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IDマガジン第61号

皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。

熊本での震災に被災された方々には心からお見舞い申しあげると共に
復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈りいたします

今回もどうぞ最後までお付き合いくださいませ。

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《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(57) ライフラインとしての情報ネットワーク
2. 【報告】熊本大学教授システム学(以下GSIS)設立10周年記念同窓会特別イベント『インストラクショナルデザイン』修了後にどう生かす?
3. 【イベント】第23回まなばナイト@名古屋のお知らせ日々の実務での動機づけ ~やる気を引き出す工夫を探る~
4. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(57) ライフラインとしての情報ネットワーク

ヒゲ講師は、慣れない英語による遠隔プレゼンを無事終えて、安堵していた。アジアオセアニア地区からの招待講演者として、第21回を迎える遠隔国際会議(TCC:http://2016.tcconlineconference.org/)に招かれた。何を話そうかな、と考えた末に、創立10周年を迎えた熊本大学の大学院で取り組んできたストーリー中心型カリキュラムのことを紹介しようと思った。この遠隔国際会議に集う人たちの多くが遠隔教育関係者だと聞いたからである。2008年に国際会議で話した時に使ったパワポスライドも使えるし、準備も楽だと思ったからでもあるが、節目にもう一度振り返っておきたいとも思ったし、どんな反応があるだろうか、と楽しみでもあった。チャット欄には、質問とともに「面白い」「先進的だ」というコメントも書き込んでもらえ、工夫してやってきたことが少しは伝わったかな、と思って安堵したわけである。

この国際会議は、プレゼンターと司会者だけが音声でコミュニケーションでき、その他の参加者は音声ではなくチャット欄を使うというスタイルで行われていた。熊大で続けているランチョンセミナーと同じスタイルであるが、設定が適正なのか、あるいはソフトウェアが最新版なのか、技術的な問題は全くなかった。「よく聞こえるよ」と言われてそう思っただけで、自分で自分の声を聴くことはなかった。ある意味それがやりにくい原因だったかもしれないが、自己陶酔に陥りやすい環境だと改めて思った。

テストもかねて、自分の出番の1日前に行われたキーノートセッションに参加者として入ってみた。このキーノートをやった研究者はこの手のプレゼンに慣れている人らしく、「なるほど」と思える工夫がいくつかあった。例えば、

・プレゼンの冒頭でいきなりギターを演奏して歌を歌った(え?!)。
・「このスライドで教師はどこにいるのか?」と写真を見せて質問し、ペイントツールを開放して参加者が思い思いに「ここにいる」と思った箇所をマークしていた(教師以外もみな教師だ、というメッセージを伝える意図、なるほど)。
・「思いつく単語は?」と質問し、テキストツールを開放して参加者が思いついた言葉をスライド所狭しといろんな場所に書いていた(捉え方に多様性があることを共有する意図、なるほど)。

スライドに質問を書いておいて(聞くタイミングを忘れないようにするために)、司会者が別に送った質問と選択肢を使ってパワポとは別に質問して集計することもできますよ、と言われた。なるほど面白そうだ、やってみたいな、とは思ったものの、結局できずじまいであった。蛇の道はヘビ、ということですね。なるほど、今度チャンスがあったらやってみることにしましょう。自己陶酔の罠に陥らないためにも。

TCCはハワイのメンバーが中心になって開催してきた国際会議である。20周年記念で昨年、ハワイに集合する人も交えてブレンド型でやった以外は、20年の間、ずっと遠隔だけでやってきた。20年前のインターネット環境がどうであったか、もう遠いかなたに思えるが、その間、開催ノウハウが蓄積されてきたことは間違いない。声が聞こえにくいなどの最低限の環境整備(=-1レイヤー)のほかに、遠隔ならではの工夫(=2・3レイヤー)もぜひ学んでいきたいと思う。アジア地区で日韓を中心にして毎年開催してきたICOMEとTCCが連携し、ICOMEのハワイ開催やICOMEジャーナル(査読付き国際学術誌)へのTCC論文の投稿などを模索している。両者がそれぞれの経験を生かして共に学びあい、交流の輪を広げていけたらと願っている。

熊本・大分の地震は700回を超えたと報道されており、九州新幹線の全線復旧の目途はついておらず、まだまだ被災者には辛い日々だろう。一方で、熊本県内の電気は復旧したとも報道されており、第3の「本震」に見舞われることなく、このまま安定化することを願わずにはいられない。私自身、最初の「本震」(のちに「前震」と位置づけなおされた)を熊本のアパートで経験した。蛍光灯が4つのうち2つが落下したリビングや割れた食器が散乱する台所をそのままにして出張に出たまま、熊本に戻れないでいる。熊本大学が暫時休講になった一方で、私たちの遠隔プログラムは電気とネットワークを失うことなく、熊本大学にあるサーバー上で「平常営業」している。

遠隔招待プレゼンの責任を予定通り果たした仙台の拙宅は、5年前の震災では被災地であった。とても複雑な思いであるが、いろんな意味で情報ネットワークはなくてはならないライフラインになったことを再度確認した。

とにもかくにも、関係各位の無事と安寧を祈念したい。

(ひげ講師記す)

【報告】熊本大学教授システム学(以下GSIS)設立10周年記念同窓会特別イベント『インストラクショナルデザイン』修了後にどう生かす?

