2003.11.18. 基調講演「新教科『情報』の授業をどうつくるか」青森県高等学校教育研究会 情報部会@青森県立弘前高等学校 (記録:青森県高等学校教育研究会 情報部会)


基調講演(記録)
「新教科『情報』の授業をどうつくるか
〜授業創造から高校活性化まで〜」


岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授 鈴木 克明 氏
ksuzuki@soft.iwate-pu.ac.jp
http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/

自己紹介から


 ただいまご紹介いただきました、岩手県立大学、鈴木でございます。情報部会が今回プレ大会ということで、記念すべき大会にお呼びいただいて大変うれしく 思います。青森県との付き合いは古く、県社会教育センターに年2回ほど、マルチメディア関係の研修でお邪魔しています。お付き合いが結構ある県にこうして 呼んでいただいて大変光栄です。うちのソフトウェア情報学部にはかなり青森県出身の方がおり、いろいろ盛り立てていただいております。

 今日お手元にお配りした資料が2種類あります。1つ目のA4の資料は、この会でお話しする中身が書いてあります。情報の授業が新しい教科ということもあ りまして、担当の先生方がいろいろご苦労されているということで、「こういう点で考えると気持ちが楽になって、しかも元気が出てくるのではないか」と考え て、このような5つの点についてまとめてみました。2つ目は「IMETフォーラム2003」 とあるB4 2枚の資料です。これもこういう機会があるといつもお話しする内容を是非原稿にして欲しいと言われて、書いてしまった訳です。これは今日の会の復習用に 使っていただければと思います。3つ目のB4の資料は、最近の学会の中から今日のお話に関連のあるものを載せてあります。

 私は岩手県立大学で色々な仕事をしていますが、ソフトウェア情報学部で社会情報システム学講座を開設しておりまして、この中には1年生から大学院生まで 約50人の構成員がおります。担当科目はメディア論(約100人受講)と情報科教育法T・U、教育実習を担当しています。教員養成を始めまして、情報科教 員免許を持った者を毎年10人ぐらい出しています。しかしご存知の通り、なかなか就職できなくて大変です。たしか青森県は今年、情報科教員の募集がありま したね。うちのゼミ生にも果敢にチャレンジした者がいたのですが、残念ながら採用されませんでした。昨年は最初の卒業生が出て、埼玉県と東京の私立にそれ ぞれ1人ずつ採用していただき、現在教員をやっております。大学院の方では、社会情報システム特論を担当しています。

大学外の仕事のほうが多く、教科書の編集・執筆を3〜4年ほどやっております。またNHK教育テレビで、高校の情報教育をどうしていくかという番組をやっ ていまして、川崎北高校に取材に行ってコメントをつけました。また文部省が現職教員に対する講習会用のテキストを作りました。「コミュニケーションの基 礎」の部分は私が書きました。JAPET(教育工学振興会)が作った5枚組の教育の情報化推進指導者養成講座用のCD-ROMを作りました。その関係で研 修講師をやらせていただいて、各県の小中高の先生方で教育の情報化をリードしていく先生方の育成をしばらくやっていました。NHK学園(通信制高校)で、 Webを使って、単なる郵便のやり取りだけではなく、ホームページを使ったネットラーニングをどのようにやっていくかというシステムを開発していまして、 これもなかなかおもしろいプロジェクトです。僕は通信高校のノウハウを全日制の先生方にも取り入れていただきたいと思っています。なぜかというと、基本が 自学自習だからです。先生が何でも教えてあげるということをやめない限り、教科情報の精神は伝わっていかないと思っています。是非生徒が自分で勉強すると いうことをやってもらいたいと思っています。

専門教育と市民教育の違いを踏まえる


 情報でご飯を食べていく人間をつくっている学部に所属する人間から見て、1番大事だと思うのは、専門教育と市民教育の違いを踏まえることです。普通教科 「情報」というのは、専門教育ではなく、市民教育だということをきちんと押えておかないと、操作方法を教えてある資格試験の○級を取ったからこれでいいだ ろうという考えにどうしても偏ってしまう。それは違うのです。もちろんそれが必要なところもあります。専門教科「情報」です。いわゆる専門高校の専門教科 ではそれをきちんとやらなければならない。しかし普通高校で教科情報A・B・Cをやる意味は、全く違うということを押えておかなければならない。IT市民 を育てるというのが普通高校での普通教科情報であって、IT技術者を育てるというのが専門高校の専門教科情報です。専門教科情報があるから、理数科の教員 しか免許を取れないことになりましたが、IT市民を育てるための教育をしようとすると、理数科の教員でなくてもいいのではないか。社会科のノウハウ、そし て英語のノウハウ、国語のメディアリテラシーなど、文系的発想が、いわゆるIT市民を育てるための教科情報には必須ですね。そうなりますと、非常に問題を はらんでいると思うわけです。

