ホームページの使いやすさを左右する要因
Factors Affecting Usability of WWW Home Pages

[あらまし] ホームページは、その構成しだいで、見に来た人たちをいらいらさせたり、ほしい情報が探しにくいなど、使いやすさに不都合が生じてくる。そ こで、ホームページ調査研究の結果やインタフェースやハイパーテキストの文献を通して、ホームページの使いやすさを左右する要因について考察する。
[キーワード] インターネット ホームページ インタフェース ハイパーテキスト

1.本研究の目的
 昨今のインターネットブームにより、ホームページは爆発的に普及してきている。そのような中で、教育機関のホームページもすごい勢いで増加を続け、学校 のホームページは96年8月16日現在600件を超した。ここまで増加したホームページであるが、それらを見てまわっていると、どうも来た人のことを考え ていない、まわりにくいページを見かけることがある。ホームページは公開するのであるから、見に来る人たちを意識して作るべきである。いくら内容が充実し ていても、それ以前に快適にまわることができないのでは、せっかくの情報も無駄になってしまう。そこで、まずホームページの使いやすさを左右する要因を洗 い出すことを、本研究の目的とした。

2.これまでの研究
(1)小中高ホームページ調査
 筆者らはこれまでに、三度にわたり初等中等教育のホームページ調査を実施してきた(市川他,1995;市川・鈴木,1996a,1996b)。ホーム ページの内容を調査するためにホームページひとつひとつを見てまわるという手法をとった。その時、膨大な数のホームページを見たわけであるが、中にはイラ イラさせられたり、情報を苦労して探しまわったりと、見る気がなくなるようなページも見られた。
主な問題点を上げると、
・画像の容量が大きすぎて、アクセスが遅い(回線の細さ、混みぐあいは別として) ・ほしい情報がどこにあるのかわからない
・背景によって、文字が見づらい
などであった。

(2)ホームページ構築
 以上の経験から、使いやすいホームページをめざして、東北学院大学教育工学実習室ホームページ(http://www.edutech.tohoku- gakuin.ac.jp/;図1)を構築した(市川・鈴木,1996c)。情報を探しやすくするために、ホームページの全体構成とその内容がわかるよう に「サイトガイド」を用意した。また、ホームページ内のキーワード検索も取り入れた。これにより、初めて来た人でも情報を探しやすくなったはずである。ま た、アクセススピードを速くするために、なるべく大きな容量の画像はやめ、イライラ解消につとめた。当然ながら文字と背景の配色バランスにも気を配った。 さらに、ユーザにわからないことがでてきたときのために、オンラインヘルプを用意した。

図1 東北学院大学教育工学実習室ホームページ

3.使いやすさを左右する要因
 ホームページはHTML(Hyper Text Markup Language)言語で書かれ、ハイパーテキスト構造を有する。ただのワープロで書く文書のレイアウトの自由度とは違い、画像の配置などHTMLが表現 方法を制約している。ホームページ上のインタフェースもこのHTMLで決まってくる。
 ホームページの使いやすさを左右する構成要素には、コンテンツ(文字、画像、音声、動画などの情報)をどう整理するか(どこのページに配置し、どのよう にリンクするか)というハイパーテキスト特有の側面と、利用者がホームページと対話しやすいようにする、インタフェースの側面がある。

(1)ハイパーテキスト構造に固有の要因
 ハイパーテキスト構造の要素は、リンク、ボタン、ノードの3つである。ボタンはノード上に配置され、クリックすると、リンク先のノードへ行くというものである(ホーン,1991)。
 ホームページは、ブラウザから提供されている機能により、たどってきた履歴が残してあったり、最初のページや直前のページに戻ったりできる。しかし、こ れらはどれも戻るための機能であり、これから進んでいく先の情報はまったく提供されていない。次の点がホームページの使いやすさを左右する要因となろう。
●見つけにくいボタン
 ホームページを次へ進んで行くために、ユーザが使うのはほとんどの場合ボタンである。ホームページに埋め込んだボタンが見つけにくいものであってはならない。ボタンの存在はカーソルの変化によりわかるが、一目でわかるように何らかの区別をつけるべきだ。
●一貫しないラベル
 このボタンを押すと本当に自分の必要な情報にたどりつけるのかと不安になることがある。とりあえず行ってみてまた戻るというのもよくある。利用者のほし い情報かどうかがラベルを見てすぐにわかるようなものでなければならない。他のラベルと内容がかぶっていそうなものは避けるようにし、なるべく人にわかり やすいラベルを付けることが必要である。
●迷子問題
 複雑なリンク構造によって、自分がいったいどこにいるのか、どのへんをまわっているのかがわからなくなってしまい、ホームページを見ているうちに迷子に なってしまうことがある。階層が深かったり、リンクが複雑の場合に起こる。ホームに戻るボタンや全体の構成を見せるなどの工夫が必要である。

(2)インタフェースの観点からの見た要因
 ハイパーテキストに固有でなくても、各ノード(ページ)にはインタフェースの研究から見た要因もある(シュナイダーマン,1995)。
●応答時間
 ホームページを見ていて最もイライラする原因は応答時間である。回線の細さ、混み具合も影響するが、根本的に画像の容量が大きいものは待ち時間も長くなる。ホームページの容量を軽くする必要があるだろう。
●文字と背景のバランス
 背景がごちゃごちゃしていたり、背景色と文字色のコントラストが少ないものは読みづらい。赤の背景に青の文字など、けばけばしく見える組み合わせも同様である。同一ホームページ内では、文字色とその意味付けに一貫性を持たせたい。
●ページの大きさ
 ブラウザのウインドウはリサイズ可能であり、それに合わせてページの大きさも変わる。ウインドウをかなり大きくしないと表示できないページがあるが、 ディスプレイが小さい利用者たちには不便である。特に画面が縦にも横にも切れるとスクロールが面倒である。小さく開いていてもなるべく意味のわかるような 設計にすべきである。

4.おわりに
 ホームページ上で表現できることは、プラグインやJAVA言語、ヘルパーアプリケーション、CGIなどにより、その可能性が広がってきた。一方で、最近 の傾向としては、やたらデザインが凝っているだけというものを見かける。もう少し内容とそれをどう見やすく提供するかについて検討する必要があるのではな いか。
 これまでの研究成果を踏まえて、わかりやすく使いやすいものにしていくためのガイドラインやホームページ評価チェッリスト等をまとめることが求められている。

参考文献
市川尚・井口巌・鈴木克明(1995)「WWWホームペー ジはどのように設計したらよいか〜小中高ホームページの調査・分析の観点から〜」『第21回教育工学 研究協議会全国大会発表論文集』,pp.65-68
市川尚・鈴木克明(1996a)「WWWホームページはどのように設計したらよいか?〜小中高ホームページの現状調査・分析からの提案〜」『IMETS No. 120』, pp.24-32 市川尚・鈴木克明(1996b)「小中高ホームページの調査研究」『日本教育工学会第12回大会講演論文集』
市川尚・鈴木克明(1996c)「独学支援型ホームページ<教えるんです>」『第22回教育システム情報学会 発表論文集』
シュナイダーマン,B.(1993)『ユーザインタフェースの設計(第2版)ーやさしい対話型システムへの指針ー』日経BP社
ホーン,R.E.(1991)『ハイパーテキスト情報整理学ー構造的コンテンツ作成のすすめー』日経BP社


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