仙台市教育委員会編(1991)『コンピュータ利用学習指導の手引き』、編集委員、分担執筆(第3章、第4章)。

3章.CAI教材のしくみ


3.1 CAI教材を見る目を養う

      してみせて
      いってきかせて
      させてみて
      ほめてやらねば
      人は動かじ

 古くから、人に何かをさせるためには相応の働きかけが必要だと言います。CAI
教材は子どもに何かを学ばせるために用いるのですから、CAIを構成する要素も、
「子供が学習する上で役に立つもの」という観点で調べます。まずお手本を見せて(
してみせて)、やり方を説明してやる気をおこさせ(いってきかせて)、練習のチャ
ンスを与え(させてみて)、よくできたねとほめてやることは、CAIの場合に限ら
ず授業一般に当てはまることです。ですから、CAI教材をチェックする時には、こ
の教材の「してみせて」の部分はどれかな、あるいは、これは「させてみて」の部分
だな、などと考えながら進むと、その教材の全体像がつかみ易いかもしれません。
 また、検討中のCAI教材に不足している部分は何か、あるいはそのCAI教材を
授業の流れにどのように位置づけたらよいかなどがはっきりしてくるでしょう。提示
型のCAI教材で「してみせて」を詳しくやって、その後で自作のプリントを使って
「させてみて」個別に添削して「ほめてやる」必要があるとか、逆に教師が自分で「
してみせて」を担当しドリル型のCAI教材に「させてみて」の部分をやらせような
どという具合に計画するのです。





3.2 CAI教材=「画面」+「画面のつなぎ方」


              CAI教材のしくみを調べるためにCAI教材を分解
             していくと、多くの場合、一枚ずつの画面の集まりにな
             ります。たとえば1時間分のCAI教材では、100枚
             以上の画面が含まれていることがあります。しかし、全
   画面        員が同じようにすべての画面を見るとは限りません。た
             くさんの画面がある場合、児童・生徒が一人ひとりにあ
  CAI教材は     った画面だけを使って学習できるように「画面のつなぎ
  画面の集まり     方」を工夫することができるからです。


 右の例では、まず「説明の画面」
を全員に見せて、「問題の画面」を            説明
いくつかやらせます。その後は、よ
くできたA子は「発展問題の画面」
に進ませて、つまずいているB夫に        B夫  問題
は「復習の画面」を見せてからもう
一度「問題の画面」にチャレンジさ   復習問題
せます。全部の画面をト−タルする           できたか?
と100枚以上になるかも知れませ
んが、一人ひとりの子どもにとって                 A子
は、最も適した画面だけが選ばれて           発展問題
いることになります。


 CAI教材の中には、授業の最初に全員に見せるために3−4枚の画面だけででき
ているものもあります。この場合も、分解してみると、「画面」が3−4枚あること
がわかります。では、「画面のつなぎ方」はどうでしょうか。授業の最初に見せるも
のだから、最初の画面がまずでてくる。次にリタ−ン・キ−を押すと次の画面がでて
くる。最後まで行ったら終わる。こういうつなぎ方でしょうか。それとも、まず「メ
ニュ−画面」がでてきて、どの画面が見たいかを1から4の数字で選ぶようになって
いる。リタ−ン・キ−を押すとまた元の「メニュ−画面」に戻ってきて次に見る画面
を選ぶ。こんなつなぎ方もあります。あとの方の「メニュ−画面」を使ったやり方は
、授業の途中で「あの画面をもう一度見せたい」と思った時には便利でしょう。また
、見たい子どもが見たい画面を見たい時に見ることができるようにコンピュ−タを教
室の隅の方に置いておく場合にも便利でしょう。

       「画面」のつなぎ方でCAI教材が変わる
       <直線型>        <メニュ−型>

         1
                      メニュ−
         2          (1−4を選択)

         3
                  1   2   3   4
         4



 CAI教材のしくみは、「画面」と「画面のつなぎ方」を注意してみるとわかりま
す。どんな内容の画面があって、それがどのようにつながっているのかに目を光らせ
てチェックしましょう。

