トップメールマガジンIDマガジン第51号

IDマガジン第51号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2014年02月09日━━━━
<Vol.0051> IDマガジン 第51号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
IDマガジンのご愛読ありがとうございます。

2014年になり1か月がたちましたがみなさんいかがお過ごしでしょうか。
今回のIDマガジンも、盛りだくさんでお送りいたしますので、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

今回のコンテンツメニューはこちら↓
《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(47)
2. 【ブックレビュー】教育目標をデザインする―授業設計のための新しい分類体系―
R. J. マルザーノ・J.S ケンドール 著 黒上晴夫・泰山裕 訳
3.【キャリアレポート】教授システム学専攻5期修了生 竹岡 篤永さんのインタビュー
4. 【報告】「第12回 まなばナイト」実施報告・第13回開催のお知らせ
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(47)~恩師の大往生:反転授業の温故知新~

ヒゲ講師の新年は二つの訃報で始まった。一つは大学時代の先輩だった東大名誉教授の突然の死。62歳の若さであり、全くの突然の知らせに茫然とした。最近は年賀状だけのやりとりだけになりご無沙汰していた人だったが、ヒゲ講師との年の差は7つ。同時代に同じ研究室に所属し、「おまえの訳した英語は順序が逆だ」とか、「まだこれも読んでないのか」などと、留学前のヒゲ講師を鍛えてくれた人だった。そう言えば、大学院の演習科目で学内の新しい施設の紹介ビデオを撮影した時には、カメラワークの手ほどきも受けた。窓に反射して映る真っ白で新しい建物をタイトルバックにして音楽が始まると、その窓を開けて施設を見る役者(=同級生が出演)にズームインするなんていう粋な演出も彼のアイディアだった。おかしなもので、そういう記憶が芋づる式に蘇る。もう30年も前の話ですが・・・。

もう一つの訃報は、これも突然でした(訃報が突然なのは普通ですが・・・)。でも誰から知らされたというわけでもなく、ネットサーフィンしていて偶然見つけたというのは初めての経験だった。その人の名は沼野一男。御歳90歳と2カ月の大往生で、昨年3月に4日間の予定で入院した3日目に他界したとのこと。入院までは煙草もお酒もやっていた点でも大往生で、実に先生らしい。遺言は「誰にも知らせるな」だったということで、七夕の頃になってようやく近隣に住んでいる近しい人たちだけで「偲ぶ会」をやった。沼野先生のことを調べていて、検索中にその参加者の一人が書いたブログに遭遇し、「まさか」とは思ったが、先生の遺影と献花がある写真もあり「本当なんだ・・・」と受け入れざるを得なかった。

虫の知らせか、いつものことか、SEA新春フォーラムで「反転授業とインストラクショナル・デザインの役割について」という講演を頼まれて何を話すべきかを考えていたときに浮かんだのが、沼野一男の「オーダーメイドの講義」。反転授業が流行っているが、もう1980年代からやっていた人がいますよ(ビデオじゃなくテキストで、でしたが)。その人に影響を受けて私も『教材設計マニュアル』にしゃべりたいことはすべて書いて事前に情報提供し、予習範囲の小テストから始める「講義」をしてましたよ。そういう例を紹介し、IDの系譜に位置づけて「反転授業」なるものを相対化するのが私の役割でしょう、と思った。

反転授業は、時流を作った功績大なれど、中身は極めて常識的だ。そもそも今の授業方法=一斉授業・講義形式が非常識で、この点はシャンクも「講義は1500年代には意味があったがいまだにやっているとはほとんど狂気の沙汰だ」と言ってますよ。反転してもライブでもビデオでも講義は講義(ライブ感がなくなる代わりに巻き戻しや早送りができるようになりますが)。ひっくり返すことに意味があるのではなく、基礎知識の修得で終わらせないこと、問う力を育てること、ひいては自律的な学習者を育てることを目指してこそ意味がある。寺子屋だって、公文方式だって、この研究会の伝統CRI技法だって学ぶべき先例が多くありますよ。そんなことを発言したが、「ハト豆」だったかな・・・。