 総合的な学習が高校でも始まりました。小学3年から始まっています。中学では技術家庭の中で領域『コンピュータと情報』が必修になっています。中学の技 術家庭は専門教科への橋渡しにもなるし、高校でやる普通教科情報のスキル的な部分の基礎を作る役割もあるのです。そこをきちんとやることができたので、今 度入ってくる人たちは、スキルはもうできている。そういう人間に何を教えていくのかが今後の問題になるわけです。今のところはこの辺があまりしっかりして いないので、スキルの差をどうするのかというのが現時点では問題になっているのです。それは大学でも同じ。大学でも一通り全部体験したという人間から全く コンピュータを触ったことのない人間までを相手にしてやっているので、事情としては同じなのです。過渡期にありますから、こういう構造になっているという ことをきちんと押えておかないと、今後の進路を誤ることになるのではないかと思います。一方で、情報系の大学は、ITでご飯を食べられるというのが目標で すから、きちんとやれることをやらないと商売にならない。もちろん普通教科情報A・B・Cを足がかりにして、情報系の大学に行ってみようと考える人が増え てくれば、我々としてもうれしいことです。しかしそれをあまり狙ってしまうと、普通の人間が育たなくなってしまう。この辺はきちんと見極めをしていく必要 があります。情報系の専門家の人間が高校の情報を考えると、どうしても専門教育の方にシフトするのです。

もう一つ、教え方・学び方がとても気になります。どの教科にも言えることですが、なぜ情報科ができたかというと、今までは情報というのはあまり変わらな かった。流動性がなく、少ない情報で何とか生活できたという時代。そういう時代は先生方の頭にあることをきちんと整理して伝えていけば、済んでいたわけで す。ところがこれだけ膨大な情報が溢れて、しかもどんどん変わるとなると、先生が知っているノウハウを伝えていくという旧態依然としたやり方を問い直す必 要があるのです。その最前線にいるのが教科「情報」なのです。かなり難しいことですが、これが教科情報を担当している先生方に課せられた一番の役割ではな いかと思うのです。

市民教育としての教科『情報』を創造する5ポイント


(1)先生方が楽しめる授業にする。情報科の授業はとにかく楽しい授業にしてもらいたい。上意下達からの脱却―先生が何でも知っていて、それを子供に教え るということをやめて欲しい。それは不可能だからです。何の理論にしても一番確実に見える物理学の理論にしても、相対性理論が出てくれば変わってしまうわ けですから。今のところとりあえずこうなっているとしかいえない訳です。真実は一つで決まっていて、とにかく前提としてそれを理解しておけというのはどう も具合が悪いのではないか。

(2)教科書研究から始めて実践例を公開する。今回は研究会ですから、お互いに実践例を持ち寄って、意見を交わす会にして欲しい。教科書研究から始めよと はどういうことかというと、13社の教科書に載っていることが全然違うのです。自分の高校で採用されている教科書を見ているだけだと、情報という教科に対 して誤ったイメージを持ちます。ですから他の教科書を皆で見ましょう。そしてそれを使った実践例を交換して、「こんな授業もあるのか」「この授業はこうし たら良いのでは」ということをやらないと、いいものはできません。伝統がないのですから。

(3)要求水準を冒頭で示す。今頃になってどうやって単位を出すかというのが問題になっているようです(いわゆる評価の問題)。これは最初から決めておか なければならない。要求水準というのは言葉を換えると最低限の、赤点を避けるレベルはここですという基準です。これを最初に示さないから話がおかしくな る。あとは生徒が個性を発揮する場を設定しておいて、一定基準以上であればいろいろあっても良いのではないか。こういうふうな授業は楽しい授業になります よ。どうせ新しい教科なのですから、大して効果がなくても誰も文句は言わないでしょう。ですからそのくらいの気持ちで目標を設定しておいた方が良いのでは ないか。

