二冊の本との出会い:「おとなの学びを拓く」と「おとなの学びを創る」
本年のJSET全国区大会にて発表したポスターセッションに、函館みらい大学の美馬先生が来られて、ディスカッションしたことがきっかけとなりました。
このディスカッションの中で、「小職の発表に記載される成人教育とは、どの成人教育を指すのか?」という問に対して、「マルコム・ノールズの示したものを指す」という回答をしました。これに対して、「ノールズ以降の成人教育の理論に触れない理由は何か」という突っ込んだ質問を頂戴し、その回答としてここに紹介する2冊の本が参考になるという提案を頂いた次第です。
では、これらの2冊の本の紹介ですが、今回は第1冊目の「大人の学習を拓く」について紹介します。「大人の学びを創る」は次回のIDマガジンで紹介することにします。
【大人の学習を拓く】の目的と所感
本書の目的として筆者が以下のように述べています。
(本書の「まえがき」より抜粋)
「おとなの学習者とともに学習に取り組んでいる教育者に、理論的な背景を含んだ実践的な情報を提供する。成人教育の複雑さや成人教育を支える理論的わく組みに対して自覚的になることを促進しようとするものです。また実践者のために、その複雑さを有益な情報へと翻案することも本書の意図するところです。このようなプロセスを通じて教育者が自分たちの取り組みを振り返り、納得のできる実践の理論をみずから作り出していくことができるようになれば幸いです。」
<このまえがきを読み感じたこと>
成人学習に関する理論の全体像が理解できそう。お得かも。
実践手法が書かれているのか?ハウツー本なのか?→小職の研究に直結する?
【この本を読んで感じたこと】
本書の目的とした、「おとなの学習者とともに学習に取り組んでいる教育者に、理論的な背景を含んだ実践的な情報を提供する。」が貫かれて記載されているということでした。成人教育の理論と実践という視点で感じたことは、成人教育理論と実践は、まだまだ研究対象がたくさんある領域であるということ。また、日本だけでなく、欧米の各国でも成人教育を実際に実践して成功している事例も多くなく、理論と実践との間に大きな隔たりが存在していそうだということでした。
(早川勝夫 熊本大学大学院教授システム学専攻博士後期課程1年)