ヒゲ講師は2026年3月の最初の週末、福島県にある土湯温泉で行われた合同ゼミ合宿に参加した。いわゆる「泊食分離」での温泉街活性化策でインバウンド+若者ねらいでリニューアルした老舗温泉の朝食のみプランでの宿泊である。夕食はどうするか、と言えば、自炊である。この自炊のために早めに福島駅前に集合し、自炊グループごとに定められた予算で8人分の夕食1回分を考えて買い出しするところからこのイベントは始まった。2泊のうちのどちらかの夕食を4人グループで担当、担当しない日は相方グループが用意した食事をいただく。それで4人×2グループ分、合計8人分の夕食1回分を担当することになる。
各グループは岩手・宮城・千葉・東京にある大学のゼミ生混合チームで構成。初対面のメンバー同士で夕食メニューのアイデアを出し合い、予算内に収まるように買い出しをする。昨今の生活体験が不足がちな大学生にとっては、かなりチャレンジングなスタートだろうと思う。学生の動きを遠目で見つつ、ゲストを含めて7人となった教員チームも同様に買い出しをする。定められた予算は、自腹を切って多少(かなり?)オーバーしつつ、地の「つまみ」中心に献立を考えて買い物をした。もちろん地の酒も、である。
さて、福島駅から温泉宿の送迎バスに揺られて合宿所入り。夕食を楽しみにしながら、来年度1年間かけて取り組む卒業研究について、教員からポイント解説を聞き、グループ内で紹介し合い、そして教員7人のブースを回ってアドバイスをもらう。そのために1-2ページの「研究計画」を合冊した資料をあらかじめ持ち込む。あれこれ言われ、あれこれ気づき、あれこれ持ち帰る。チームづくりから他大学交流、なんでも発言しやすい空気が出来上がっているので打ち解けた時間が進む。まじめな時間の後は夕食の準備。意外に、と言っては失礼だが、グループごとに工夫を凝らした夕食のメニューが準備できていた。中華風コースあり、てんぷら定食あり、デザートまで作ったグループもあった。作った4人もごちそうになる4人も楽しそう。2日目は朝食の後まじめな時間。昼食をみんなで外で取った後、自由時間での温泉街散策もあり、最終日は駅前のスポーツ施設でのチーム対抗戦で優勝賞品を競う。とてもよくデザインされた合同合宿だと思った。
この合同ゼミ合宿は、実は3年目。過去2回は岩手時代の旧ヒゲ研ゆかりの南花巻温泉郷の湯治場でやった。より古風な雰囲気の中で行われ、男女別の大部屋で雑魚寝というスタイルだったが、自炊などの仕組みは1回目から続いている。今回はリニューアル間もない、おしゃれな温泉宿ではあったが、男女別の相部屋というスタイルも踏襲。社員寮ですら相部屋は「あり得ない」令和の世の中には抵抗感も感じるだろうと思うやり方である。だが、先輩からの「うわさ話」を聞いているだろうにもかかわらず、後輩学生たちの「私たちも行きたい」という希望で今年も実現したと言う。こういう失われつつある文化の伝承って大事なことですよね、としみじみ思う。
思えば3年前、ゼミ合同で合宿をやるから来ませんか、と唐突に誘われた。えー、学生に自炊させるのか、と驚いた(旧ヒゲ研合宿では自炊部ながらも2食付だった)。買い出しからグループごとにやらせる、という話にも驚いたし、そんなやり方もあるのか、と勉強になった(まぁ令和だからこそ、初対面同士だからこそ、そこからやるのが効果的なのだろう)。当初は学生が参加してくれるのか、果たして喜んでくれるのかなど、不安なスタートだったと思う。3回目となれば、不慣れであった教員チームも、微修正を繰り返して落ち着いた運営ができるようになったようだ。
岩手時代の旧ヒゲ研では、湯治場での合宿を年2回やるのが恒例だった(2年生で宴会幹事とランチョンセミナー企画運営を経験し、3年生で合宿幹事を担当し、卒論発表会のあとは4年生だけ自炊部から旅館部にグレードアップし、主客として社会人になったお祝いを受けるという粋な仕上げもあった)。合宿の伝統を踏襲した熊本でも、年2回の温泉宿での合宿が引き継がれている。そんな伝統の中で育った連中も、ここまで大学の先生らしくなったのね。ヒゲにとっては、至福の時間でした。
来年もあるといいなぁ。4回目ともなれば、もはや伝統の始まりと言ってよいかもしれない。
(ヒゲ講師記す)