(4)総合的学習から学校を変える。先ほど言いました、時代の要請を受けてできた教科ですから、楽しく授業をやって、生徒が情報の授業を好きになって、他の教科もこういうふうになってくれるといいな、と思ってもらえたらいいのではないでしょうか。

(1)の楽しむ方法ですが、先生があらかじめ用意しておくのは4割くらいにしておくと良い。そこから先はどうなるか分からないけどとにかく生徒にやらせて みて、すごいのができたと驚きを共有する。あまり変なことになると、情報の授業になるの?ということになるので、そこは軌道修正していけば良い。情報Aは 実習が1/2となっていますが、これは上限ではなくて下限ですから、1/2以上であればいくらやってもいい訳です。そういう意味では全く矛盾しない話で す。実習も、やることが決まっているようなものは4割の方に入れて、どうなるか分からない実習をなるべく多くしてやった方が良いのではないか。また操作の 面については、教師より生徒のほうができるに決まっていますから、あまり偉そうにしない方がよい。生徒たちの方が良くできるのだということを肝に銘じてや ると生徒たちは伸びます。最初の年だから失敗しても良いですから。次はどうしたら良いか考えればいいのです。

(2)の教科書研究についてですが、学習指導要領はしっかり読んでください。これに基づいて、あれだけばらばらな教科書が出るのですから、不思議です。と にかく学習指導要領はしっかり読んで、情報の授業を誰かに見られたときに、これは学習指導要領のどこをやっているのか答えられるようにしておくということ です。それさえ踏まえれば、何を題材にしても全く問題ありません。うちの生徒(情報科の教師になりたい女子生徒)が、この間、教育実習で現場の様子を見て きて、「教科情報をやらない学校が出てくるのではないか」という印象を持ったようです。ちゃんとやってもらえるには、進路指導と結びつけるのがいいと言う のです。そこで情報Aを進路指導を題材にして1年間できるようなカリキュラムを作らせました。結構おもしろい着眼点だと思います。中身は何でも良いので す。それを取り扱う中で、どうやって情報科として取り扱うのかをやっていけばいいのです。そういう意味で、学習指導要領のここだということが言えれば、あ とは中身は何でも良いのです。

教科書については、教科書に書いてあることを先生がいちいち説明する必要はないですよね。一応分かりやすく書いてあるはずですから。分からなかったら聞き に来い、でいいのです。まず最初に教科書を読ませたらいい。例えば単に読めというよりも、こういうことを調べてみなさいでもいいし、演習をやってみなさい でもいい。先生が教科書の内容を説明する授業は止めた方がいい。また、実践例はWebにでています。いろんな学校・教育センター・教科書会社でホームペー ジ上に実践事例をのせています。丁寧なものだと、授業のプリントまでのっています。こういうものを使わない手はない。そのうち自分のオリジナルの事例が出 来たらWebに公開してこのようなコミュニティに貢献していくという風に考えていけば良いわけで、最初は先行してやっている学校(川崎北高校など)のノウ ハウをいただいて、それを授業で本当にうまくいくかやってみるという形でスタートすれば良いのではないか。

(3)の要求水準について、とにかくHow Toをやめてしまう。How Toをどうしてもやらなければならないとなったら、プリントを配ってこの通りにやってみなさいという形にしたらどうか。How Toを一斉指導でやるということほど見にくい授業はない。見にくいというのは見たくないということです。How Toはまず時間がそろいません。講習会形式でやると、必ず1回でわかる生徒と、何度聞いても分からない生徒が出てくる。これは当たり前のことなのです。 How Toをプリント形式にすれば、自分のペースでできますから、ぜひそうしてください。課題の作り方は2つありますが、1つは導入課題、もう1つは発展・応用 課題です。導入課題というのはとにかくやらせたいものを全部網羅するもので、これだけを全員にやらせてこれが確実にできたら単位をあげますということをあ らかじめ言っておくのです。これが冒頭で言いました4割に当たります。知識の面は生徒に調べさせて意味を理解させておく。覚えさせるかどうかは別として、 知識に触れさせるというのは大切です。

