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IDマガジン第64号

皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
ますます寒くなってきましたが、風邪などひかれていないでしょうか。
IDマガジンは今回もアツアツの情報をお届けします!
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
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《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(60)
2. 【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:
3. 【報告】「第25回まなばナイト@東京」実施報告&第26回まなばナイトのお知らせ
4. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記

【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(60) ~プレンスキーが語る教育の4指針~

マーク・プレンスキーのYouTubeビデオを見た(https://www.youtube.com/watch?v=7wowZRDx344)。

プレンスキーと言えば、『テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから』とか『ディジタルネイティヴのための近未来教室』などの翻訳本でも知られている教育工学研究者である。ディジタルネイティヴ(生まれたときからデジタルに囲まれてきた人)をデジタル移民(人生の途中からデジタルの世界に移り住んだ人)と対比させたことでも有名な人で、デジタル移民はテクノロジーを道具だと思っているけど、ネイティヴは彼らが行うすべてのことの基盤として捉えている、と違いを説明。知る人の中では、最近刊の『グリーンブックIV』の第5章「カリキュラムの新しいパラダイム」を分担執筆した人としても有名であります。

プレンスキー曰く、現在の世界はVUCA(ヴーカ)である。
VはVolativity(揮発性)。落ち着きのない性質で、移り気で、右肩上がりじゃない社会。
UはUncertainty(不確実性)。「私が教えることはすべて誤りです」と教師が発言するほど不確実なのだが、「私が教えることをすべて信じなさい」と受験では教えている(後半はひげが付け足した)。
CはComplexity(複雑性)。人口倍増世界に向かって何もかもがより複雑になっている。
AはAmbiguity(あいまいさ)。聞いたことがなかった言葉が世界を語るうえで重要になったという。例えば、Frenemy(「友を装う敵」または「ライバルと同時に友である者」)、Co-petition(連携相手が同時に競争相手でもあるような複雑な今日の市場環境を指しているキーワードの一つ)などの新語が登場している。へー、知らなかったです。

プレンスキーはビデオの中で、我々は3つのことを低く見積もりすぎていないかと警鐘を鳴らす。
その第一は若い世代。若い世代は尊敬に値する。テクノロジーという武器を駆使して大人が想像するよりも多くのことができる、という。
第二はテクノロジー自体ができること。問題側面より得られることに注目し、人類とテクノロジーの共生(Symbiosis)で頭脳をネットワーク化する一方で、人間しかできない共感や情熱を大切にしなさい、という。
第三は教育。その目的は「学ぶこと」ではなく「(何者かに)なること(becoming)」。国数社理の4本柱を脱皮して、考え、行動し、関係を構築し、達成することを効果的に行うという4本柱に変換していくべきだとする。知識の習得が目標ではなくそれを使えるようになることだ、という議論はよくあるが、その先に「学ぶことで何者かになること」を見据えろ、という。何者かになるためには共生が必要だし、社会の中での役割を見出していくことも含まれるという示唆があるのでしょう、きっと。

プレスキーは結論として、以下の4つの指針となる質問を掲げ、自身でそれに答えている。
1) よい人にどう成長させるのか?
考え、行動し、関係を構築し、達成することをデジタルの知恵で教えることだ。
2) 若い世代をどう鼓舞させるのか?
彼らを尊敬し、彼らに共感し、選択肢と挑戦的課題を与え、彼ら自身の世界を動かしていけることに信頼を寄せることだ。
3) 我々はどう教えるべきか?
学習者が自分自身の情熱に従い、良きパートナーに巡り合えるように手助けし、過去についてどう教えるかを考えるのではなく、考え、行動し、関係を構築し、達成すること、そして未来を創造することにフォーカスをあてることだ。
4) 我々はどう助けられるのか?
判断を保留して傾聴し、25歳未満の子どもたちの声をよく聞くことだ。

なるほどね。ひげ講師はそう思いました。世の中の教育は惰性でやっているものが多く、デザインされていない。だから、一度止まって何を目指して何をどう教えるのかをゼロベースで見直しましょう。そういうメッセージを発することが多い今日この頃でありますが、プレンスキーはその「目指す先」を示してくれていると感じました。ライゲルースがグリーンブックIVでカリキュラム論の分担執筆を依頼したのもこの人だからだなぁ、としみじみ思ったのでした。なるほど、そうだよなぁ。さて、何にどう取り組んでいくか、それぞれの立場で考えてみましょうね。

(ひげ講師記す)

【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:第4章「インストラクションにおける状況依存原理」(チャールス・M・ライゲルース&アリソン・A・カー=シェルマン)

例えばあなたは、先週ガニェ先生の「9教授事象」を学んだ高校の社会の先生だとしましょう。あなたは早速来週の授業の冒頭で、「その1 学習者の注意を獲得する」を実践してみようと思いました。授業は次の2つです。

授業1.対象:高1G組 スポーツ推薦入学クラス(種目はさまざま。入学偏差値41)
テーマ:一向一揆
授業2.対象:高2A組 国立文系特進クラス(進路はさまざま。入学偏差値63)
テーマ:カノッサの屈辱

各々の「学習者の注意の獲得」に、果たしてどんなことをしますか?

