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IDマガジン第12号

ID マガジン第12号

  • ヒゲ講師のID活動日誌(11)~米国取材旅行をおえて:退屈なeラーニング、楽しいeラーニング(シャンク)~
  • しゃべらないインストラクタ
  • Merrill氏のワークショップ参加を通して
  • 近々行われる、イベントは?
  • ID マガジン第12号
  • さいごに・・・

ID マガジン第12号 はじめに

ID マガジンのご愛読ありがとうございます。

IDマガジン発信地ローカル岩手は、とても過ごしやすい日々が続いています。昼間は半そででも平気で、今まで物置にしまっておいた自転車が引っ張り出され、活用している人達を多く見かけます。これも梅雨がやってくるとそうは行きません。短い貴重な、季節です。

ヒゲ講師のID活動日誌(11)~米国取材旅行をおえて:退屈なeラーニング、楽しいeラーニング(シャンク)~

ヒゲ講師は、2005年6月11日(土)の夕刻、12日間の米国取材旅行を終えて成田に帰国した。来年度から主任講師の一人として担当する放送大学大学院科目「人間情報科学とeラーニング(’06)」のために、IDの巨匠インタビューのチャンスをもらってのこと。驚くべき登場人物のリストは下記のとおり(インタビュー順)。

M.デビッド メリル:CDT(画面構成理論)の提唱者。「ID第一原理」を本連載でも紹介。
ドナルド カークパトリック:おなじみ評価の4レベルの提唱者。息子の方ではなく親父を取材。
C.M.ライゲルース:精緻化理論の提唱者。グリーンブックの編集者。3冊目の編集中とか。
J.M.ケラー:ARCS動機づけモデルの提唱者。今回は友人としてではなく巨匠として取材。
W.W.ウェイジャー:ICM(教材構造化技法)の提唱者。ヒゲ講師の博士論文審査主任教授。
R.A.リーサー:ID歴史学者(といえる事情通)。「IDTのトレンドと課題」の編者。
R.C.シャンク:ゴールベースシナリオ(GBS)理論の提唱者。AIからの転身組。

自分でも信じられません。巨匠たちに直接お会いして、インタビューしてきました。放送大学の番組ディレクターお二人とともに渡米して、ニューヨーク在住の取材クルー3名と合流して、巨匠たちの発言をばっちりカメラに収めてきました。カメラの威力か友人のネットワークか、何が功を奏したのか取材申込はすべて許諾され、目が回る日程で全米各地を飛び回りました。

来年度からの放送に備えて、これからインタビューの編集・翻訳ならびに番組の構成・スタジオ撮影をします。放送大学では、放送された番組は全国の大学で教材として使ってよろしい、という大盤振る舞いの著作権処理をしています。巨匠たちのインタビューをできるだけ長く番組に入れて、生の声を(英語ですが)聞いてもらうために吹き替えはせずに字幕スーパーを採用します。ご期待ください。

●AI研究の巨匠シャンクが教育実践に「下野」した理由

ロジャー・シャンクといえば、AI研究の第一人者として邦訳本が4冊もある著名人である。IDの世界ではアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)の企業内教育の抜本改革から1990年代に編み出したゴールベースシナリオ(GBS)理論の提唱者。2003年のASTDカンファレンス「TechKnowledge2003」の基調講演の内容は「eラーニング13のおとぎ話」として「eラーニングファンダメンタル」で紹介したとおりの、自他共に認める超急進派。最近では、「世界一豪華なビル」トランプ・タワーを五番街に建てた不動産王ドナルド・トランプが設立した「トランプ大学」のCLOに就任して話題の人となっている(http://www.trumpuniversity.com/company/TrumpUniversity_2005-05-23.pdf)。ディズニーで有名なフロリダ州オーランドから2時間半のドライブで、大西洋を臨むウォーターフロントに6ヶ月前に引っ越してきたという豪邸を訪ねた。

「トランプはいい意味でも悪い意味でも有名すぎるから、この先どうなるかは分からないよ。だけど、現存の大学を改革していくときに障壁となる慣習や抵抗勢力は、この大学には一切ない。自分の理論をフル活用してやりたいようにやって良い、という条件で引き受けた仕事。とても稀なチャンスだと思っている。大いに暴れてみるよ。」(録画テープに基づかない取材者の主観的印象による超訳)

