トップIDマガジンIDマガジン記事[107-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(92):コロナ禍にも自然災害にも打ち勝つオンデマンド型研修

[107-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(92):コロナ禍にも自然災害にも打ち勝つオンデマンド型研修

福岡にある私立大学からFD研修のお誘いがあった。コロナ禍でオンライン化に取り組む中で「学生も教員も消耗せず、WEB授業に素人の教員が、いわゆる『教育の質保証』につながるような授業をどのように提供すれば良いかと思い悩んでいたなかで、国立情報学研究所のサイバーシンポジウムでの講演に励まされた」と言われれば、断りにくい。講演のテーマは「学生が学び続ける遠隔授業のデザイン」で、講演に続いて7名の学内各学科教員によるWEB授業の実践報告をするとの依頼だった。講演会の後にまな板の上のコイ方式を付けるのでは実践の吟味が十分にできないと思ったので、講演は短くして実践報告の後のコメントの時間を長く確保してほしい、と依頼した。冒頭の講演は35分に短縮し、そのあとの実践報告が10分×7人で70分、実践報告への講評に40分を確保し、終了後には希望者と懇談する時間を設ける教育ワークショップのプログラムが決まった。

コロナ禍ではあったが感染状況も落ち着き、何とかキャンパスでの研修開催の方向で調整していた矢先に、台風接近のため、研修当日の教職員の入構禁止措置となり、現地開催の中止を余儀なくされた。後の教務日程もあり延期も困難であることから、 講演部分のビデオ録画の提供を依頼された。「研修当日、本学の全教員は自宅でオンデマンド動画の研修1コマと、ライブ動画の研修1コマを受講したところ、これを日々繰り返す学生の苦労の一端を理解することになりました。非同期型の利点も改めて認識するとともに、アドバイス頂戴しましたように、それぞれの教員・学生が改善、工夫を重ねていく必要性も実感することができました。」との報告を受けた。さらに翌週には、実践報告者からもそれぞれが作成したビデオ動画が届き、講評を求められた。実践報告の中身は、例えば栄養学の実習で定員の半数に抑えるための二部構成と講義室との動線の一方通行化など、それぞれの分野で共有すべき工夫が満載であった。研修日を過ぎたからと言って無下に断れないと覚悟し、7本のビデオ動画を見ながらコメントスライドを作成し、35分間の講評ビデオにまとめて提供した。講評ビデオの最後にこの体験を省察し、「この方式は時間がかかって大変だった」と愚痴をこぼしてしまったが、オンラインでの非同期のやり取りを対面に近づけようとすると手間暇がかかるということだけは体験的に伝えられたと思う。

この研修を経験して以降、様々なパターンの依頼を受けてきたが、いわゆる研修当日を超えて仕事が残ることだけは極力、注意して避けるようになった。主たる理由は、次への切り替えがしにくいからである。コロナ禍以前には残務といえば、事後アンケートを見て一喜一憂する程度であった(もちろん、事後課題を課す場合には、その採点+コメント付けも残る)。ところが不思議なもので、コロナ禍以降、それ以外の残務がある状況に追い込まれる事例が増えた気がする。何なんでしょうね。まぁ、様々な経験を重ねる中で、いろんな学びがあるということですね。やってみるまでは本当のところは分からない、ということでしょうか、あるいは「まだまだ学ぶべきことがたくさんある」ということか。やれやれ、ですな。

以上、この連続日誌は、今回で3回連続の研修絡みの事例のご報告となった。それだけ研修だらけの日々を過ごしているということを物語っているのだろう(他にネタがないのが問題だという説もある)。今回の研修事例は長年取り組んできた「まな板の上のコイ」方式で、その説明ともう一つの事例は、モジュール3:FD研修のバージョンアップ:年1回の講演会を超えるための7つの提案(https://kyoten1.cica.jp/moodle3/ 外部のサイトに移動します)にある(提案5)。拠点提供の研修コンテンツ第三弾「FD活動デザイン編」として準備中のものの一部である(無料で閲覧可能です)。予定通りのスケジュールでは公開できなかったが、いよいよ有料版第一期の募集が2022年5月4日からと決まり、おしりに火が付いた。〆切がないと仕事が進まないという性癖も、あまり変わっていないようである。

(ヒゲ講師記す)

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