トップIDマガジンIDマガジン記事[081-02]ヒゲ講師のID活動日誌(77):「実りの秋」で充実するID者養成プログラム群

[081-02]ヒゲ講師のID活動日誌(77):「実りの秋」で充実するID者養成プログラム群

ヒゲ講師が勤める研究センターが申請していた文部科学省の「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」(2019年度-2023年度)において、東北大学を代表校とし、熊本大学、大阪府立大学、立教大学の計4大学が連携して実施する取組「創造と変革を先導する産学循環型人材育成システム」が、運営拠点及び中核拠点として採択された(やった!)。
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/announcements/news-20190930/

向こう5年間をかけて、産業界で経験を積んできた方々が高等教育機関で教鞭をとるための基礎を身につけてもらう学習環境を整備しよう、という趣旨のプロジェクトである。4大学共通の基礎講座の設計とその上の中核拠点として「インストラクショナルデザイン指導力育成コース」を担当する。運営拠点はこの事業で1つだけ選定されたもので、全国をカバーして産学間の人材交流を促す大役を担うものだ。「創造と変革を先導する」という派手な名称に関係者の意気込みが感じられる。

プレスリリースに目を通してもらえば、「日本の人材育成は危うい︕」という共通認識と取組の志が堂々と述べられていることがわかる。エライことになったものだ・・・しかしIDを知らしめるチャンス到来。しっかり取り組んでいきたいと思う。

ID普及への取り組みはこれだけではない。当センターが取り組んできた「教育改善スキル修得オンラインプログラム(科目デザイン編)」が公開された。
https://kyoten1.cica.jp/moodle/
このプログラムは、いわゆるFD・プレFDのオンライン教材として設計・開発したもので、次世代の大学を創造していく教員に向けて、認知的発達を促す授業方法・評価と単位認定の見直し・学習目標の高度化の3つの領域での提案をそれぞれ7つずつまとめたもの。この中身がこれまた強烈である(一般人にとっては、ですが)。IDの用語をなるべく使わずにIDの神髄を伝えて、変革を担う人材を支えたい、という思いで満を持してリリースした。IDをかじった人であれば、例えば上の3つの領域が、メイガーの3つの質問を反映したものであることなどが読み取れて、異なる楽しみ方もできるだろう。
完成度を高めるためにはまだまだ改修が必要な段階での無料版公開なので、ぜひ「バグ取り」(?)に協力してください(「ご意見はこちら」コーナーあり)。
一度ご覧になって「そうだよねぇ!」という思いと、「ここまではっきり言っていいの?」「やっちゃいましたね!」という賛意を共有してもらえれば幸いです。こういう発想を受け入れてくれる人によって、大学が少しはマシな学習機関に生まれ変わって欲しいという願いがどこまで通用するか。それはこれからの問題ですが、まずは言いたいことを言ってしまった段階のご報告、ということでした。

さらにもう一つ、上級ID専門家養成講座もその開発最終段階に来た。近日公開に向けて、最初の(そして願わくば最後の)試行ワークショップをこの11月に予定している。この試行がうまくいけば、次は公開となるが、その際に問題となりそうなのは、この上級講座の参加資格(前提条件)を満たす人がいったい今、日本に何人いるのか、ということになるかもしれない。上級講座の概要は、以下で発表済みなので、予稿を参照してください。

鈴木克明・市川尚・髙橋暁子・竹岡篤永・根本淳子(2019.9)大学版ID専門家養成上級ワークショップの構想とその体系化.日本教育工学会第35回全国大会(名古屋国際会議場)発表論文集,85-86
http://idportal.gsis.kumamoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/sites/3/2019/09/JSET2019_suzuki.pdf

というわけで、大学以外への拡張も含めて、まだまだやることは残っているが、ID者養成もかなり体系化が進んできたと嬉しく思う。上記に加えて、熊本大学公開講座「インストラクショナルデザイン(入門編・応用編)」や日本教育工学会のFDセミナーなどの初級編も絶賛開催中である。熊本経済同友会人材育成委員会とのコラボで、企業版の構想もできつつある。台風が頻繁に来る中ではあるが、IDも「実りの秋」を迎えているということかもしれない。さて、感謝祭でもやりますかね。

(ヒゲ講師記す)

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