1989年にAI研究で成果を上げた名門エール大学から突然、当時の大学院生をごっそり引き連れて、ノースウェスタン大学に転出した経緯を尋ねた。著名なAI研究者がなぜ企業内教育の研究に転身(下野?)したのか。

「場所はどこでも良かった。アンダーセンコンサルティング社が、ノースウェスタン大学に来てくれるならば研究資金を準備すると申し出てくれたので、そこへ行くことにした。この頃、とてもひどいことが起きていた。それは、自分の息子が学校に行くようになったことだ。学校の教育では、AI研究の常識が全く無視されていた。自分の仕事は教育の改善にあると思った。AIのプロトタイプをつくっているよりは、教育の現場に役立つコンピュータソフトウェアをつくることに意義があると自分の大学院生を説得して連れて行った。」(録画テープに基づかない取材者の主観的印象による超訳。転出の経緯は、シャンクの著作にも述べられている:例えば、Schank, R.C. (Ed.)(1998). Inside multi-media case based instruction. Mahwah:
Lawrence Erlbaum Associates. Associates. の序文)

「それは行動主義心理学者スキナーが教育へ転身したのと同じ理由でしたね」という応答は避けたが、そう思った。

IDには「人が如何に学ぶか」を説明する理論的な裏づけがあり、それに基づいて学習環境を構築するためのデザイン技法を提唱していく必要がある。シャンクの理論がなぜ魅力的かといえば、AI研究の蓄積に基づいて「学習科学」の研究領域を確立し、実際の教育現場で用いる教材に理論を実装することによって、理論を形成しつつ、実践を変えてきた実績があるからだ。スキナーだけでなく、IDの生みの親ガニェのスタンスにも底通する「歓迎すべき転身」として巨匠シャンクをIDの世界に歓迎したいと強く思った。

●シャンクの退屈なeラーニング、楽しいeラーニング

インタビューに臨むとき、下準備をすることがとても勉強になる。「インタビュー術」(永江朗著、講談社現代新書1627)などを読み返しつつ、取材相手の著作を読み漁って、インタビューの質問をひねり出す。「あなたの研究にとても興味があります。」というだけでは駄目で、その裏づけをさりげなく提示しなくては、紋切り型のせりふしか引き出すことができない。極度の緊張感があり、また成功したときの充実感は他に類をみない程である。

今回の連載を、シャンクの最新作からの引用で締めくくることにしよう。シャンクはeラーニングは退屈だ、このままだと先は長くないと警鐘を鳴らす。次の一文がヒゲ講師の目を捉えて離さなかった。

Can e-Learning be fun? It better be or it won’t be around long.
(eラーニングって楽しくなるの? そうしないとね、さもないと先は長くないよ)

eラーニングを退屈にするための、そして楽しくするためのチェックリストを訳した。参考にして、楽しいeラーニング(そしてラーニング全体)をデザインしましょう。

eラーニングを退屈にするためには、

□ 画面上で多量の文章を読ませよ
□ 会社の上層部による長いスピーチを挿入せよ
□ かわいいアニメーションを学習活動の導入とせよ
□ 多肢選択式の回答を用意して質問せよ
□ 回答が間違っていると告げよ
□ ゲームをやらせよ
□ ゲームで何点取ったかを告げよ
□ 現実的でないシミュレーションをつくれ
□ 受講者の人生に何の関係もないシミュレーションをつくれ
□ 何の感情も駆り立てないシナリオにせよ
□ 受講者にスキルを練習させることを忘れよ
□ 受講者が何も向上することがないようにせよ

eラーニングを楽しく(FUN)させるためには、

□ 文章ではなく視覚的な手段で状況を描写せよ
□ 受講者がミスを犯したときにジャストインタイムにエキスパートからのストーリーを用いよ
□ 受講者が没入できるようなストーリーの一部としてアニメーションを用いよ
□ 受講者に学習活動の選択肢を与えよ
□ まずい選択をした場合には、受講者にわかりやすい「まずい結末」に導け
□ 受講者が職務上に実行する事柄を練習させよ
□ 研修での成功を、実務での成功と同じに定義せよ
□ 受講者自身が遭遇するだろうと認識できるような職務に類似したシナリオだけを用いよ
□ シナリオは「ありえる」と思えるもので、失敗することは良くないと感じられるようにせよ
□ 研修の成果が職務上で実感できるように可視化せよ