沼野先生には留学から帰ってからとてもお世話になった(留学前も著作には学んでいたが、二人称の関係になれたことは家宝です)。ご自宅で毎月第三火曜日に開催されていた「学習科学研究会」にお邪魔して、多くのことを学ばせてもらった。JAET鹿児島祁答院大会では「データもない段階で発表して何になる」とお叱りのコメントをもらったことも今となっては良い思い出である。それだけでなく『教育の方法と技術』(学文社、1989年)に5項目を分担執筆する機会を頂戴したり、『教材設計マニュアル』とその前身の講義テキストには緻密なコメントも頂いた。ヒゲも沼野先生から直伝された「成功的教育観」や「教育のパラドックス」を後世に伝えるべく、著作や公開科目「基盤的教育論」等で紹介した。でも、何よりも、学生や卒業生だけでなく、先生の門戸を叩く実践者や研究者の卵をどのように受け入れ、親身に指導して叱咤激励するか。そのイロハを惜しげもなく教えてくださった人だった。それに少しでも近づくべく、ヒゲはまだまだ修行中であります、先生。

反転授業が流行っている今日だから、沼野の「オーダーメイド」も見直されているかな、と思ってネット検索した結果として発見したのが、とても残念ではあるが「偲ぶ会」のブログだった。それでも、沼野先生の下で修士論文を書いて、そののちヒゲのところで博士論文を書いた共通の弟子とともに慰霊に献花できたし、そして和子さん(奥様)に久しぶりにお会いして懐かしい話ができたことなど、他界されてもなお恩師を身近に感じることができた。この学恩をしっかり後世に伝えていかなければ、との覚悟を新たにしたのでした。

沼野先生のことは、この連続日誌にかつて一度だけ書いたことがある。それを再掲して読者の皆さんを名著に誘いたいと思う。合掌。
ーーーーーーー
ヒゲ講師が尊敬して止まない沼野一男(いちお、と読む)先生は、毎回同じことを話して退屈しないように「オーダーメイドの講義」を実践されてました。教科書を読んで質問を書いてくること。これが講義出席への条件で、下手な質問は「怠け者の質問」と評されて欠席扱い。沼野先生は、毎回の講義でどんな質問が登場するかを楽しみに講義に出かけたのでした。講義は質問への回答の時間。結構緊張するでしょうね。退屈などしている暇もない。「即答できないので次回までに回答を用意してくる」と切り抜けざるを得ない場面もあったとか。この試みを通して沼野先生が一番嬉しかったのは、学生は鍛えれば鋭い質問ができるようになるということと、学生が学びたがっているのを実感できたこと。詳細は、名著「情報化社会と教師の仕事」(国土社、1986年)をどうぞ。
ーーーーーーー
出典:ヒゲ講師のID活動日誌(12) ~あぁ困ったどうしよう:ねたを仕入れるのが大変ですの巻~ IDマガジン第13号
http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~idportal/?p=134

(ヒゲ講師記す)

参考リンク
鈴木克明(2007)GSIS公開科目「基盤的教育論」【第13回】教育学の2大潮流(3)教育のパラドックス~はじめに~
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/4Block/13/13-hajimeni.html
鈴木克明(1995)成功的教育観を堅持するために(第11章)『放送利用からの授業デザイナー入門~若い先生へのメッセージ~』財団法人日本放送教育協会
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/ksuzuki/resume/books/1995rtv/rtv11.html
鈴木克明(1989)沼野一男・平沢茂編著(1989)『教育の方法・技術』学文社、分担執筆(5項目)。
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/ksuzuki/resume/books/1989.html

【ブックレビュー】教育目標をデザインする―授業設計のための新しい分類体系― R. J. マルザーノ・J.S ケンドール 著 黒上晴夫・泰山裕 訳

本書はブルームのタキソノミーの改訂版として出版された書籍「The New Taxonomy of Educational
Objectives」の翻訳版である。ブルームの学習目標の分類体系と聞けば、教育関係者にとってはあまりにも有名なもの。本書は、2001年に第一筆者によって出版された著書の継続版にあたり、ブルームの分類体系を進化させ、新しい分類を提案したものである。

本書は6章構成で、ブルームのタキソノミーのおさらいから始まり、マルザーノとケンドールの改訂版タキソノミー(新分類体系)がブルーム版の弱点をどのように強化して提案したものであるのかを、その他の分類体系との比較を通じて解説されている(1章)。2章以降では、新体系の各要素について説明されており(2-4章)、これらを教育目標に活用していくための解説の5章、カリキュラムレベルでの検討に触れた6章と続いている。ページ数は180ページ弱であるが、予想通り中身はたっぷりという感じである。

