トップIDマガジンIDマガジン記事[087-03]【ブックレビュー】『イラストで学ぶスタディスキル図鑑』キャロル・ヴォーダマンほか 創元社(2017)

[087-03]【ブックレビュー】『イラストで学ぶスタディスキル図鑑』キャロル・ヴォーダマンほか 創元社(2017)

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【ブックレビュー】『イラストで学ぶスタディスキル図鑑』キャロル・ヴォーダマンほか 創元社(2017)
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メルマガ読者のみなさんがスタディスキルと聞いて思い浮かべることはなんだろうか?ノートの取り方?モチベーションの上げ方?失敗への対処の仕方?この本は、イラスト仕立てで82ものスタディスキルが7つのカテゴリー(章立て)<どのように学ぶのか、準備と目標設定、情報を集めて利用する、ネットで学ぶ、試験勉強のテクニック、試験本番でのテクニック、ストレスに対処する>に分けて紹介されている。

最初の<どのように学ぶのか>の章では、全体の見取り図や、学習支援者の態度、脳の働き、効率的に学ぶ重要性、学習スタイルが概観される。まずここにざっと目を通しておくとよい。「生活のあらゆる場面に学ぶ機会がある」ことが少し(?)納得できるはずである。

続く章では、各スタディスキルの切り口が面白い。<情報を集めて利用する>の章では、「情報を集める」「情報を評価する」というような容易に想像できるスキルだけではなく「学習に没頭する」「思考力を強化する」といような切り口でスキルを紹介してくれる。「学習に没頭する」では、経験を楽しみ、再確認することから、学ぶ場面を広げ、学習の場を外へと広げるように読者を誘う。「記憶力を強化する」では、水平思考、論理的思考などのいくつかの思考方法を紹介し、心を広く持ち、疑うこと紹介する。なるほど、これらは確かに<情報を集めて利用する>スキルだと納得できる。

<ネットで学ぶ>の章では、「検索する」の次に「ブックマークする」が来る。その中には、ブラウザのブックマークだけでなく、ソーシャルブックマークの説明がある。ネット学習にオンライン上のコミュニティを取り入れない手はない、ことをさりげなく教えてくれる。<試験勉強のテクニック>の章では、「よくあるトラブル」として、ぎりぎりまで着手しない、理解せずに暗記だけする、先延ばしする、気を散らしてしまうなどの「あるある」例が解説されている。ここに紹介されている方法は『学習設計マニュアル』でも紹介されているが、ビジュアル付きで短いという点で読みやすい(『学習設計マニュアル』ではじっくり読んで欲しい)。この章では、試験直前の対策ではなく、「読書術」「ノートの取り方」「記憶と脳」「さまざまな記憶術」などがあり、資格試験など長期の学習が必要な場合にも対応できるテクニックが紹介されている。<試験本番でのテクニック>の章は、「試験は何だろう?」で始まる。途中には、試験の種類(記述式とか、口述試験とか)や当日の心構えがあり、最後は「試験結果の発表日」で終わる。試験後には見直して、成長しようというまっとうなアドバイスが載っている。

<ストレスに対処する>の章では、「リラックスして前向きに」や「助けを求めるタイミング」などの紹介がある。後者では「心配箱」という手法の紹介が面白い。心配が生じたら紙に書いて専用の箱に入れ、たまに箱を開けて信頼できる友だちや家族といっしょに心配事を調べ現実性についてチェックするとよいとある。スタディスキルというか、現実対応スキルというか。役立ちそうだ。

この本の最初の方に戻ろう。<準備と目標設定>の章が、わたしは気に入った。「責任を持つ」では、「誰もが自分自身の教育に責任を持たなければなりません」とある。「教師は学習者が向かうべき方向は示せますが、質問をするかどうか、自分のために知識を追い求めるかどうかは、常に学習者が決めなければなりません」とある。オンライン学習がそこここで行われている今こそ、身にしみる言葉だ。「学習スペース」「態勢を整える」「集中する」も自分用のスペースを作り、気が散ることを避け、事前に計画を立て、大局的な視点をもって学習することの重要性と方法を説明している。これらも、オンライン学習が広く行われている現在、当たり前だけれども見直したいことである。もちろん、テレワークにも役立つだろう・・・

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士5期修了生 竹岡篤永)

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