出典:Schank, R.C. (2005). Lessons in learning, e-learning, and training.
San Fransisco: Pfeiffer, p.222-223. (鈴木による試訳))

(ヒゲ講師 記す)

しゃべらないインストラクタ

質問者:Aさん 最近 しゃべらないインストラクタを実現したとお伺いしました。一体何をなさったのですか?
Aさん: 「Javaプログラミングの教育にアクティブラーニングを使いました。 講師がどさっと知識をダンプするんじゃなくて、生徒側にしゃべらせるんです。」

質問者:生徒さんはどなたですか。
Aさん:私は企業におりますので、教室の学習者は成人です。」

質問者:担当したコースは何ですか。
Aさん:「プログラミングのことを知っている人、したことのある 新入社員を対象にしたコースで、自分で簡単なJavaコードを書くことが できるようになることが目標です。」

質問者:結果はいかがでしたか?
Aさん:「驚きでした。学習者からの反響の大きさに驚き、ああ、よかったと思うとともに来年に向けて課題も見えきたので気合が入ってます。」

質問者:どんな反応がありましたか、すこし具体的にお願いします。
Aさん:「『自分たちで疑問点を解決するスタイルだったため、深く理解した』
『要点をまとめた発表、 演習を行う自発的な活動で、頭に残り身になった。』
といった受け止め方です。 実に初めての体験です。」

質問者:何がきっかけですか。
Aさん: 「実は もう3年ほど前のことです。鈴木先生からのお勧めで。 時代が変化しているのにいつまでもおんなじような方略でいてどうするんだい、という刺激的コメントに、いつか、やってみようと思っていて、ついにチャンスがめぐってきました。」

質問者:具体的に授業はどんなやり方なんですか。
Aさん:「演習問題を配って、グループで、教科書やマニュアル、ウエブ上の資料、メンバからの情報など総動員して演習問題を解き、結果をクラスで発表します」

質問者:どのような授業の単位で運営しますか、レッスンやユニットなどすこし詳しく教えてください。

Aさん: 「約12時間程度のおおきなセクション、具体的にはプログラミングの実習課題10問から20問からなる演習科目があります。 それをいくつか段階を 追って学習して修了するんです。 演習Ⅰ→Ⅱ→Ⅲといった具合です。
ⅠならⅠの授業を3つのセッションに分けます。 第一のセッションはリサーチプロジェクトです。 演習Ⅰの実習課題を解くために必要な前提知識を調べ学習で獲得します。ただ調べろといっても何を調べてよいかわかりませんから、教科書の中身を区切って、塊ごとに、どんな問いへの答えになっているか質問を書け、とやるんですよ。 先ず、最初のセッションの冒頭では、特に指示しなくても、自然に独立で一人一人、個々の学習者が教科書を読む作業をします。

第二番目が問題練習とそのまとめです。 これはふつうに練習問題を解くことです、しかし三番面に控えているクラス内発表を視野に、自身で解いたことが一体何なのかってことを考えて、アウトプットにしないといけないのです。」
「最初は、リサーチといっても一斉授業に親しんできた学習者集団にはぴんとこないので、期待するアウトプットと称して問いを箇条書きにしたスライドを見せて、ごく簡単にどのような質問種類があるのかを説明します。」

質問者:受講者の方は受講前に、どんな知識、スキル、経験をお持ちの方ですか。
Aさん: 「個人情報保護が行き届いていることもあり、私自身学習者の属性についてそれほど詳しいことは知りません。しかし、大学院および学部においてプログラミングの科目を履修したり、コンピュータの構成要素に中央処理装置や記憶装置があるといった ことを述べることのできる程度、素養がある人であるといえます」
◆反響と課題

質問者:授業の評価方法は何ですか。
Aさん:「修了試験、評価アンケート受講直後、および受講数ヶ月後の3つです。」

質問者:では評価の結果をお聞かせください。
Aさん:  「はい、学習者から寄せられた感想にいろいろな意見があり、私自身大変驚いています。 これほど学習者を刺激するとは予想していませんでした。」

質問者:どんな反響がありましたか。
Aさん:「だいたいつぎの意見が代表的なところです。
・知識詰め込みではなく、グループによる各学習単位毎に要点をまとめた発表、演習を行う自発的な活動で、頭に残り身になった。
・自分たちで疑問点を解決するスタイルだったため、深く理解した。
・ クラスが良い雰囲気で楽しく効果的に学習できた。
・自主的に学べ眠くならなかった。またメンバーと話しあうことにより理解を深められてよかった。
・自らその問題点を解決するというスタイルが自分にとっては新しく理解が深まった。
・ 率先して授業に取り組めたと思う。」