3.3 「画面」の2つのタイプ

 CAI教材の「画面」は、大きく2つのタイプに分類することができます。「説明
画面」と「問題画面」の2つです。「説明画面」では、画面に文や絵などが提示され
、児童・生徒はそれを見て、ふつう何かのキ−(たとえばリタ−ン・キ−)を押すこ
とで次に進みます。「問題画面」では、コンピュ−タが一方的に何かを見せるだけで
なく、児童・生徒に質問を出し、答えに応じてフィ−ドバックを与えます。「問題画
面」がいわゆる「行って、返って、また行って」という3方向の情報の流れを持つと
みると、「説明画面」は最初の「行くだけ」の1方向とみることができます。

       行くだけの             行って返ってまた行く
       「説明画面」              「問題画面」
   C            学      C            学
       刺激(説明)              刺激(問題)
   A            習      A            習
                            反 応
   I            者      I            者
                          フィ−ドバック

図.「説明画面」と「問題画面」の情報の流れ

 CAI教材の中には、「あれは『電子紙芝居』だ。」と悪口を言われるものがあり
ますが、それは、ほとんど「説明画面」だけでできているものです。「説明画面」で
は、コンピュ−タの画面に出てきた文や絵を児童・生徒が見て、終わったら次に進む
だけですから、まるで紙芝居だということになります。一斉指導で用いるプレゼンテ
−ション型のCAIの場合は、「電子紙芝居」としてのコンピュ−タ利用ですので、
普通の紙芝居ではできないようなものを見せる時に使えばよいのです。
                  では、個別学習で用いるCAI教材の場合は
<説明画面はリタ−ン・キ−で>  どうでしょうか。この場合、「説明画面」だけ
                 ですと、理解していてもしていなくても先に進
  分配法則は便利なものです   めることになりますので、コンピュ−タを「ペ
  例: 99×67       −ジめくり機」として使っていると批判される
    =(100−1)×67  ことになります。本を読ませるのと同じだとい
    =6700−67     う指摘です。「説明画面」の最低限の条件とし
    =6633        て説明を読み終わったかどうかは読んでいる人
                 に決めさせることです(速読の訓練ならば別で
                 すが...)。一人ひとりのペ−スで学習が進
<ひと工夫で問題画面に変身>   められるように、児童・生徒がリタ−ン・キ−
                 などを押して「読み終えました」と知らせてか
  分配法則を使うと便利な    ら次の画面に移るようにします。そして、「説
  計算は1ですか2ですか    明画面」が何枚も続かないように、「問題画面
  番号で選んでリタ−ン     」をおりまぜて、内容を確認しながら先に進む
  1.99×67        工夫をしたいものです。「リタ−ン・キ−を続
  2.63×7+63×3    けて3回以上押させないようにする」というの
                 が一つの目安として言われています。同じ説明
                 をするのにも、簡単な発問の形に直す工夫をす
                 ればただリタ−ン・キ−を訳もわからず押して
                 いては先に進まなくすることができます。

3.4 「画面」をつくる時の工夫

 1枚1枚の「画面」をつくる時にどんな工夫ができるかということについて、ヒン
トを集めてみました。CAI教材の各画面にどのような工夫がこらしてあるのかに注
意しながら見てみましょう。また、自分でCAI教材をつくる時には、どんな工夫が
盛り込めるかを考えながら行うとよいでしょう。
 (情報提示の工夫)
 ・一つの「画面」に提示する情報の量は少なめにする。こみいった「画面」を見続
けると目が疲れ易い。
 ・「画面」の中で強調したい文字部分には、色を変える、大きい文字(倍角等)を
使う、下線を引く、箱で囲む、下色を変える、等の方法を使う。ただし、あまりやり
過ぎると効果が減る。
 ・線画、アニメ−ション、取り込んだ絵や写真等を用いて、説明を具体的にする。
 ・画面全体に情報を一度に提示せず、意味のかたまり毎にポ−ズ(一時停止)を入
れて、学習者がリタ−ン・キ−を押した時に残りを提示する。
 ・一方的な情報提示があまり長く続かないように、質問をおり混ぜる。

 (回答処理の工夫)
 ・キ−ボ−ドに不慣れな学習者に対しては、数字だけの入力、矢印キ−を使っての
選択、マウスでの選択等の簡単な回答方法を用いる。
 ・多枝選択方式を用いて、誤答の種類を予測し、それに対応した処理をする。
 ・自由回答方式の場合には、入力ミスによるものと、勘違いによる誤答を区別して
誤答を予想し、それに対応した処理をする。

