ソフトウエア工学研究財団(1995)『感性社会に向けてのマルチメディア学習環境のシステム開発に関するフィージビリティスタディ報告書』 機械システム振興協会システム開発報告書6-F-?、分担執筆(第2・3章の一部)

第2章 本研究の理論的背景



2―1 はじめに


 この章では、感性社会に向けてのマルチメディア学習環境におけるソフトウェア開発に関する研究知見を整理する。今年度のプロトタイプ構築で実現する具体 的題材には、主としてマルチメディアデータベースの研究知見が反映される。さらに、本研究の対象となるマルチメディア学習環境全体については、(ア)感性 工学、とりわけ感性を表現するためのインタフェース、(イ)グループウェアとハイパーメディア環境における相互理解のための記述法1)2)3)、さらに (ウ)ハイパーメディアデータに基づくプレゼンテーションと半自動レポート生成に関する研究4)5)6)を整理することが必要となる。さらに、ネットワー クを介したディスカッション支援機構については、アメリカにおける遠隔教育教授法についての先進例7)8)も踏まえる必要がある。
 以下には、情報処理学会、電子情報通信学会、教育工学会等の研究に散見される、質的に高度なユーザインタフェースの開発を目指した画像処理、音声処理、 自然言語処理、CG(コンピュータグラフィックス)、VR(バーチャルリアリティ:仮想現実感)、イメージデータベース等の諸技術を活用する感性情報処理 の研究を概観し、本研究におけるシステムの基本設計にとりわけ重要な「感性」を主として詳しく論評する。

2―2 感性情報処理
(坂谷内先生からの情報待ち)

2―3 音声の感性情報処理
(坂谷内先生からの情報待ち)

2―4 画像の感性情報処理
(坂谷内先生からの情報待ち)

2―5 マルチモーダルインタフェース
(坂谷内先生からの情報待ち)

2―6 感性と教育工学研究
(坂谷内先生からの情報待ち)

参考文献

●グループウェア
1)垂水浩之(1992)グループウェアのソフトウェア開発への応用。情報処理学会 33(1) Pp.22-31
2)松永鉄郎、守安隆、友田一郎、水谷博之(1993)ハイパーメディアに基づく共同文書作成環境MuHyme。情報処理学会論文誌 34(6) Pp.1395-1405
3)松下温(1993)グループウェア実現のために。情報処理学会 34(8) Pp.984-993

●ハイパーメディアとプレゼンテーション並びに文書自動生成
4)金子朝男(1993)ハイパーメディアの研究動向。情報処理学会解説 34(1) Pp.60-71
5)市村哲、前田典彦、工藤正人、松下温(1993)本とハイパーテキストとの融合メディア:OpenBook。情報処理学会論文誌 34(5) Pp.1053-1063
6)岡田謙一、松下温(1994)本メディアを越えて:BookWindow。情報処理学会論文誌 35(3) Pp.486-475

●遠隔教育
7)University of Alaska System (1992). Distance education.
8)Greydanue, J., Root, J., & Pribyl, L. (1991). Teaching from distance. Faculty Hand- book, OSU.

●感性工学
<<<*この項目の参考文献は、坂谷内先生の原稿で使われている順番に並び替え、9)から順に番号を振る必要があります。それに準じて、坂谷内先生の原稿内での参考文献番号も変更する必要があります。>>>
井口征士(1994)感性情報処理が目指すもの 情報処理学会論文誌 35(9) Pp.792-798
辻三郎(1993)感性情報処理 日本学術会議編「感性と情報処理」共立出版
原島博監修、井口征士他(1994)感性情報処理 電子情報通信学会編「ヒューマンコミュニケーション工学シリーズ」オーム社
神尾広幸、松浦博、正井康之、新田恒雄(1994)マルチモーダル対話システムMultiksDial 電子情報通信学会論文誌 J77ーDーII(8) Pp. 1429-1437
金澤博史、クリスマエダ、竹林洋一(1994)計算機との対話のための非言語音声の認識と合成 電子情報通信学会論文誌 J77ーDーII(8) Pp. 1512-1521
松野勝弘、季七雨、辻三郎(1994)ポテンシャルネットとKL展開を用いた顔表情の認識 電子情報通信学会論文誌 J77―D―II(8) Pp. 1591-1600
清水清一、山下元(1994)ファジィ推論を用いた感性評価法 教育工学関連学協会連合第4回全国大会 第1分冊 Pp. 417-418
小松幸廣、山下利秀(1994)音声データベースの構築と検索ツールに関する研究 日本科学教育学会第18回年会論文集 Pp.275-276


