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IDマガジン第2号

ID マガジン第2号~プロの仕事とは?~

  • ID マガジン第2号~プロの仕事とは?~
  • 音の効果とeラーニングデザイン~五感のひとつを探る
  • ヒゲ講師早大生300人をアジる!
  • e-learning world 鈴木先生講演をするの巻
  • ケラー氏を囲む会、一ヶ月を切りました
  • 近々行われる、イベントは?
  • 編集後記

ID マガジン第2号~プロの仕事とは?~
皆様

ID マガジンのご愛読ありがとうございます。

今月1日に、「皆様との新しいコミュニティの場を」とIDマガジン創刊号を出しました。
その後も徐々に購読を希望してくださる人が増え、とてもうれしく思うと同時にもっと盛り上げていかなければと感じています。相手に思いを伝えるというのは、とても素晴らしいことだと感じていますが、難しい。いつでも正直に、本当のことを、分かりやすく。常に心がけたいなと思っています。
それと熱い思いでしょうか(なんて)。

音の効果とeラーニングデザイン~五感のひとつを探る
6月後半のある日、岩手県立大学のメディア論にNHKエデュケーショナルの箕輪氏を特別講師として招いた。
講演タイトルは、「番組はこうして作る -効果音のデザイン-」。番組作成での音の効果について分かりやすく説明頂いた。学生にとっては現場の声が聞けた貴重な時間だったと思う。

番組作成に用いる音の種類には、(1)状況や環境の理解/自然音/状況の雰囲気をあらわすために用いる「実音(REAL)」、(2)注意を引いたり、感情を増幅させたりするために使う「効果音(EFECT)」、(3)印象を深めたり、テーマ音楽に使用する「音楽(MUSIC)」の三種類があるそうだ。講義の中に、学生が音響プロデューサーとして「ある10分間の小学生向け番組にどのように効果音を入れると魅力ある番組にできるか?」というクイズが出された。効果音を入れた場合とない場合の同じ内容のビデオを二種類見せて比較させるのだ。なるほど、ちょっとした音がこんなにも魅力を高めるのに役立つのか。と実感できたに違いない。最後に、「どこに音をつけるかよりも、どこに音をつけないかが、音響デザイナーのプロの仕事」(音を効果的に活かすためには、無音のところがあったほうが、より音を際立たせることができる) と言われていたことが印象的だった。

最近のeラーニングコンテンツは、動画もふんだんに使われおり、ナレーションも入っているものが多くある。逆に言うと、動きはあって当然だし、ナレーションを含めた音声データが無ければ貧素なものと思われる可能性がある。はたして、音声は効果的なコンテンツ作成に必須なのだろうか。
“e-Learning and the Science of Instruction”(Clark&Mayer,2003)という本の中に、「重複理論:画面と音声に両方に、同じ説明文を使用しない」というデザイン原則がある。
情報伝達理論から考えれば、画面と音声両方から情報が提供されたほうがより深く学習することができる。しかし、認知心理学に基づき考えると、画面に画像と説明文、そしてナレーションが入ったコンテンツで学習をすることは逆効果に成り得るというのだ。

上記のようなeラーニング教材で学習すると、目という感覚記憶には画像と説明文の二つの情報が入り、耳という感覚記憶にはナレーションが入ってくる。目から入った記憶は同じ作業記憶領域を使うことになる。もし、学習者にはその説明速度が早く、なじみが無いものだったりすると学習者が、目というチャネルの過負荷を感じるというのだ。
また、同じ内容のコンテンツを被験者に見せた場合どれぐらい記憶に残るか二つのグループを設けて実験した結果が記載されている。画像・説明文・ナレーション付のプレゼンテーションを見るグループAと、画像・ナレーションのみのプレゼンゼンテーションを見せたグループBを比較したところ、グループBのほうが応用問題の実施結果でグループAより43-69%高得点を記録した。

“just in time” という言葉もよく用いられ、今ではよくある言葉の一つになりつつあるが、必要な時に必要なものだけ提供する、すなわち”just enough information”これができるのがIDのプロかななんて考えた。テレビ番組の音響プロデューサーと同様に「音をつけないことができるプロ」と言うことだろうか。

ヒゲ講師早大生300人をアジる!
6月27日(木)、ヒゲ講師は早稲田大学人間科学部(所沢キャンパス)大教室の教壇に立っていた。向後千春さん担当の選択専門科目「インストラクショナルデザイン」のゲスト講師として、受講者300人に向けて熱弁をふるった。中身は皆さんご存知のARCSモデルと9教授事象。eLFの追跡アンケートでも記憶度・有用度ともトップにランクされているお馴染みのIDモデル。しかし、TPOにあわせて、力点を変えることは忘れなかった。

