デジタルラーニングコンソーシアム(DLC)名誉会長の小松秀圀氏が他界したことを知った。小松会長は、DLCの前身であったイーラーニングコンソシアム(eLC)創立からの会長を長く勤め、モバイルラーニングコンソシアム(現在のラーニングイノベーションジャパン)の創立会長でもあった。教育システム情報学会(JSiSE)では2001年に岡本敏雄会長のもとで副会長に就任し、企業内教育研究部会長など、学術界と産業界の橋渡しを担った。20年以上の長きにわたり海外視察団に参画して最新動向を把握し、eラーニング2.0、知識のナゲット化、コンテンツからコンテキストへ、インフォーマルラーニングなどのキーワードの普及にも貢献した方である。
ヒゲは、まだ駆け出しの研究者だった頃からとてもお世話になった。JSiSEでの研究会でご一緒したり、研究会の後もインフォーマルラーニングの機会をいただけたりしたことが、走馬灯のように思い出される。「夕方5時からおいしいお酒が飲めるのはとても幸せだねぇ」が口癖の人だった。「そうですね」と、ヒゲも深くうなずいたものだ。そういえばあの頃に連れて行ってもらったお店は、もう20年も過ぎているが、どうなったのだろうか。まだ健在か、何が思い出せるか、再訪してみるのも一興かもしれない。
小松会長との交流のなかでもヒゲの人生の転機となったのは、2003年に集中講義として実施した「eラーニングファンダメンタル」。この構想をヒゲに持ち掛けてくださったのは小松会長。大学院レベルのeラーニングの基礎講座を全国の会場に衛星システム(SCS)を介して届ける、という本邦初の本格的な試みであり、それこそ全力を集中して準備したのが懐かしい。序章から第13章までのテキストを用意するのに丸1年を費やした。その内容もさることながら、事前学習用にeラーニングシステムを準備し、集中講義当日は質疑応答と会場ごとの討議を中心としたデザインを試みた。当時の勤務先であった岩手県立大学ソフトウェア情報学部のゼミ生の演習課題として試作してもらったWebサイトは、今でもその残骸が残っている(https://suzu-lab.sakura.ne.jp/ipu/main/eLF/)。受講者の反応を追記したテキストと集中講義の様子を撮影したビデオは、その後、eLCから市販された(黒くて大きい本でした)。さらに、2006年の熊本大学大学院教授システム学専攻開設にあたっては、必修科目「eラーニング概論」(2単位)にその内容が踏襲された。その後、「eラーニング概論」は内容を刷新したが、旧版(2009年度版)が公開科目として「いまだに」公開されている(https://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/iel/index.html)。
小松会長との出会いがなかったら、熊本大学とのご縁もなかっただろう。当時、岩手の地で、新設された高校の教科「情報」をめぐる活動やNHK高校講座向けWebサイトの開発研究などに取り組んでいた。そんなヒゲに新天地を広げる機会をくれた小松会長。「ユーザーを賢くしないと業界のレベルは上がらない」という思いを、大切に継承していきたいと思う。合掌
(ヒゲ講師記す)
参考文献
鈴木克明・三石 大・波多野和彦・小松秀圀(2003年5月30日)「インストラクショナルデザインに重点をおいた集中講義『eラーニング基礎論』の内容と方法」教育システム情報学会研究会(企業内教育研究部会)、青山学院大学
https://idportal.gsis.jp/~idportal/wp-content/uploads/a305302.pdf
鈴木克明・根本淳子・市川尚・三石大・波多野和彦・小松秀圀(2006)「ID専門家養成のためのブレンド型eラーニングの実践」『教育システム情報学会誌』23(2)、59-70
https://idportal.gsis.jp/~idportal/wp-content/uploads/2006a.pdf
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