平成15年度NHKデジタル教材評価委員会(2004)『平成14年度デジタル教材授業実践についての評価報告書(要約)』(NHK教育番組部委託研究)(監修)

平成14年度デジタル教材授業実践についての評価報告書
(要約)


岩手県立大学 鈴木 克明

要約

本評価研究では,過去2年の取り組みをふまえ,学習者,授業者,コンテンツ制作者の3者の立場からの包括的な評価を試みた。すなわち,1:教師のプランニ ングワークシート,2:児童イメージマップ,3:アクセスログ・ポートフォリオ,4:教師リフレクションワークシート,5:教師インタビュー,6:制作者 インタビューの6つの方法を組み合わせた。より具体的な教師のデジタル教材の利用意図,学習者の反応を明らかにすることを目的に,2学期末,3学期の2回 単元レベルでの事例研究を実施した(第1章)。

ログ分析・ポートフォリオ収集システムは,昨年度までの開発状況及び利用者からのフィードバックを踏まえ,今年度の研究枠組みに合うような変更を行った。 実施した作業は、1:「にんげん日本史」のデータを追加,2:2003年度への対応,3:ログの自動収集システムの実装,4:利用マニュアルの作成の4つ であった(第2章)。

5校5番組を対象にした調査を実施した。調査の実施時期,各校のネットワーク環境の問題もあり,すべてのデータが収集できたわけではない。ポートフォリオ では32件の記録を収集した。アクセスログについては,ネットワーク環境に問題があり,根岸小学校の2003年12月18日から2004年3月19日まで のログのみとなった。プランニングワークシートでは、デジタル教材の利用意図を含めた単元計画の記入を依頼した。リフレクションワークシートでは、プラン ニングワークシートにもとづいて実践をふりかえり,デジタル教材の評価を依頼した。イメージマップ調査では,延べ234名の児童からデータを収集した。児 童を対象にしたデジタル教材についてのアンケートでは,延べ245名が対象となった。教師へのインタビューからは,デジタル教材の印象,それぞれをどのよ うに使い分けたのか,具体的な利用意図を把握することができた。制作者へのインタビューでは,番組のコンセプト,評価対象になった放送回の制作意図と実践 者の利用意図との対応を中心に尋ねた。事例研究では,各校・各単元ごとに,デジタル教材を使う教師の利用意図,学習者が得られた効果,制作者の意図を突き 合わせる評価を行った。(第3章)

得られた成果を整理し,次の点を考察した。(1)教師のデジタル教材の利用イメージの明確化、(2)学習者によるデジタル教材評価、(3)制作者への フィードバックと教師との協同。対象校,番組,調査期間をしぼりこんだ本年度の研究で得られた成果は,デジタル教材そのものの評価としては部分的なものに とどまる。しかしその一方で,デジタル教材を評価する枠組みとして,教師,学習者,制作者の間で共有するべき要件を明らかにすることが出来たと考える。一 方で、今後の課題として、次の点を考察した。(1)評価方法の効率化、(2)教材に対する評価と学習者に対する評価、(3)制作者と教師の対話。(第4 章)。今回のような評価の取り組みは、それにかかる時間、労力が大きく、一般に広めていくことは現実的ではない。評価研究で得られたノウハウを、日常的な 実践の現場における単元計画のツールとして、あるいは制作者と教師との対話ツールとして、使えるようにしていく工夫が求められる。(第4章)