「また、今後の課題を示唆するものとしては、
・正解が複数あるように思えたとき講師からコメントがほしい
・まったく初めてなので授業形式の説明もほしい」

質問者:教育設計上の工夫点は何ですか。
Aさん:「特に変わったことはしてはいません。教育学の原則にあることとしてはごく少数のことです。 課業明瞭・明解(Lesson clarity) の原則に従ったこと、問いを発し問いに答えさせるの方式を採用したことです。また、ちょいとした工夫として、試験問題を教材に変換して学習のターゲットとする方式を採用しました。 また事例研究の設計道具を変形しました。
講師自身にも挑戦課題が豊富に見つかりエキサイティングです。一見かんたんそうな問いで実は答えるのに何十分も話をしないといけないような問いが挙がってくるようになりました。

質問者:いまお話にあった課業明瞭・明解とは具体的に言うと何ですか。
Aさん: 「あっ、それはですね、いまからこれをやるぞーーと知らせてわからせる。目標はこれだ、とはっきりさせる、といったことです。テキストはぺらぺらの薄い指示書、演習問題書です。 学習者にとって、『わたくしはこの教室で今から何をするんですか』への答えだけ書いてある。」

質問者:「問いを発し問いに答えさせるの方式を採用した」とは誰が何をすることをおっしゃっていますか?
Aさん:「生徒側です。」

質問者:自問自答ですか?
Aさん: 「というかですね、読みの技法につぎのような話があります。積極的読みということです、どうも、学習技法の領域になっちゃうのかもしれませんけど。
いかなる問いにこたえてくれている論文か、といった姿勢で問いを発しながら読むというやつです。これを使えば、受身で講義を聴かされるような退屈さからも開放されんじゃないか。 着想はそこです。読みの目的を定めた読み(リーディング)を訓練するというはなしの応用です。」

質問者:どういうことをなさるんですか、すこし具体的にお願いします。
Aさん:「特定の章が、どんな質問への答えを提示しているか、質問を読者側で作れ、書け、導けと求めます。これをグループのメンバ5人から6人で共同作業します。リサーチプロジェクトと呼んでいます。 質問を挙げたら交換して答えを出し合いなんらかの基準で10個選択させ、グループ内とクラス全員に対して発表してもらいます。進めるうちに、回を追って教室にやる気のオーラが漂ってきて、すこししびれるようなうれしさを感じました。実際、質問もじょうずになってきて、。。。の意味でわからないよ、といった会話が聞こえてきて、それに対して、説明する人(受講者)が、 説明の方略をパッと切り替える場面なんかあって、アメリカのインストラクタがやるような方略の選択などに感動しました。」

◆気になる成績

質問者: ところで、成績のほうはどうなんですか。
Aさん: 「ああ 良い質問です!」(笑)
「全員が修了試験の合格基準点をクリアしています。特に、驚いたことはケラーFred S.のほうのケラーが文献に示している成績分布に似た傾向を示します。特に、学習段階の初期における基礎部分については達成度の高い人ほど相対度数の大きな増大型の三角分布を示します。ここでは平均点やそこからどれだけ隔たりあり なんてことはまったく問題外です。ほとんどの人が合格基準を越えるがんばりと結果を呈しているんですからね。しかも、その結果は、点数だけでなく、。。。できた、よかったという彼・彼女らの反応が直に伝わってくる、これはインストラクタ稼業をしていてこれ以上の喜びはありません。

◆事例研究の設計道具を変形して利用した?

質問者:「事例研究の設計道具」とは また妙な表現ですね。具体的にどのような内容ですか。
Aさん: まあチェックリストのようなものです。ジョブ・エイドです。インストラクタは、教室にいて学習者の活動を観察します、そして、このジョブエイドに記述しているフレームに沿った動きになっているかときどき判断します。セッションの到達目標がチームで共有できているかどうか、リーダ役の学習者から出て来る質問内容からある程度わかるんです。

私は教育運営をデザインする道具である、として使えそうな定石を、雑多なもんですがあつめては保存しておいて、必要なとき取り出して使います。それで、物忘れもするから、番号と名前をつけて道具箱と呼んでパソコンのフォルダに入れておくんですよ。」と言うとAさんは、資料束の中からつぎの内容が書かれている紙バージョンを「能書きなし」といって取り出した。