そもそもブルームのタキソノミーが何だっけ?と思われた方は、教授システム学専攻の公開講座のコンテンツで簡単におさらいしておくとよいでしょう。ブルーム版は、教育目標を認知的領域、情意領域、精神運動的領域の3領域ごとにレベル分けしたものである。一般的に知られるのは6つの認知プロセス(知識・理解・応用・分析・統合・評価)に分かれた認知的領域である。

提案された新分類の特徴をブルーム版との比較からまとめると、ブルーム版の認知的領域で指摘されていた上記6つのプロセスの階層構造の見直し、メタ認知の追加、そして知的・情意・精神運動の3領域を統合させたことである。

その新分類体系とは、6つのカテゴリーで構成される「処理」に関する次元と、3つの領域を持つ「知識」に関する次元から構成される二次元モデルである。「処理」のレベルはレベル1:取り出し(認知システム)、レベル2:理解(認知システム)、レベル3:分析(認知システム)、レベル4:知識の活用(認知システム)、レベル5:メタ認知システム、レベル6:自律システムの6階層構造である。「知識」の領域は情報、心的手続き、精神運動手続きである。処理にあるレベル1から4がブルームの認知的領域に相当し、その上のレベル5に置かれたメタ認知は新分類体系で新規追加されたもの、そして自律システムがブルームの情意領域に相当する。一方の知識に関しては、まずブルームでは認知的領域の中に知識と知的操作が混在していたものを、本分類体系では、知識だけを取り出し3つの種類に分けた。心的手続きとは手続き的知識に相当するものらしい。そして精神運動手続きはブルーム版の3番目の領域に相当するものですべての処理に含まれるように変化した。6つに分割された処理は、宣言的知識(何を)に相当する情報と、手続き的知識(どのように)に相当する心的手続き、そして身体を動かす精神運動手続きの3種類の知識ごとに行われる。よって、どんな知識に対するどの処理を学ばせたいかをこの二次元モデルで確認・整理していくことができるという。本書にはこの二次元の図が書かれているので是非直接手にとってご覧いただければと思う(13ページまたは63ページ)。書籍に書かれている図だと、処理と知識の6×3の関係が分かりにくく、もうちょっと分かりやすい表現の仕方があるのではないか、と思うが、そう思うのは新分類体系の理解が不十分なためかもしれない。

本書はマルザーノとケンドールによる提案であるが、筆者らが初めて新分類体系を提案した2001年には、ブルームの教え子であったアンダーソンらによっても分類体系がまとめられている。ブルーム版の抱える課題に対して解決しようという目的は両者とも同じであるので、共通点がいくつか存在する。例えば、メタ認知に関する視点を追加したところは同じであるし、ブルーム版の中にある知識には知識そのものと認知過程の両方が含まれていたことを分類させようとしている点などもそうである。しかし、認知・情意・精神運動の3領域を組み込んだ点や、メタ認知の位置づけ、そして学習者が新しい課題に取り組むかどうか、取り組むならどれぐらいの意欲を持つかといった自律システムもコントロールすると考えメタ認知システムの上位に自律システムを位置づけた点は彼らの新分類体系の特徴であろう。

新分類体系の魅力は大きい。しかし「授業実践に落とし込みやすいのはガニェの学習成果の5分類」と言われていた指摘はまだ解決されていない様な気がするが、気のせいだろうか。個人的に5分類の利用年数が長いだけだからかもしれませんね。新分類体系の利用者が増え、また本体系を使いやすくするための方法などが研究者や実践者によって多く増えてくることを期待したい。

参考文献
教授システム学専攻の公開講座 基盤的教育論 ブルームのタキソノミー
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/2Block/04/04-1_text.html

(熊本大学大学院 教授システム学専攻助教 根本 淳子)

