先日、北大路書房から『教材設計マニュアル』増刷のお知らせとともに献本が1冊届いた。初版12刷で2500部の重版だというから我ながら大したものだ(自画自賛)。きっと「あれ、あの本どこに置いたっけ?」と、何冊も繰り返し買っていただいている読者も多いことだろうと(そんな人はあまり多くはないでしょう・・・)改めて感謝いっぱいの気持ちです。いや、それよりも着実に読者層が拡大している証拠だとすれば、その方がさらに嬉しいですね。
姉妹編『授業設計マニュアル』が刊行され(一部の教職課程の授業でのテキストとして代替採用される動きもあり)、大量購入先が減少しているのにもかかわらずの伸びである。何しろ10年も前に発行した書籍で少し古くなってきていて気になる部分もあるが(特に第10章)、売れている間は直さないで良いですよ、とも言われており、いまだに「初版」のままの姿を留めている。
その代わりに是非、と言われ続けていることに、「設計マニュアル」シリーズ第三弾の書下ろしがある。訳本も良いけど、是非書下ろしを、という出版社からの声は実にありがたい。著者としても早期実現を望んでいる(そう望むならば早く書きなさい、と言われそうですな)。実は、自ら「おしりに火をつける」という意図でと明言して、この執筆企画を公表したことがある。その証拠はユーストで今でも残っているから困ったものだ(http://www.ustream.tv/recorded/19878708)。あれは、なんと2012年の誕生日だったから、もうすでにあれから1年半が経過した。この間、進展はほぼゼロであった(トホホ・・・)。
これではダメだ、と思っていたところに、天の恵みか、ひげ講師の拡大解釈か、再びねじを巻きなおすチャンスがこの夏やって来た。昨年一昨年とケラー教授の通訳として参加した日本医療教授システム学会(JSISH)のセミナーを任されたのだ。これをしっかり準備して、「第三弾」出版へつなげるぞ、と意気込み、その成果として少しだけねじを巻くことができた。少しだけですけど、前に進みました。いろんな本を読んで、ワークシートを試作して、実践現場での悩みを聞くことができた。でも、その後は続かず、ゲストのアテンドもなくて本来は生産的であるはずの夏がもう終わってしまった。しかしながら、いろいろと言い訳を考えている暇に少しずつ前に進んでいこうと思っています(これも「おしりに火をつける」一貫の意思表明と受け取ってください)。
自慢話や愚痴ばかりでも何ですので、以下にJSISHセミナーの資料にも掲載した「典型的なパフォーマンス分析の質問」を紹介します。いろいろと読んでいる中で、これはよくまとまっていてどこかで使えそうだな、と思った資料。いわゆる評価のレベル3(行動)での問題点を抽出して、意味のある介入策を考えましょう、という時の質問項目です。企業での研修を考えるときだけでなく、大学教員の授業改善行動にもそのまま使えそうですね。
「1.やるべきことで、現在やっていないことは何か?」 私の場合は、マニュアルシリーズ第三弾の執筆に時間を確保すること。「2.やるべきでないことで、現在やっていることは何か?」 多すぎて書ききれません(それでは分析にならない!)。このように使えば、自分自身の貴重な時間の使い方も点検し直すこともできるお勧めツールです。
ところで第三弾のタイトルは『研修設計マニュアル』。コンセプトは、教えない研修、あるいは研修を最後の選択肢として検討する研修設計。1時間で学ぶ独学教材をつくるよりも少し大きな企業研修の文脈でIDの基礎を学ぶ本になる予定です。
機会あるごとに「第三弾の進み具合はどうですか?」とはっぱをかけていただけると嬉しいです。
IDからISDに視点を移行するための関連資料
(2013年8月4日.JSISH ARCS/ISDセミナー) 10頁
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■典型的なパフォーマンス分析の質問(ISPI ハンドブックによる)
1.やるべきことで、現在やっていないことは何か?
2.やるべきでないことで、現在やっていることは何か?
3.理想的なパフォーマンスと現実のそれとのギャップは何か?
4.パフォーマンス問題の原因は何か?
a. それはスキルまたは知識の欠落か、それともそれ以外の原因か?
b. 理想的なパフォーマンスを阻んでいる障害・障壁は何か?
c. パフォーマンスに影響を及ぼしている動機づけ上の要因は何か?
パフォーマンスによってもたらされる結末あるいは報奨は何か?
d. インセンティブは効果的かそうでないか、それとも存在する・しないか?
e. パフォーマンスに影響を及ぼしている環境要因・ツール・プロセスは何か?
プロアクティブな分析の場合、以下の質問もすること。
5.職場ではどのような変化が予想されるか?
a. 新しい機器やテクノロジが導入される予定か? 新しいサービスを提供する予定か?
b. 近い将来、新しい機器・テクノロジ・サービスでどんな職務内容が要求されることになるか?
c. いつ職務内容の変更が起きるか? テクノロジや機器の導入はいつか?
d. ソフトウェアについては、現在のバージョンがいつまで最新か?
e.新しい製品(機器・テクノロジ・ソフトウェア)は顧客にとってどの程度重要なものか?
6.上記1-5について、内容の専門家・職務担当者・上司の見解はどの程度統一したものか?
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出典:Anderson, J. H. (2010). Collecting analysis data (Chapter 4). In K. H. Silber & R. F. Wellesley (Eds.), Handbook of improving performance in the work place (Vol. 1). ISPI/Pfeiffer. (p.99 Exhibit 4.1 を鈴木が試訳)
参考リンク:
鈴木克明(2012年1月20日)パネル討論「授業設計マニュアルの企業向けバージョン」
第20回SEA新春フォーラム http://www.ustream.tv/recorded/19878708
(ひげ講師記す)