第3章 具体的システムの開発


3―1 マルチメディア学習環境とプロトタイプシステム


3―1―1 マルチメディア学習環境と「感性データベース」


 「感性データベース」を如何に定義するかについては、議論が分かれるところである。第2章でまとめた先行研究の吟味に加えて、本研究でのシステム構築を通じて、「感性データベース」の条件や実現可能性を吟味し続ける必要があることは言うまでもない。

 本研究においては、当面、「感性データベースとは、感性情報を含むデータベースである。」ととらえて研究を進めている。ファジー理論や意味空間のベクト ルの類似性などを手掛かりにして感性のおもむくままにデータが検索できるようなシステムの構築は実用システムの実現性という観点から困難が予想される。し たがって、あくまでも検索は通常のAND/OR検索を基本とし、感性的な検索ができるから感性データベースなのではなく、感性情報を含んでいるから感性 データベースであるという視点に立ち、マルチメディア学習環境の枠組みを模索した。

 感性情報を含むという場合、まず、「万人の感性に訴える情報」「データベース利用者の感性を刺激する情報」をシステム側が用意することが必要条件とな る。つまり、データベースに含まれる具体的な素材(ドキュメント教材)が利用者の情意面へ強い影響力を持つことが必要となる。したがって、利用者が冷静沈 着でいられないようなテーマを選定し、感性に訴えかけられる学習課題とすることが不可欠となり、マルチメディア、とりわけ動画像や音声を駆使したデータの 効果的な構成が求められる。

 感性は、データベースに含まれる情報そのものに常時付随するものとは限らない。異なる生活経験や信念、あるいは既有知識を有する個々の利用者がデータと の相互作用を持つことによって、同じ情報から異なる感性が刺激される。また、異なる感性を有する利用者同士の相互作用によっても、感性が刺激され、高めら れるという性質を持つものである。したがって、マルチメディアデータベースの素材や構成法の検討に加えて、データベースをどのような場面で活用していくの かの吟味も視野に入れ、マルチメディア学習環境全体を検討の対象とする必要がある。

 さらに、感性情報を含むデータベースと言う場合、あらかじめ用意されたデータに接するうちに利用者の中に生じてくる感性についての情報を、データベース に映しだすことも必要条件となる。つまり、高い完成度のデータベースを与えることで利用者の感性を刺激することにとどまらずに、データベース利用者が自ら の感性情報をデータベースに付加することを可能にするメカニズムを備えなければならない。利用者が自らのテーマや関心に基づいて検索・収集しているデータ に関して、感じたことをメモしたり、また、感じたことのメモを利用者相互で交換させて、感性の高まりを支援するようなメカニズムも具備する必要がある。

3―1―2 マルチメディア学習環境の構成要素


 システムの基本設計を漸次進行するために、マルチメディア学習環境の構成要素を同定し、その相互関係を図示した(図3―1―1参照)。以下に、3つの構成要素の概略を述べる。

(図3―1―1を入れる)


 1)マルチメディアデータベース

 「感性データベース」の主幹をなす具体的素材(ドキュメント教材)として用意された情報。感性に訴えるためのマルチメディア情報(デジタル映像、デジタ ル画像)を豊富に含み、ストーリー性を持つハイパーテキスト構造と検索機能、トレース機能等を有する。ある領域の情報を網羅的にデータベース化するのでは なく、ある特定のテーマに添ってある特定の視点から情報を集めることで、一定の主張を利用者の感性を刺激するような構成で提供する。感性情報処理の研究成 果を最大限に生かし、感性を高めるようなインタフェースを備える。ハイパーメディア環境におけるリンク構造にしたがって、提供する情報相互の関連構造に分 析を加えたものとする。

 2)因果ネット・ハイパー型レポートベース作成支援システム
   (オーサリングシステム)