【キャリアレポート】教授システム学専攻5期修了生 竹岡 篤永さんのインタビュー

熊本大学 教授システム学専攻修了生の高橋です。修了生の近状報告をするこのコーナーでは、修了生のみなさんの活動やお仕事についてインタビューしたものをお届けします。
今回は、GSIS5期修了生で、この1月から高知大学総合教育センターの教員になられた竹岡篤永(たけおか あつえ)さんの登場です!
ーーー
■竹岡さんのキャリアについて教えてください。
まず、GSIS以前のことをお話します。大学卒業後はソフトウェア開発の仕事していました。働く中でわかりやすい伝達に興味を持ち、思い切って仕事を辞めて大学院に行くことにしました。その大学院では、おばあさん同士の日常会話や自動券売機での切符購入の様子など、人と人、人とシステムとのコミュニケーション・インタラクションの機能についての基礎研究をしました。でも、その分野では仕事を見つけることができず、しかたがないので、IT支援の仕事などをしながら転身について考えていました。そんなとき、ハローワークのページでGSISを見つけました。2009年7月14日にeラーニング連続セミナー「eラーニングと生涯学習」があるという情報を見て、聞きに行くことにしました。eラーニングというのは、個人で学びの機会を作って提供できるんだということを知りました。その後、GSISを受験し、無事合格し、修士の学生になりました。
ここからGSIS以後です。GSISを修了してからも引き続きIT支援の仕事をしていました。学んだからすぐに転職できるというわけでもありませんからね。ただ、縁があって(縁としか言いようがないのですが)GSISの非常勤講師をする機会に恵まれました(今も引き続いています)。ストーリー中心型カリキュラム(SCC)に関する科目の非常勤講師です。この仕事は、本当にとてもよい*リアル*インターンの機会だったと思います。GSISのSCCではM1の後期、熊本大学のeラーニング推進機構という組織でインターンとして働くという設定があるのです。そちらは仮想で、非常勤講師はリアルなインターン、そんな気がしています。もちろんGSISで学んだことがそこにいかされています。それだけでなく、立場を違えることによって学ぶことが大きいと感じています。教える側がいちばん勉強になるって、よく言うじゃないですか。まさにそんな感じですね。また、チームで仕事をすることの楽しさ、重要性を感じさせてもらっています。先生、教員って、一人で教えることが多いですよね。でも、よりよい教育を目指すのなら、チームが大切だということを体験させてもらっています。そしてその*リアル*インターンの仕事を最大限アピールして、転職を果たすことができました。

■GSISで学んだことは、現在、役に立っていますか?
今の仕事は1ヶ月前に始めたばかりで、まだ何がどうやらよくわかっていないので、具体的にどうとは言えません。機会があれば、レポートしたいと思います。でも、とにかくeラーニングの仕事なので、役立てるしかありません。ただ、「eラーニング=ビデオ配信」みたいなイメージが強いので、それをなんとか変えたいなと思っています。だって、わたしが学んだeラーニングにはビデオ配信じゃなかったのですし、学んだことを役立てるとしたら、やっぱりそれ(ビデオ配信)じゃないでしょ。自分がやってきて効果を実感したことをベースに、それを仕事に役立てて行きたいじゃないですか。ビデオ配信が一つの手段に過ぎないこと、もっと言えば、eラーニングも一つの手段に過ぎないことから始めたいと思っています。

■現在興味があること(これから学んでみたいこと、やってみたいこと)を教えてください。
身近なところに学びがあふれていると思っているので、いつか、日常に埋め込まれた学びの機会を統合できるような仕組みが作れたらいいなあと思っています。
例えば、タレントが1週間、いろんな職を体験するという番組があったでしょ。お菓子の企画を考えたり、グラウンドホステスになったり。その番組を見て、普通なら5年とか10年とかかかって経験するようなことを1週間という短期間で経験するって、リアリティあふれる架空の設定と言えるんじゃないかなって思いました(つまり、リアルではないということです。だって、現実世界では1週間では体験できないわけなんだから)。GSISで提供しているストーリー中心型カリキュラム(SCC)みたいだ、と思いました。SCCでは5年10年かかって体験するようなことを半年間で体験できるようになっているんです。似てるでしょ。
こんな風に、学校や大学という制度以外の学びにもっと光を当てて、それをキャリアにつなげていくことを支援できるような、そんな新しい仕事を作って行けたらいいと思います。ひょっとしたらポートフォリオなんかにその可能性があるかなって思います。制度での学びも、制度外の学びも、どんどんどんどん蓄積して、学びを振り返って、その学びそのものにきちんとした価値を与えて、整理して、公開する。ポートフォリオにはそういう可能性があるんじゃないかなって思います。この考えに賛同していっしょに仕事をしてくれる人を、この場で募集します!(っていうか、こういうアイデアを話し合える場があるといいですね。)

(熊本大学 教授システム学専攻 修士5期修了生 竹岡篤永)
(インタビュー担当・文責:教授システム学専攻 博士2期修了生・同窓会事務局長 高橋暁子)

