トップIDマガジンIDマガジン記事[103-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(90):実感のなさはエピソード記憶不足が原因だろうか?

[103-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(90):実感のなさはエピソード記憶不足が原因だろうか?

ヒゲ講師は11月15日東京で「自律的なオンライン研修の促し方」と題する対談をした。大学の教職員が相手ではない研修や講演会は久しぶり。『研修設計マニュアル』発刊から年月が経過しているが、そこに書いたこと以上に何か話すことが見つかるのか不安だったので、質問に答えるという対談形式でお願いすることにした。

 

対談のために用意された質問は、次の5つだった。

1. アフターコロナでは、オンライン研修はどのくらい残るのか、集合研修に戻るのか、どうお考えですか?

2. 研修の動機づけが大切と言われていますが、オンライン研修を受講する意欲をどのように高めればよいでしょうか

3. オンライン研修でのARCSモデル活用のヒントがあれば教えてください

4. 反転学習は、自律的な学びを促進するのでしょうか

5. オンライン研修は交通宿泊費、会場費がかからないため低コストで実施できる、ということはROIは集合研修より高いといえるのでしょうか?

やっぱり『研修設計マニュアル』で扱った事項が多い。最後に少しは言いたいことをしゃべれるように以下の自作自演の質問6を付け加え、それぞれに回答を用意して対談に臨んだ。

6.これからの研修をデザインする上で何が重要となるでしょうか

 

用意したスライドは全部で77枚、対談時間50分では全部回答できずに途中までになるに違いない、という大方の予想を裏切って、予定通りの時間内に6の回答まで終了(さすが、というか終わるのが当たり前ですが・・・)。スタジオで対談のお相手と直接対峙してのやりとりだったが、関係者以外はオンライン上での聴講。しかもセミナー形式なので誰がどんな表情で参加しているのかも分からなかった。でも、対談そのものはとても楽しかった。

 

後日、アンケート結果が「大好評だった」との知らせをいただいた。300人を超える参加者の8割が大満足か満足という結果で、コメントも肯定的なものばかりが目立って90件を超える数。わざわざ90人もの人が自由記述欄に書いてくれた。この事実だけでも「大好評」と言ってよいはず。毎回同じで恐縮だが、コメントに励まされて次へのエネルギーとするヒゲ講師がそこにいた。

 

しかし、どうも実感が足りない気もする。こんなに多くの方が話を聞いてくれて、「大好評」を得たのに、なぜだろう。オンラインで直接お会いできないというのがその理由だろうか。講演後の名刺交換がないことか。今回は対談会場に出向き、直接関係者とお会いして名刺交換もしたし、終了後の「反省会」も十分楽しんだ。エピソード記憶にも、会場の雰囲気とか「反省会」で、本音で話したこととか(忘れている部分は多々あるとしても)、この体験を彩るエピソードがないわけではない。でも、直接多くの人を目にして、緊張していた(コロナ禍以前のイベントでの)体感がないのが、どうも物足りないと感じる原因なのかもしれない。

 

そういえば、コロナ禍での様々な研修や講演会など完全オンラインでのイベントは、さらにエピソード記憶が伴いにくい。自宅やホテルの部屋から配信するので、その場に赴くという手間がかからない反面、いつ何を誰を相手にしたのか、記憶がごちゃごちゃであいまいなことが多いことに気づく。直前まで別の仕事をしていたりしたことが多いからだろうか。オンライン研修や講演会が終わった後は、勝手にひとりで「反省会」をしているので、「ハイ、次の仕事」というような切り替えはしにくいが、「反省会」になると既に別の文脈になるように感じる。薄っぺらなエピソード記憶しか伴わないことがリモートワークの限界だとすると、これが続くのはあまりよくないようにも思うし、逆にそうでないイベントが待ち遠しい気持ちにもなる。

 

会議はオンラインがありがたい。特に定型的なものや特に意見を言いたいとも思わないものは、いつまでもオンライン参加のオプションが続いてほしいと切に願う。でも研修や講演会は、やっぱり対面がいいな。もちろん、対面する時間を有効に過ごすためには、手ぶらで集まらないようにしましょう、という点は『研修設計マニュアル』で述べた気持に変わりはない。

 

皆さんはどうお感じでしょうか。お会いできるまでどうぞご無事で。

 

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