 マルチメディアデータベース利用者が、あるテーマに添って情報を収集・整理し、自らの感性にしたがって情報レポートを作成する過程を支援するメカニズ ム。マルチメディアデータベースから提供された情報をノードごとに切り出す機能を持ち、マルチメディアデータベースの主観的なサブセットを利用者ごとに構 築できるようにする。切り出された情報には、マルチメディアデータベースにおけるリンク構造の分析結果が自動的に付加され、因果関係に基づくハイパー型の データ構造が複写・保存される。また、コメント付加機能によって、切り出した理由や感じた事などをメモし、利用者の感性を表現できるようにする。さらに、 マルチメディアデータベース以外の情報も取り込むための情報追加機能を備え、利用者がテキストや画像、音声などを新しいノードとして追加し、切り出した情 報とのリンク構造を新たに付加することを可能にする。

 3)誘導型レポート共同作成支援システム
   (プレゼンテーションシステム)

 主観的に収集・整理されたハイパー型レポートベースからリニアな構造を持つプレゼンテーションの素材を生成する過程を支援するメカニズム。ハイパー型レ ポートベースの因果ネット構造に基づいてノードを時系列に並び替え、レポートを半自動的に誘導・生成する機能を持つ。また、時系列に並び替えられたレポー トを提示しながら関連した情報を取り出すことで、プレゼンテーションを支援する機能も持つ。以上のレポート作成過程を共同作業として行うグループウェア的 な機能として、ネットワークを介した情報共有機能も検討する。

3―1―3 プロトタイプシステムとシステム構築の手順


 本年度開発の具体的システムは、前節で明らかにしたマルチメディア学習環境全体を構成する要素の一つ、1)マルチメディアデータベースのプロトタイプに あたる。本章で述べてきたとおり、感性に訴えるためのデータベース構築には、マルチメディア学習環境全体の様々な要素を考慮したシステム設計が不可欠であ る。とりわけ、マルチメディアデータベース(ドキュメント教材)そのものが内容的にも、あるいは構成的にも、利用者の感性を刺激する材料となることが極め て重要な要素となる。そのためには、完成度の高いドキュメント教材の構築が不可欠な条件となるので、初年度の開発の中心は、ドキュメント教材のプロトタイ プ構築に充てられた(本章第2節、第3節参照)。本年度開発のプロトタイプ教材の運用結果を分析し、また参加者からの意見を聴取し、それをマルチメディア データベースの基本設計の策定に反映させることで、マルチメディアデータベースの完成度を高めていくことが期待される。

 2)因果ネット・ハイパー型レポートベース作成支援システム(オーサリングシステム)については、開発への第1段階として、その基本仕様を検討し、基本 設計を完成させた(本章第4節参照)。本年度開発した1)マルチメディアデータベースの基本仕様をもとに、データベースの構造分析手法を策定し、レポート ベースの作成過程を分析した。また、レポートベースの作成支援方法を検討するためには、作成されたレポートの利用方法も考慮する必要があったので、3)誘 導型レポート共同作成支援システム(プレゼンテーションシステム)の機能も踏まえつつレポートベース作成支援システムを設計した。第2の構成要素を開発・ 評価すること、ならびに第3の構成要素の基本設計と開発・評価は、今後の課題として残されたことになる。


3―2 ドキュメント教材の収集・制作
(企画班ご担当分)

3―4 ドキュメント教材のデータベース化
(開発班ご担当分)

3―4 オーサリングシステムの基本設計
(米沢先生ご担当分)

参考文献
(現在のところ、該当なし)


ーここから要約ー
第2章 本研究の理論的背景 「要約」

2―1 はじめに
 この章では、感性社会に向けてのマルチメディア学習環境におけるソフトウェア開発に関する研究知見を整理する。今年度のプロトタイプ構築で実現する具体 的題材には、主としてマルチメディアデータベースの研究知見が反映される。さらに、本研究の対象となるマルチメディア学習環境全体については、感性工学、 グループウェアとハイパーメディア環境における相互理解のための記述法、さらにハイパーメディアデータに基づくプレゼンテーションと半自動レポート生成に 関する研究を整理し、ネットワークを介したディスカッション支援機構についての先進例も踏まえる必要がある。
 以下には、感性情報処理の研究を概観し、本研究におけるシステムの基本設計にとりわけ重要な「感性」を主として詳しく論評する。

