5月14日ヒゲ講師はソウル近郊の金浦空港に降り立った。招待講演者として韓国教育工学会が年1回開く国際会議(KSET2009)に参加するためだった。折りしも新型インフルエンザの警戒の中、風邪気味で誤解を受けないか心配しての海外渡航であったが、韓国の入国審査は拍子抜けするぐらいスムーズだった(日本は島国で過敏な反応なのは仕方なしか)。
翌15日は、国際会議に併設されていたワークショップの手伝いをした。ibstpi代表理事のGrabowski教授がibstpiのインストラクタとインストラクショナルデザインコンピテンシーについてのワークショップを頼まれた。ついては同じ理事のヒゲ講師が(たまたま)韓国に招かれているのであれば、一日早く来て手伝ってくれないか。Noとは言えず。40人も集まっただろうか、ibstpiがどのようにしてコンピテンシーリストを作成・提案しているのかの説明から両コンピテンシーについての充足度自己チェックや利用シーンの協議など、活動的で有意義なワークショップができたと思う。大学院生や若手研究者が対象であったが、英語でのワークショップができてしまうところが韓国の実力の高さ・研究者層の厚さを物語っている。そう実感した。
このワークショップには、AECT次期会長予定者としてKSET2009に招かれていたジョージア大学のSpector教授も参加してくれた。ibstpiの元理事・現在Fellowという肩書きを持つ経験豊富な研究者だけに、ibstpi理事として新参者のヒゲ講師にとって、初めて聞く逸話などもあり興味深かった。たとえば、インストラクタコンピテンシー2000年版を改訂した際、オンラインと対面のインストラクターコンピテンシーは違うか同じかの議論をした末に、2つのチームでそれぞれオンライン用のコンピテンシーと対面用のコンピテンシーの作成を試み、両者を付き合わせた。その結果、一つのコンピテンシーとして提案するのがふさわしいとの
結論を得たとのこと。書籍には書いていないエピソードとして興味深かった。
KSET2009は5月16日の一日かけてソウル国立大学で行われた。オープニングセレモニーでは新型インフルの影響で海外渡航が不可になった赤堀JSET会長のあいさつ文を読み上げる大役を無事果たし(幾度か笑いもとり)、自分の研究発表も練習もしなかった割には時間ぎりぎりで終えて、最後のラップアップセッションでのパネルを迎えた。Spector教授とともに登壇し、海外からの参加者を代表しての所感を述べるという役割だったが、次の2つを述べた。
1)併設ワークショップの開催は日本にも持ち帰りたい点だった。一つのテーマで長い時間をかけてじっくり協議し、最新動向に触れることができる方式であり、参画型の企画は学びあう場にふさわしい。自分は講師を補助する役割で参加したが、学ぶことが多かった。
2)研究発表のセッションごとに指定討論者を設けるやり方は刺激を受けてよい。少なくても自分の発表原稿を予め読んできてコメントをくれる人がいる緊張感は良いし、コメントの中身も建設的でその後の討議を誘発した。自分が学生時代に参加したAECTでの指定討論者と発表者の間で繰り広げられていた熱い意見効果に圧倒されたことを思い出した。この伝統はぜひ今後も引き続き守ってほしいと思う。
韓国へ行くたびに、教育工学関連の研究者の層の厚さを再確認することになる。今回も、旧友との再会が多くあったが、それと同時に新しい研究者との出会いも多くあった。まだまだ奥が深い。そういう思いを強くした訪問だった。8月末にICoME2009で再びソウル国立大学に来る日がますます楽しみになった。
ヒゲ講師記す
ICoME2009 8月27-30日@ソウル国立大学