015年度の入科式から行ってきたGSIS設立10周年記念同窓会イベントも今回で最後となりました。その締めくくり企画を2016年4月9日(土)新年度の入科式に合わせて開催しました。テーマは「GSIS修了後にインストラクショナルデザイン(以下ID)をどの様に生かすのか」です。今回お迎えしたゲストはIDを修められたのちに大活躍されています、前回のKU対決から2回目の参加となりました京都大学高等教育研究開発推進センター・センター長兼教授の飯吉透先生と、今回が初参加となりました東京大学大学総合教育センター助教の藤本徹先生という通称Wトオルのお二方です。そこに我らが鈴木克明先生を交えましてパネルディスカッション形式で開催しましたのでご報告いたします。

<第一部>
はじめに、それぞれのご専門の立場から、お二人がIDを現在の実践・研究にどのように活かされているのか、またそこに至るプロセスなどを語っていただきました。

○東京大学 大学総合教育センター助教 藤本徹先生
米国ペンシルバニア州立大学大学院で教授システム学博士号取得。留学中シリアスゲームと出会う。ゲームコミュニティではシリアスゲーム開発にインストラクショナルデザイナー(以下IDer)が関わるとゲームがつまらなくなると揶揄されたこともある。現在の仕事は東大MOOCを担当し、研究領域はゲーム学習。MOOCのコース開発の知識としてIDが必要であり、ゲーム学習では楽しさと学習の要素を組み合わせるデザインの核となっているのがIDである。IDerの活躍の場は豊富にあるはずと考える。現在日本でMOOCが広まらないのはIDerが不足しているのではないか。学習環境のデザインにはIDの知識は必ず必要なので、留学せず日本で学べる環境(熊大GSIS)があるのはよかったですね。

○京都大学高等教育研修開発推進センター・センター長/教授 飯吉透先生
国際基督教大学にて教育修士号を取得したのち、米国フロリダ州立大学教育大学院にて教授システム学博士号を取得。ジョージア大学研究員、カーネギー財団研究員、MITのシニアストラテジストなど歴任され現在に至っている。自分が面白いと思える仕事だけを選び、さらに実績を残してきた。IDを基盤しながらも、自分の経験、勘、度胸を武器にハイリスクハイリターンな道を選んできた事を自負している。仕事してはFD中心であるが、京都大学の教育制度改革を行った時に、マクロな視点で教育制度や学位プログラムを捉えるためにIDやISDの知識の必要性を再確認した。また研究のメインテーマはオープンエデュケーションであり、それを行うために日本へ戻ってきたので日本から発信したいと考えている。例えば大学院でのゼミでは「宇宙大学を作ろう!」というPBLを行っている。また最近では大学教員のためのオンラインFD支援システムのコミュニティサイト(MOST)を運営し相互研修の場を提供している。工業化の波で発達したIDが反ID的なもの(個別性や好みや予見的に感情的な事)にどのように対応できるかが、これからのIDの課題だろう。

<第二部>
第一部のお二人のお話しを受けて、会場から出た質問・疑問などを中心に、鈴木克明先生を司会に迎えて進めていただきました。(以下は今回行われたディスカッションの中の一部です)
○藤本先生への質問
「ゲーム学習について。もともと意欲が高い人への対応はどのようにすれば良いのか?」
回答:ゲーム学習することの長所は、やりたくなるようなゴールとルールを設計する事。意欲の有無は関係なく共通するところ。学習者分析を行い、内容を切り分けて考える。ゲームを入れれば何でも良くなるわけではない。IDを入れれば皆が面白く夢中になる学習が出来るわけではないのと同じ。
「ゲーム開発にIDerが入るとつまらなくなるのは何故?」
IDerは学習の専門家であり、面白く作る専門ではないのだから、ゲーム作りの専門家と協力してより良いものを作るべき。学習する上での理屈と面白くする事がぶつかることはある。しかし杓子定規で物を捉えるのはビギナーで実力派とは言えない。教科書レベルの事しかできない人はつまらないものしか作れない。教科書レベルのことで出来ることは実際は少ない。
○飯吉先生への質問
「IDerのディマンドプルできるのか」
IDer、FDerと言うことだけでは売りにならない時代である。例えばIDerの中でもゲームベースの専門家になるとか付加的なものがなくてはいけない。その点でオープンエデュケーションの一番のメリットは多様性である。好みに合った学びも提供できる。IDは工業化的な文脈から生まれたが、今後は家内制手工業的な文脈を重要視しなくてはならない。決まったことを決まったように学ぶのでは世の中に求められない。金太郎あめのようなIDerは要らない。
○鈴木先生のコメント
例えばディック&ケアリーのモデルなどは大学院で必ず学ぶが、実践で使っている人は誰もいない。実践者は臨機応変に対応している。モデル通りにかっちり行えば良いコンテンツが出来るのでは決してない。しかしプロセスを経ないとどのようにアプローチして良いか分からないはずであるので大切であることに変わりない。