【報告】「第12回 まなばナイト」実施報告・第13回開催のお知らせ

2013年12月14日に開催した「第12回 まなばナイト 年末スペシャル」は、
『インストラクショナルデザインを教授する「教授システム学専攻博士前期課程」のインストラクショナルデザイン』
というテーマでした。
eラーニングの専門家をeラーニングで育成する教授システム学専攻は、どのようにデザインされたのか。また成果はどのように測られているのか。今回は開催母体でもあります、熊本大学大学院教授システム学専攻のデザインについて、専攻の専任教員である根本淳子先生、鈴木克明先生の2人をお迎えしての開催となりました。
今回もワークショップ形式で、IDのこと、教授システム学専攻のことについて、各参加者のみなさんとともに考えていきます。導入ワークとセッション1・2の3部構成で進行しました。

<導入ワーク>:
久々の鈴木専攻長によるオープニングと導入ワーク。何を期待しての参加か、こうあるべきと考えていることは何かの2点、お題が投げかけられ、個人ワーク、グループディスカッションしてモヤモヤを高めます。

<セッション1>:「教授システム学設立の意図とそのデザイン」
教授システム学専攻を構築してきた立場から、全体像を根本先生が提示されました。

まず専攻設立の経緯をインタビューした形式で中野先生のビデオメッセージが流されました。
次に、インストラクショナルデザイナーとしてどのようなプログラムにしようと考えたのか、スライドと配布資料で示されました。

配布資料:「eラーニング専門家養成のためのeラーニング大学院における質保証への取組:熊本大学大学院教授システム学専攻の事例」
http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~idportal/wp-content/uploads/no6-04tokusyuu03.pdf

論文に掲載された図表2点、表1のコンピテンシーはサイトにも掲載され学生もしばしば目にし修了後も意識しているものですが、表2シラバスガイドラインはあまり知られていなかったかも知れません。

設立から時を経て、折々にプログラムの改善を重ね、その経過や成果は関係学会や研究会でも報告されてきましたが、そのデザインの意図を学生に示し伝えることはしていなかったと振り返ります。
またそれらは、これからデザインをしていく学生にとっても、重要なリソースの一つであるはずだと考えたと述べられました。

そしてミッション、ビジョン、バリューとデザインポリシーに整理したものが発表されました。

ワーク1:GSISのミッション・ビジョン・バリューの改善
ワークのポイントとして示されたのは、
1.もっと伝わりやすく、分かりやすくするためには?
2.学びのデザインポリシーについても、改善提案をしよう
の2点。ワイワイガヤガヤとグループでディスカッションし、発表しました。

グループにはOBOGも混じり、また修了時期の違いからカリキュラムの相違もあって様々な意見が出たようです。

<セッション2>:学生の立場からみた教授システム学のデザイン
提供側の視点からのワークに続き、修了生2名からの発表がありました。

ケース1:高橋暁子さん(二期生)
「GSIS黎明期に学習者として感じたこと」として
・自立した大人としての扱い
・最小限の人的支援
・学習計画は自分で立てる
・効率的な学習の推奨
・協調学習の推奨
を挙げて、体験を振り返り紹介されました。

ケース2:甲斐晶子さん(四期生)
甲斐さんは、「5つのポイント考えてきました」として、デザインのポイント分析を披露されました。
1. 目的地と現在地を意識させる
2. 本物を体験させる
3. 自分で決めさせる
4. 甘やかしすぎない
5. デザインを決めない

ワーク2:まなびのデザインポリシーに学習者の視点を追加しよう
二人の発表を受け、グループでデザインポリシーの改定案、ミッション/ビジョン/バリューの見直しなどについて話し合いました。

ICTを活用するのはもちろん、リアルな関わりもゴールに向かうのにとても重要。カリキュラムのデザインに加え、学習活動がデザインされていることや、それらの方向性がまとまっていることが支えになるだろうことを感じた今回のまなばナイトでした。

【次回「第13回 まなばナイト」開催のお知らせ!】

2014年2月22日(土)17時開催の「第13回まなばナイト」は、
「なぜ続けられないのか。運動・食事教育プログラムを事例としたモチベーションデザイン」
です。

新年が始まりました。皆さんそれぞれ新年の抱負を立てたことと思います。
ところが、
「今年こそ毎日ジョギング!」
「今年こそメタボを直す!」
「今年こそ5kg減量!」
など、運動や健康に関する決意をしたものの、もう脱落しかかっている方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