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4005実施道具: 事例研究会参画の手引き
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演習のチームを自分たちで組織する
ゴールを確認する
課題は何であるか、理解を共有する
最初に質問について独立で答えを考える
解決への道筋を自分たちで考え、可視とする
演習活動にもマイルストーンリストを作る
期待するアウトプットの形と量に理解を共有する
チームリーダはファシリテータとして進行をリードする

質問者: あれ、ここに講師とか先生ということばがありませんが?
Aさん: 「はい、参加者、生徒が主人公なんです」

質問者: このような手引きの出所は何ですか?ご自身で作ったものですか。
Aさん:  「いいえ、この手引きは ASTDハンドブックや緑本のネルソンから内容を頂戴しています。流行語でいうとパクリというやつですね」

◆試験問題を教材に変換して学習の標的とする方式を採用した

質問者: 教材の演習問題について、詳しくお聞かせください。
Aさん: 「練習問題の作り方に特徴があります。目標の知識、スキルが身につくよう目標重視でいきます。」
「熟達したインストラクタの作成した総括的評価試験問題をもらいます。それをつかって、学習の標的となる練習問題に変換していきます。 学習径路に沿って配置します。」

質問者: 径路に沿ってとは何ですか?
Aさん: 「学習の順序にしたがってです。リサーチプロジェクトから演習Ⅱ、演習Ⅱから演習Ⅲの順に、使います。」

質問者: 変換するというと、出て来るもの結果はどうなるのですか。
Aさん: 「作る練習問題について意図的に、質問技法を応用します。」

質問者: というと何ですか?
Aさん:「ええと、質問種類を使い分けます。ちょうどコンピュータシステムの仕事で アナリストがお客様から 要求を聴き取るときに、質問を使い分けるということの応用のようなものです。」

質問者: のようなもの? もう少し詳しくお願いします。
Aさん: 「入門段階から応用段階の順でお話します。 *入門段階の演習書に入れる質問の特徴です。換結果の練習問題が限定質問になるよう、 たとえば、~は、。。。に必須ですか、といった形に書き換えます。
例)練習
(1) if文の括弧内の条件式の型は何でなければならないですか。
(2) メソッドの戻り値の型定義は必須ですか。」

質問者: 一見、シンプルでものすごく簡単そうに見えますね。こんなのでいいんですか?
Aさん:「大変よい質問です!」 (苦笑)
「これが 発表となると 単に答えは。。。ですでは済まないんですよ。なぜ、その答えが 解であるかのわけ、 何にもとづいてそう主張するか問われます、いや、人からとわれなくても自ら問うわけですね。 このあたりが、言われてみるとあたりまえなんですが、いいことなんです」

(ここで少し話しが脱線)
「単に、『列挙してください』と故意に単純な質問を入れると、結果、列挙したことがらの定義や意味、使い方、関係などを指示せずとも彼女・彼らは質問しあい、質問の答えは何であるかテキストの記述から獲得しようと対象に集中していきます、この行動過程で知的好奇心を刺激します。 尋ねられたことに答えようとして実験を始めるグループ、メンバも現れて、気合の入り方といい、のめりこんでいく姿勢をかたわらでみていると、つくづく人間、ひとつのことに熱中するすがたってすごいなあと、非言語コミュニケーションっていうか、なんだかことばでないものが伝わってきておそろしいくらいでした。 」

(話しをもとに戻します。)
「*中間から課程終盤の演習書に入れる質問の特徴です。学習段階が進むにつれて、練習質問を包括的理解を要する質問に変換します。 要素間の関係について十分にわかっていないとプレゼンテーションできません、難しくなります。
例)問題 javaプログラミングⅢ演習のプログラミング課題 問題番号15の解(所在は http://www.java.。。。。/。。。。)についてUMLシーケンス図を作成して、コードと併せ説明してください。」

◆講師自身も挑戦課題が見つかり研究面に活性化
オブジェクト指向設計、開発の実践演習へと人間の社会活動に関連したトピックスが増えるにつれ、問いを挙げさせることの奨励により手ごたえのある質問が矢のように飛んできます、とのことです。たとえば、
(1)開発計画の流れをおしえてください
(2)要求定義はどの程度の詳しさで記述しますか
情報系企業教育部門勤務 豊永正人

