ヒゲ講師は2025年6月のとある日、勤務校の某教室にいた。今年度の第一回目的別FDを行うためである。今回は、新任3年以内の先生方を主たる対象者として開催される点で、初めての試みであった。目的別FDは勤務校ではひげ講師の着任前から年3~4回開催されていた。比較的少人数で、テーマや対象者を絞っての開催であり、今年度もその伝統を踏襲するものである。ヒゲ講師自身が2年前に着任したときにいろいろと苦労したので、大学経験が乏しい新任教員の皆様も解決したいお悩みがいろいろあるだろう。そんな発想で企画した。
ヒゲ講師が着任してからもテーマや対象者を絞っての年3~4回程度の少人数開催という目的別FDの枠組みは変えなかった(このほかに教職員全員対象の全学FDが年2回ある)。一方で、いくつか変えたことがある。
第一に、参加勧奨のためのノルマ設定はしないで、参加したい人だけに参加してもらうこと。当然、参加人数は減った。テーマ設定や対象者の絞り込み、あるいは開催の時期など、企画の良しあしを測るバロメーターになる。あるいは主催者への信頼感がまだまだ醸成されていないことの現れと考えれば、精進する必要を感じる契機にもなる。まだまだですね、ということ。できるだけ多くの人に参加してほしい、という思いはじっとこらえて、当日配布資料と動画の録画を学内公開し、いつでも閲覧できる状態にしている。
もう一つは、参加希望者に対して事前に「取り上げてほしいテーマ・お悩み」の提出を求めるようにしたこと。テーマや対象者は異なっても、事前提出ありの形で目的別FDを数回行ってきたが、おおむね好評である(事前提出を求められる時点で参加を躊躇するひともいるかもしれないので更なる絞り込みがかかっていると見ることもできよう)。希望があったテーマのどれかを選んで取り上げるのではなく、全部取り上げることを原則にしてきた。多い場合は、いくつかをまとめて扱う。参加者の希望に沿って事前に情報を収集し、取り上げてほしいテーマについて扱うべき事項を洗い出しておく。当日は経験を共有するグループワークを中心に進行するが、その様子を見ながら、事前に整理した情報を残り時間で説明できるようにしておく。情報交換が盛り上がって、説明の時間がなくなれば配布資料として提供する。そうでなければ、どんな情報がどこにあるかの紹介をして後で閲覧できるようにする。さらに時間があれば、閲覧した後で意見を交換する。だいたいこんな感じで進めている。何となく想像できるでしょうか。
FDはFood & Drinkの略だから、と言ってお茶とお菓子を準備することも定着してきた。非公式の食事会も併設して更なる交流の機会をつくることも毎回行っている。今回の新任教員向け目的別FDでは、食事会の参加率がとても高かった。とても楽しい時間を過ごすことができました。こうして二人称のお付き合いができる方々が徐々に増えていくと、居心地が徐々に良くなるものですね。
さて、今回、取り上げてほしいテーマの事前準備をしていて、ここでも紹介してもよいと思える情報がいくつか(再)発見された。何らかの参考になれば、と思い、以下に列挙することとする。
・成長するティップス先生Ver1.2(名古屋大学)
https://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/tips/index.html
20年も前に公開されたWebサイトだが、いまだに色あせない基礎基本を知ることができる。まず一通り閲覧することをお勧めするとともに、「あなたのお悩みは『授業の基本』のxxが参考になります」などと紹介。
・期末試験をレポートに切り替える際のヒント(高知大学)
https://www.kochi-u.ac.jp/_files/00485098/01tips-TeachingTips_Vol2.pdf
レポートの評価をどうしたらよいか、というお悩みが複数寄せられたので、取り上げたサイト。もちろん、ティップス先生にも有用な方法がある(授業の基本-8:成績を評価する)。上記は副題で、この資料のタイトルは「レポート課題では評価の観点を明確に」。いろいろな大学で公開している資料をコンパクトにまとめてくれているのも便利だと思った。
・ルーブリックde レポート評価!(岐阜協立大学)
https://staff.gku.ac.jp/%7Eido/doc/rubric_student.pdf
レポート評価についてのもう一つの情報。「レポートを作成する学生さんに向けて」という副題で学生に向けての情報発信の事例としても興味深い。
・グループディスカッション(GD)対策をしよう! (ビズリーチ・キャンパス)
https://br-campus.jp/articles/report/1105
グループディスカッションをどう進めるか、というお悩みについての参考情報。ほかにもいろいろ紹介したが、これは学生向けの情報で、就活スキルとしてコツや練習法、「落ちる原因」を解説したもの。なるほど、就活に必要なスキルですよ、と位置づければ「やりがい」が感じられるかも(邪道?)。
・協同学習の5分類30技法(『学習設計マニュアル』図7-1)
授業の幅を広げたい、というお悩みに答えるために、拙著から紹介した図。話し合い・教え合い・問題解決・図解・文書作成の5分類それぞれ6つ、合計30の技法を紹介しているもの。テキストの宣伝にもなると思ったが、勘違いされると困るので、このテキストには各技法の説明は書かれていないこと(それはネットで検索すれば入手できるということもついでに教えていること)にも言及した。
・大学レポートをAIで自動作成!(AIプログくん)
https://blog.powerpost-ai.com/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%94%9F%E5%BF%85%E8%A6%8B%EF%BC%81%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E8%87%AA%E5%8B%95%E4%BD%9C%E6%88%90ai%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E7%9A%84%E3%81%AA%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%B3%95/
AIについてのお悩みも寄せられたが、あまり利用経験がまだないヒゲとしては、最も対応しにくい難問。とりあえず勤務校が学生向けと教員向けに表明している態度がここにあります、と紹介した。いたちごっこになっている状況がわかるサイトとして、「効率的な活用法と注意点を徹底解説」とうたった学生向けの情報を紹介。このサイト自体がAIによって作成されたブログだというから理解が追いつかない。学生はこのサイトにあるような「AIレポート作成がバレないための対策と工夫など」の情報を使っていると考えたほうが良いかもしれません。
(ヒゲ講師記す)