応用課題は、時間をかけてじっくり取り組めるもの。作品を作ったり、レポートを書いたりということです。ここではもちろん題材は何でも良いのです。導入課 題で身に付けたものをある程度応用してやってみなさいということでいい訳です。グループで作業をやらせてもいいし、1人でやらせてもよい。これぐらいはで てきて欲しいというところは教師として頭に置いておいて、いいものが出たらその生徒の作品を紹介して「こんなにいいのをやっているぞ」と言う形でいいので す。情報の授業で是非教えてもらいたいものの1つは情報というのは正しく引用する必要があるということです。コンピュータの操作はともかくとして、教科 「情報」ですから、情報というのはどういうもので、どうやって使わせていただくものかというのをしっかりやる必要がある。これはほとんど国語の世界です ね。引用とはどういうものか、段落とはどういうものか、そういうことをどこかで教えていかないと、このまま社会に出すわけにはいかないと思うわけです。

(4)総合的な学習が始まりました。高校では情報の授業とうまく合体してやっている学校がかなりあります。これはいい傾向だと思います。情報という教科 は、指導要領を読みますと、他の教科との連携を図ってやりなさいと書いてあります。楽しい体験と受験対策あるいは就職対策との両立を考えるわけです。今の (1)から(4)の原則に従って授業を作っていけば、これは楽しくてしょうがないですから、2単位では終われません。もっとやって欲しいと言われます。そ こで総合的な学習とくっつけるということが可能だと思います。他にはいわゆる学校裁量の時間で進路指導に使われている時間、このへんをうまく合体すればい いのではないか。例えば専門高校の「課題研究」というのがあります。我々は自己推薦入試などを見るときにとても参考になります。なかなかやっているな、と 感じます。青森の例だと、ねぶたを中継するシステムを作った生徒がこの入試で入っています。普通科はこれに負けてはいけません。普通科も何とか情報科と総 合的な学習とをうまくコンバインして、何か生徒たちに自己アピールできる材料、私は高校でこんなことをやったんだということを言えるような時間を是非作っ て欲しいと思います。

〈質疑応答〉


・小・中学校で情報教育が進んでくれば、高校では情報AからBやCに移行していくのだろうか。

→ センター試験との絡みで言えば、情報Bをやっておくのが一番良いのではないかと言われていたが、センター試験の科目に入らなかった理由は、情報Aの採択率 が8割で、実習を50%やっているため。家庭科などの実習系の教科と同じ扱いになったようだ。今後情報BとCの採択率の変化を見て、センター試験に入れる かどうか考えていくのではないか(非公式見解)。情報Aの中身もどんどん変わっていくだろう。見識のある教科書は、中学校でやっているものは教科書に入れ ず、副教材で補っていくという形にしている。

・最終的には5段階で評価を付けなければならない。妥当な評価方法はあるのか(可能かどうか)。

→妥当な評価基準かどうかは、全て学習指導要領に照らし合わせてみる、というのが建前です。あれはいかようにも解釈できるので、学校の状況に応じて妥当か どうかを決めてしまえばいい。本当にこれで良いのかというのは、例えばこういう会議に持ってきて、お互いに議論してコンセンサスを得ていくというのが妥当 なやり方だと思う。上の方から妥当な方法がおりてきてそれを守らなければいけない、と言うふうに考えなくても良い。

・技術指導はプリントでというお話ですが、実際は個別に対応するのに時間をとられてしまう。どうすればいいか。

→スキル差克服の1つの方法は、とにかく一斉指導をしない。個別指導が基本。教えるのに人手が足りなければ、プリントにして配るというのがよいと思う。そ れでもできない者がいたら、できる生徒に教えさせるなど、色々な方法でスキルの個人差に対応していくと良い。いずれにしても、それができたからといっても スタートラインよりも下の話。それができることを目標にしてはいけない。

・コンピュータ嫌いの生徒が増えてきているような気がするのですが。

→生徒に「なぜ嫌いなのか」を聞いてみること。中にはディスプレイを見るだけで気持ちが悪くなる生徒もいます。このような肉体的な問題なのか、それとも精神的なものなのかを診断して、対応策を考えてください。

