トップIDマガジンIDマガジン記事[113-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(95):「問いの一般形」をもとに問いを作って問いに答える相互学習はいかが?

[113-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(95):「問いの一般形」をもとに問いを作って問いに答える相互学習はいかが?

ヒゲ講師は、とある日、「壇上の賢者から側面の支援者へ」の由来はどこからかを調べていた。まぁ英語の格言かなんかだろうと思ったので<From Sage on the Stage to Guide on the Side>とネット検索したところ、同名の論文に行き当たった。1993年に発表されたもので、かなり古い(注:30年前なのですが、ついこの間だったような気もします)。これがオリジナルかどうかは特定できなかったが、どうもこの論文は様々なところで引用されてきているようで、それなりの影響力があるものらしい。ということで、読んでみた。

すべての知識を有する賢者(教師)が壇上から何も知らない学生に向けて情報を流し込むスタイルをもう止めようじゃないか。受動的な情報伝達に慣れている学生を高度な知識構築の営みに誘うためには、それなりの仕掛けが必要である。講義または教科書から得た知識を使ってみる活動、いわゆるアクティブラーニングには様々な方法があり、講義の手を休める少しの時間で展開することが可能である(ヒゲ注:教科書をあらかじめ読んで来る宿題を出せば、講義も不要の反転授業になります!)。皆さんにもおなじみだろう方法が表1に紹介されている。シンク・ペア・シェア、事例創造、シナリオ構築、概念マッピング、フローチャート作成、予測、反論構築、図表作成、類推思考、問題提起と解決、批判構築、要約作成と批評、である(ヒゲ注:日本語訳は定訳とは異なるかもしれません)。

21世紀に求められるのは自分で考える人であり、複雑な問題を提起して解決する人であり、知識の再生産ではなく生産を担う人である。そういう人を育てるためには、講義スタイルは古い。30年前に指摘されていたことではあるが、さすがにもう、「講義をやっていたのは、過去の話ですよ」という状況ですよね?

次に紹介されているのは、この筆者が考案したというアクティブラーニング手法で、その名をGuided Reciprocal Peer Questionning:GRPQと言う。どの領域の授業にも応用可能で、3~4人のグループで取り組む。以下に示す「問いの一般形」を見ながら、授業で扱った主要概念に適用して、答えたくなるような「具体的な問い」を個人でいくつかつくって持ち寄る。それを互いに披露しあい、互いに答えようと試みる。この手法は、重要概念は何かを同定し、精緻化し、関連概念やこれまでの経験との結びつきに着目させる方向に導くものである。活動の手掛かりとなる「問いの一般形」を出発点に、どんな問いを作成したらよいかを考え、他者の問いにどう答えようかを考えることで、アクティブラーニングを拡張するものである。

なるほどね。早速やってみようと思った。読者諸氏もご一緒にどうですか?

(ヒゲ講師記す)

「問いの一般形」(King, 1993)
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〇〇の主要なアイデアは何か?
もし〇〇だったら?
〇〇は△△にどう影響するか?
〇〇の意味は何か?
〇〇は何故大事なのか?
〇〇の新しい例は何か?
〇〇がなぜか説明できる?
〇〇がどのようにxxするか説明できる?
〇〇は、自分が前に学んだこととどう関係しているか?
〇〇について導き出せる結論は何か?
〇〇と△△との違いは何か?
〇〇と△△との類似点は何か?
〇〇を△△するためにどう使えるか?
〇〇の強みと弱みは何か?
〇〇で最善なものは何か、まだ何故そう言えるのか?
-------------
出典:King, A.(1993). From sage on the stage to guide on the side. College Teaching 41(1), 30-35. 図1を訳出した
https://faculty.washington.edu/kate1/ewExternalFiles/SageOnTheStage.pdf 外部のサイトに移動します

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