ヒゲ講師は、2010年10月3日の朝、チリの首都サンチアゴ空港に降り立った。全員無事救出された炭鉱労働者に会いに行くため、ではなく、ibstpiの理事会に参加するためであった。南米へは2007年のブラジル訪問以来2度目の旅。今回はアメリカで1週間を過ごして時差ボケをある程度解消してからのチリであったが、マイアミからの夜行便は満席で、かなり疲れた状態での到着であった。今回の理事会開催をサポートしてくれた地元大学からの出迎えタクシードライバーの出迎えを受け、ガタガタ揺られて1週間を投宿するツーリストアパートに無事チェックイン。インターネットアクセスがまぁまぁのスピードが確保できていることに安心し、早速、普段からの遅れ気味のToDoリストに追いつく作業に着手した。
ibstpi理事会は3日間缶詰で朝から夜まで集中審議を行う。今回の主たるテーマは、改訂中のインストラクショナルデザイン(ID)コンピテンシーの最終案決定とユーザー登録管理方式のリニューアル。今回は遠方での開催ということもあり、在任理事10名のうちの5名しか現地参加できなかった。遠隔地からのバーチャル参加を加えないと定足数が満たせず、何も議決できない状態であったが、それでも数々の決定を重ねた。
現行のIDコンピテンシーは2000年に公表した第3版。そろそろ見直しの時期だろうということで一昨年に改訂チームをつくり種々の調査を実施し、チームと理事会全体で議論を重ねた結果、改訂の骨子がまとまったのが昨年。それを英語からスペイン語・韓国語・日本語などに翻訳して全世界調査にかけた結果を精査して「これでいきましょうかね」という決定を下すのが今回の理事会での重要案件。チームからの報告にいくつかの意見はついたが、「これでいきましょう」との決断がなされた。つまり、日本でも読者各位にご協力をいただいたコンピテンシー案がほぼ踏襲された形で、第4版が公表される見通しになった、ということです。来年早々にもWebサイトを通じて公表され、改訂のプロセスなどをまとめて解説をつけた単行本も発刊される見込みになりました(本の中身はこれからですが)。
もうひとつの主要議題は、ユーザー管理と広報の問題。Webサイトのリニューアル案とそこに載せるべき新しいユーザー登録管理方式を議論。ibstpiが公表している4種類のコンピテンシーは、全世界500以上の団体・組織で使われている(といわれている)が、必ずしも正確にその実態が把握できているわけではない。利用権をきちんと申請し、営利・非営利、内部利用・外部利用のスキームに基づいてしっかりと利用料を支払っている団体ばかりではない、ということ。それを少なくとも今回のIDコンピテンシー第4版を公表するまでにはきちんと整理しましょう、となった次第。これも数年かけて議論してきた重要案件である一方、誰もしっかりとリーダーシップをとってこなかった。何が因果か、今回ヒゲ講師がこの案件を仕切ってもいいよ、と言ってしまい、えらい仕事を引き受けてきた。まぁ昨年引き受けた収入役の業務と切っても切れない利用料問題が絡んでいるので、これも自然な流れだったと言えなくもないのですが、参ったなぁ・・・。しばらくは縁の下の力持ちに徹することにしましょう。
ibstpi理事会の前日は、ホスト大学と共催でワークショップを開催。ibstpi理事長Sleezer博士(Baker
Hughes社人材部タレントマネージメント担当部長)が専門とする昨今はやりの「タレントマネジメント」をテーマに、ibstpi のコンピテンシーがどのように活用できるかなどを紹介。ヒゲ講師も、日本でのIDコンピテンシー活用の状況を少し紹介した。その中で、ヒゲ講師がIDを学んだ頃はアメリカへの留学が必要だったが、今では自前での専門家育成のオンライン大学院を日本につくったことを紹介した。「その大学院は英語で教えているの?」と質問され、「もともと日本語だけど、英語でも学べる課程をつくった」と言えば、チリからでも受けられるのね、となり、オンライン大学院のパワーを感じた。日本で学べる場所であると同時に、世界に通用する教育課程にしなければ、という決意を新たに、ダラス経由のニ連続夜行便で帰国の途についた。
帰国後1週間経ちましたが、時差ボケ「解消中」の状態が続いています・・・・
(ヒゲ講師記す:2010年10月19日)