 (フィ−ドバックの工夫)
 ・回答が正解の場合は「ほめる」、不正解の場合は「助ける」ことがフィ−ドバッ
クの基本である。
 ・誤答に対するフィ−ドバックがない「問題画面」は「テスト」と同じである。
 ・誤答に対しては、ヒントを与えて同じ問題に再度挑戦するチャンスを与えること
が考えられる。
 ・一度の誤答で「できない」と判断を急がずに、同じような問題を何度か解かせて
みてから、次の「できない子はこちらへ」に進ませるようにする。
 ・入力ミスや操作の不慣れで不正解の場合は、「できない」と判断を誤らないよう
にする。

3.5 「画面」のつなぎ方

 CAI教材のしくみを理解するための鍵となるのは、ひとつひとつの「画面」がど
のようにつながれているかということです。3.2でみた「直線型」や「メニュ−型
」などのように、CAI教材のつなぎ方にはいくつかの種類があります。子どもたち
全員が同じ順番で同じ「画面」を使って学習を進める「直線型」の場合でも、一人ひ
とりの学習ペ−スに応じて速い子どもは速く、ゆっくり進む子はゆっくりと学習を進
めることができます。また、「直線型」の教材でも、「画面」が順序よく並べてあっ
たり、誤りの種類に応じたフィ−ドバックやヒントが工夫されていれば、個人差に対
応した学習指導が可能です。さらに、「画面」のつなぎ方を工夫すれば、一人ひとり
のつまづきの箇所や学習の進み具合、またそれぞれのやる気を高めるようなしくみの
教材になるでしょう。同じ材料(CAIでは「画面」)を使っても調理の仕方(CA
Iでは「画面」のつなぎ方)を変えれば味の違う料理になります。新鮮な材料と料理
人の腕が揃って初めておいしい料理が生まれるのです。
 「直線型」に対する工夫のひとつとして、「分岐型」と呼ばれる教材があります。
これは、学習の進み具合をみながら、一人ひとりに必要な「画面」だけを選んで与え
ていくためのつなぎ方です。3.1の例のように、順調に進んでいるA子と分からな
くて困っているB夫には、次の道を「分岐」して違う「画面」に進ませます。したが
って、A子は復習のための「画面」を使わないで先に進み、復習が必要なB夫だけ復
習用の「画面」を見ることになります。一人ひとりの理解の度合いに教材を合わせる
ことができるので、分からないまま先に進んだり、分かっているのに何度も復習して
飽きてしまうことを防ぐことができます。
 「直線型」の教材の弱点のひとつに、途中から始められないことが挙げられます。
そんな時は、教材をいくつかのまとまりに分けて「画面」をグル−プ化して、「メニ
ュ−型」のつなぎ方をすることが考えられます。メニュ−画面で「1番から順に勉強
しなさい」と指示すれば「直線型」と同じつなぎ方になりますが、きのう1番をやっ
たから今日は2番をやるというような使い方ができるようになります。また、メニュ
<選択を子どもに任せたメニュ−> −画面で「やりたい番号から選んで勉強しなさ
                 い」とか、「自分に必要だと思うところだけ選
                 んで勉強しなさい」といったように、選択を子
                 ども自身に任せることもできます。いつまでも
  [文法のステップ8の     すっかりお膳立てされた料理を食べさせるだけ
   メニュ−の図〕       でなく、下ごしらえだけしたものを与えて子ど
                 もが自分で味つけができるように、つまり一人
                 前の料理人に育てるために、つなぎ方をある程
                 度子どもに任せる方法のひとつです。
 つなぎ方を子どもたち一人ひとりに任せることをさらに進めた場合、「画面」だけ
を用意して、あとは自由に「画面」を選択させるやり方があります。どんなことにつ
いての情報があるかだけをリストアップして、知りたい情報が含まれている「画面」
を次々に調べていくような方法で、「情報検索(デ−タベ−ス)型」と呼ばれるCA
I教材などで使われています。たとえて言うならば、メニュ−画面の一項目を選んだ
らその下にまたメニュ−画面が現れるような構造になっているのです。
 最後に、練習をするための「ドリル型」の教材などで使うつなぎ方について触れて
おきます。「直線型」のCAI教材を使って何度か練習をしていると、最初の問題の
答えは何番で次の問題は何番というように、答えの内容でなくて順番で覚えてしまう
ことがあります。それを防いで、同じ教材を何度も使って練習できるようにするため
に、無作為(ランダム)に「画面」を取り出したり、並び替えをしたりする方法があ
ります。単語カ−ドをよく混ぜて毎回違った順序で練習するのと同じやり方です。こ
の場合、「画面」のつなぎ方はあらかじめ一通りに決まっているのではなく、毎回つ
なぎ方を変えるメカニズムを備えることになります。「ペ−ジめくり機」にはできな
いコンピュ−タならではのつなぎ方といえましょう。
 「画面」のつなぎ方には、このように様々な方法があります。これまでに開発され
てきたCAI教材の中には、「一度始めたら終わりまで一直線に進む以外に道はない
」というものもあれば、「いったいこの教材はどんな構造になっているのか複雑すぎ
てわからない」というものまで、様々のようです。CAI教材を使う子どもたちは一
人ひとり個性があって、学習の進め方や誤りの種類が違うという点に注意して、進み
具合に応じた「画面」が次に出てくるようなつなぎ方になっているかどうかをチェッ
クしましょう。また、子どもたちにただ与えるだけでなく、自分で主体的に考えて学
習が進められるように、選択のチャンスを提供することも考えて「画面」のつなぎ方
を検討したいものです。

