トップIDマガジンIDマガジン記事[157-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(117) :生成AIが共著者になりファクトチェックも担う時代が来たの?

[157-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(117) :生成AIが共著者になりファクトチェックも担う時代が来たの?

ヒゲ講師は5月のとある日、津田沼にある大学でオンラインセミナーを拝聴していた。もともと勉強会をやろう、と集まることになっていた時間帯に、ちょうどぴったり面白そうなセミナーがあるとの情報を得た偶然の巡り合わせだった。無料で誰でも受講できる講座ではあったが、「★参加者人数を自動集計していますので、必ず1人ずつお申込みください★」と注意書きされていた。それにもかかわらず、みんなでワイガヤしながら聞いたほうが楽しいよね、ということで、注意書きに従わず(ごめんなさい)、視聴アカウントを1つだけ申請し、数人で画面共有しながら聞いた。いわゆる学会のシンポジウムの第二会場のノリだった。登壇者に文句をつけながら(失礼)、意見交換しながら聞くのが楽しい、と思ってのことだった。しかし、結果的には、誰も一言もしゃべらず、講師の話に聞き入ってしまうことになる。

偶然の出会いをくれたのはJEPA設立40周年記念オンラインセミナー「生成AIと出版、過去4年の衝撃と次の10年」、講師はデジハリ大教授の橋本大也氏。ヒゲと橋本氏との出会いは2023年6月のeLCがDLCになった記念講演「ChatGPTと教育の未来」。その時に話を聞いて、この人はタダモノではないと思った。橋本氏はブームになる前から生成AIを使い倒してきたと述べ、その成果で聴衆を魅了していた。あれから3年たったが、その間に何が起きたのか。橋本氏は生成AIがらみの著作を重ねていたが、そののめり込みようは、半端じゃなかった。相変わらず、すごかった。

冒頭から、このセミナーの企画・構成・スライドデザイン、さらには2万字におよぶ講演原稿まで、すべて「Claude」や「Gamma」といった生成AIを駆使して作成したことを明かした。さらに、自分の写真と声のデータを学習させたアバターAI(HeyGen)にその原稿を読み上げさせる実演を行い、ほぼ人間と見分けがつかないレベルで自動プレゼンができるところまで成長したことを示してみせた。

他方で、結論は至って予定調和的であった。それは生成AIは出版を殺さない、なぜ本を出すのかを問い直す機会を与えるものだ。人間が創ることの価値は著者性と希少性にある、というメッセージだった。

ヒゲには気になることがいくつかあった。生成AIはもう共著者レベルにあるという橋本氏の見立て。さらに、ファクトチェックは人間がやるよりも生成AIにやってもらった方が信頼できるレベルに到達したという指摘。毎年の進化が激しく、去年は無理だと思っていたことが今年はできるようになっている。来年は自分が登壇しなくても全部、生成AIに講演そのものを任せられるかもしれない、と予言した。一方で、ファンが音楽のライブに出向くように、本人の語りが聞きたいというニーズは残る。それが「著者性と希少性」だとも述べた。

ヒゲ自身は、あまり生成AIを駆使しているとは言えない状況ではあるが、学生に使うな、という指導は時代に逆行しているので大いに活用する術を身につけてもらうのがよい、と思っている。さらに、昨年聞いたICOME2025での基調講演(連載113回を参照されたし)に刺激を受けて、人間による指導が行き届かないところでは、教える側もどんどん使って応答的な学習環境を構築して提供するのがこれからの教師の重要な役割になるはずだ、とも思っている。でも、生成AIを使ったということをどのように引用するのがよいのだろうか、というレベルの課題を解決できていないヒゲは、「共著者になる」という見立てに驚いた。

生成AIを共著者にするためには、参考文献として掲げる以上に、執筆プロセスのなかで独自の貢献をしている必要がある。そうでない人(何も貢献していない上司など)を共著者にすることは「ギフトオーサーシップの問題」として禁じられている。橋本氏は共著者にしてもよいレベルだ、と述べていたが、その裏では生成AIとやりとりを重ねてきた経緯があるので、AIから自分の思考がかなり反映された答えが返ってくるようになった、とも述べていた。そうであれば、それは独自の貢献と言えるのだろうか。生成AIからの答えをどのように引用するか、という課題に加えて、どういう状態になったら共著者にするのか、という課題が増えたように感じた。

ファクトチェックは人間がやるというのがヒゲの現状認識だったが、もはや人間がやるよりも、より正確にできるようになった生成AIに分担させるべき作業になるという橋本氏の指摘を聞いて、「そうなのかもしれない」と思った。ハルシネーションが問題視されている段階はもう過ぎ去るということなのだろうか。

目まぐるしい変化を遂げている生成AIの現状を把握することには膨大なるリソースを投入する必要がある。橋本氏が質疑応答で「詳しい人に聞くのが一番良い」と述べていたように、時折、橋本氏から学ぶ機会を持つようにしよう、と改めて思った。

セミナー記録:https://www.youtube.com/watch?v=wiv1UCJrBdE
(日本電子出版協会提供:Geminiによる動画の概要・要約付き)

(ヒゲ講師記す)

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