「授業の導入で注意を獲得する」ことが大切なのはわかりました。それは普遍的原理です。では、1年G組の一向一揆の授業で、あるいは2年A組のカノッサの屈辱という「状況」で、何を話し、何を見せ、何を行えば望ましい「注意を獲得すること」ができるのでしょうか。
この、「対象×テーマ」など、各々の状況で(普遍的原理などを)どうすればよいかが、今回の状況依存原理です。

ここで、ある年のある学会の夜の鈴木先生の御言葉が思い起こされます。
「教育工学は工学なのだから、If–Then(こういう状況時、どうする)を語れ」、と。
私も酔っていたので多少記憶は曖昧なのですが、要するに「○○にはいろんな方法があることがわかりました。以上」というだけではイカンよ、というまさに状況依存問題解決的論旨です。

では、本書で状況依存原理は、そこをどう説明しているのでしょうか。
本章のビジョンは「より質の高いインストラクションを実現するための普遍的な原理の精密さを高める」とあり、当該原理の定義は、次のとおりでした。
(1)状況依存原理は、特定の状況にだけ適応できる。
普遍的とも言っていいものからとても限定的なものまでさまざまな原理がある。
(2)状況依存原理には、順序のきっちりと決まったものもあるが、
実際には、経験則的なものが多い。それは教授設計の複雑さに起因している。
困りました。
私には、これは定義というより特色に思えたのです。「醤油は特定の状況にだけ適応できる」というのは醤油の特色であり定義ではありません。

本章はさらに、「状況として重視すべきもの」として、「本質的に異なる教授方法が求められる2種類の状況性、(1)教授アプローチ(手段)に基づく状況性と(2)学習成果(目的)に基づく状況性」が挙げられていました。
ハッキリ言いましょう。何のことかわかりません。
こういう時には先行論文に限ります。そうです。あの論文です。

(状況依存原理として)「状況を記述する文法的枠組み(アプローチ・教授要素・系列化手法)を提案(中略)異なる価値観から導き出される多様なアプローチと,そこで選択的に用いられる教授要素,ならびに教育内容の系列手法としてまとめられている.これらを組み合わせて柔軟に設計することが今後の情報社会に求められているとしている.」
(鈴木克明・根本淳子)「教育設計についての3つの第1原理の誕生をめぐって」,JSISE学会誌:Vol.28(2):2011年4月
※確立した手法例(出典同 表3抜粋)
◎アプローチ:ケース中心型学習・認知的徒弟制・直接教授法・発見学習・ドリルと練習
◎教授要素:先行オーガナイザー・比喩・コーチング・共同作業・フィードバック
◎内容の系列手法:抽象-具体系列・演繹的系列・難易度系列・精緻化系列 (出典同)

やっとわかりました。
私はこの原理に、「偏差値41の筋肉少年少女への一向一揆のツカミ」そのものを求めていたのです。さすがのライゲリュース先生もそれはしてくれません。そしてそれはおそらく原理ではなく「解」でしょう。

この原理は、「状況に応じて精緻化したい時は」「既に明らかになっている文法的要素をヒューリスティック(柔軟)に組み合わせてみなさい」なのだと理解しました。

本章ではその要素の例として、大きく「教授アプローチ」(直接教授法、ディスカッション、経験、問題解決、シミュレーション 等)と、「学習成果」(の記憶、理解、応用 等)の先行理論を整理してくれています。

では、どんな状況の時、それらをどう組み合わせればよいのか。
それは私の博論をお待ちください。

(熊本大学大学院教授システム学専攻博士後期課程 柴田 喜幸)

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■毎週水曜日のランチョンセミナーにてGB3輪読中!
ランチョンセミナーは、熊本大学eラーニング授業設計支援室が主催するeラーニングを中心とした学びに関する研究や実践に関する情報交換の場です。
毎週水曜日お昼の時間に行っています。誰でも参加大歓迎! ただいまGB3の輪読中ですので、ぜひご参加ください。詳しくは以下からどうぞ。
http://cvs.ield.kumamoto-u.ac.jp/wpk/

「第25回まなばナイト@東京」実施報告

平成28年10月22日(土)、第25回まなばナイト@東京を開催しました。
今回は、この夏に来日したC.M.ライゲルース先生の講演内容を手がかりに、「学習者中心」の教授・研修パラダイムについて考えようとワークショップを計画しました。東京では珍しいカフェレストランでの開催となり、食事をしながら和やかに進行しました。

運営メンバーによるオリエンテーションに続き、熊本大学大学院教授システム学専攻 専攻長 鈴木克明先生から、今回のテーマ、「学習者中心」の教育へのパラダイムシフトのほか、グリーンブックシリーズのスゴさや、近刊の第4巻に関する裏話などをご紹介いただきました。