○締めの言葉:教授システム学の研究者や教育実践者へ送るメッセージ
・藤本先生「この分野を学ぶ人を増やさないといけない。仲間を増やしてほしい。仕事をしながら日々の授業の課題をこなす人も多いと思う。授業の課題は今の知識で出来る事を期限内に提出して、とりあえず希望のところまで到達してほしい。たどり着かないと面白さも実感できないと思う。」
・飯吉先生「体を大事にしてください(無茶してください、無理してください、自分を越えてください)このあたりだろうなと落としどころを決めて取り掛かると元気が出ない。IDerであろうとなかろうと情熱を持ってやるような人間がこれから求められる。」
・鈴木先生「お二人の話から、こなす仕事と、命を懸ける仕事の見分けをしながら両立していきましょう」

本イベントは大変多くの方々にご参加いただき、GSIS設立10周年記念の締めくくりにふさわしい内容となり盛況のうちに無事に終幕いたしました。これもひとえに鈴木克明専攻長の人望と教授システム学が持つ魅力の現れだと思います。ご参加頂いた皆様に熱く御礼申し上げます。

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士6期修了生 岡﨑大輔)

【イベント】第23回まなばナイト@名古屋のお知らせ 日々の実務での動機づけ ~やる気を引き出す工夫を探る~

第23回を迎えます今回は、今年で3年目となりました中部地方での開催です。中
部地方の方、また全国各地の方、ぜひ名古屋にお集まりください。
今回は、動機づけに着目します。職場や家庭で、学習を進めようと思っても思い
通りにいかないのが世の常。その原因は何が考えられるのか?どうしたら効率良
く学習を進められるのか?提供する内容と学習者が求める内容が一致させるため
方法を、参加の皆さんとワイワイガヤガヤしながら考えたいと思います。

日時:平成28年6月5日(日)午後5時~午後8時 (午後4時40分より受付開始)
会場:プロダクトショップ「桜通りカフェ」
名古屋市中村区名駅3-21-7 名古屋三交ビル1F
お申込み&イベント詳細:http://www.manabanight.com/event/manabanight23

(まなばナイト実行委員 大石奨)

●次回(第24回)以降のまなばナイト開催のお知らせ
2016年度もほぼ2か月に1回のペースで、東京、大阪で開催を予定しています。決
まり次第、以下のまなばナイトのホームページに掲載しますので、是非チェック
してください。

http://www.manabanight.com/

今後もどうぞよろしくお願いします。

(熊本大学大学院 教授システム学専攻 同窓会名誉会長・まなばナイト実行委員 加地正典)

【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2016/5~2016/8

2016/05/14(土)
教育システム情報学会研究会「学習環境デザインとLearning Analytics・学習サービス /医療・看護・福祉における先進的ICT利用/一般」@放送大学
2016/05/21(土)
日本教育工学会研究会「高等教育における教育方法・FD・IR/情報教育/一般」@ 大阪大学
2016/06/06(月) ~ 2016/06/09(木)
人工知能学会全国大会@北九州国際会議場
2016/06/08(水) ~ 2016/06/10(金)
ラーニングテクノロジー2016@東京国際フォーラム
2016/07/02(土)
日本教育工学会研究会「教育の情報化/一般」@鳴門教育大学
2016/07/09(土)
教育システム情報学会研究会「ICTを活用した学習支援と教育の質保証/一般」@ 千歳科学技術大学
2016/08/10(水) ~ 2016/08/12(金)
コンピュータ利用教育学会(CIEC) PCカンファレンス@大阪大学
2016/08/18(木) ~ 2016/08/20(土)
International Conference for Media in Education (ICoME) 2016 @ Kyoto University of Foreign Studies
2016/08/22(月) ~ 2016/08/26(金)
11th IEEE International Conference on Computer Science & Education (IEEE ICCSE2016) @ Nagoya University
2016/08/29(月) ~ 2016/08/31(水)
教育システム情報学会全国大会@帝京大学

★ 編集後記

恐ろしい地震が人々を襲いました。私個人も大変お世話になった大好きな地域です。
松山にいたときにもその揺れを感じ、本震呼ばれる2回目は携帯電話の音がさらに不安を掻き立てました。何もできない自分がとても情けなく感じていますが、このまま落ち着いて、復興が少しずつでも着実に進むことを祈念しています。

(第61号編集担当:根本 淳子)

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【 mail to: id_magazine@ml.gsis.kumamoto-u.ac.jp】

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謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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