「ITで25年後の学校教育はどう変わるか(IT教育関係者による大胆予測)」『教育新聞』(2002年正月特集号)(2001.12.10.脱稿)


ITで25年後の学校はどう変わるか


岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授 鈴木克明



 25年後の学校は,楽しく充実した学びの場になっていると思う。総合的な学習の時間で展開されるプロジェクト方式の学習が浸透し,自分の興味関心やこだ わりが大切にされる。各教科の基礎基本を必要になったときにオンデマンドで教える方法が確立し,なぜこれを学ぶ必要があるかがよくわかるから学習が促され る。教師に言われたとおりに,学ぶ意義も分からない内容をひたすら詰め込んでいく苦痛と周囲との点数競争から解放され,学校はいろいろなことに進んでチャ レンジして自分を確かめ,自分を探していく場所になる。授業は楽しみな時間になり,学校は学ぶ意味を実感できるところになる。

 学校のやり方に子どもがあわせていく(適応させる)のが当たり前だという考え方を揺さぶるのがITのもつパワーである。ピラミッド形で予定調和的・上意 下達的な堅い組織のままでは,次世代を担う市民を育てる使命を果たせない。そんな学校には行かせたくないと思う親が増え,他の環境で学びたいと思う子ども が増える。ITによってもたらされる多種多様な学びの機会が,学校以外の道を準備する。ITによって社会全体がもっと柔軟で臨機応変で失敗と再挑戦ができ るようになり,人々の関心を学校以外の選択肢に向けていく。自分の頭で考え,自分の人生を自分で切り開いていこうとする人たちが増え,学校が期待に答えな いのならば,自分たちの望む代替案を現実化しようとする。そういう人々の行動力を支えるのもITのもつパワーである。

 ITは,学校を変えていこうと挑戦する教師たちにも,同じように味方する。上からの改革を仕方なく受け止めるのではなく,子どもたちのために何をなすべ きか,何ができるかを真剣に考える教師にパワーを与える。前例主義・事なかれ主義の給料泥棒ではなく熱い魂と確かな腕をもった教師たちの手によって,学校 は楽しく充実した学びの場になる。


注:そうでない学校は,25年後には淘汰されて消滅しているだろうから,25年後に存在する学校は,楽しく充実した学びの場になっているのと思うのです。