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加藤泰久(2012)フロー理論に着目した学習教材・学習環境の再設計支援手法に関する研究.熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 2012年度提出博士論文
本研究では, 教授者・教材設計者に対して,学習教材・学習環境の再設計( 改善 ) に関 する活動 を 支援する ために ,フロー理論に着目した再設計支援 フレームワークを提案し, フレームワークの活動の中心となる フロー理論適合度チェックリスト を 具体的に 提案 した. また, フレームワークの実現可能性を検証するために,プロトタイプシステムを構築し, 初期形成的評価を実施した.次に フロー理論適合度 チェックリストの 評価 を , 形成的評価 のプロセスを通して実施した. 予備実験,専門家レビュー,評価実験を通して,フロー理 論適合度 チェックリスト の信頼性 と感度を検証した. 第 1 章では, 本研究の背景,目的について 論じた. 初等・中等教育及び高等教育におい て,また,eラーニングを利用した学習環境においては,学習意欲に関する課題があるこ とを示した.一方, ポジティブ心理学から始まった フロー理論が, 様々な領域での応用が 進展しつつあり ,教育分野でも応用研究が始まって おり, フロー理論の背景と 教育・学習 分野での 応用研究の動向 についてまとめた . 本研究の目的は,学習意欲に関する課題を解 決するために,フロー理論の考え方を教育分野に適用することである. 第一に,フロー理 論の研究の現状を把握し,教育分野での 応用研究の 内容を把握す るために,フロー理論研 究の文献調査を行い , まとめ ることで,国内でのフロー理論研究 の 推進に貢献 すること. 第 二に,教授者及び教材設計者のためのフロー理論に基づく学習 教材 ・学習 環境 再設計の フレームワーク の提案を行う こと .第三に,上記の フレームワーク を実現するためのプロ トタイプシステムの開発を行い, その実現可能性 を 検証すること. 第四に,本研究で提案 する フレームワーク の中核となる, 教授者・教材設計者のための, フロー理論適合度チェ ックリストの信頼性 ・感度 を検証する こと . 以上が研究目的である. 第 2 章では, フロー理論に関する研究の動向 と 調査 ・分析 を行った. その結果, フロー 理論に関する研究がここ十年急速に増加していることがわかった. フローの定義,フロー 状態のモデル化の研究,フロー理論の応用研究の文献調査を実施した. それらの研究の中 でも特に, フロー経験の 評価に関する研究の詳細な調 査を行い,海外では フロー経験の評 価手法として ESM 法 ( Experience Sampling Method ) が主に利用されているが,国内では, 質問紙法 を利用して, フロー経験の評価を行っている 研究が多いこ とを示した.また,海外では,思考に関するフローの研究が多いが,国内では身体に関するフローの研究が多い ことも合わせて示した. また,フロー経験の評価指標に関する研究についても調査を行っ た. 次に , フロー理論 の教育分野・学習分野への応 用研究の調査を行った. 学習分野への 応用 研究 については, 学習者の視点からの, 教室内での応用だけでなく,オンライン環境 への適用研究も始まっていることを示し た.また, 感情伝播の先行研究の調査から, 教授 者の視点で , フロー経験が 教授者から学習者に 伝播する可能性があることを示した. また, フロー理論を組み込んだ学習モデルの文献調査を行い,新たなフレームワークを提案する 際 には, Kolb の経験学習モデルを基礎とするのが妥当であることがわかった. 第 3 章では, フロー理論に基づく学習環境・学習教材再設計支援のフレームワークを提 案した.フレームワーク は, フロー理論適合度チェックリスト,学 習環境改善の提案,実 環境での実践,実践結果のフィードバックの記述 ,の 4 つの活動 を含む . 利用者が利用す る毎 に データベース の内容 が 増加す る仕組みを提案し , フロー経験についてのデータベー ス及び実践についてのデータベース に適用した. また, フロー理論初心者 が フロー理論の 初歩を 学ぶことができる ,フロー理論入門教材 等 を 組み合わせる ことを提案した. 学習教 材・学習環境が フロー理論 に適合しているかどうかをチェックするための, 本フレームワ ークの中核となる, フロー理論 適合度チェックリストとして, 15 のチェック項目を含むチ ェックリスト を 提案した. 第 4 章では, 第 3 章で提案したフレームワーク の実現可能性を検証するために プロトタ イプシステムを構築し,初期形成的評価を行った. Moodle 上に, 拡張モジュール等を利用 して全ての活動を実現した.また,多様な知識・経験を持つ利用者 が同じように利用でき る ようにする ために, 3x3 のマトリックス型のポータルサイトの入口と,情報の詳細度が 異なる 3 種類のフロー理論適合度チェックリストを構築し, 初期形成的評価の結果, 様々 な学習教材・学習環境 の チェック に対応可能であることを示し た.また プロトタイプ上の ユーザインタフェースも有効に機能 することを 合わせて 示した.第 5 章では, フロー理論適合度チェックリストがeラーニング教材に 適用 可能かどうか の 評価を 実施した. まずは,評価者 が共通で評価できる ,評価用のeラーニング教材を 開 発し,いくつかのポイントとなる 活動の 要素を その教材から取り除いて派生させた 2 種類の教材と合わせて,合計 3 種類の教材を開発 した.次に,予備実験を実施し,実験条件, チェックリストの課題等を明らかにした上で,専門家レビューを実施した.その結果,チ ェックリストの評価 指標 の大幅な見直し, チェックリストの表現等の改善を実施した. ま た,各教材に対する専門家 の評価 値を確定した. 次に, 異なる評価者が同じチェックリ ス ト で改善すべき点を検出できるかどうか,つまり 評価者間で 評価が一致するかどうかの チ ェックリストの 信頼性の評価 , 及び,チェックリストがどの程度の 教材の 内容の違いを検 出 できるの か ,いわゆるチェックリストの感度の評価 , を実施し, 実用上 問題ない ことを 示した. 第 6 章は, 第 2 章から第 5 章まで を 考察 し,今後の 課題 につい ても考察 を行った . フロ ー理論に関する研究動向について 述べた後,フロー理論適合度 チェックリストを基 にした 学習教材・学習環境再設計支援 フレームワークの 実現 可能性 の検証 , フロー理論適合度チ ェックリストの信頼性・感度 の 評価 結果 等 を受け て 考察 し た . 以上から, 以下の 3 点 に関して ,特にフロー理論の学習・教育分野への応用研究に貢献 できたと考えている.また,本研究を通して, フレームワークが実現可能であり, フロー 理論適合度チェックリストが 有効 である ことを示した.国内,海外における,フロー経験の評価に関する研究及びフロー理論の学習・ 教育分野への応用研究の動向を明らかにした. 教授者・教材設計者 が 学習教材・学習環境 を 再設計 する際に 利用 する 支援 ツ ールとして,フロー理論に基づく 再設計支援 フレームワークを提案し ,実現 可能性を示し た. 本 フレームワークの中核を 成すフロー理論適合度チェックリストを開発し, 教授者 ・ 教材設計者が,学習教材・学習環境がフロー理論に適合しているか どうかをチェックすることで, 学習教材・学習環境 再設計( 改善 ) のヒ ント を得る ことができる ことをめざし , フロー理論適合度 チェックリストの 信頼 性・感度を検証 し ,有効性を示し た