Merrill氏のワークショップ参加を通して

6月6日、ハワイにあるブリンガムヤング大学で行われたGCCCE2005カンファレンス(URL:http://cito.byuh.edu/gccce2005)内のワークショップに参加した。このカンファレンスは、中国系の人達のためのITを用いた教育がテーマであり、今回は9回目の実施だった。私の目的はこのカンファレンスとは全く関係がなく、カンファレンスの一番初めに行われた、メリル氏のワークショップをこの目で体験するためである。メリル氏と言えば、CDTやITTなどの理論を提唱してきた教育工学の権化である(参考IDマガジン第5号ID理論紹介第一弾 http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id_magazine/archives/2004/09/1instructional.html) 。
今回の参加は、メリル氏へのインタビュー(上記、ひげ講師記事参照)の流れから得たもの。これを機に、メリル氏と直接会話ができたことが最大の収穫であるかも知れない。

メリル氏が行ったワークショップのタイトルは、「eラーニング どのようにeが効果的であるかを測れるか」であった。本人が携わってきた教材や、それ以外の教材のサンプルを紹介しながら、よい例と悪い例を例示(demonstration)しながら、メリル氏がまとめた第一原理(First principle) と絡めながら解説していくものであった。さすが、第一原理の重要素のひとつ、例示をうまく使っているなと関心。
第一原理の紹介は、IDマガジン第10号 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(10) に掲載されているのでここでは省略します(みなさん、復習です(笑) )。サンプル数は、3時間のワークショップ内では説明できないぐらいであったが、それらの情報はすべてCD-ROM に焼いて配布してくれるというサービスでカバーされていた。

全体を通して感じたことは、第10回で紹介したASTD主催のe-ラーニングインストラクショナルデザイン認定プログラム (参考http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id_magazine/archives/2005/04/22/index.html#000064)と類似している点が多かった点―サンプルを用いた紹介の仕方やそのサンプルにシミュレーションやシナリオなどの要素が含まれていることである。参加者の中には、ライゲルース氏のお弟子さんだという中国系の教授がいた。メリル氏の教え子がライゲルースであり、この学問が世界で広く学ばれているのだなと会話を聞きながら感じた。

話しは変わるが、メリル氏との会話内で「現在、日本人の学生を教えているかどうか」とたずねた。学部生に日本人女子学生が一人いるらしいが、それ以外には特にいないらしい。ユタ州立大学での教え子をインストラクショナルデザイナーとして連れてきたり、今回のカンファレンスのことも絡めて、ユタ州立大学博士課程の学生を数名ハワイへ連れてきたりしているが、中国系の人は何人かいてもその中にも日本人はいなかった。ワークショップ以外に感じることが多い、米国訪問となった。
岩手県立大学 根本 淳子

近々行われる、イベントは?

○2005/06/24 日本教育工学会 全国大会(9/23~) 課題研究発表申込書・プロポーザル提出〆切
URL:http://jset2005.is.tokushima-u.ac.jp/

○2005/07/9 日本教育メディア学会2005年度第1回研究会 (大阪市立大学・文化交流センター)
「放送教育の伝統と刷新」
URL:http://blog.goo.ne.jp/jaems_2004/e/9615e2432fe430d4885848e24d496f8c

○2005/07/20-22 e-Learning World 2005 (有明・東京ビックサイト)
URL:http://www.elw.jp/
2005/07/27-29 ヒューマンキャピタル2005 (東京国際フォーラム(東京・有楽町))
URL:http://expo.nikkeibp.co.jp/hc/

○2005/07/29 日本教育工学会 全国大会(9/23~) 自由研究原稿提出〆切
URL:http://jset2005.is.tokushima-u.ac.jp/

○2005/08/25-26 教育システム情報学会30周年記念全国大会(金沢学院大学)
URL:http://jsise2005.kanazawa-gu.ac.jp/

さいごに・・・

IDマガジンに執筆してくださる方を大募集しています。実践紹介・理論紹介・疑問に思っていること・イベントなどの参加報告など、是非ご意見ください。ちょっとでも、書いてみてもいいなぁと思われる方、とりあえず下記のアドレスへお問い合わせくださいませ。また、ご本人が企画されているイベントなどを紹介したいと思われている場合も掲載したいと思います!
なお、連載「シリーズID理論」は都合によりお休みします。

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本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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