・コンピュータを使わずに情報を教えることは可能か。またそのような実践例などあれば教えていただきたい。

→コンピュータを使わずに情報を教えるのはもちろん可能。一番有名なのはNIE(Newspaper In Education)の活動。コンピュータの操作能力を付けるのではないということを、きちんと確認して欲しい。それは中学校の技術家庭でやること。今は それができていない者もいるので当然キーボード操作も教えなければならない、となるが、それが教科「情報」の目標ではない。キーボードを打てなくてもきち んと作品ができるようにしておく。コンピュータを使わない作品作りはどうやったらいいかを考えておく必要がある。例えば、情報Aの中には「コンピュータに はどういう特色(長所・短所)があるかを考えてみよう」という単元がある。ここでコンピュータだけを使っていたら、この単元は成立しない。だからコン ピュータが得意な人はコンピュータを使ってやってみよう、そうでない人は使わないでやってみよう、そして両者を比べてレポートを書こう、これである程度の レベル差は解消できるのではないか。ある特定の情報機器を使うことを前提にしないというのが市民教育。どういう時に使うのが良いのか、どういう時はやめて おいたほうがよいのかを判断できるようになるのが教科「情報」の目標なのです。一方技術者教育は、コンピュータを使うことは仕事の前提としてであって、そ れを他人よりもいかにうまく使いこなすかが、ご飯を食べられる基になる。コンピュータはどこまでできるのか、自分ができないことは専門家に頼んだ方がいい のでは、ということを判断できるようにするのが市民教育。しかしコンピュータにはどういうことができて、長所・短所は何なのかという見極めを持っていない と、どういう時に専門家に頼んだら良いのか分からない。専門家は逆に、コンピュータでやらない方がいい仕事もやってしまう。そうでないとお金にならないか ら。そこを見極める目を持った人間がいないと騙されてしまう。このようなことを考えていこう、というのが教科「情報」の考え方なのではないか。

・生徒のレベルはピンからキリまであるので、要求水準を決めようにも決めにくい。
・評価が難しいとなると、資格試験を利用することも考えられるが、それについてはどう考えるか。


→実際に情報Aに対応した資格試験もあるようだ。それを取らせるということを馬の先のニンジンにして、それを目指して授業を展開するということは決して悪 いことではない。それと同じように試験問題について生徒に最初に教えておくということも馬の先のニンジンなのですから、別に悪いことではない。これができ るようになったら単位が取れるのだ、と考えることができるので何の問題もない。テストは最初に作っておくべき。「テスト=この授業の目標」ですから。この 目標を生徒に提示して、それを目指させればいい。それが赤点を防ぐ、再履修を防ぐラインはここだと示すこととなる。試験をやらなければならない状況であれ ば、試験をやってください。しかしその試験を何%評価するということをきちんと知らせておくようにする。例えば試験+作品で、5分5分で見ます、という形 で良いのではないか。レポートはどんなに時間をかけてやってもいい、クリアするまでやってもいい、とすればいい。最低ラインをきめて、それ以上はこういう 点に着目して評価します、ということを例えば前年の作品を見せるなどして明示すればいい。そうすれば生徒はどのような点が良い点なのかが分かる。評価とい うのは具体的にこの段階ではこうだということを最初から言っておくことが重要。これは我々の常識にはなかったことですから、もしかしたら芸術系の先生に聞 けばある程度分かるかもしれません。

・定期試験はどのようにしたら良いか。

→試験が必要ないと思ったらやらなくても良いのでは。情報は覚えさせる教科ではないですから。授業でやってきたのだから最低ここぐらいは何も見ないで答え られるようになるだろうと、何か妥当だと思うような試験ができるのであれば、試験をやってもいいのでは。試験を必ずやらなければならないと考えるのはおか しい。

情報技術がこれだけ進んできて、学校が旧態依然としていて良いのか、ということを考えるチャンスを与えてくれているのではないか。勉強 することはとても楽しいことなんだ、と何とか子供たちに伝えていかないといけない。試験の時だけ勉強して、勉強はできれば避けて通りたいという意識を変え ていかないとまずいのではないか。学校に長くいればいるほど、先生の授業を受けないと勉強ができないと思っているとすれば、それはおかしい。勉強というの は自分でやるものだ、なぜやるかといったら、楽しいからやるのです。そこを何とか実現する手立てはないものか。なぜ勉強するのが楽しいのかというと、今ま で知らなかったことを知る、自分が変わっていく、これが楽しいのです。前は知らなかった世界が見えてきたという実感が持てるというのが楽しい。やらされて いる・やらなければならない・つまらないけどしょうがないからやる、そういう感覚を払拭して、元々勉強は楽しいものだということを子供たちに伝えることを 是非考えて欲しい。実例があればぜひ皆さんで共有して欲しいと思う。学校のありかたを振り返って考え直す必要がある。「情報」は新しい教科なので、何を やってもかまわない。これが1つのきっかけとなって、子供たちに笑顔がたくさん見られるように、何とか工夫を重ねていって欲しいと思います。