「ゲスト講師として何をしゃべったらいい?」との事前質問に、ヒゲ講師が最も信頼する研究同人向後千春の答えは「何でもいいよ。任せる」。「おいおい、IDという名前がついている講義って日本であんたのしかないんだよ。そんないい加減なことでいいのかい」。ヒゲ講師は、「何でもいいよ」と言われると、かえってID者魂が刺激され、当該講義のWebサイト(URL=http://kogolab.jp/educ/id/)を調査。シラバスを概観し、「ページ数が多いので(A4判50ページ超)、プリンタのインク消費にご注意ください」との警告にしたがって、ワークブックPDF版をダウンロードして画面でチェック。「自分は何を話せば、講義の流れにマッチするかな」。すでにARCSモデルも9教授事象も講義で紹介されていることを知った。うーん。

しばし考えたが、「単発のゲスト講師は、自分の最も得意としているネタで勝負する」という信念を貫き、やはりARCSと9事象でいくことを決意。300人分の配布資料として、「学習意欲を高める作戦(教材づくり編)」と「学習のプロセスを助ける作戦」を準備した。「プレゼンはeLFの使いまわしでいいかな」---ID者として手を抜くこと(効率化)も忘れなかった。当日、向後さんから講義の受講生は1,2年生が中心であることや以前ARCSや9事象を扱ったときの反応が好意的であったことを取材して確かめ、「講義への導入は以前SIGEDUで使ったプレゼン2画面の自己紹介の再利用」と決めた(講義開始30分前)。講義の力点は「生徒から学生に成長して自己管理学習ができるようになるためにIDを活用しよう」で行くことにした。これが同じARCSや9事象の紹介でもTPOに応じた味つけであった。

講義を始めようとしてもなかなかざわつきが収まらない階段教室の300人を向後さんが静めてくれて、「ヒゲ講師はIDの第一人者なんだ」と権威づけの紹介をしてもらい、講義を始めた。「緊張して話がスピード違反でしたよ」とあとで同行者から指摘されたが、自分なりに精一杯の熱弁を振るった1時間が過ぎた(興奮すると早口になるのがヒゲ講師の癖であることは本人も自覚しているが止められない)。どの顔も、真剣であった(ように思えた)。うつむいている学生ですら、話に集中しているようだった(気がした)。「いやー、よかった。感動したよ」---研究同人の褒め言葉は嬉しかった(ヒゲ講師=単純)。

この講義では、A4版の黄色い厚紙を受講者一人ひとりに配布し、出席した講義についてのコメントを4-5行、毎回の講義の最後で書かせ、回収し、講義担当者が一言書いて次の講義の開始時に返却・一部紹介して(また書かせて)いる。大人数の講義で、個々の学生とのコミュニケーションを確保し、授業の改善をオンタイムで(次の講義には反映可能)図ることを狙った手法。その名は「大福帳」(三重大学織田揮準先生の命名)。名称や形をさまざまに変えて、大学教員の間で広まっている(ヒゲ講師自身はWeb掲示板で全世界公開を実施中。ただし講義担当者からのフィードバックは多忙のため省略が多い:反省。かつてはこういう実践も披露した(URL=http://www.anna.iwate-pu.ac.jp/~ksuzuki/resume/books/1997a02.html)。ヒゲ講師の特別講義においても、当然のように返却・記入・回収され、受講者の苗字であ行、か行、…のバスケットに整理されている大福帳には、講義後に全部目を通した。んー。

「今日の講義は退屈した。新しく知ったことがなかったから。」---最もストレートな反応が1名。メッセージが伝わらなかったなぁ。残念。「良い復習になりました」「同じことでも違う人から話を聞くと違いますね」---ストレートな反応と同じ意味も含まれているでしょうね(20名ぐらい)。「楽しかったです」「よかった」---レベル1的反応(同じく20名ぐらい)。「前回よりも詳しく知れたのでよかった」「ヒント集が具体的でためになりました」「ガニェ先生が一昨年まで生きていたなんてびっくり。もっと古い時代の人かと思っていました」---多少は追加情報が伝わったようですね(40人ぐらいいたかな)。「まだ学生とは言えず生徒だと思う自分をこれから何とかします」「講義を聴くときにどんな工夫をしていくべきか見えてきました。ありがとうございました」「やる気がない自分を乗り越える工夫をした者が良い教師になれる、という言葉が胸に響きました」---こういう反応が研究同人の褒め言葉以上に、嬉しいものですね(注:人数はどう足しても300にならないいい加減な数値。学生の反応も直接引用ではなくデフォルメあり)。形式はどうあれ、「感想を書き残すこと」の威力は絶大だ(eLFテキスト第12章参照)。

今回は、自作自演で臨んだ、たまには講義もするID者の活動日誌でした。おしまい。

追伸:この日の講義について、ヒゲ講師をゲストとして招聘した向後千春はどう思ったのか。Web日記の実践研究サイト「ちはるの多次元尺度構成法(日記)」の2004年6月17日(木)と20日(日)に紹介されています。ご一読ください。
http://chiharu.cside4.jp/mds/2004/06/index.html

e-learning world 鈴木先生講演をするの巻
来る、7月28日(水)にe-learning world が開催されます。
テーマは「e-learning NEXTステージへ」。第三世代といわれる、eラーニングの今後を見ることができるかもしれません。
“Learning”の価値を見出してほしいです。
業界情報(フォーラム)で、鈴木先生もお話しされます。内容は・・・。

