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IDマガジン第87号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2020年5月29日━━━━
<Vol.0087> IDマガジン 第87号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
緊急事態宣言が解除されましたね。
みなさまのお住まいの地域では、どのように日常が動き始めたでしょか?
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
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《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(81):with新型コロナの「ニューノーマル」をデザインする
2. 【ブックレビュー】『イラストで学ぶスタディスキル図鑑』キャロル・ヴォーダマンほか 創元社(2017)
3. 【ご案内】第45回 まなばナイト「コロナ禍でのICT対応」
4. 【ご案内】2020年度まなばナイト開催スケジュール
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

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【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(81):with新型コロナの「ニューノーマル」をデザインする
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ようやく全国で非常事態宣言が解除された。宮城県ではコロナでの入院患者が2か月ぶりにゼロになったと昨晩報道された(あんたはいったいどこにいるの、と突っ込まれそうだが、それはあえて口にしない)。一方で、第2波、第3波に備える必要があると言う。医療関係者の多くが、そしてそれ以外の職種でも、あるいは幼き命を守る家庭でも、まだ混迷の最中で懸命にいる人たちにも心を寄せ、withコロナの時代の「ニューノーマル」をみんなでデザインしていくことが求められている。

この間、我がインターネット型大学院は平常営業であったが、ヒゲにはいろいろあった。国立情報学研究所が毎週金曜日に行っているサイバーシンポジウム(第4回)に登壇して「無理はしないで同じ形を目指さないこと:平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン」を語るチャンスをいただいた(資料と音声記録はアーカイブされているhttps://www.nii.ac.jp/event/other/decs/)。それを契機に雑誌のインタビューも受けて記事になった。NHKからの取材も受けて、それがニュースウォッチ9で放送された。放送は予定より一日延期され、しかも当日横入りした関連ニュースの影響で、あまりにもあっけない登場であったことが(?)一部で話題を呼んだ。何が割愛されたかは、NHKの映像アーカイブとWebニュース記事を見比べてもらえれば読み取れる。いずれにせよ、有事の対応では無理をせず、出来ることをやって、しかしこれをチャンスとして「ニューノーマル」に備えることが肝要である、という応援メッセージを送りたかった。

「ニューノーマル」とは、withコロナ時代の新しい常識を指す。ヒゲは、この言葉を、Facebook経由で、マーケティングの巨匠コトラー教授の緊急寄稿「新型コロナ、ニューノーマルつくる契機に」(日経ビジネス)を読んで知った。コトラー曰く、

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新型コロナウイルスの感染拡大を前にして「自分たちの元の生活に戻りたい」と思っている。しかし、振り返ってみれば多くの人々にとって、その生活がそれほど良いものだったかといえば、実は必ずしもそうではなかった。多くの人々は貧しかったし、おなかをすかせていたし、そして何よりも働きすぎていた。
私たちは今回の出来事をきっかけにして、いろいろなことを変えていくことになるだろう。そして、ここから多くの人々が充実し満足する生活ができる機会が得られる「ニューノーマル」をつくっていくべきだ。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/041600098/
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これを教育研修の現場に言い換えてみよう。「コロナ前の教育研修がそれほど良いものだったかと言えば、実は必ずしもそうではなかった。多くの教育研修はちゃんとデザインされていなかったし、効果的でも魅力的でもなかったし、そして何よりも無駄が多すぎた」ということか。対面で集合していることが抱かせてきた「ちゃんと教育をやっている」という幻想と「対面が当たり前」という思い込みがあった。他方で、集まらなくてもオンラインでそこそこできるし、受講者はむしろそれを歓迎しているという新しい現実が突き付けられた。「自分たちの元の授業や研修に戻りたい」では済まなくなった今、「いろいろなことを変えていく」ことで「ニューノーマル」をデザインしていくことが求められている。IDにとって、こんなチャンスはめったにない好機であることは、間違いないですね。

有事に付け込んでIDを喧伝することははばかられたとしても、有事が一段落し、「ニューノーマル」をデザインすることが少し落ち着いてできるようになった今こそ、IDの蓄積をより多くの人々に知ってもらう努力を傾けるべき時だろう。変化を受け入れる土壌がある今こそ、何ができるか、何をすべきかを具体的に考え、少しずつ実行に移していこうではないか。ここから多くの人々が充実し満足する教育研修ができる機会が得られる「ニューノーマル」を目指していこう。