3.6 「画面」のつなぎ方のポイント

 「画面」のつなぎ方について、一般的に注意したい点を集めてみました。CAI教
材の「画面」がどのようにつながっているのかを確かめる時には、次の点をチェック
するとよいでしょう。

(CAI教材全体について)
・「画面」のつながり方がどうなっているかがはっきり分かるか
・学習中の出来具合に応じて次に進む「画面」が変わるか
・メニュ−があるか
・教材の流れを変更できるか

・教材使用中にいつでも中断できるか
・教材の途中から再開できるか
・前の「画面」にいつでも戻ることができるか
・現在どのあたりを進んでいるのかがわかるか
・あとどの位残っているのかがわかるか

・リタ−ン・キ−を押すだけの「説明画面」が続いていないか
・ヒントや補足説明を見るオプションがあるか
・子どもたちが自分で決められることがどの程度あるか

(メニュ−画面について)
・教材の全体構造がつかめるようにメニュ−が使われているか
・メニュ−画面を見て終わった部分とまだの部分が区別できるか
・「終了」するための項目があるか
・メニュ−のどの項目を選ぶのがよいかを知る手がかりがあるか
・子どもたちが自分で好きな所を好きな順番で選択できるか

(ランダム選択問題について)
・何度使っても同じ問題が同じ順番で出てくるか
・同じ程度の問題を集めてグル−プ化しているか
・練習の出来具合が良ければ少ない問題数で合格できるか
・練習の出来具合が悪ければ復習のために抜け出すことができるか
・問題を何問練習するかを子どもが自分で決められるか

                     −−−−ここで3章終わり−−−−

(鈴木克明)


(4)「画面」を見る目(その3):役割からみた「画面」の種類
※※4章のCAIの使い方の所で「CAI教材を授業の流れに位置づける」という観
点から扱ったらどうか?※※

 CAI教材の「画面」をしくみの上からみると、「説明画面」と「問題画面」の2
つに分けられますが、「画面」の良し悪しは、その「画面」が果たす役割から判断し
なければなりません。では、どんな役割を持つ画面が考えられるかをみていきましょ
う。
 まず、学習を開始する時点では、3種類の手助けが可能です。一つは学習意欲を高
めること。タイトル画面を面白くして学習者の注意を引きつけることなどが考えられ
ます。2つ目は学習者に学習目標を知らせること。この教材で学習することで、いっ
たい何ができるようになるのかを明らかにし、そのゴ−ルを目指すように助けること
です。そして3つ目は、前提条件を確かめること。この教材を使って学習するために
予め必要となる基礎知識や基礎技能を知らせ、準備が出来ているかどうかを確かめま
す。いわば利用資格をはっきりし、それを満たしている人ならば責任を持ってゴ−ル
に達することができるように面倒をみますという宣言をすることになります。
 次に、学習中に学習を手助けする主な要素としては、学習する内容の提示と、練習
の2つがあります。「してみせて」は内容の提示、「させてみて」は練習にあたりま
す。学習内容を提示する時には、学習のためのアドバイスを与える部分(いわゆる「
いってきかせて」にあたる)を工夫し、すでに知っている事柄や、習得済の技能と新
しい課題を関連づけたり、学習のコツを知らせたりします。また、練習では、「問題
画面」の情報の流れで示した通り、問題を出し、学習者の答えを受け付け、その答え
に応じたフィ−ドバックを用意します。また、学習がうまく進まない子どもに対する
補足説明や簡単な問題を用意する「治療」の画面も考えられます。
 学習終了時には、学習した成果がどの位であったかを確かめる「力だめし」の画面
を練習画面とは別に用意することが考えられます。また、目標をクリア−した子ども
に対する発展学習の画面などを工夫することもできるでしょう。
 以上をまとめると、表 .のようになる。

