「情報科教員Hub」を立ち上げた. 本研究の目的は, こうしたナレッジコミュニティ型学習支援システムを導入することで, 情報科教員の指導不安感をいかに軽減し, 授業改善につなげることができるかを評価する点にある. アクセスログやアンケート調査による分析の結果, 授業準備(試験問題作成や教材開発)および指導不安感の軽減に一定の効果が見られることが示唆された. また, 勉強会を通じて他校の教員と知識を共有することで, 情報科教員に多い孤立感の緩和にも寄与する可能性が示された. 一方で, Q&A機能・チャット機能の利用率向上, ユーザーインタフェースの改善, コミュニティのさらなる活性化など, 今後の継続的な運営と研究が必要な課題も明らかとなった. これらの成果は情報科の専門性向上のみならず, 他教科への横展開や教員研修の在り方にも活用できる可能性があり, 今後の教育改善に向けて幅広い展開が期待される.
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八百秀憲(2025)知識構築を目的としたオンライン・同期的な協調学習プロセスにおける身体的相互行為支援の効果についての研究−オブジェクト指向型コラボレーションにおける洞察に着目して−.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 2024年度提出修士論文
本研究は、
ビデオ会議にお
いて、
支援される
身体的な
活動
や
相互
作用
が
、
言語的な
相互
作用
、
更には、
認知
プロセスと
どのよう
な
関係にあるかを探るため、支援あり・なしを比
較する事例研究による探索的・微視的観察を行い、そのプロセスを明らかにした。
特に、
「
身体的な
逸脱
(
身体の
PC
方向からの
左右への
振り出し
)
」
が
、
ジェスチャー
な
どの
他の
身体活
動
の
継起
の
起点である
こと、
そして、
他者との
相互作用
を
維持しながら
の
個人としての
検討を
促進
した
可能性が
ある
ことを
見出した。
また
、
支援を
受けた
ペアに
お
いては、
身体的な
自己
・
相互
調整
後は、
言語的な
相互作用
が
減少し
、
課題における
思考の
制約の
緩和
が
進行した
。
他方で、
支援を
受けな
かった
ペアは、
言語的な
相互作用が
最後ま
で
保たれた
ものの
、
身体的な
動作や
相互作用は
増加
せず、
思考の
制約の
緩和
は
進行
しなか
った
。
姿
勢
の
左右への
振り出し
が、
コラボレーション
の
場
からの
一
時
的な
退避
の
感覚
を
想
起
し、
認知
負荷
の
最
適
化が
促進された
のではないか
と
考
え
る
。
これらの知見は、
成功
体
験
や
組織
的
な
常
識による思考の
制約
が課題となる
企業
の
新規
事
業
開
発
での
、オンライン
・
同期的な
コラボレーション
の
場
で
、
「
身体的な逸脱
」
を促す支
援方
略
が
有
効である可能性を
示唆
する。
今
後は、
社会人
向け
高等
教育
機
関
、
或
いは、
企業
内
育
成
プロ
グ
ラム
で
の
P
BL
等
を
対象
にした
デ
ザ
イン研究を
通じ
て、より
実践
的な文
脈
での
実証
研究
に
取
り
組む
。