トップIDマガジンIDマガジン記事[002-04]ヒゲ講師早大生300人をアジる!

[002-04]ヒゲ講師早大生300人をアジる!

6月27日(木)、ヒゲ講師は早稲田大学人間科学部(所沢キャンパス)大教室の教壇に立っていた。向後千春さん担当の選択専門科目「インストラクショナルデザイン」のゲスト講師として、受講者300人に向けて熱弁をふるった。中身は皆さんご存知のARCSモデルと9教授事象。eLFの追跡アンケートでも記憶度・有用度ともトップにランクされているお馴染みのIDモデル。しかし、TPOにあわせて、力点を変えることは忘れなかった。

「ゲスト講師として何をしゃべったらいい?」との事前質問に、ヒゲ講師が最も信頼する研究同人向後千春の答えは「何でもいいよ。任せる」。「おいおい、IDという名前がついている講義って日本であんたのしかないんだよ。そんないい加減なことでいいのかい」。ヒゲ講師は、「何でもいいよ」と言われると、かえってID者魂が刺激され、当該講義のWebサイト(URL=http://kogolab.jp/educ/id/)を調査。シラバスを概観し、「ページ数が多いので(A4判50ページ超)、プリンタのインク消費にご注意ください」との警告にしたがって、ワークブックPDF版をダウンロードして画面でチェック。「自分は何を話せば、講義の流れにマッチするかな」。すでにARCSモデルも9教授事象も講義で紹介されていることを知った。うーん。

しばし考えたが、「単発のゲスト講師は、自分の最も得意としているネタで勝負する」という信念を貫き、やはりARCSと9事象でいくことを決意。300人分の配布資料として、「学習意欲を高める作戦(教材づくり編)」と「学習のプロセスを助ける作戦」を準備した。「プレゼンはeLFの使いまわしでいいかな」---ID者として手を抜くこと(効率化)も忘れなかった。当日、向後さんから講義の受講生は1,2年生が中心であることや以前ARCSや9事象を扱ったときの反応が好意的であったことを取材して確かめ、「講義への導入は以前SIGEDUで使ったプレゼン2画面の自己紹介の再利用」と決めた(講義開始30分前)。講義の力点は「生徒から学生に成長して自己管理学習ができるようになるためにIDを活用しよう」で行くことにした。これが同じARCSや9事象の紹介でもTPOに応じた味つけであった。

講義を始めようとしてもなかなかざわつきが収まらない階段教室の300人を向後さんが静めてくれて、「ヒゲ講師はIDの第一人者なんだ」と権威づけの紹介をしてもらい、講義を始めた。「緊張して話がスピード違反でしたよ」とあとで同行者から指摘されたが、自分なりに精一杯の熱弁を振るった1時間が過ぎた(興奮すると早口になるのがヒゲ講師の癖であることは本人も自覚しているが止められない)。どの顔も、真剣であった(ように思えた)。うつむいている学生ですら、話に集中しているようだった(気がした)。「いやー、よかった。感動したよ」---研究同人の褒め言葉は嬉しかった(ヒゲ講師=単純)。

この講義では、A4版の黄色い厚紙を受講者一人ひとりに配布し、出席した講義についてのコメントを4-5行、毎回の講義の最後で書かせ、回収し、講義担当者が一言書いて次の講義の開始時に返却・一部紹介して(また書かせて)いる。大人数の講義で、個々の学生とのコミュニケーションを確保し、授業の改善をオンタイムで(次の講義には反映可能)図ることを狙った手法。その名は「大福帳」(三重大学織田揮準先生の命名)。名称や形をさまざまに変えて、大学教員の間で広まっている(ヒゲ講師自身はWeb掲示板で全世界公開を実施中。ただし講義担当者からのフィードバックは多忙のため省略が多い:反省。かつてはこういう実践も披露した(URL=http://www.anna.iwate-pu.ac.jp/~ksuzuki/resume/books/1997a02.html)。ヒゲ講師の特別講義においても、当然のように返却・記入・回収され、受講者の苗字であ行、か行、…のバスケットに整理されている大福帳には、講義後に全部目を通した。んー。

「今日の講義は退屈した。新しく知ったことがなかったから。」---最もストレートな反応が1名。メッセージが伝わらなかったなぁ。残念。「良い復習になりました」「同じことでも違う人から話を聞くと違いますね」---ストレートな反応と同じ意味も含まれているでしょうね(20名ぐらい)。「楽しかったです」「よかった」---レベル1的反応(同じく20名ぐらい)。「前回よりも詳しく知れたのでよかった」「ヒント集が具体的でためになりました」「ガニェ先生が一昨年まで生きていたなんてびっくり。もっと古い時代の人かと思っていました」---多少は追加情報が伝わったようですね(40人ぐらいいたかな)。「まだ学生とは言えず生徒だと思う自分をこれから何とかします」「講義を聴くときにどんな工夫をしていくべきか見えてきました。ありがとうございました」「やる気がない自分を乗り越える工夫をした者が良い教師になれる、という言葉が胸に響きました」---こういう反応が研究同人の褒め言葉以上に、嬉しいものですね(注:人数はどう足しても300にならないいい加減な数値。学生の反応も直接引用ではなくデフォルメあり)。形式はどうあれ、「感想を書き残すこと」の威力は絶大だ(eLFテキスト第12章参照)。

今回は、自作自演で臨んだ、たまには講義もするID者の活動日誌でした。おしまい。

追伸:この日の講義について、ヒゲ講師をゲストとして招聘した向後千春はどう思ったのか。Web日記の実践研究サイト「ちはるの多次元尺度構成法(日記)」の2004年6月17日(木)と20日(日)に紹介されています。ご一読ください。
http://chiharu.cside4.jp/mds/2004/06/index.html

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