①7月28日 14:15-15:15 SessionB-2
・講演タイトル  詳説インストラクショナルデザインI:評価とROI
・講演内容  カークパトリックの4段階はeラーニングベンダーの常識となったが、一方で、アンケートやテストの作り方と結果の生かし方は常識となっているだろうか。この講演では、自社製品がどれだけすぐれているかをユーザーにアピールするために、また、自社製品の改良につなげてROIを確保するために、評価の基本について実例を交えて紹介する。

②7月28日 15:30-16:30Session B-3
・講演タイトル  詳説インストラクショナルデザインII:トレーニングを減らす設計法
・講演内容  ベンダーはトレーニングを売って利益を上げる。しかし、無駄なトレーニングを売ってはいませんか? ベンダーが必要最小限のトレーニングを売って、売ったトレーニングがユーザーにとって役に立ち、ユーザーの抱える課題を解決するためにはどうしたらよいのだろうか。トレーニングを減らしてソリューションを提供するためのノウハウについて、実例を交えて紹介する。
その他基調講演・出展社ワークショップなどもあり、情報収集には有効です。お時間を作って参加されてはいかがでしょうか。

ケラー氏を囲む会、一ヶ月を切りました
『ケラー氏を囲む会』近づいてきてます。

申し込みは締切ましたが、どうしても・・・と思われている方♪、人数調整できますのでご連絡ください。

[決定事項]
◆日時:7月27日 18時より
◆場所:ニューポート 酔東風 <中華>
URL:http://r.gnavi.co.jp/g280200/
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル1F
アクセス  JR有楽町駅 徒歩3分
地下鉄日比谷線日比谷駅 徒歩3分
地下鉄千代田線二重橋駅 徒歩1分

◆会費:5000円(当日受付にお支払いください。)
◆事前準備:ケラー教授への質問をご用意
◆参考文献:教材設計マニュアル 独学を支援するために 鈴木克明 著 P176 ケラーのARCSモデル
ARCSモデル  http://www.anna.iwate-pu.ac.jp/~ksuzuki/resume/books/1998a.html
http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id/siryou/keywords/arcs/index.html
*ケラー教授は、8月3・4日関西大学で開催される日韓合同セミナー(日本教育メディア学会主催)の招待講演で来日されます(来聴歓迎)。
http://tdmo2.med.kutc.kansai-u.ac.jp/%7Ejaems/

近々行われる、イベントは?
○7/27 ケラー教授を囲む会
URL:参加申込者には事前質問提出用URLを通知しています

○7/28-30 e-Learning World 2004
URL:http://www.elw.jp/

○7/28-30 ヒューマンキャピタル 2004
URL:http://expo.nikkeibp.co.jp/hc/

○8/3-4 2004 International Symposium and Conference )「日本教育メディア学会研究会」
URL:http://tdmo2.med.kutc.kansai-u.ac.jp/~jaems/

○8/20-22 教育システム情報学会第29回全国大会 大会テーマ:e-Learningにおける新たな教育学の構築を目指して
(発表申込〆切7/3、原稿〆切7/9)
URL:http://jsise2004.eng.kagawa-u.ac.jp/

○9/23-25 日本教育工学会 第20回全国大会
(自由研究発表申込(原稿〆切)7/30)
URL:http://www.mr.hum.titech.ac.jp/jset2004/
○7/27 ケラー教授を囲む会
URL:参加申込者には事前質問提出用URLを通知しています

○7/28-30 e-Learning World 2004
URL:http://www.elw.jp/

○7/28-30 ヒューマンキャピタル 2004
URL:http://expo.nikkeibp.co.jp/hc/

○8/3-4 2004 International Symposium and Conference )「日本教育メディア学会研究会」
URL:http://tdmo2.med.kutc.kansai-u.ac.jp/~jaems/

○8/20-22 教育システム情報学会第29回全国大会 大会テーマ:e-Learningにおける新たな教育学の構築を目指して
(発表申込〆切7/3、原稿〆切7/9)
URL:http://jsise2004.eng.kagawa-u.ac.jp/

○9/23-25 日本教育工学会 第20回全国大会
(自由研究発表申込(原稿〆切)7/30)
URL:http://www.mr.hum.titech.ac.jp/jset2004/

編集後記
月日が経つのが早く、本当に毎日があっという間です。盛岡は東京よりも気温も湿度も低いので、この心地よい気候が初夏から夏にかけて続きます。あつーい夏がやってくれば、もう7月、8月と感じますが同じような気温が続くと知らないうちにカレンダーをめくることになり、はっとします。
さて、メールマガジンとしてこちらを提供させていただいてますが、皆様からの情報発信をお待ちしております。是非、ご執筆いただける方!ご連絡ください。
………………………………………………………………..

皆様からの
ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!
【 mail to: idportalあっとml.gsis.kumamoto-u.ac.jp 】

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※このメールは、先日行ったeLF追跡アンケートで、メールマガジンの購読を希望するとお答えいただいた方・IDマガジンWebページより購読の申し込みをして頂いた方に配信しております

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謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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