「韓国のICT教育の現状と将来」
第15回 ICTE 情報教育セミナー in 新潟 2002
2002.12.15.@新潟大学
韓国・梨花女子大学 ヤンスー・キム
資料翻訳&解説:鈴木克明
(岩手県立大学ソフトウェア情報学部)
ICT教育で優先べきことは、社会の環境変化とともに変わっていく。韓国では、1970年代からICT教育に求められることが変化しつづけて現在に至っている。
- 1)1970年代:コンピュータ教育を職業教育の専門的分野及び一般教育の共通的分野として認知。
- 2)1990年代初頭:全国統一カリキュラムに選択科目として導入。
- 3)1997−2000年(第1次総合計画):パソコン、マルチメディア機器、インターネットなどのICTインフラの整備。
- 4)2001−2005年(第2次総合計画):ICT利用の強化と知識社会に向けて要求される能力向上。
第2次総合計画では、2005年までに次の4つの目標を達成することが掲げられている。韓国におけるICT教育の目標は、1)知識に基づく情報社会で要求 される能力の向上、2)創造的な職業人の育成、3)開かれた教育と生涯学習、そして4)「総合的職務遂行支援システム(TPSS)」の構築である。
第1次総合計画(1997−2000)で達成されたICT教育の現状は次のとおりである。
- ICTインフラ整備を完了:すべての学校がインターネットに接続
- 1000万人がICTリテラシーを習得
- 第7次カリキュラム基礎共通科目の10%以上でICTを活用
- 毎年25%の教員がICT研修を受講
- 9つのサイバー大学が2000年に運用(39学科で6,220人の学生)
- 科学情報と「研究情報サービスシステム(RISS)」を創設:204の研究機関で570万項目の統合カタログ
- 知識情報流通システムの創設とBPRの促進
ICT第1次総合計画で浮上した問題としては、1)より高度のICTインフラへの需要増加、2)ICTリテラシー基準の未整備とICTカリキュラ ム開発の遅れ、3)教育用コンテンツの品質の悪さ、4)生涯学習や職業教育での情報サービス不足、5)知識情報共有システムの未整備、6)情報社会におけ る倫理の遅れ、7)広がる経済的不平等に伴う情報格差の増大、8)「入力指向の指標」を用いたICT教育の効果的な評価の欠落などがあった。
これらの問題を考慮して、第2次総合計画の具体的目標が下記のように定められた。
- 1. ICTインフラをOECDレベルに引き上げる(パソコン1台あたりの児童・生徒数を5人に、回線速度を2メガbpsに)。
- 2. ICTリテラシー基準を教師用、児童・生徒用、一般用に定める。
- 3. 第7次カリキュラム基礎共通科目及び選択科目の20%以上でICTを活用する。
- 4. 毎年33%の教師にICT研修を実施する。教師のICTリテラシーを認証する。マルチメディア教材、教育用ソフトウェア、ならびに授業案を開発する。
- 5. バーチャル教育を推進することで、生涯教育や職業教育の領域で能動的なサイバー教育を支援する。HRD(職能開発)情報ネットワークを確立することで、ワンステップ情報サービスを提供する。
- 6. 科学情報と「研究情報サービスシステム(RISS)」を創設する(450の研究機関で720万項目の統合カタログ)。知識情報共有のための国家基準と著作権保護を実現する。
- 7. 学校でサイバー倫理教育を行うことで、健全な情報文化を確立する。
- 8. 貧困層を支援して情報格差を縮める。
- 9. ICT教育の出力指向の指標を実用化する。
- 10. ICTインフラを拡張することで、知識情報の流通を積極的に推進する。
学校におけるICT利用の目標を達成するために、次の方略を実施する。1)関係諸研究期間の役割を見直すことでシナジー効果を創出する。2)施策や規則を 柔軟に改訂することで技術の発展に対応したICT教育の実現を図る。3)貧困層に対する教育や研修の機会を増やしてデジタル格差を縮める。4)健全な情 報・サイバー文化を進めるためにICT倫理教育を開始する。5)「ハードウェアを越えて」インフラの整備から能力向上に目標をシフトさせる。
21世紀の韓国が描くビジョンでは、韓国が知識社会として世界をリードする役割を担える国になることを目指している。第2次総合計画で掲げる目標を実現できれば、韓国が将来の知識社会をリードする国になることが可能であると思われる。
参考文献
Kim, Youngsoo (2002). The use of ICT in Education: Korea's experience. Presented at Kansai University, Osaka Japan, October 26, 2002.
Kim, Youngsoo & Kye, Bokyung. (2001). The effect of information literacy and media self-efficacy on the achievement in ICT based learning environment, Journal of Educational Information and Broadcasting, 7(4).
Ministry of Education & Human Resources Development (MOEHRD) (2001). Adapting Education to the Information Age: A white paper. MOEHRD/KERIS, Korea.
Mizukoshi, Toshiyuki, Kim, Youngsoo, and Lee, Jongyeon. (2000). Instructional Technology in Asia: Focus on Japan and Korea. Educational Technology Research and Development, 48(1), 101-111.
訳:鈴木克明(岩手県立大学ソフトウェア情報学部)
解説:鈴木克明(岩手県立大学ソフトウェア情報学部)
English as Asian Language
韓国のICT教育:進んでますね!
・ 教育改革の道具→インフラ整備→利用
・ ICT国家予算:8400億円(桁はあってるかな?)
・ インターネット利用者倍増(2001)
・ 学校ブロードバンド接続率:世界一
・ 無料で全教室がインターネットに接続
・ 教師には全員パソコンが支給:0.95
・ 小学生の68%が電子メールアドレスあり
・ ペーパーレス:5〜6年前から
・ 企業も支える仮想大学コンソーシアム
・ オーストラリアとの国際単位互換
韓国のICT教育:内容も充実
・ 高校の「情報科」(必修)すでにある
・ ICT認定制度→大学入試に有利
・ 教師にもICT認定制度:3年に1度全員研修を受ける義務→変革に必要
・ 各教科の免許取得にもICTスキルが必要
・ EDUNET:素材、教材、指導案、オンライン研修、ディスカッション、ノ英語版
・ 大学教員を支えるマルチメディアセンター
韓国のICT教育:これから
・ 第2次計画:OECDレベルへ:機器を越えて
・ 全教科の20%以上でICT活用
・ 教材の量の確保から質の向上へ
・ 倫理教育の必要性:Web掲示板への書き込みで停職処分
・ 15の仮想大学スタート:うまくいくか
・ 仮想大学での評価の難しさ:インターネットカフェでカンニング
韓国のICT教育:わからないこと
・ ICT認定制度:どんな問題がでるの?
・ 結果に基づく指標とは何ですか?
皆さんからの質問は? 日本語・ハングル・英語の どれかでどうぞ
カムサムミダ