相変わらずオンラインの仕事が続く毎日ですが、読者諸氏はいかがお過ごしでしょうか。今回は、2022年6月1日に公開された二つのネタを紹介します。
一つ目は、経済産業省の未来人材会議が公表した中間とりまとめ。「未来人材ビジョン」と題する108ページのパワポスライドで、2050年に向けた雇用・人材育成や教育システムについてのビジョンをまとめたもの。「関係者の議論を喚起するためのもの」(p.106)だそうだから、我々も(誰のこと?)議論せねばなるまい。これから向かうべき方向は2つで、第一に旧来の日本型雇用システムからの転換、第二に好きなことに夢中になれる教育への転換。小学校から企業まで幅広く具体策が提案されているので、それぞれが置かれている立場で、前後の位置づけを眺めながら、言いたいことが出てくるだろうと思う。「雇用・人材育成と教育システムは、別々に議論されがちであるが、これらを一体的に議論することに、意義がある。」(p.12)とのスタンスが取れるのが経産省ならではのことだろうか、教育が目指す姿を現在との比較で図示し(p.84)、「デジタル時代では、教育を①「知識」の習得 と、②「探究(”知恵”)力」の鍛錬という2つの機能に分け、レイヤー構造として捉え直すべきではないか。」(p.83)とまとめている。「未来の教室」実証事業(https://www.learning-innovation.go.jp/)で具体的な実践を積み重ねてきたことが背景にあるので、説得力も感じる。まぁ、いろいろ批判的な意見もあるだろうが・・・。
二つ目は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がまとめた「大人の学びパターン・ランゲージ(略称まなパタ)。学び続けている実践者の方々にインタビューでお話を伺い、その考え方や工夫、課題を整理し、抽象化することによって「考えるヒント」を30のパターンで整理したもの。A.出会いや気づきを楽しむ(マインド)、B.自分を大切にしたデザイン(学び方)、C.自分と学びのブラッシュアップ(実践)、D.知のシェアリング(コミュニティ、社会)の4つのカテゴリーで、社会人になってからも大人が学び続けるための知恵を表現している。「A1 実はそこにある」から「D6 わたしの学びは人類のバトン」まで、「え、それって何?」と思えるネーミングで登場する30個のパターンには、どんな問題状況があり得るか、それは何故、起きてしまうのか、どう行動したらよいのか、その結果、何がもたらされるのかが1枚のカードにまとめてある。パターン・ランゲージは、まちづくりや職場づくりのルール、あるいは建築、ソフトウェア分野での応用が試みられてきた。人間の行為についても、ラーニング、コラボレーション、プレゼンテーション、探究、進路など様々な領域での知恵がまとめられ、対話的なワークショップで活用されてきた(https://web.sfc.keio.ac.jp/~iba/patterns_j/index.html)。IPAからは今回公開した「まなパタ」の前に、「トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(略称トラパタ)」(https://www.ipa.go.jp/files/000082043.pdf)も公表されていたことを今回初めて知った。変革が求められている今日、どんな形で活用できそうか、併せて検討してみるとよさそうだ。
ウクライナの停戦と世界の平和を祈りつつ。
(ヒゲ講師記す)