トップIDマガジンIDマガジン記事[090-03]【ブックレビュー】『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』谷口忠大 文春新書(2014)

[090-03]【ブックレビュー】『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』谷口忠大 文春新書(2014)

IDマガジン編集部からブックレビューの依頼をいただきました。(「大学院の同期に売られた」とも言います。)
熊本大学大学院教授システム学専攻(通称GSIS)を何とか修了したばかりの小心者の私は、「GSISにもハンター試験のような裏試験1)があるってこと?」とドキドキしています。
何事も段取りが大切ですから、IDマガジンの読者に興味を持ってもらえそうなID関連の本を探して読みつつ、ブックレビューについて学習するところから始めてみました。
いくつかのウェブサイトを見ていたら『ビブリオバトル』という単語が目に留まりました。
何やら面白そうではありませんか。

ビブリオバトルとは、「『人を通して本を知る.本を通して人を知る』をキャッチコピーにした本の紹介コミュニケーションゲーム」(ビブリオバトル公式ウェブサイト2)より一部改編して引用)とのことです。


興味をひかれた私は、さらに理解を深めるためにタイトルにもあげた新書『ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム』を(Kindleで)読んでみることにしました。

前述の公式ウェブサイトにも記載されていますが、ビブリオバトルの公式ルールは以下の4つです。
1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2. 順番に一人5分間で本を紹介する。
3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2~3分行う。
4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い,最多票を集めたものを『チャンプ本』とする。

 

本書では、学校や企業で導入されたり、地域のイベントとして実施された実例がいくつもあげられていました。
そして、本を紹介し合うだけではない、ビブリオバトルのコミュニティ開発機能についても触れられていました。
「ビブリオバトルには『本を紹介する』という自然な活動の中で、発表者の人となり、個性、知識、背景などをコミュニティ内で共有していく機能がある。」、「一回限りのビブリオバトルではなく、コミュニティの中で繰り返し行っていくことで、徐々にコミュニティ内の相互理解を深めていくことができる。」と記されています。
さらに、これらの学術的背景・要素については、ビブリオバトルについて記された論文3)で詳しく解説されています。
この論文は学術論文なので無料で全文を読むことができます。興味のある方はぜひ目を通してみてください。

 

本書には、以下のような要素が組み込まれています。
(1)「本との出会い」という現実に起こりそうな問題に挑戦させてくれます。
(2)本との出会い方やプレゼンの仕方など、すでに知っている知識を動員させるような仕掛けになっています。
(3)ライトノベル型式での例示があり、実際のビブリオバトルをイメージしやすくなっています。
さらに、(4)ビブリオバトルを運営する際の注意点を提示してくれていて、応用するチャンスを提案してくれます。
そして、(5)振り返り法まで提示することで、現場での活用や振り返るチャンスが身近にあって、自分でもできそうだという気にさせてくれます。

 

このように考えると、メリルのIDの第一原理に則った非常にID的な本なのでした。
本好きとしては、未知の本との出会いはワクワクする出来事です。
この本を読んで、私も身近な人を誘ってビブリオバトルをやってみようと思いました。
このレビューを読んでビブリオバトルに興味が出た方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。一緒にやってみましょう。
そんなことを文章にしていたら、せっかく複数のID本を購入して読んだものの、ブックレビューで取り上げる余裕がなくなってしまったのでした。

紹介できなかった本は、(機会をいただければ)次回のブックレビューやビブリオバトルでご紹介しますね。


さて、こんな文章で裏試験に合格できるのでしょうか?

 

【参考文献】
1)富樫義博(1999)HUNTER×HUNTER 第7巻. 集英社, 東京, p122
2)知的書評合戦 ビブリオバトル 公式ウェブサイト. http://www.bibliobattle.jp/ (2020年9月10日閲覧)
3)谷口忠大, 川上 浩司, 片井 修(2010)ビブリオバトル:書評により媒介される社会的相互作用場の設計. ヒューマンインターフェース学会論文誌, 12(4): 427-437

 

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士13期修了生 宮道 亮輔)

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