これまでも細々と続けてきた「教育改善スキル修得オンラインプログラム」の科目デザイン編が完成し、無料版公開に加えて「履修証明制度」のもとで展開する有料版セミナーも開始した。その続編「自律学習支援編」も少しずつ公開を始めている(https://kyoten1.cica.jp/)。将来を担う大学教員を主たるターゲットとしているプログラムではあるが、我々が考える「ニューノーマル」を覗きに来てもらえれば嬉しい。

IDの巨匠ライゲルースが考えるニューノーマル『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザインの理論とモデル』(いわゆるグリーンブック第4巻)の日本語版も近々発刊される。どうぞご期待ください。

(ヒゲ講師記す)

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【ブックレビュー】『イラストで学ぶスタディスキル図鑑』キャロル・ヴォーダマンほか 創元社(2017)
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メルマガ読者のみなさんがスタディスキルと聞いて思い浮かべることはなんだろうか?ノートの取り方?モチベーションの上げ方?失敗への対処の仕方?この本は、イラスト仕立てで82ものスタディスキルが7つのカテゴリー(章立て)<どのように学ぶのか、準備と目標設定、情報を集めて利用する、ネットで学ぶ、試験勉強のテクニック、試験本番でのテクニック、ストレスに対処する>に分けて紹介されている。

最初の<どのように学ぶのか>の章では、全体の見取り図や、学習支援者の態度、脳の働き、効率的に学ぶ重要性、学習スタイルが概観される。まずここにざっと目を通しておくとよい。「生活のあらゆる場面に学ぶ機会がある」ことが少し(?)納得できるはずである。

続く章では、各スタディスキルの切り口が面白い。<情報を集めて利用する>の章では、「情報を集める」「情報を評価する」というような容易に想像できるスキルだけではなく「学習に没頭する」「思考力を強化する」といような切り口でスキルを紹介してくれる。「学習に没頭する」では、経験を楽しみ、再確認することから、学ぶ場面を広げ、学習の場を外へと広げるように読者を誘う。「記憶力を強化する」では、水平思考、論理的思考などのいくつかの思考方法を紹介し、心を広く持ち、疑うこと紹介する。なるほど、これらは確かに<情報を集めて利用する>スキルだと納得できる。

<ネットで学ぶ>の章では、「検索する」の次に「ブックマークする」が来る。その中には、ブラウザのブックマークだけでなく、ソーシャルブックマークの説明がある。ネット学習にオンライン上のコミュニティを取り入れない手はない、ことをさりげなく教えてくれる。<試験勉強のテクニック>の章では、「よくあるトラブル」として、ぎりぎりまで着手しない、理解せずに暗記だけする、先延ばしする、気を散らしてしまうなどの「あるある」例が解説されている。ここに紹介されている方法は『学習設計マニュアル』でも紹介されているが、ビジュアル付きで短いという点で読みやすい(『学習設計マニュアル』ではじっくり読んで欲しい)。この章では、試験直前の対策ではなく、「読書術」「ノートの取り方」「記憶と脳」「さまざまな記憶術」などがあり、資格試験など長期の学習が必要な場合にも対応できるテクニックが紹介されている。<試験本番でのテクニック>の章は、「試験は何だろう?」で始まる。途中には、試験の種類(記述式とか、口述試験とか)や当日の心構えがあり、最後は「試験結果の発表日」で終わる。試験後には見直して、成長しようというまっとうなアドバイスが載っている。

<ストレスに対処する>の章では、「リラックスして前向きに」や「助けを求めるタイミング」などの紹介がある。後者では「心配箱」という手法の紹介が面白い。心配が生じたら紙に書いて専用の箱に入れ、たまに箱を開けて信頼できる友だちや家族といっしょに心配事を調べ現実性についてチェックするとよいとある。スタディスキルというか、現実対応スキルというか。役立ちそうだ。

この本の最初の方に戻ろう。<準備と目標設定>の章が、わたしは気に入った。「責任を持つ」では、「誰もが自分自身の教育に責任を持たなければなりません」とある。「教師は学習者が向かうべき方向は示せますが、質問をするかどうか、自分のために知識を追い求めるかどうかは、常に学習者が決めなければなりません」とある。オンライン学習がそこここで行われている今こそ、身にしみる言葉だ。「学習スペース」「態勢を整える」「集中する」も自分用のスペースを作り、気が散ることを避け、事前に計画を立て、大局的な視点をもって学習することの重要性と方法を説明している。これらも、オンライン学習が広く行われている現在、当たり前だけれども見直したいことである。もちろん、テレワークにも役立つだろう・・・