今度こそやろうと思ってもなぜ挫折してしまうのか、そしてそれを防ぐための動機付けのデザインはどうあるべきか、その鍵を知りたいと思っている方は多くいらっしゃると思います。

そんな皆さんに朗報です。

今回は、ヘルスプロモーションが専門で、運動・食事教育に関する動機付け設計のプロでいらっしゃる都竹先生がご登壇されます。
経験談ではなく、インストラクショナルデザイン等しっかりした理論的観点も取り入れた運動・食事等の健康プログラムのモチベーションデザインについて話されます。

皆さんが関わる教育設計の参考になる点がきっと見つかることに加え、皆さん自身の健康ライフも変えるかもしれない一石二鳥のセッションです。お楽しみに!

日時:2014年2月22日(土) 17:00~19:30(16:30受付開始)
会場:富士通ラーニングメディア「CO☆PIT」 品川インターシティB棟10階
定員:申込み先着 20名様
主催:教授システム学専攻同窓会、後援:サンライトヒューマンTDM

お申し込み・詳細はこちら:
http://www.manabanight.com/event/manabanight13

(まなばナイト実行委員・熊本大学教授システム学専攻 修士1期修了生 加地正典)

【イベント】その他、近々行われるイベントは?

2014/02/22(土)
「第13回 まなばナイト:
なぜ続けられないのか。運動・食事教育プログラムを事例としたモチベーションデザイン
@富士通ラーニングメディア 品川ラーニングセンター
http://www.manabanight.com/event/manabanight13
2014/03/01(土)
日本教育工学会研究会「教師教育と授業研究/一般」@愛知工業大学
http://www.jset.gr.jp/study-group/files/20140301.html
2014/03/15(土)
日本教育メディア学会 2013年度第2回研究会@岩手県立大学
http://jaems.jp/meeting/
2014/03/15(土)
教育システム情報学会2013年度第6回研究会
「新しい教育を切り開くICTの利用実践・開発研究/一般」@名古屋学院大学
http://www.jsise.org/society/committee.html

★ 編集後記

今回のIDマガジンいかがでしたか?
温故知新、今の流行は、先人の方々の知恵と努力の結晶であるとしみじみに思うところであります。物の生まれを知ることで本質を悟るといいますか、深い学びには深い知識が必要ですよね。

巷では、冬のオリンピックが始まり、今年一番の寒さで日本の広範囲で積雪・・・というような報道がなされ、まさに冬一色という感じですね。私の住む長崎でも寒い日々が続いているのですが、ふとみると梅が満開で咲いておりました。厳しい中で咲く花を見ながら、自分ももっと頑張らねばと思う今日この頃です。皆様におかれましても、実りの春が来ることをお祈り申し上げます。

今年もIDマガジンをどうぞよろしくお願いいたします。
では、また次号でお会いしましょう。

よろしければ、お知り合いの方に、Webからの登録をお勧めしてくださいませ。

また、皆さまの活動をこのIDマガジンに載せてみませんか?
ご意見・ご感想・叱咤激励など常時お待ちしております!
【 mail to: id_magazineあっとml.gsis.kumamoto-u.ac.jp】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※このメールは、メールマガジンの購読を希望するとお答えいただいた方・
IDマガジンWebページより購読の申し込みをして頂いた方に配信しております。

※ IDメールマガジンの登録と解除はこちらから↓
URI:http://www2.gsis.kumamoto-u.ac.jp/~idportal/?page_id=6

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
編 集 ID マガジン編集部 井ノ上 憲司・根本 淳子
発 行 熊本大学 大学院社会文化科学研究科
教授システム学専攻 鈴木 克明
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/
++++++++++++++++++Copyrights(c) id_magazineあっとml.gsis.kumamoto-u.ac.jp+++

IDマガジン購読

定期購読ご希望の方はメールアドレスを登録してください。

定期購読の解除をご希望の方は以下からお願いします。

IDマガジンに関するお問い合わせは、id_magazineあっとmls.gsis.kumamoto-u.ac.jpにお願いします。(あっとは@に置換)

リンクリスト

おすすめ情報

教授システム学専攻の公開科目でIDの基礎を学習できます。おすすめ科目は以下です。

謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

このページの
先頭へ