本編は、7期生の鈴木伸子さんからライゲルース先生の講演内容をご報告いただくところからスタート。続いて、1期生の宇野令一郎さんから、仕事で携わっているインターナショナルスクールの教育、幼児教育の実践について、7期生の佐藤久恵さんから、伝統的な枠組みを維持しながらもパラダイムの変化を取り入れようと試みる公教育の現状をお話しいただきました。

宇野さんのグローバルな視点、経営的視点、未来から逆算してみたときに「学習者中心」の教育は必須、というお話、そしてすでに進んでいるプロジェクトに見え始めている変革の兆しは、学習者中心が現実となる一つのビジョンを感じさせるものでした。

報告者、指定討論者のお話を受け、8期生の・笠野由衣さんによるファシリテートでワークショップをスタート。

・いま実践中の「学習者中心」のための工夫はどのようなものですか?
・実践でうまくいっていること、うまくいかないことは何ですか?

の2つの問いを、各グループに分かれて食事をとりながらディスカッションし、最後にグループ毎の発表をしていただきました。

「うまくいかないこと」については、あまり出てこなかったようですが、多様な職種・業種の現場での経験が共有され、盛り上がっていました。

全体を通しての議論として、
・こういった学習者中心の教育デザインは大人の学びにこそマッチするのではないか
・金太郎飴のように同じ人を育てていてはいけない時代
・いろいろやらせることを通してそれぞれの成長を促していく
・「1たす1」を学ぶことでさえプロジェクトに織り込まれ、Just-in-timeで必要な知識を学習者が獲得する設計もできる。

といった意見や共有があり、みなそれぞれに「学習者中心」に向かうイメージを持って帰られました。

東京でのまなばナイトは、次回12月に開催予定です。今後も、修了生の多彩なバックグラウンドを活かし、さまざまな切り口から企画してまいりますので、お楽しみに。

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士7期修了 佐藤久恵, 修士8期修了 笠野由衣)

○写真入りレポートは以下をご覧ください。
http://www.manabanight.com/info/manabanight25report

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●第26回 まなばナイト@東京「年末スペシャル」
テーマは「人工知能とインストラクショナルデザイン」。ゲストスピーカーは仲林清先生です。
なお、本編の前の16時より、熊本大学大学院教授システム学専攻の本科生・科目履修生の受験に興味がある方を対象とした教員・OBOGによる「個別相談会」、そして本編後には「大忘年会」を開催します!(個別相談会のみ参加の方は無料)

日時:2016年12月3日(土) 17:00-19:30
会場:富士通ラーニングメディア「CO☆PIT」 品川インターシティB棟10階
お申込み&イベント詳細(随時告知します):http://www.manabanight.com/event/manabanight26
皆さま、奮ってご参加ください。どうぞよろしくお願いします。

【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2016/11~2017/1

2016/11/20(日)
2016年度熊本大学公開講座 インストラクショナルデザイン基礎編@福岡
2016/11/26(土) ~ 2016/11/27(日)
2016年 第23回日本教育メディア学会年次大会@奈良教育大学
2016/12/3(土)
第26回まなばナイト@富士通ラーニングメディア「CO☆PIT」
2016/12/17(土)
日本教育工学会研究会「インストラクショナルデザイン/一般 」@仁愛女子短期大学
2017/1/7(土)
教育システム情報学会研究会「新技術による教育・学習環境の構築と教授設計/一般」@愛媛大学
2017/1/14(土)
2016年度熊本大学公開講座 インストラクショナルデザイン応用編@大阪
2017/1/15(日)
2016年度熊本大学公開講座 インストラクショナルデザイン応用編@福岡
2017/1/22(日)
2016年度熊本大学公開講座 インストラクショナルデザイン応用編@東京

★ 編集後記

今回のIDマガジンはいかがでしたでしょうか?
まなばナイト報告では同窓生の活躍ぶりが伺えて、私も頑張らねば!と思いました。
さて、12/17のJSET研究会@仁愛女子短大では「自分の研究をIDの視点で捉えてみよう」というテーマで、SIG-07(インストラクショナルデザイン)主催のワークショップが開催されます。私も参加予定です。みなさまと福井でお会いできることを楽しみにしております。
(第64号編集担当:高橋暁子)

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【 mail to: id_magazine@ml.gsis.kumamoto-u.ac.jp】
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編 集 編集長:鈴木 克明
ID マガジン編集委員:根本 淳子・市川 尚・高橋 暁子
発 行 熊本大学大学院社会文化科学研究科
教授システム学専攻同窓会
http://www.gsis.jp/
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謝辞

本サイトは、JSPS科研費「教育設計基礎力養成環境の構築とデザイン原則の導出に関する統合的研究(23300305)」の助成を受け、研究開発を行いました。

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