トップIDマガジンIDマガジン記事[065-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(61) ~コルブの経験学習論って学習プロセスじゃないの?~

[065-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(61) ~コルブの経験学習論って学習プロセスじゃないの?~

コルブの経験学習論はもちろん、有名な4サイクルモデルですから、皆さんご存知でしょうかね。具体的な経験から始まり、それを多様な観点から振り返り、他の状況でも応用できるように概念化し、新しい状況の下で試してみる。(1)具体的経験→(2)省察的観察→(3)抽象的概念化→(4)積極的実験の4ステップを繰り返して学習が進むという説です。

ここで大事なのは3つ。まず、何よりも行動して具体的な経験をしなければ始まらないこと。新しい知識を聞きかじっても、それを自分で試してみるまでは経験にならない。次に、単に行動するだけでなく、振り返ること(リフレクション)が大切であること。同じ経験をしてもそこから多くを学ぶ人とそうでもない人との差がここで生まれる。そして、単に振り返っているだけではなく、それを次の行動に活用することが大切であること。たぶんこうなると思うことを試して、腑に落ちて、自分なりに理論化する。

このサイクルをらせん型に繰り返して人は賢くなっていく、というのが経験学習論のあらましであります。学習してから応用(経験)ではなく、経験から自分なりの理論を紡いでいくのが学習である、という発想が広く受け入れられて有名になりました。まぁ元をただせばデューイの「経験の連続性」に行きつくわけです。

でもこのモデルには続きがあるのです。それは、4つのサイクルのうちどれが得意か、あるいはどれを重視しているかによって、4つの学習スタイルがある、とするもの。(1)を上、(2)を右、(3)を下、(4)を左の時計回りの円形に並べる。縦軸は具体-抽象の情報認識軸であり、上が「感じる」で下が「考える」。横軸は左に「やってみる」で右に「観察する」の対照的な情報処理軸。ここまで描けましたか? 典型的なコルブの4ステップ図ですが、縦軸横軸に意味があるんですね。

その上で、右上の第一象限が得意な人は(A)発散型。感じて観察することが好きな人。右下の第四象限は(B)同化型。観察して考えることが好きな人。左下の第三象限は、(C)収束型。考えてやってみることが好きな人。そして左上の第二象限は、(D)適応型。やってみて感じることが好きな人、というわけです。第○象限という場合は反時計回りなのでややこしいですが、ここまで描けましたか?

ちゃんと描けたかどうかチェックしたい人はこちらをどうぞ(英語ですが)。
http://www.businessballs.com/kolblearningstyles.htm
http://www.businessballs.com/freepdfmaterials/kolblearningstylesdiagram.pdf(PDF 61.6KB)

それぞれの学習スタイルの人たちの特徴はどうでしょうか?
(A)感じて観察することが好きな発散型の人は、想像力旺盛で、価値や意義について考えることが多い。状況を様々な角度から見、行動よりも観察により適応する。人との関わりを好み、感情を重視する。
(B)観察して考えることが好きな同化型の人は、帰納的に考え、理論的モデルを 構築する傾向にある。人より抽象概念や理論に興味があり、実践的よりも理論的な考えを重視する。
(C)考えてやってみることが好きな収束型の人は、問題解決、意思決定、アイデアの実践に優れ、感情表現は少なく、対人的問題よりも技術的問題に取り組むことを好む。
(D)やってみて感じることが好きな適応型の人は、計画を実行したり、新しいことに着手することが好きである。環境に対する適応力が強く、直感的な試行錯誤によって問題解決をする場合が多い。気楽に人と付き合うが、忍耐に欠け、でしゃばりと思われがちである。
(以上の説明は、青木久美子(2005)学習スタイルの概念と理論―欧米の研究から学ぶ.メディア教育研究:2(1), 197-212 http://www.code.ouj.ac.jp/media/pdf2-1-3/No.3-18kenkyutenbou01.pdfより引用)

なるほどね。でもここで終わったら性格テストの類と同じ。自分はこの傾向が強いなぁ、とか、あの人はこのタイプの人だと思う、とかで安心することになるぐらい。それを知って何の得があるの、どう生かすの、と追及するのがID的です。

でも、ご安心あれ。ここからもさらに続きがあるのです(今回の日誌は、長編ですねぇ)。題して「コルブの発達の3段階説」。 第一の獲得段階では、4つの基本的な学習スタイルをそれぞれ身につける。個人の特性や経験によって、得手不得手が生じる。第二の専門段階では、複数の学習スタイルを身につけ、専門的な仕事ができるようになる。仕事によって求められるスタイルが異なりますから。そしてそれに続く第三の統合段階では、4つの基本的学習スタイルの全てを身につけ、総合的な態度で学習することができるようになる。学習スタイルの適応的な柔軟性を身につけることは、言い換えれば大人になることを意味する。様々な学習方法を試みたり、あるいは不得意だと思っている領域を経験することによって、自分の学習スタイルにマッチする方法とマッチしない方法の両方を取り入れる経験を重ねていくことが重要。なるほど。長所を伸ばし、弱点を補うことで、学習スタイルを拡大できるというわけですね。この3段階説も青木(2005)に図示されていますので、イメージを膨らませてください。

なぜ今頃コルブかって? 実は、現在鋭意執筆中の『学習設計マニュアル』の第二章「学習スタイルを把握する」を書こうとしていたとき、「そういえば数年前のランチョンセミナーで同じタイトルで話をしたなぁ。この日誌にもどこかに書いたはずだ」と探したのですが、日誌には見つかりませんでした。でもランチョンセミナーでは確かに話していたので、そのときのパワポをもとにして今回の原稿にしました。これで第二章にも二次利用できます(作業効率アップと「チラ見せ」効果を狙っています)。

皆様もどうぞ、今年もプロダクティブな時間が過ごせますように。

(ひげ講師記す)

(参考リンク)
熊本大学ランチョンセミナー第87回(2011年4月20日)コルブの経験学習論ってプロセスじゃないの?

http://cvs.ield.kumamoto-u.ac.jp/wpk/wp-content/uploads/2011/04/e383a9e383b3e38381e383a7e383b387ver4.pdf(PDF 533KB)

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