2―2 感性情報処理
(これより坂谷内先生の要約原稿を挿入)



第3章 具体的システムの開発 「要約」

3―1 マルチメディア学習環境とプロトタイプシステム
 本研究においては、当面、「感性データベースとは、感性情報を含むデータベースである。」ととらえて研究を進めている。感性情報を含むという場合の条件として、次の3つを規定した。
1)データベース利用者の感性を刺激するために、マルチメディアデータベースの素材や構成法  を十分に検討した情報をシステム側が用意すること
2)利用者のデータとの相互作用や異なる感性を有する利用者同士の相互作用による感性の高ま  りを促すために、マルチメディア学習環境全体を検討の対象とすること
3)データベース利用者が自らの感性情報をデータベースに付加することを可能にするメカニズ  ムを備えること
 マルチメディア学習環境の3つの構成要素を次のように同定し、その相互関係を検討した。
1)マルチメディアデータベース
 システムの主幹をなす具体的素材(ドキュメント教材)として用意された情報。
2)因果ネット・ハイパー型レポートベース作成支援システム(オーサリングシステム)
 マルチメディアデータベース利用者が、あるテーマに添って情報を収集・整理し、自らの感性にしたがって情報レポートを作成する過程を支援するメカニズム。
 3)誘導型レポート共同作成支援システム(プレゼンテーションシステム)
 主観的に収集・整理されたハイパー型レポートベースからリニアな構造を持つプレゼンテーションの素材を生成する過程をネットワークを介して共同作業として実現するメカニズム。
 本年度開発の具体的システムは、1)マルチメディアデータベースのプロトタイプにあたり、その運用結果の分析を基本設計の策定に反映させる。2)因果 ネット・ハイパー型レポートベース作成支援システムについては、その基本設計を完成させた。これを開発・評価すること、ならびに第3の構成要素の基本設計 と開発・評価は、今後の課題として残された。

3―2 ドキュメント教材の収集・制作
(企画班ご担当分の要約を加えてください)
3―4 ドキュメント教材のデータベース化
(開発班ご担当分の要約を加えてください)

3―4 オーサリングシステムの基本設計
 感性にしたがって情報レポートを作成する過程を支援するメカニズム(オーサリングシステム)の基本設計を策定するために、一般的なデータ分析に基づいた レポートの作成過程を分析した。テーマの分析とレポートの構想、主観的な資料の整理と体系化、論理的な構造化と文書表現と進む作成過程の中で、とりわけ重 要な情報の体系化の記述と表記の重要性に着目し、因果関係や脈絡の論理構造を明確に記述するための手法として、ハイパー型・因果ネットワークを導入した オーサリングシステムを設計した。
 ハイパー型・因果ネットワークを、次のように定義した。
1)ネットワークのノードは、状態を表すテキストと関連映像、表、グラフ等を情報としてもつ。
2)ノードを関連づけるリンクは、ノードへの接続とリンクへの接続の二通りがある。
3)リンクには、リンクの種類とリンクタイトルを属性として付加する。
4)リンクの種類は、展開、推測、理由、背景、補足、資料、例、否定の8種類を基本とし、必  要に応じて追加できるものとする。
 上記の記述法により、フォーチュン誌の「日本の日の出」の一部を表記し、グループウェアによる共同レポート作成の環境における編集作業を可能にさせる要件について検討した。
 オーサリングシステムの実現に向けて、インタフェースを設計し、ハイパー型因果ネットワークの構築手順を同定した。オーサリング基本操作は主幹データ ベースからのカット&ペーストで成立し、元データとの接続を確保しておく。映像のリンク操作は、2つの方法を用意する。タイトル、入力、出力の見出し部分 とBranch、Out、Inのボタン等を含むダイアログにしたがってノードの接続状態やリンクの指定をおこなう作業を繰り返すことで、ネットワークを簡 易に構築できるようにする。フォーチュン誌の一部を用いて、初期状態からネットワークを構成するまでの過程を例示し、構築手順の妥当性を検討した。