    学習開始時  (1)学習意欲を高める画面
           (2)学習目標を知らせる画面
           (3)前提条件を確認する画面
    学習中    (4)学習内容を提示する画面(ガイダンス含む)
           (5)練習させる画面(フィ−ドバック含む)
           (6)補足説明をする画面(いわゆる「治療」)
           (7)力だめしをさせる画面
    学習終了時  (8)発展学習をさせる画面
    表 .役割からみた「画面」の種類

※※ これは省いたらどうか ※※
 (6)TOTEモデルについて
 TOTEモデルとは、ある特定のゴ−ルを目指して進む時に常にゴ−ルに達したか
どうかをチェックしながら作業を進めることを図式化したモデルである。とても簡単
なモデルであるが、CAI教材の構成を考える時に、最も大切な考え方を示している
と思われる。
 TOTEモデルとは、図 に示されているように、ある作業を行うのに、まず、す
でに目標が達成されているかどうかをチェックし、すでに達成されている場合は作業
をしないで抜け出す。目標が達成されていないことが判明したら、その目標に向けて
ある一定の量だけ作業を行い、再び目標が達成できたかをチェックする。達成できれ
ば抜け出し、できていなければ作業に戻り、チェック−作業−チェックを繰り返す。
つまり、TEST(チェック)−OPERATE(作業)−TEST(チェック)−
EXIT(抜け出す)の頭文字を取って、TOTEモデルという。これだけの簡単な
モデルである。

                         YES
            入る       達したか?      抜け出す
                     TEST EXIT
                        NO

                      作業
                    (OPERATE)

          図 .TOTEモデル

こんな簡単なモデルが示す重要なポイントは何か
1、でたらめに作業を開始しないという点
  なんのためのCAIかを意識しないでCAIをやらないようにしたい
  やる前からできる子どもになぜやらせる必要があるのか
    何の断りもなく始める教材に入って、学習者が何を学習しているのかがわか
らないまま取り組んでいることのないようにしたい。まず、その教材で学習する必要
があるのかどうかをチェックする機会を設けたい。そうでなくても、その教材がどん
な内容で、なにを知るために、あるいは何ができるようになるために作られた教材か
を学習目標という形で最初に示せば、「これはもう知っているからやらないで他の教
材をやる」といった選択が可能になる。
2、達したかどうかをどのように見極めるのかという点
  説明という作業の場合、最初の画面から最後の画面までを表示すれば達したと言
えるのだろうか(本当に説明を読んだという保証はあるのか−リタ−ンを3回以上続
けて押して次へ進むのは良くないとされている。時折内容チェックの質問を混ぜると
良いのでは)
  練習という作業の場合、たった1回の正解・不正解で達したかどうかを見極めて
よいのか
  10問問題をやれば正解・不正解に関係なくドリルを抜け出てよいのか
  10問中7問できればよいのならば、7問連続正解で抜け出られてよいのでは
  10問中7問できなければならないのに、4問不正解しても続行させるのか
3、達したかどうかをなぜ見極めるのかという点
  子どもに評定(点数)を付けるためのチェック(TEST)ではない
  できぐあいを見守り、次の手段を講ずるためのチェック

(最後に)
 CAI教材に備わっていなければならない要素は、よい授業一般に備わっている要
素と同じく、目指す学習を実現する「手助け」になるものである。したがって、ここ
で述べてきた要素が「あれば」それでよい教材ではないし、また要素が「多ければ」
よいというものでもない。「あっても役割を果たしていなければなにもならない−教
材を実際に使わせてみて確かめる以外に確かな方法はない。「多ければよい教材、少
なければ悪い教材ではない−学習を手助けするのはCAI教材と他の手段との連携プ
レ−で実現するものであれば、CAI教材がたった一つの役割だけを確実に担えばよ
い場合もあり得る。全体的に見て多くの要素が揃えばそれでよいのだから、CAI教
材だけをみてその良し悪しを決めることはできない。それをどう使いこなすかによる
からである。


戻る第4章