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士5期修了生 竹岡篤永)

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【ご案内】第45回 まなばナイト「コロナ禍でのICT対応」
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今年の2月頃からコロナウイルスの話題が出始め、前回のまなばナイト(2020年2月22日)は会場で開催できましたが、その後ウイルスは拡大。想像以上に拡大し、緊急事態宣言も出されることになりました。

各大学はWEB授業へ急遽切替対応、各企業もテレワーク推奨となり、対応に追われたGSIS生は多いと思われます。

今回は対応の中心となった方々に、どのように対応したのか、何に一番苦労したのか等のお話をして頂きます。

大学の授業対応、企業の対応のどちらの話も聞ける機会です。
是非奮ってご参加ください!!

今回はZoomにてオンライン開催です!いつも東京に来られない方々も参加可能です。
参加される方には前日にZoomへの招待メールをお送り致します。

【日時】
令和2年6月6日(土)
Zoom待機室入場時間 15:45~
まなばナイト 16:00~18:30
Web懇親会 19:00~

【プログラム】
— オープニング —
熊本大学教授システム学研究センター センター長 鈴木克明教授
— セッション1 —
話題提供
・5期生(企業対応)
・桑原 千幸さん(大学での対応)
・淺田 義和さん(大学での対応)
— セッション2 —
グループにわかれてディスカッションを行います。
— クロージング —
熊本大学教授システム学研究センター センター長 鈴木克明教授

【会場】
オンライン(Zoom)での開催となります。

【定員】
先着200名様

【参加費用】
無料
※おつまみお茶菓子、ドリンク類につきましては、各自ご用意ください。

【まなばナイトへのお申込み】
お申し込みフォームからお願いします。
https://www.manabanight.com/event/manabanight45
締め切り:定員に達した段階で申込を締め切らせていただきます。

【懇親会】(オプション)
まなばナイト終了後、Web懇親会を予定しています。
懇親会のみ参加については、info @ manabanight.comへお問い合せください。

【キャンセルについて】
「まなばナイト」および「懇親会」参加キャンセルのご連絡は、前日までにinfo @ manabanight.comまでお願いいたします。

【主催者等】
主催:熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会 https://www.facebook.com/gsisAlumni

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【ご案内】2020年度まなばナイト開催スケジュール
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2020年度は以下の開催を予定しております。
6月6日 (土)オンライン
8月22日 (土)名古屋
10月24日(土)東京
12月5日(土)東京
2月6日(土)東京
詳細はまとまり次第告知サイトにてお知らせいたします。
http://www.manabanight.com/

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【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2020/6~2020/7
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2020/06/06(土) ~ 2020/06/07(日)
情報処理学会「155回研究発表会」@オンライン予定
2020/06/20(土)
日本教育工学会 第36回通常総会およびシンポジウム@オンライン
2020/07/11(土)
日本教育工学会研究会「教育方法・教育実践研究/一般」@オンライン
2020/07/18(土)
人工知能学会 第89回 先進的学習科学と工学研究会(SIG-ALST)@岡山大学
2020/07/25(土)
日本教育メディア学会2020年度第1回研究会「新たな可能性を見出す教育実践とメディア利用/一般」@オンライン

★ 編集後記
オンライン授業+在宅勤務、両方ともとても気に入っています。以前の形式には戻りたくない!というぐらい。担当している『学習設計マニュアル』を教科書にした授業では、集中してじっくり読むコースをデザインし、学習環境の方も整ってしまった(?)せいか、かつてないほどの気づきと効果を知らせる声が。ニューノーマル、万歳!(第87号編集担当:竹岡篤永)

よろしければ、お知り合いの方に、Webからの登録をお勧めしてくださいませ。
また、皆さまの活動をこのIDマガジンに載せてみませんか?
ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!
【 mail to: id_magazine@ml.gsis.kumamoto-u.ac.jp】
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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編 集 編集長:鈴木 克明
ID マガジン編集委員:根本淳子・市川尚・高橋暁子・石田百合子・竹岡篤永・仲道雅輝・桑原千幸
発 行 熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会
http://www.gsis.jp/
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謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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